フレイヤというNPCも加わり、俺たちはスリュムが居るであろう、部屋の目前まで到達した。
扉が、俺たちが五メートル以内に踏み込んだ途端、開き始めた。
奥から、なんとも言い難い空気が流れ込んでくる。
アスナ「皆、支援魔法を張り直すよ。」
フレイヤ「では、私も。」
その2人が、支援魔法を掛けたのだが、フレイヤの奴は、HPゲージが大幅ブーストする物だった。
こんな支援魔法は見た事がないから、フレイヤ専用の物だ。
リバフを確認した俺たちは、全員で頷いて、中に突入する。
内部は、とてつも無く広い。
その端には、黄金製のオブジェクトが沢山並んでいた。
リズベット「………総額、何ユルドだろ……。これさえ有れば、店のフランチャイズ化も夢じゃないわね………。」
店を経営しているリズベットがそう呟く。
目の前の宝に目が眩んだな。
すると。
???「………小虫が飛んでおる。」
と、奥から、地面が震える程の重低音の呟きが聞こえて来る。
???「ぶんぶん煩わしい羽音が聞こえるぞ。どれ、悪さをする前に、ひとつ、潰してくれようか。」
重々しい足音と共に、1人の巨人が現れた。
新生アインクラッドのボスよりも遥かに大きい。
恐らく、件のスリュムだろう。
肌の色は、鉛の様な鈍い青色だ。
何か、とある名作アニメの異星人を見ている様な気分になる。
スリュム「ふっ、ふっ………アルヴヘイムの羽虫どもが、ウルズにそそのかされてこんな所まで潜り込んだか。どうだ、いと小さき者どもよ。あの女の居所を教えれば、この部屋の黄金を持てるだけくれてやろうぞ、ンンー?」
クライン「……へっ、武士は食わねど高笑いってなァ!オレ様がそんな安っぽい誘いにホイホイ引っ掛かって堪るかよォ!」
パラド「さっき、フレイヤの事は引っかかりまくってたのに。」
カルム「シッ、突っ込むな。」
ミト「そうね。クラインが拗ねると、後々面倒臭いしね。」
クラインが抜刀して、俺たちも遅れて武器を構える。
ちなみに、リズベットは宝に釣られていたからか、気まずい表情を浮かべていた。
スリュムは俺たちを見た後、背後のフレイヤを見る。
スリュム「……ほう、ほう。そこにおるのはフレイヤ殿ではないか。檻から出てきたという事は、儂の花嫁になる決心がついたのかな、ンン?」
クライン「は、ハナヨメだぁ!?」
スリュム「そうとも。その娘は、我が嫁としてこの城に輿入れしたのよ。だが、宴の前の晩に、儂の宝物庫をかぎ回ろうとしたのでな。仕置きに氷の獄へと繋いでおいたのだ、フッ、フッ。」
つまり、フレイヤは一族の宝物を取り戻す為に、スリュムの花嫁になると偽って堂々と入ったものの、門番に見つかって捕まったという事になるな。
という事は、敵であるという可能性は、低くなったな。
だけど、フレイヤの一族が、妖精九種族のうちのどれなのか、奪われた宝とは何かが分からない。
そんな事を考えていると、リーファが思い出しそうになったが、フレイヤ本人が毅然とした態度で叫ぶ。
フレイヤ「誰がお前の妻になど!かくなる上は、剣士様達と共にお前を倒し、奪われた物を取り戻すまで!」
スリュム「ぬっ、ふっ、ふっ、威勢の良いことよ。流石は、その美貌と武勇を九界の果てまで轟かすフレイヤ殿。しかし、気高き花ほど手折るときは興深いという物……。小虫どもを捻り潰した後、念入りに愛でてくれようぞ、それはもう念入りにな。ぬっふふふふふ………。」
スリュムのあまりにもギリギリなその発言に、女性陣が騒ぎ出す。
アスナ「うわぁ……何なの、あのボスキャラ……。」
シノン「キモい……。」
ミト「同感……。」
シリカ「ヒゲ!!」
リズベット「女の敵!!」
リーファ「………って言っちゃって、お兄ちゃんッ!アーロン君!!」
「「おいおいっ。」」
「「「……………。」」」
余りにも全年齢向けゲームでの許容ラインをギリギリに攻めているぞ。
女性陣が騒ぎ、男性陣が呆然としていると、クラインが声を上げる。
クライン「てっ、てっ、テメェ!させっかンな真似!このクライン様が、フレイヤさんには指一本触れさせねぇぜ!!」
スリュム「おうおう、ぶんぶんと羽音が聞こえるわい。どぅーれ、ヨツンヘイム全土が儂の物となる前祝いに、まずは貴様らから平らげてくれようぞ……!」
スリュムが立ち上がり、余りにも長大なHPゲージが3段も表示された。
まあ、新生アインクラッドのフロアボスよりはまだマシだ。
何せ、新生アインクラッドのフロアボスは、HPゲージが表示されないのだ。
キリト「………来るぞ!ユイとカナの指示をよく聞いて、序盤はひたすら回避!」
カルム「了解!」
スリュムヘイム城最後の戦いは、物凄い大激戦となった。
スリュムの序盤攻撃パターンは、左右の拳のパンチ撃ち下ろし、右足の三連続踏みつけ、直線軌道の氷ブレス、氷のドワーフ生成だ。
ドワーフ生成に関しては、シノンの精密ヘッドショットで瞬く間に片付けてくれた。
攻撃面に関しては、俺たちの攻撃が脛にまでしか届かず、だいぶ苦戦した。
だが、フレイヤの雷撃系魔法により、スリュムのHPが削られる。
キリト「いいぞ!効いてる!!」
クライン「ああ……。流石、オレのフレイヤ様だぜ……!」
「「はいはい。」」
クラインの発言に、シリカ、リズベットが突っ込む。
そうしている内に、一本目を削り切る。
キリト「パターン変わるぞ!注意!」
アーロン「分かった!」
リーファ「ねぇ、不味いよ、お兄ちゃん、アーロン君。もうメダリオンの光が3つしか残ってないよ!多分、あと15分……!」
パラド「嘘だろ……!?」
マジか……。
あと15分でコイツを倒すのかよ。
すると。
スリュム「ぬっふっふ。どうした?かかってこぬのか?………では喰らえいッ!霜の巨人の王者の息吹をッ!!」
ミト「吸い込まれる……!」
カルム「不味い……!」
キリト「皆!防御姿勢!!」
キリトの声と共に、俺たちは防御姿勢を取ったその瞬間。
スリュムの口から、広範囲ブレスが放たれる。
アスナのバフがあるのにも関わらず、前衛組と中衛組が凍結する。
スリュムが徐に右足をあげると。
スリュム「ぬうぅぅーん!」
雄叫びと共に、スタンプ攻撃を放ち、前衛組と中衛組のHPゲージがレッドゾーンへと突入する。
すると、アスナがダメージ発生を先読みし、全体回復スキルを発動するが、全て回復するのに時間がかかる。
スリュム「むぬうゥん!猪口才なッ!今度こそこの一撃で、一気に止めを刺し……ッ!」
スリュムが止めを刺そうとすると、スリュムの顔面に、エクスプロードアローがスリュムの顔に命中する。
放ったのは、後衛にいたシノンだ。
どうやら、時間稼ぎをするようだ。
キリト「シノン!」
カルム「30秒時間を稼いでくれ!」
俺たちはそう言って、ポーションを飲む事に。
すると、エターナルも飛び出す。
シノンside
30秒時間を稼ぐ事になったわね。
攻撃は予想以上に速い………でも、巨体に纏わり付いて回避に専念すれば、どうにかなると思う。
エターナルは、まだ完全に回復していないのに、こちらに来た。
シノン「エターナル!大丈夫なの?」
エターナル「問題ない。」
そうだった。
エターナルは、そういう人だったわね。
すると、ユイちゃんとカナちゃんが来る。
「「シノンさん!」」
シノン「ユイちゃん!?カナちゃん!?」
エターナル「どうしてここに?」
ユイ「パパ達は回復中ですから、私たちがサポートします!!」
シノン「…………パパ……ね。」
カナ「どうしました?」
シノン「何でもない。」
愛娘を持っているキリトとカルムに若干の羨ましさを感じていると、スリュムが巨体で連打を行ってきた。
エターナル「連打か……!?」
カナ「恐らく、自分より小型の相手に登られた場合の対処行動です!」
ユイ「狙いは荒いですが連打ですので、攻撃の予測猶予は1秒以下です!!」
エターナル「1秒か。」
シノン「ま、銃弾程ではないわね。」
GGOで戦ってきた私とエターナルからしたら、避けるのは容易い。
ユイちゃんとカナちゃんの2人の指示を聞きつつ、スリュムの拳の上を動き回る。
しばらくすると。
エターナル「シノン。当てるぞ。」
シノン「ええ。この弾道なら、中指と薬指の間をすり抜けてアイツの顔の前に。」
ユイ「で……でも、顔の前は、氷ブレスの可能性が………!」
シノン「いいのよ。」
エターナル「そろそろ30秒だ。戻るぞ。」
私はエクスプロードアローを、エターナルはナイフを投げる。
カルムside
エターナル達が時間を稼いでくれたおかげで、こちらは回復する事が出来た。
攻撃態勢に入ろうとすると、フレイヤが声をかけてきた。
フレイヤ「剣士様。このままでは、スリュムを倒す事は叶いません。望みはただ一つ、この部屋のどこかに埋もれているはずの、我が一族の秘宝だけです。あれを取り戻せば、私の真の力もまた蘇り、スリュムを退けられましょう。」
キリト「………分かった。宝物って、どんなのだ?」
フレイヤ「この位の大きさの、黄金の金槌です。」
カルム「………へ?金槌?」
フレイヤ「金槌です。」
俺とキリトが呆然とフレイヤを眺めていると。
スリュム「ぬぅうん、何処だ……。王の面に矢を射た無礼者はァァ……!……そこにおったか!猫共ォォォッ!」
と、スリュムが前衛中衛を無視して、シノンとエターナルに攻撃する。
クライン達にスリュムを任せて、俺とキリトとリーファとアーロンはその金槌を探す事にしたが……。
キリト「ユイ、カナ。どうだ?」
ユイ「ダメです。マップデータにキーアイテム位置の記述がありません!」
カナ「部屋に入った時点でランダム配置されてるから、フレイヤさんに渡してみないと分からないと思う!!」
カルム「片っ端から探すか……!」
リーファ「誰でもいいから、雷系のスキルを使ってみて!」
アーロン「雷系……!?」
それを聞いたキリトが、《ライトニング・フォール》を発動する。
すると、一箇所だけ、反応が違う所を見つけて、俺たちは駆け出す。
その一帯の宝をポイポイ捨てていく。
すると、黄金の金槌を見つけた。
キリト「フレイヤさん!」
キリトがその黄金の金槌をぶん投げて、フレイヤはキャッチする。
だが、様子が変だ。
フレイヤ「…………ぎる…………。………なぎる……みなぎるぞ………!」
あれ、何か声が違う。
そう思っていると。
フレイヤ「みな………ぎるうぅぅおおおおおお!!」
すると、フレイヤさんが巨大になっていき、何と、おっさんになっていた。
クライン「お……お……お……!」
『オッサンじゃん!!!』
男性陣の叫び声がこだまする。
フレイヤと記載されていた名前が、トールという名前になった。
つまり、雷神トールだ。
スリュムも気づいたのか、トールの方へと向きを変える。
トール「卑劣な巨人めが!我が宝《ミョルニル》を盗んだ報い、今こそ贖ってもらおうぞ!」
スリュム「小汚い神め、よくも儂を謀ってくれたな!その髭面切り離して、アースガルズに送り返してくれようぞ!!」
まあ、スリュムも被害者ではあるから、怒っても当然だろう。
クラインは未だに呆然としていた。
シノン「トールがタゲ取ってる間に全員で攻撃しよう!!」
キリト「よし、全力攻撃!ソードスキルも遠慮なく使ってくれ!!」
俺たちは、スリュムに肉薄する。
シリカ「てやぁぁぁ!!!」
アスナ「どんな巨人だって!」
ミト「腱を狙えば!!」
リーファ「行こう!!」
アーロン「OK!」
シリカが攻撃して、アスナとミトとリーファとアーロンが腱を容赦なく攻撃する。
リズベット「へっへー!足で弱点……って言ったら、ココだよねっ!小指ィィィッ!」
リズベットは、スリュムの小指に容赦なく攻撃を叩き込む。
クライン「ちっきしょぉぉぉぉっ!!」
クラインが泣きの上段斬りを放ち、スリュムがスタンした。
キリト「ここだ!全員突撃!ぶちかませ!!」
カルム「行くぞ!パラド!!」
パラド「ああ!心が躍るな!!」
それぞれのソードスキルを一斉に叩き込み、スリュムが怯んで、トールが近づく。
トール「地の底に還るがよい、巨人の王!」
止めと言わんがばかりに、ハンマーをスリュムに叩きつけ、スリュムが倒れる。
スリュムのHPゲージは、完全に消えた。
今回はここまでです。
今回は、スリュム撃破まで行きました。
フレイヤがトールに変わった時のクラインの絶望感は如何に…………。
次回で、キャリバー編は終わります。
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アリシゼーションでのカルムの武器はどうするか
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刃王剣十聖刃
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