久しぶりに会える幼馴染からみた双子
そっくりだけど全然似てない双子。
でも、すっごく仲良しで、離れていてもお互いを想い合ってるのが一目瞭然。
そんな、幼馴染がいる。
「蘭さん」
「すぅちゃん!久しぶり!良かった、元気にしてた?」
メールのやりとりはしてるけど、血の繋がった双子の妹ですら中々会えないという翠星ちゃんに会うのは本当に久しぶり。
最後に会えたのは去年の夏休みだから、半年以上経っている。
「お陰さまで。いつもメールありがとう、とっても楽しく読んでるのよ。蜜香が苦労かけてるみたいだけれど」
「みっちゃんはいつものことだもの」
良かった、すぅちゃん顔色がいいみたい。
今日も素敵な和装で、薄い朱色のような地に小花柄が流水のように配置された振袖はとてもよく似合っている。帯が緑系なのは瞳に合わせてるのね。帯締めも緑と黄色の紐、すぅちゃんとみっちゃんの色だ。
今日は長い髪を三編みにして、淡い色合いの花飾りをいくつかさしていて、とっても素敵。
「聞き捨てならねー……まあいいや。リラちゃん、やっほ。おじちゃまは?今日は一緒に来てるんでしょ?」
翠星ちゃんの後ろから脚の長いグラスを3つ器用に持った蜜香ちゃんが来て、りんごジュースにしたよ、と一つを翠星ちゃんに渡した。もう一つはわたしに差し出されたので、ありがたく貰う。
今日のみっちゃんはスリットの入ったロングスカートのドレスだ。ホルターネックで大きく背中があいたデザインは、艶のあるブラックなのもあって大人っぽい。白い肌が映えてちょっとドキドキする。
珍しくアップスタイルの髪型なのはドレスを引き立たせる為なのかもしれない。翠星ちゃんの瞳の色に合わせた宝石の耳飾りが揺れて、いつものみっちゃんじゃないみたい。
「蜜香ちょっとあなたまだその呼び方してるの?」
「えっ、なんかだめだった?」
「フフッ。いいの、すぅちゃん。みっちゃんのそれ、可愛いからそのままにしてて」
口を開くとみっちゃんだなぁ、って安心するから。
みっちゃんが意図的に子どもの頃と変わらない口調を保っているのは、わたしや新一や園子、それにクラスメイトのためだってわかってる。
みっちゃんは特殊な立場で、今は学生社長として有名だけど背景にはヤクザがいる。
元々かなり大きな暴力団の組長さんの血縁だから、どうしても周囲に気を遣わざるをえなかったんでしょうね。
そんな中でも、友達でいたいと言ったわたしのために最大限配慮してくれている。
保育園のときの約束を、今でも守ってくれている。
「もう、蘭さんが言うならいいけれど、本当に甘えた気質が抜けない子ね。恥ずかしいと思わないの?」
「ええ……?なんかおかしい?」
「冗談だと思いたかったわ、正気?」
「いや、あの、そこまで言わないでよ……商談のときはちゃんとしてるもん……」
心底呆れました、という顔で見られて凹んだのか、しゅんとしたみっちゃんは可愛らしい。
みっちゃんは普段から表情豊かだけれど、素の顔が見れるのはすぅちゃんと一緒のときが多いから二人揃っているとニコニコしてしまう。
「あ、リラちゃんに紹介しなきゃ。恒次」
「はい」
すぅちゃんの後ろに控えていた男性がすっと前に出た。
ずっと気になっていたけれど、やっぱりみっちゃんの部下らしい。
「アタシの新しい子飼いで唯野恒次。すぅちゃんの御付にしたからほとんど京都に居るけど、たまにこっちで使うから顔だけでも覚えておいて」
「お嬢、紹介の仕方」
「これ以上言うことなくない?」
「まあそうだけど、もうちょっと言い方ってもんがあるじゃん」
ちょうどみっちゃんの背後から遅れて来た西山さんが思いっきりしかめっ面でツッコミをいれて、呆れている。
目が会うと、こんちは、と笑ってくれた。いつもお嬢がすみません、と頭を下げてみっちゃんに叩かれてる。
綺麗に一礼した唯野さんはずっと苦笑いしていた。
「はじめまして、唯野恒次と申します。毛利蘭さんですね、いつも姫さんからお話はかねがね。先日空手の都大会で優勝なされたとか。おめでとうございます」
「あっ、ありがとうございます!はじめまして、毛利蘭です」
順番前後しちゃった、と焦ったらみっちゃんとすぅちゃんから同時に唯野さんの脇腹に肘が入った。
「ッづ」
「油断も隙もねーな、恒次ゥ」
「わたくしが先に言いたかったのに」
びっくりした~。すぅちゃんの暴挙、初めて見た。
他人にはあまり表情の変わらないすぅちゃんが憮然とした顔を向けているのをみて、さらに驚く。
「あーあー、ツネさん大丈夫っスか?姫さんにまでどつかれるって中々レアじゃん」
「すみません姫さんごめんなさいお嬢痛いやめてください」
フフ、仲がいいみたい。すぅちゃんが気を許しているのがわかって、だからみっちゃんはこの人を大事なすぅちゃんの御付きにしたんだなぁと微笑ましくなった。
ドスドスと突き続けるみっちゃんに、やめてあげなよ、とわたしが止めると、ぷく、と頬を膨らませた。
みっちゃんってば、折角大人っぽいお化粧なのに。本当にいつもどおりね。
「もう、二番煎じでごめんなさいね。蘭さん都大会優勝おめでとう」
「ううん、メールでもお祝い言ってくれたのに嬉しい。ありがとう」
すぅちゃんが一歩近づいて、ふわ、と花の香りがする。
みっちゃんもそうだけれど、いつも優しい甘い花の香りがするのが羨ましくて香水をお母さんにおねだりしたことがあったな、と唐突に思い出した。
「ふふ、蜜香とお祝い用意したのよ。クロークに預けてあるから、帰りにこちらの番号で受け取って」
「えっ、本当!?」
「すぅちゃんから渡したいって言ってたんだけど、すぅちゃんの都合が今日しかつかなくてね。番号札でカッコつかないけど。中身は空けてのお楽しみって言いたいとこなんだけど、液体だから先に伝えとくね」
「ガラス瓶に入っているから、持ち運ぶときに気をつけてくださいな。梱包には気を使ったけれど、綺麗なままで見ていただきたいもの」
気に入ってくれるかなー、ね、と同じ顔を見合わせてくふくふ笑う二人に、そうかも、と思う。
よくあるのよね、この二人相手だと。
「ねえもしかして、フレグランスだったりする?」
恐る恐る訊くと、みっちゃんはポカンと口を開けた。すぅちゃんも目を丸くしている。
「リラちゃんすげーな、これだけで中身当ててくる?」
「本当に。驚いたわ、どうしてわかったの?」
「あっ、違うの!そうだったらいいなって思って!」
慌てて手を目の前で振ると、みっちゃんがわかりやすくホッとした。すぅちゃんもみっちゃんに寄り添う。
「はー、良かった。リサーチした甲斐あった」
「香りも気に入ってくれると嬉しいわ、特注させたから」
「特注!?」
「店で使う演出用の香りを作ってる調香師にオーダーしたんだ。だからリラちゃんのための世界に一つだけのルームフレグランスだよ」
確かに、みっちゃんが経営している飲食店に連れて行ってもらったとき、豪華な個室には食事の邪魔にならない程度に香りが漂っていた。
あれ、飾られてたお花の香りじゃなかったんだ。
「蘭さんの喜んでくれそうなもの、蜜香に探ってもらったのよ。そういえば幼い頃にも香水をお母さまに強請っていたことを思い出したのだけど、香水は身につけるものだから好みがあるでしょう。せっかくのものを使ってもらえないのは悲しいから、せめて瓶だけでも飾れるようにと思ってルームフレグランスにしたの。花瓶にも使えるから、好きに使って頂戴ね」
すごい。わたしのことを思って考えてプレゼントしてくれたのがよくわかる。
「嬉しい、あけるのがとっても楽しみ!ありがとうすぅちゃん、みっちゃん」
きっと瓶も素敵なんだろうな。香りも楽しみだけど、使い終わったあとにどんなお花を活けるか想像するのもきっと楽しい。
「で、ところでおじちゃまは?」
「あ、忘れてた。ごめん、たぶんお酒のコーナーにいると思う。いいのよお父さんにわざわざ挨拶なんかしなくて」
「ふふ、相変わらずなのね。わたくし小父様にお会いするのも楽しみにしてきたのよ。何年ぶりかしら」
「そうよね、お父さんはすぅちゃんと随分会ってないか。一緒に行こ、飲みすぎないように回収してこなきゃ」
わたしがそういうと、双子はやっぱり顔を見合わせて、くふくふ笑った。