翻訳傭兵の旅物語   作:おたま

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真実

ベルハルザが話したことは俺にとって衝撃的なものであった。

 

まず、俺自身が知っている世界的に知られている防風『ベルハルザ』の説明をしていこう。

 

だが、彼が言うには北の戦士国家『ホーラック王国』に生まれ、若い時から武功を立て、その鮮烈な戦いぶりから『暴風』と恐れられた。

その後『ザルーツ』率いる反乱軍が三方に逃れた行軍。『三方の長征』時、その一つの反乱軍は北に逃れ、『ウィンターフォール皇国』と『ホーラック王国』に匿われた。

その時の司令官。赤髭『ラズナル・ロークシー』と最初のミノタウロス『ツオン・オールド・リグ』と友好関係になり、ベルハルザは反乱軍に加わることとなる。

 

その時に自らの二つ名を『暴風』から『防風』に変えたという。

その後『氾濫戦争』の最大の野戦『ルードーの戦い』に反乱軍が勝利し、15年かけ各地を征服。

 

第一紀630年。『アルバス攻略戦』において単身で突撃し同地を征服したというのが防風『ベルハルザ』の物語だ。

 

 

たが、ベルハルザから聞いた物語はすこし違う。

まず生まれは『ホーラック王国』ではなく、その隣の『ウィンターフォール皇国』であった。

 

種族はハーフエルフ。 

 

その後は大体同じだが、最後の『アルバス攻略戦』が全く違ったのだ。

 

単身突入するのは同じだが、あくまでも隠密だったそう。目的はスノーエルフの国『ウィンターフォール皇国』の第四王女『時の巫女』の救出だったらしい。

 

『時の巫女』というのはスキルとは別の能力。スノーエルフの王族のみがまれに発生する異能。『時間渡航』の能力を持っている。

 

『時間渡航』の能力を聞くところによると名前のとおりに過去、未来に自由に行き来できるというものらしい。

 

『ウィンターフォール皇国』はこの異能を用い、アポーマーからの侵略を回避して国を存続していたということだそうだ。

以前彼らの国にアポーマー達が略奪に押し入り、誘拐されてしまったそう。

 

 

今までの常識とは違うことをさも当然のように言われ困惑してたとき、彼は話し始めた。

 

『だが、我らは失敗した。救出するために事前情報で知っていた大聖堂には『時の巫女』は居らず、そこにいたのは『マンマゴル』だった。我らは『マンマゴル』との戦いの後に意識がなくなり、死んだものかと思ったのだが……。気がついたらここにいた。目の前にはあの、白髪の……。あ〜。』

 

『アリシアだ。』

 

『アリシアか。『アリシア』がいてな。情報で知っていた『時の巫女』様にそっくりだから勘違いをした。』

 

『そっくり?その、『時の巫女』とやらを見たことがあるのか?』

 

『あぁ、いや、姿を知っているやつから聞いたのだ。白い髪に赤い目。我らのような醜い見た目をしているからすぐわかるだろうとな。』

 

ん?"醜い"?アリシアか?いや、そんなはずはない。

 

『醜いって、『時の巫女』とやらが?そんなはずはないだろう。アリシアに似てるんだろう?』

 

ベルハルザは是と返す。アリシアは醜くない。それどころか今まで見た中でも最高の美人さんだ。

 

『何言っているんだ!アリシア、かわいいだろう!目に入れても痛くないぞ!』

 

「お、おい、カルロ。どうした。いきなりアリシアちゃんは可愛いとかかわいくないとか、そんなに仲良くなったのか?」

 

『こいつ!こいつがアリシアの事醜いって言いましたよ!あんな可愛くて努力できる子なんていないってのに!』

 

「……。覚えがあるぞ。古代アポーマーの美醜感覚は今と逆だったっていう話がある。」  

 

逆…?と俺が返すとアベーラさんは頷く。

 

「古代アポーマー達は『死骸芸術』というのを行っていたがそんなものを作るなんて現代人には無理だ。

倫理とかどうとかじゃなく、作っている間も後も、腐臭が鼻について仕方なかっただろうし、作るものも豚や魚など見た目的に好まれない生物ばかりだ。

それに、アポーマー時代の石像を見てみると俺が見た限りだとほぼ全ての像の顔が醜い。

像で後世に残そうとするなら、自分の顔くらいかっこよく残ろうと思うだろう。」

 

俺は頷く。

 

「と、考えるとそもそもアポーマーの美醜感覚は、我々とはかけ離れているものとなる。

今の美しいものは彼らにしてみれば醜い。今のいい匂いというのは臭い匂いと言うみたいにな。

ならコイツが言ったらしい"醜い"って言うことも分かる。コイツラからしたらアリシアちゃんは醜いんだろうよ。損してるよな〜。」

 

 

アベーラさんは頭を掻きながら説明してくれた。

正直伝承を読んでいても不自然なところはあるのだ。

 

まずベルハルザの白い髪、青い目というのはスノーエルフの特徴だ。

それに単身でアルバスに突っ込むのもおかしい。  

 

自殺行為に等しいからだ。

 

 

 

……こいつの話を否定できないぞ。

 

俺達が考えていると声が響く。

 

「カルロ〜!アーベラ!ご飯〜!」

 

アリシアだ。どうやら俺たち三人分の食事を持ってきてくれたらしい。

 

「ありがとな。アリシアちゃん。後、俺の名前はアベーラたぞ。」

 

「うん!アーベラ!」

 

「直ってないし…。まあいいか。相変わらず可愛いなぁ!」

 

そう言いながらアベーラさんはアリシアの頭をワシャワシャ撫でる。

アリシアも嬉しそうだ。

 

 

その光景を見ながら小さくベルハルザに話しかける。

 

『まあ、飯にしよう。食えるか?』

 

『……あぁ。』

 

『お前の話は本当かどうかは置いとこう。お前が本当に『ベルハルザ』なら聞きたいことも山ほどあるしな。』

 

そうして、奇妙な昼食が始まったのだ。

 

 

 

 

 

『なあ。』

ベルハルザが言う。

 

『そっちの…アリシアに聞きたいことがあるんだが。』

 

『アリシアに…?…アリシア。』

 

『ん〜?な〜に〜?』

俺がベルハルザに促す。ここからは俺の通訳で話していこう。

 

『お前さっき聞いたところによると、木の上に引っかかっていたんだよな?その前はどこにいたんだ?』

 

『うーん。分かんない!』

 

『わかんないか。……。じゃあ、何か…白い何かを見なかったか?』

 

『ん〜……。あ!モフモフ!白いモフモフがいたよ!でも…う〜んわかんないや。』

 

『そうか。…ありがとう。お前も通訳ご苦労。』

 

『ご苦労って俺にもありがとうって言えよ。』

 

ベルハルザは何も言わない。なにか言い返そうとすると淡々とベルハルザが話しだした。

 

『多分だが、アリシアは俺たちが救いたかった『時の巫女』様だ。ここに居るのも俺の仲間の一人である『アイーシャ』のお陰だろう。』

 

『『アイーシャ』?』

 

『『アイーシャ』は『エーカット』だ。白い猫で、我々の中で最も賢い、反乱軍一の知恵者だった。『幻術魔法』の他にも『物質魔法』『攻撃魔法』など、多種多様な魔法使えた賢者でもある。

…そして我と一緒に『時の巫女』様を救出しに行ったのだ。あいつならばやられるだけではない。

最後の力でアリシアの場所を割り出し、時間を操ってもおかしくない。』

 

『お前、自分で最初に言っていただろう。『時間渡航』はスノーエルフの王族の中でも極一部しか使えないって。』

 

『確かに行ったが稀に使えるということは、王族皆に使える素養はあるということだ。使えるか使えないかは、素養が高いか低いかの違いしかない。

ならば『アイーシャ』はアリシアの素養を引き出し千年後。現世までタイムスリップさせたのではないか。』

 

…確かに。俺とアリシアが出会ったとき、アリシアは『透明化』の魔法を掛けられていた。誰かから隠すように。

 

そして、木に引っ掛かり助けを呼んでいた。

あれはタイムスリップの際場所がそのまま作用され空中に投げ出されたからではないか。

 

 

夢の件といい本当になにかとんでもないことに巻き込まれたことを理解した。

 

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