冒険者の街、オラリオ。
かつて、数多の怪物達が生まれる場所である大穴のあった彼の地は、今や世界の中心と呼ばれていた。
かつての大穴はダンジョンと呼ばれ、地下深く広がる迷宮は多くの人間達を惹きつける。
富、名声、力…人それぞれに抱える夢や欲は違えど、皆その街へ集まる。
彼らは地上に娯楽を求めて降り立った神々と眷族の契りを交わし恩恵を授かり、そしてダンジョンへと挑む。
そして、そんなオラリオへと夢と期待に胸を膨らませる少年が訪れたのと、時を同じくして…。
1人の青年が、オラリオへと続く細い街道を進む。
オラリオ周辺では見ない、極東の和装に身を包み、旅の荷物を背負う彼は長閑な日差しの中、風に揺れる木の葉の音を聴きながら進めていた足を、不意に停める。
さぁさぁ、と木の葉が風に揺れる音に紛れ耳に届いた何かに揺らされたガサガサという異音と同時に、青年の後ろに続く街道の傍の茂みから一つの陰が飛び出した。
姿形は人に酷似しながらも、その手足の爪は鋭く、首から上は犬の其れ。
茂みから飛び出して来た下手人…コボルトと世で呼ばれるそのモンスターは、その身を立ち止まった青年へとその身を躍らせる。
一般的な冒険者であれば、駆け出しのレベル1でも倒せる相手ではあるが、恩恵を持たない只人には十分脅威たり得る身体能力と爪牙を以てすれば青年の喉笛を噛み千切るなど造作も無い…筈だった。
コボルトに気付き、振り返った青年が腰に差した杖のようなものを掴むと、一気に引き抜き2、3と振るう。
銀閃が疾り、再び腰へと腕を戻した直後、コボルトの体に異変が起きた。
伸ばした右前腕と首、胴体の右肩から腰にかけて、それぞれに一筋の線が走り…身体がずれる。
視点が急に下へと落ち、意識が暗転する中で漸く…コボルトは、自身が斬られた事に気づいた。
「たく…どんな所にもモンスターってのは居やがるな」
首と腕が胴体と泣き別れし、塵となって消えるコボルトの姿を横目に青年は嘆息する。
遠路はるばるオラリオへと向かう最中、旅の道中は決して楽なものではなかった。
今のようにモンスターが現れる事もあれば、盗賊や追い剥ぎ紛いのチンピラに絡まれた事も少なくない。
だが、それらは青年にとってはオラリオに挑む前の小手調べにもならなかった。
「地上にいるやつらは
そう呟き、これから向かう場所に居るであろうまだ見ぬ強者を想像して口元を吊り上げる。
兎を思わせる少年は、ダンジョンに出会いを求め
そして、流浪の青年は
ダンジョンに剣の果てを求める