翻訳傭兵の旅物語   作:おたま

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戦闘

あの後、アベーラさんがレーアさんに口八丁手八丁で言い包めていた。

なんとか和解もでき、剣を収めてくれた。

 

よく分からないが良かった。良かった。

 

これからは正式にベルハルザはベルさんという事だ。

今回の誤魔化しでベルさんの設定が増えた。

 

ベルさんはホラント人とスノーエルフとのハーフ。ハーフエルフで、フィア語を喋れないので意思の疎通はなかなか難しい。

ボロボロの鎧は以前にあった戦闘で壊れてしまって、ドラゴニアで修復するという事を身振り手振りで必死に説明していた。

 

ベルハルザも一緒におり「あ、あれは、す、すまなかった。ちゃんと、言え、言えればよかった、んだが。」

 

と反省の意を表しており、リーアさんも「誤解してしまい、申し訳ありませんでした。」と謝っていた。

蚊帳の外だが、まあ何とかなってよかった。

 

 

と、言う感じで旅は始まった。もう早2週間。あと半分だ。

 

俺達4人は一つの馬車に詰められ道を進む。アリシアの画材とベルハルザの巨体が非常に邪魔だ。

 

ドラゴニアまで行く道のりは広大なルードー平原を行く。広々とした、だだっ広い大平原だ。

第一紀には『ルードー平原の戦い』が行われた歴史ある平原でもある。

 

過去の、ベルハルザも参加した大戦の跡地を行くのだ。

ぜひ『ルード平原の戦い』の概要をベルハルザから聞きたいが近くには護衛の若騎士たちもいる。聞かない方が身のためだろう。聞きたくて仕方がないが。

 

 

広い平原で、ところどころに森もある平原だ。隠れている賊も獣も厄介だが、”モンスター”も厄介だ。

ここには”モンスター”という存在がいる。獣とは違う凶悪な生物で、獣も人も見境に攻撃し食物連鎖など厭わない世界の害獣。と、言われている。

厄介なモンスターだが、この地において最も厄介な魔物は『ホブゴブリン』だ。知性がない『ゴブリン』で何も考えずこん棒で襲撃に来る厄介な敵だ。

 

なぜこういう注意すべき敵を回想しているのか言うと、『ホブゴブリン』に待ち伏せされていたからだ。

 

「皆さん!馬車の中に入って!奥にある置盾を置いて身を守って下さい!エリック!馬の周りに置盾を!」

リーアさんが激を飛ばす。

 

「お、俺も、戦う、か?」

 

「いえ、大丈夫です。ホブゴブリンごとき我々だけでも対処は可能です。」

 

「なら、いい。」

 

 

我々の護衛をしてくれる騎士が各馬車に二人入り、言われた通りに馬車の奥にある置盾を入り口に置き身の安全を確保する。

 

俺とアベーラさんは急いで盾で防御するが、ベルハルザはいつもと変わらずという感じだ。

俺もアベーラさんも護身術は学んでいるが、戦えるかと言われればそうではない。

所詮は商人だ。

 

いざとなればベルハルザに頼りきりになるだろう。

 

「いつも道理だ!訓練の成果を!」

リーアさんが号令をかける。

 

 

ふと気になって隙間からちらりと戦いを見る。

流石は騎士たちだ。統率がとれている。

左手に大盾を持ち右手に剣を握りしめ、隊列を組んている。

コボルト達は近づけていない。

その間から後方にいる若騎士がフリントロック式の銃を放ち撃退をする。

 

銃の発砲音と煙。そして発砲炎で驚きホブゴブリン達が驚き動きが止まる。その後に弓に持ち替え、次々と射る。

 

見事だとしか言いようがない。一人ひとりが鍛えられており、統率力もなかなかだ。レーアさんも若いながらなかなかやる。

 

半分ほどのホブゴブリンが弓で射られ残りは撤退していく。

 

続々引いていったホブゴブリンを確認し皆が息を吐き安心したところだったが、違和感がある。

 

 

先に丘の上に逃げ、稜線の向こうに行ったホブゴブリン達の方向から”グギャ!”という。悲鳴に似た声が聞こえる。翻訳でもグギャと言っているので声ではなく、悲鳴というのは俺にはわかる。何かに倒されているのだ。

 

若騎士達も何事かと臨戦態勢を続けたままだ。

 

稜線から大きな体が姿を現した。『トロール』だ。

 

『トロール』。知性がないでモンスターであり、『ホブゴブリン』が突然変異した姿だと言われている。

 

ゴブリンよりも身体が発達しており、我々よりも大きい。性格は狂暴であり、自分たち以外のすべての生物を見境なしに攻撃する。真の害獣だ。

 

それが5匹居り、脅威となる。

 

「トロール……!!?なんでここに!!」

 

「ここには生息していないはず…!!?」

 

 

これはまずいかもしれない。

 

トロール達はトロールたちを右手に持っている棍棒や、その大きな足で無造作に潰しており、死肉を食らっている。

 

丘の頂上で膝を折り、死骸むさぼるその姿は間違いなく悪鬼だ。

 

 

若騎士達も狼狽えている。それほどまでに脅威なのだ。

 

 

「落ち着きなさい!1匹ずつ倒せれば勝機はあります!銃列をしいて!一斉射撃!」

 

リーアさん達がその頂上で貪っているトロールに向けて銃口をむけ発砲をする。銃弾は命中し、痛みで狼狽えてはいるが死には至っていない。

 

弓をいるがまるで効いてないようだ。焦っている。

 

我々の方を向く。走ってくる。

 

 

ベルハルザに助けを求めようと振り返ろうとする。瞬間。

烈風とサビ臭い匂いがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「銃が効かないのか…!?」

彼等は若い騎士である。ノブリス・オブリージュの精神の元騎士としての理念を体現を望んている、若き希望のある騎士達である。

 

だからこそ突然の異常事態には慣れてはいない。経験がないのだ。

一人でもベテランがいればまだ保てるかもだが、若騎士たちは狼狽え、撤退を考える者もいる。

 

トロール達が彼らに気づき走ってくる、3m程の巨体だ。

地を踏みしめるたびに地が振動する。

 

恐怖は伝播する。

 

陣形は崩壊しつつあるのだ。 

 

「落ち着きなさい!私達は勝てます!銃隊は弓に持ち替え応戦!一匹に集中しなさい!後方の部隊は我々の支援を!銃を再装填して!」

 

その言葉で彼らはなんとか応戦を開始した。

 

この言葉の主はレーア・アルトマン。初代子爵のニーア・アルトマンの一人娘であり父の才能を一心に受け継いだ才女である。

 

彼女は優秀である。まだ二代目と歴の少ないアルトマン家ではあるが貴種が通う訓練学校では首席になったし、まだ卒業して2年目ではあるが一隊の長を勤め、今も護衛の隊長も行える。

 

だからこそ経験が殆どない中で一匹でも充分脅威である、『トロール』相手にも冷静に保てている。

 

 

だが見落としがあった。仕方ないことではあるが彼女の周りは冷静ではない。

彼らも経験がないのだ。確実に自らを屠ることができる驚異。それも5匹に鉢あった彼らは冷静ではいられない。

 

訓練で何度も行ったであろう銃の再装填もおぼつかないし、大盾持ちは無意識に下がり始め、弓の引きも十分ではなくトロールの皮膚を貫通をなしえないのだ。

 

倒せず焦る。

 

彼らは恐慌とも言える状態になり、レーア自身も恐慌が伝播しつつあったとき、彼らの後ろから暴風が吹いた。

 

 

「てつだおう。」

 

 

ベルハルザだ。

 

 

暴風を纏い空を滑空している。元の鎧であれば白く美しい白い流星にでも成れたであろうが、このサビつき血生臭い鎧ではそうは見えない。

 

血染めの狂戦士といったところか。

 

 

弓の弦のように引き絞られた躰は最後方にいるトロール目掛けて突撃。

 

身を翻しながら首を右手の大剣で薙ぎ払う。隕石のごとく来訪した『防風』にはトロールといえ抗えない。

 

頭と胴は分離する。

 

そのまま着地。

 

瞬間に加速。

 

今度は足に力を込め跳躍。

 

右手は引き絞り、左手は対象を定めるように自らの顔の前に。

 

前から4番目。ベルハルザの存在に気づいていないトロールに向けての突きだ。

 

人一人ほどの大きさを持つ赤黒い大剣がトロールの背中に突き刺さる。

 

わずか数秒。二匹目も倒れる。

トロール含めそこにいるベルハルザ以外がようやく認識した。

 

 

血に濡れた襤褸の騎士がそこには居た。

 

倒れたトロールの上でベルハルザは立っていた。

剣に重心を置いて気怠けに立ち、尖端が折れ、ボロボロの大剣をトロールの背中を突き刺している。

 

 

そのまま指を指す。レーアに向けて。小さい声であった

 

 

『うて。』

 

 

反射的にレーアは叫ぶ。

 

「……!!じ、銃!ってッ!!!」

 

発砲音と煙が舞う。煙は風に運ばれる。

 

 

いつもとは違う風であった。

 

 

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