俺は今協商同盟の支部。そこの広間にいる。
俺とアベーラさんはヴェネクトにある協商同盟の拠点でアリシアとベルハルザを正式に協商同盟所属の傭兵と登録し、真に同盟所属となった。
これでもしもベルハルザやアリシアが何かやらかしたとしても協商同盟預かりとなるのでなんとかなる。
そして次の交易の先も決まった。次は4日後、帝国領。東の龍神信仰の地『ドラゴニア自治区』だ。
陸路で馬車を用いり、また一か月の長旅だ。
また準備を始めなきゃならない。商人に物資の確認のため外に出る。
ドアを出た瞬間に衝撃が走った。
「カルロォォォ!!!」
吹っ飛ばされる。
「カルロ!モフモフが!」
アリシアだ。俺の顔をのぞいている。何か焦っているのか、嬉しいのか。
「おお。アリシアちゃんじゃないか。いい絵描けたのか?」
「アーベラ!それも、だけど!白いモフモフいたの!しゃべったの!」
アベーラさんは困惑だ。俺は衝撃で頭がくらくらしている。
「…あぁそうか!良かったな!『エーカット』と話せたのか!なかなか見ないぞ!」
アベーラさんはアリシアの頭を撫でる。
「えへへ~。」
ご満悦だ。
起き上がる。
「そうだ!カルロ!モフモフがこれ渡せって!」
渡す?そう思った瞬間、紙切れを渡される。
ベルハルザの絵画と同じ文体ではあるが今回はまた言語が違う。
「おお。これは……ちょっと待ってろ……。これだ。珍しいな『古代アズマキシ語』だぞ。」
そう言いながらリュックからアベーラさんが分厚い本を取り出して答える。
知らない言語だ。
「『古代アズマキシ語』は第一紀の前に存在していたといわれる国家の文字だ。ほとんど古代史に近いな。竜人が使う武器である『刀』を使っていた人間種の戦士たちで構成されていた。ってどっかで見たな。……なんて書いてあるんだ。」
いつにない真剣な面持ちだ。素直に『翻訳』を行う。
「『『野望』とは終わらぬ大洋を渡る事。『憧れ』とは届かぬ太陽に手を伸ばす事。渡り届いた事を知らせる『同志』が居なくなった事だけが彼にとっての不幸であった。』……?」
「何も分からないな。……。やはり、うん。カルロ。」
返事をする。
「これも『復元』しろ。そしてアリシアちゃんに書いてもらえ。」
言われるとは思ったが中々だ。
「わかりました。でも……これは。」
「分かる。…分かっている。でも、これがお前らの前にある。”意味”があるんだ。”いい予感”がする。責任は俺がとろう。」
俺は踵を返して支部に向かう。目指す先は自分の部屋だ。俺はアベーラさんを信じている。
後ろから声が聞こえる。
「そういえば…。ベルハル、ベルさんはどこにいる。一緒だったよな?」
「あ!いない!」
大丈夫か……?
カルロが『時戻し』を行おうとしている時、ベルハルザは絡まれていた。
いや、職質を受けていた。アリシアが突然走り出し、投げ出したスケッチと絵具、調色板を回収して後ろから追おうとした時だ。
彼の後ろにも追いかける彼らがいた。
「ちょっと!そこの人!止まりなさい!」
高い声だ。
振り向くと女がいる。普通の女とは違う所は鎧を着ており帯刀もしている。警備隊だ。
「……なんだ?」
ベルハルザはぶっきらぼうに返す。
そもそもベルハルザは未だにぼろぼろの鎧を身にまとい、背中には刃先が折れた大剣を背負っている。背も高い。そんな男が15か20かという位の少女の横にずっと微塵も動かず立っていたのだ。
職質もされるだろう。
ベルハルザは日常の会話はできるが詳しくは行えない。今ここで職質されるのは非常にまずいことであった。
「なんだ?じゃありません!その恰好!一体どうしたのか!周辺の方々からも怖いと苦情が届いています!」
気丈に女は話す。周りの男たちもまた、ゆっくりと周りを囲み逃げられないようにしている。
「はあ。」
ベルハルザは溜息を吐き、画材を纏めると風を呼ぶ。突然の暴風に身を守る警備隊。
彼らがまた正面を見たことにはベルハルザは居なかった。
「アベーラ。」
星が宙に浮かぶ頃、窓からベルハルザが現れ。部屋の中に入る。。
「…!お、おお。びっくりした。どうしたベルハルザ?」
「しくじった。」
「しくじった?」
「警備隊、に、尋問、受けた。すぐ、に、逃げたが…。」
「ふぅむ……。了解だ。大丈夫だ。ベルハルザ。これを持ってくれ。これは俺ら同じ所に入っているという印だ。……わかった?」
そうアベーラは言うと引き出しから首飾りを手渡す。
「これ、持ってれば安心だから。次はこれ、見せてくれ。」
身振り手振りでアベーラは説明する。
「……感謝する。」
そういったベルハルザはまた窓から外に出、跳んでいった。
「……ドアから出ればいいのに。」
ポツリと言ったアベーラは机に向き直す。
机の上には昼に調べた図鑑が置いてある。
「…。これは、出発日を早めなきゃ駄目かもなあ。」
引き出しから予定表を取り出し、サラサラっと羽ペンを用い予定を変えていく。
長い夜が始まったのだ。