とある双子の奔走劇   作:すぎざき凉子

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姉の仕事
偶然を装ってるけど仕組まれたことはわかる少年からみた双子


 

 

 リュナで食事をした翌週の土曜日、オレは久しぶりに翠星に会った。

 

 えっ、すげー久しぶりだな。

 確か去年の夏休みに「海行くぞ!」って蜜香に拉致られて以来だから、ほとんど一年ぶりくらいか?

 

 めずらしく二人でタンデムしてツーリングしていたらしい。翠星はいつもどおり和装だったが横座りしていた。

 HONDA GB350、蜜香の表向きの愛車だ。

 

「あら、まぁ可愛らしくなったこと」

「すぅ、あんまりからかうとスネるよ」

 

 だから、なんでこいつら一発でオレだってわかんだよ。

 蜜香から聞いてたにしても判別早すぎるだろ。

 

「わかってるわ、そんな意地悪あなた以外にしないわよ」

「えっ、なんで……?」

 

 キュウ、と愉しげに目を細めるあたりが双子だ。普段の言動は真逆なくせになんでそういう仕草ばっかり似てるんだおまえら。

 

「コナン、顔見てわかると思うけどアタシの双子の姉。翠星ちゃん。可愛がってもらいなー」

 

 先程よりも大きな声で周囲にわかるようにそれと話し、蜜香は猫を被れと合図をしてきた。

 

「こんにちは、コナンさん」

「ハジメマシテー、江戸川コナンです」

「きちんと挨拶できて偉いわね」

 

 本当に証拠作りなんだな、これ。

 同級生にそれとわかった状態で頭を撫でられるという嫌な経験をし、翠星に「顔が正直すぎるわよ」と囁かれた。

 はい。

 

「まだ子どもね」

「すぅ」

「ええ」

 

 す、と翠星は立ち上がる。

 蜜香はいつもどおりだが、翠星の呼び方がずっと警戒している。

 

「ねえ、蜜香ちゃん、どうしたの?」

 

 ちら、と視線を向けられて、耳をトン、と叩いた。そして。

 

「いやー、ゴミ入ったかなぁ。痛いんだよねさっきから。すぅちゃん見てもらえる?」

「ふふ、はいはい」

 

 する、と翠星の腰を抱き寄せ、目を見てもらっている。

 その翠星の腰に置いた指先が、トンとツーで動く。モールス信号か。

 

“ものがみつけられない”

 

 耳と目、ものがみつけられない。

 盗聴器もしくは監視の目があり、機械類が見当たらない。

 

「大丈夫?」

「んー、洗ったらどう?」

「洗えるものがないじゃん。それにこのあとプレオープン行かなきゃ」

 

 探す機械類がないのか。そしてこのあと蘭にも言っていた新店舗のオープニングセレモニーがある。

 

「コナン目薬もってない?」

「持ってなーい。西山さんはどうしたの?」

「先に店に行ってもらってるのよ。困ったわ」

 

 持ってきてもらうのはナシか。

 

「……やっぱり恒次かな」

「頼るしかないわね。せっかくお休みあげたのに」

 

 ツネツグ?

 

「ツネツグさんってだーれ?」

「わたくしの運転手をしてくれている人よ」

「この際翠星だけでも行ってもらわないと対面保てないし」

 

 ということは蜜香についてる可能性が高いのか。

 翠星に蜜香がつけてるならたぶん子飼いだろ。

 

「すぅ、恒次呼んでいける?」

「わかったわ、電話してみる」

 

 翠星が電話し始めたので、蜜香の手を引く。知ってたけど腰の位置高いなこいつ。

 

「ねえねえ、蜜香ちゃん」

「ん?なに」

「蜜香ちゃんのバイクのらして」

「お、いーよ。支えててやるから跨いでみ」

 

 よし、これなら手元が隠れて距離が近くなる。

 蜜香はオレを抱えて一緒に跨り、腹に手を回したままオレの手が足の間にあるのを確認した。

 

「どう?」

「けっこー高いんだねー」

“つねつぐ しんよう できるのか”

「怖くなった?」

“あずかってる けいさつかん”

「んーん!はしってみたい」

“どういうこと”

「じゃあ今度乗せてあげる、もっと早いやつ」

“こうあん とりひき”

「えっ、それはいい」

「遠慮すんなよー」

 

 何してんだこのバカ!!!!公安と取引だと!?

 じゃあそのツネツグってのは公安との窓口か。翠星の運転手をさせて、翠星の安全だけは確保するように。

 

「恒次、来てくれるそうよ。どんなに頑張っても20分はかかるそうだけど」

「すぅが間に合うならいいよ」

 

 この双子、何に巻き込まれてるんだ。

 

“はなしが したい くるまは あんぜん”

 

「コナンさん、宜しければ一緒にいらっしゃらない?新しいお店のオープンパーティなの」

「行っていいの?」

「コナン、大人の味に興味ある?ジェラートにエスプレッソかけたアフォガート・アル・カッフェ、食べてみたくない?」

 

 ほーん、こいつ本気出しやがった。そのジェラート手作りだろ知ってる。チラシの写真にエスプレッソマシン写ってたし、ガチだな。

 

「行く!」

 

 そうだ。

 

“らんに りょうり おしえてくれて ありがとう”

 

 毛利家に転がり込んで驚いたのは、蘭の作る料理がほとんど蜜香の味に近かったことだ。

 中学生の頃、料理が出来なかったオレに基礎的なことを教えてくれたのは母さんだけでなく、蜜香もときどき作りやすいレシピをくれた。

 だから気付いたのだが、どうやら蜜香は蘭にも教えていたらしい。蘭の家庭は小学生の頃に別居になり、家事はほとんど蘭がやっていたから独学だったとばかり思っていた。

 

 蜜香を見上げると、眉を下げて泣きそうな顔で笑った。

 ぽん、と頭に手がのせられる。

 

「ま、期待しててよ」

“いつのはなし”

 

 オレはずっと、誤解していたのかもしれない。

 小学生のとき一人称を変えた頃、蜜香はガラッと雰囲気が変わってしまった。もうあの頃の蜜香と違うんだと思っていた。

 ヤクザになってしまったのだと。その道を進むことに決めてしまったのだと思っていた。

 

 そういえばレシピをくれたときも、一人暮らしになったオレを心配していた。

 

 

 なあ、蜜香。今更だけどさ、おまえ、あの頃何があったんだ。

 

 

 





タイトル揃えるのだいぶもうきつい
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