迷宮に果てを求めて   作:ジャッキー007

8 / 10
全話から少し期間が空いてしまいましたね

大筋のレールにどう合わせて行くか非常に悩み打っては消してを何度繰り返した事か…orz


話は変わりますが、ウマ娘1.5周年来ましたね
ソシャゲはこの時期夏イベやら周年イベが重なるからログイン忘れには注意しましょう(自戒)


謝罪と交渉

フィン・ディムナとの邂逅とオッタルとの再会から1週間が経った。

 

ベルに教えた鍛練は空気椅子から始まり、鉄棒に逆さまにぶら下がっての腹筋や身の丈程の大きさの瓶に入った水を交互に入れ替えるもの、石の塊を引きホームとバベルを往復と内容は奇抜ながらもその成果が現れていた。

 

鍛練を始める以前と比較すれば、ごく僅かではあるものの筋肉が鍛えられ、体つきも引き締まり始めた事に気づいた彼は両手を挙げて喜んだ…それに比例する様に、鍛練の負荷と辛さも増したが。

 

 

この1週間で様々な事が起きた。

リリルカ・アーデという小人族のサポーターを巡るトラブルに巻き込まれたり、ベルに魔法が発現するといった出来事があったが、フガクはそれに関わる事はしなかった。

 

オッタルからの頼みが関わっている…という訳ではない。

余計な手出しをすれば、ベルが成長するのを妨げる事に繋がると考えての事だった。

 

 

鍛練を続け、ある程度体の基礎が出来上がっていたある日…いつものようにフガクはベルとともにホームである廃教会の前に居た。

 

ヘスティアと最近新たにリリルカが見学に加わるなか、ベルと向かい合うよう立つフガクが口を開く。

 

 

「今日から武器の扱い方について教えるが…クラネル、お前の得物はナイフだったな?」

 

「はい、冒険者になった日からずっと使ってますし…怪物祭の日に神様がくれたのもそうです」

 

フガクの言葉にベルは、腰に差した黒いナイフ…ヘスティア・ナイフを撫でる。

それを一瞥すると、フガクは懐から一振りのナイフを取り出した。

 

「武器を扱う上で必要なのは、特徴を把握しておく事だ。ナイフの特徴と言えば、何がある?」

 

「特徴…ですか?えっと…短くて、軽い?」

 

急な問いかけに驚くも、ベルはフガクの手の中にあるナイフを見ながら真っ先に思い浮かんだ特徴を口にする。

その言葉に頷くと、フガクは言葉を続けた。

 

「その通り、ナイフは他の得物と違って短く軽い。それは長所ではあるが、同時に短所でもある…その理由はなんだ?」

 

「う〜ん…」

 

「…アーデは分かるか?」

 

「…間合いが短い事と、攻撃の軽さ…でしょうか?」

 

ナイフを使ってはいるものの、そこまで考えていなかったのかベルが唸るなか、フガクは徐に見学していたリリルカへと質問の先を変えると、少し考えたのちフガクの持つナイフを見ながら答えた。

 

 

「その通り。剣より刃渡りは短く、槍より柄は短い…つまりは、間合いが腕よりほんの少し先しか無いって事だな。更に言えば、得物が軽い分攻撃は軽くなる」

 

「…そうすると、武器を変えた方が良いんでしょうか?」

 

 

リリルカとフガクの会話を聞き、ベルは成る程と頷くのと同時に、武器の見直しをした方が良いのではないかと不安を口にするが、フガクはそれを否定した。

 

「何もナイフが悪いって話じゃない。確かに、間合いは短く攻撃は軽くなるが…それは言い換えれば、小回りが利くし嵩張らないって事だ」

 

「他の得物と違ってナイフなら本命の他にももう何本か隠し持つ事だって出来るし、見方と使い方を変えさえすりゃあ化けるぞ」

 

フガクの口から語られる内容は、冒険者となって日の浅いベルや神であるが故ダンジョンに入れないヘスティアのみならず、サポーターとしてこれまで多くの冒険者を見てきたリリルカも驚くものだった。

 

剣や槍と言った間合いの取れ、攻撃力にも優れた武器を選びがちだが、だからこその利点があると語るフガクは、更に言葉を続ける。

 

「ナイフを使う以上、速さと手数を活かした戦い方が基本になるだろうが、何もそれだけがナイフの戦い方じゃない…間合いの外に居る敵に攻撃するなら、どうする?」

 

「どうするって…」

 

「近づかないでナイフで攻撃なんて出来るのかい?」

 

フガクの問いかけにベル達は顔を見合わせるが、接近戦というイメージしかない為か答えが出ず、答えを求めるようにフガクを見た。

 

 

「手に持って振り回すだけが攻撃の全てじゃない。例えば…」

 

ベル達の姿に小さく溜息をついたフガクは、手にしていたナイフを握ると、廃教会の横に生えていた木に向けて投げた。

 

回転しながら真っ直ぐ進み、木の幹に刺さったナイフと、フガクの姿をベルは交互に見る。

 

「こうして投げれば、間合いの外に居る敵に攻撃出来る。相手の意表を突くことにも繋がるから、死角に入って隠し持ってる一本で攻撃するも良し、殴るも良しだ。それ以外で言うなら、間合いを伸ばせば良い」

 

「間合いを、伸ばす…?」

 

投げるという行為が思い至らなかったベル達は目から鱗といった表情だが、まだ続くフガクの言葉に耳を傾ける。

 

「あぁ。それには、コイツを使うがな」

 

そう言ってフガクは、足元に置いていた袋から4本の短い鉄の棒と長さの異なる2本の縄を取り出した。

一見すればそれぞれ30C程度の棒に見えるが、よく観察すると両端の径が微妙に違い、片側の端には幾重もの筋が刻み込まれ、もう片側は窪んでいる奇妙な形をしていた。

 

「殤様、それは?」

 

「ゴブニュって鍛治神のとこの職人に作ってもらった。こうして組み合わせれば…」

 

リリルカの問いに答えながらフガクは棒を2本手に取り、細く筋の入った片側をもう1本の窪みに当てがい回すと、径の細い棒の頭が窪みへ入っていき…2本だった棒は、60Cの棒へと姿を変えた。

それをあと2回繰り返せば、30C程度だった棒は、120Cの長さになる。

 

驚く3人を他所に、フガクは作業を続けていく。

先程ナイフを投げた木に近づき、幹に刺さったナイフを抜くと組み立てた鉄の棒の先端に短い縄で括りつけた。

 

「即席の槍の完成だ。何なら木の棒でも同じようにも出来るが強度の問題もあるから使うなら硬い棒が良い。他にも…」

 

そうして出来上がった簡素な槍を見せると、フガクは棒の先端に結び付けていたナイフを取り外し、その柄に長い縄の先端を結び、余った部分を左腕に巻き付けて柄を右手に持った。

 

「こうすりゃ手に持って攻撃する事も出来るし、間合いが離れれば投げたり縄を振り回して遠くからも攻撃が出来る…コツがいるから練習が必要になってくるがな」

 

自分達の思いつかなかったナイフの活用方法を実演してみせるフガクにベル達3人は目を丸くするばかりだが、同時に学ぶこともまた多かった。

 

「今教えてきたのは応用だ。まずはひたすら基本の戦い方を覚えていって、それからだな…しかし…」

 

 

そう言葉を切ると、フガクは考える。

あの夜、オッタルには体の鍛え方と武器の扱い方だけを教えるとは言ったものの、何処までが許容範囲なのか…その線引きをどうするかと頭を悩ませる。

 

そんな時であった。

 

 

 

「ヘスティア・ファミリアのホームは此処で合っているか?」

 

自分達とは違う女性の声に4人が視線を動かすと、そこには緑色の髪のエルフともう1人…ベルの思い人であるアイズの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「突然の来訪ですまない、私はリヴェリア・リヨス・アールヴ。ロキ・ファミリアの副団長を務めている。この子はアイズ・ヴァレンシュタイン、うちの団員だ」

 

突然に訪れた来客に指導を中断し、ホームに入ったベル達は、その素性を知っているが故に困惑を隠せないでいた。

 

オラリオを代表するファミリアの1つ、誰もが知るロキ・ファミリアの幹部が態々零細ファミリアのホームに訪れた事にベルはガチガチに緊張し、リリルカは目的が読めず訝しむ。

ヘスティアに至ってはアイズの事を警戒するように見るだけで、真面に会話が出来そうなのはフガクしか居なかった。

 

「…はぁ。で、どういった用件で?」

 

「先日、5階層にミノタウロスが逃げ、そちらの団員を危ない目に遭わせてしまった事への謝罪をせねばと思って来た次第だ」

 

「団長のヤツは?」

 

「生憎仕事で手が離せない為、副団長の私と当事者のアイズが来る事になった」

 

溜息混じりに話を切り出したフガクは、リヴェリア達の来訪の理由と、フィンが来ていない事を問うと、リヴェリアは予め用意していたようにつらつらと答えていく。

その様子を見てリリルカは納得した様子を見せるも、残る2人は未だ表情を変えない。

 

「なるほどね…そちらとしては?間に合わなけりゃ死んでた可能性もあった事に対して謝ってはい終わり、とは言うまい?」

 

「殤さん、僕は…」

 

「何かしらの形で誠意ってもんを見せてくれねぇとな」

 

 

以前、ヘスティアからベルがミノタウロスに襲われた事を聞いていたフガクはリヴェリアを一瞥する。

ベルは気にしていないといった様子を見せるが、それを無視して言葉を続ける。

 

「コイツが身の丈に合わない階層に降りて、そこで死んだんだったら実力を見誤った自業自得だ。だがな…話を聞いたら、襲われたのは5階層…まだ上層って言うじゃねぇか」

 

「つまり、我々に賠償を求めると?」

 

 

フガクの言葉にリヴェリアは眉根を顰める。

だが、元を辿ればロキ・ファミリアがミノタウロスを取り逃した事が発端であるため、こうなる事も少なからず考えてはいた。

 

「…お前達の要求は金か?」

 

「食うに困っている訳じゃねぇし、強請をするつもりはねぇ。こっちからの要求はただ一つ」

 

失望したといった表情を浮かべたリヴェリアを見据えるフガクが言葉を切ると、その場を静寂が包み込む。

ヘスティア達が固唾を呑み、次の言葉を待つなか、フガクは緊張した面持ちで自分を見るベルを指差した。

 

 

「コイツに戦い方を仕込んじゃくれねぇか?」

 

 

 

 

 

 

 

「殤さん、いったい何を?!」

 

「そうだよ!よりにもよってロキの所の子じゃなくても、君が教えたら良いじゃないか!」

 

リヴェリア達に要求した内容を聞いたベルは驚きを隠せず、ヘスティアは不満を隠そうともせずにフガクに詰め寄った。

そんな2人を他所に、リヴェリアは訝しむ様子を見せて口を開く。

 

「戦い方ならば、お前が教えれば良いのではないのか?先程も、ナイフの扱いを教えていただろう」

 

「生憎、俺とコイツじゃ戦い方は全く違うからな。体の鍛え方や得物の扱いは教えられても、速さを活かす戦い方なんて出来ねぇよ」

 

リヴェリアの言葉に軽く溜息を吐くと、フガクはベルを一瞥して首を振った。

それを見て、少し考える素振りを見せた後、リヴェリアは改めて口を開いた。

 

「…成る程、そちらの要求を飲もう。幸い、速さを活かした戦い方を得意とする者は多い…但し、近いうち我々は遠征に向かう。それまでの間で良いか?」

 

「あぁ、それで構わない。誰が相手をするかはそっちに任せる」

 

フガクの言葉を聞いたリヴェリアは、アイズを伴ってホームから出て行く。

それを見送るや、ベルとヘスティアを見てフガクは再び溜息を吐いた。

 

「ヘスティアにゃ気に入らない話かもしれんがな、俺だけじゃ教えるのにも限界がある。だったら、他の奴に教えを請う他ないだろう?」

 

「…確かに、殤君にばかり負担を強いてきたからね…分かったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、ベル・クラネルはロキ・ファミリアが遠征に向かう迄の間、戦い方を教えてもらう事となった。

ちなみに…その相手としてアイズ・ヴァレンシュタインが立候補し担当する事を知り、嫉妬に駆られる事となったのは言うまでもない。

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