とある双子の奔走劇   作:すぎざき凉子

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歯車が加速しはじめた双子
少年になった青年からみた妹のほう


 

 

 あ、やべ。

 キュウ、と細められた愉しげな目に反射的にそう思った。

 

「おっ、昨日デートの途中でカノジョ放っていなくなったシャーロキアンだ。なぁ〜んか面白いことになってんじゃぁん?懐かしいな、小学校低学年くらいか?」

 

 はは、こいつにゃいつかバレるとは思ってたけど、一目見ただけで断定してくんのかよ。

 つーかそこから筒抜けだと思ってなかった。昨日の今日だぞ。

 

「まぁ〜た後先考えずに首突っ込んだな?二進も三進も行かなくなる前に、引き際見極められるようになっとけよって助言してやったろ。聞いてなかったのかキミ」

「うるせー、ちゃんと反省してるっての」

 

 わざわざ近くによってしゃがみ込んできた女が頬をつつく。付け爪痛ェな。

 

「馬ッ鹿じゃねーの、こーしてアタシの前に姿見せてる時点で反省活かされてねーじゃん。リラちゃんは気づいてねーんだろうけど、アタシは気づくってわかってたろ?」

「オメーが気付くほうがおかしいんだろうが、蘭の反応は普通だわ」

 

 喋り方と人につける渾名に少し癖があるこの女は、俺と蘭の幼馴染だ。

 

 そうして厄介なことに、関東一体に根深く住み着くヤクザの親分の孫娘で次期代表候補。

 本人も根っからのヤクザものであることを公言し、そこらの半グレや暴走族なんかを片脚だけで伸せる武闘派ではあるが、これがまた頭が切れる。

 しかもどこからどうみても美人でスタイルがいい。

 

「立場上キミらみたいに上っ面の綺麗なもんばっかりみてるわけじゃねーからね。洋服ぶっかぶかのガキ一匹が工藤邸に入ってくのをウチのポチが見てたぞ、気をつけろよ本当。なんのためにウチのをつかせてると思ってんだ」

 

 すっかり忘れてた、そういやそうだ。

 護衛代わりにアシにしているコイツ専属の運転手が、オレの実家と毛利探偵事務所の近くを毎日監視しているのは知っていた。

 本人から「お嬢の頼みだから好きに使っていい」と言われてたんだった。

 

「マ、今日のところは見逃してあげるよボーヤ。名前は?」

「……江戸川コナン」

「ふぅん。乱歩ドイル」

「元ネタ当ててくんじゃねーよ」

「わかりやすすぎんだよ、次はもうちょっと捻りな」

 

 そう言って立ち上がり、自慢にしている腰まで伸びた長い髪を払う。

 

「どっかいくのか」

「おねーちゃまとお食事」

 

 離れて暮らしている双子の姉と食事会らしい。

 そりゃご機嫌だわな。これで機嫌悪いときだったらもっとネチネチ面倒くさかったはずだ。

 

「困ったら連絡してきなよ、反社のチカラで良ければどーとでもしてあげる」

「おまえの助けなんかいらねーよ。つーか名前呼ばねーんならなんで訊いたんだよ……」

 

 手帳を破りさらっと書いて渡してきた電話番号は、工藤新一の携帯にも登録されているコイツの電話番号だった。

 

「そんなん、証拠作りに決まってンしょ。アタシのことは蜜香ちゃんとお呼び」

 

 渡会(わたらい)蜜香(みつか)、十六歳。関東龍桜(りゅうおう)清生(きよなり)一家代表、清生龍応の孫娘にあたる。

 名前は偽名で本名は別にあるが、ヤクザの関係者であることを隠すためではなく双子の姉を連れて行った渡会家への嫌がらせのために名乗っているという。

 

 帝丹高校二年生、素行は制服を着崩すくらいで至って普通。

 警察の厄介になることはあるが被害者側や協力関係であることが圧倒的に多く、警察官の個人的な顔見知りが多数いる。

 

 株式会社アンブル・グリ・グループという高級志向の飲食店を複数経営しているが、どうもこれはこいつの個人的なもののようで、フロント企業というわけではないらしい。

 そのせいか渡会蜜香が清生一家の関係者だと知らない人間も多いようだ。会社経営自体はクリーンだし清生の関係者も本人と秘書だけなのだという。

 急成長した会社だからか、一時期、期待の天才美少女経営者としてビジネス誌で持て囃されていた。

 

「あ、忘れるとこだった。コレ、リラちゃんに渡しといてよ。キミの分だから」

 

 そういって小さい鞄から折りたたまれたA4サイズの紙を手渡してきた。開くと学校からのお知らせだった。保護者会の。

 それで普段は自分から近寄らない毛利探偵事務所に来てたのか。

 

「なんで蘭に渡すんだよ」

「今日たまたまガッコー行ったらセンセーに頼まれたんだよ、住所が工藤邸に近いから。でもイッくんいねーの知ってるのに工藤邸のポスト突っ込んでも仕方ねーだろ。だからイッくんに一番近いとこにいるリラちゃんに渡しとこうと思って持ってきたんだけど、キミいるならキミでいいよな?」

 

 んじゃね、と手を振って踵を返す。

 9センチはあるだろうピンヒールパンプスを高らかに鳴らし、韓国アイドルみたいな格好で腹を露出したパンツスタイルの女はその美貌を惜しげもなく晒して去っていった。

 

「なんなんだ、アレ」

 

 幼馴染ではあるが、未だに理解できないところがある女。

 それが、渡会蜜香こと、清生琥珀だった。

 

 

 

 

 

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