南雲ハジメはバリアスーツと共に   作:ウエストモール

14 / 37
今年初投稿です!

今回はクラスメイトsideの話になります。

※光輝について軽めなアンチ要素あり


クラスメイトside1

 ベヒモスとの死闘から生還したクラスメイト達は主に3つの道に別れた。

 

 1つ、ハジメの死がトラウマとなり戦いを拒否する者達。2つ、愛ちゃん護衛隊として愛子と共に各地を巡る者達、3つ、光輝を始めとする打倒ベヒモスを目指す者達。

 

 なお、あの時のこと・・・ハジメが消える原因となった魔法の“誤爆”についての話をする者は1人もいない。何故なら、あの時は大量の魔法が一斉に放たれており、もしも自分の魔法が誤爆していたかと思うと、犯人捜しなどできないからだ。

 

 メルド団長が調査を行おうとするも、教会から生徒達への詮索を禁止されたため、全ては有耶無耶に終わってしまった。

 

 また、あの事態を招いた元凶である檜山には批判が殺到した。対する檜山の行動は土下座の一択。ちょうど光輝の目の前で土下座したこともあり、光輝がクラスメイト達を宥めたため、罪を問われることは無かった。無論、彼に対する信用は下がったが。

 

 それはさておき、ベヒモス打倒を目指す者達は、これまで以上に訓練に励んでいた。光輝達勇者パーティーと小悪党組、永山という大柄な柔道部の男子が率いる男女5人で構成されるパーティーがそれに該当する。

 

 打倒ベヒモスを最も強く掲げていたのは、リーダーであり勇者である天之河光輝だ。彼は、自分達有志がベヒモスを撃破することで、戦意を消失したクラスメイト達が再び立ち上がることを期待していた。

 

 ハジメの消失は、クラスメイト達に大きな影響を与えたといってもいいだろう。無論、ハジメのことを想っている白崎香織にも…

 

 

 

 

 

「ハジメ君は、確かにここに来てた…」

 

 目を覚ました翌日、香織はハジメが現れたことは夢ではなかったと再確認していた。左手の薬指には彼から贈られた指輪が着いており、彼女にはそれに触れている。

 

「あれは、夢じゃない…」

 

 指輪の存在こそ、夢ではなかったことの証である。そして、彼女はあの時のことを思い起こす。

 

ハジメの手を握った感触

 

強引な口付けの味

 

ハジメの匂い

 

 その全てを覚えている香織の体。ハジメに直接触れた彼女は、あの出来事は夢ではなかったのだと、尚更確信した。

 

「あれ?」

 

 気付けば、香織はハジメの使っていた部屋に来ていた。どうやら、意識せずにハジメの部屋に来てしまったらしい。それだけ香織はハジメのことを想っているのだ。

 

 香織は部屋のベッドに近付くと、その上にあったものを手に取る。それは、ハジメの制服だった。これは、ハジメの忘れ物である。

 

「これってハジメ君の…」

 

 そして、制服に顔を埋めた香織はクンカクンカと匂いを嗅ぎ、隅々まで吸い尽くす。それは、1分程続いた。

 

(ハジメニウム摂取完了!これで生きていける!!)

 

 ハジメニウムなどという物質はこの世に存在しないし、香織が考えた概念に過ぎない。だが、香織は確かにそれを摂取して精神的に回復したのだ。

 

「ハジメ君…私、これまで以上に訓練に励むよ…ハジメ君と再会したとき、あなたの隣にいても見劣りしないために…」

 

 香織は決意を固め、ハジメへの思いを胸に再び立ち上がった。

 

 その日以降、王宮専属の医師から安静にしているように言われながらも訓練に参加し、誰よりも訓練に励む香織の姿が目撃されたという。

 

 

 

 

 

 ハジメへの想いを胸に訓練に励む香織を見て、激情に駆られる者がいた。

 

(何故だぁ!!どうして香織は俺のことを見てくれない!?)

 

 それは、勇者の天之河光輝であった。

 

(南雲はもういない!だから、香織は南雲に囚われる必要は無いんだ!)

 

 ハジメが消えていた10年間、香織の近くにいたのは光輝だった。しかし、ハジメが帰って来てから香織は完全にハジメのことしか見なくなった。それを、光輝は香織をハジメに奪われたのだと認識していた。

 

 光輝は再びハジメが消えたことで香織が再び自分のことを見てくれるのではないかと期待していた。だが、見ての通り香織はハジメのことしか考えていない。

 

 光輝は大きな勘違いをしていた。あの10年間、香織は光輝のことを一切見ておらず、ハジメのことしか想っていなかった。香織はハジメによって奪われたのではなく、最初からハジメのものだったのだ。

 

(香織は南雲の呪縛に囚われている!香織、絶対に君を解放する!そして、必ず俺のものにしてみせる!)

 

 相手の事情を一切考慮しない、光輝の自分勝手な正義感。香織が絡んでいることもあって冷静な判断を欠いた彼は暴走特急の如く突き進み、とある騒動を起こす。

 

 それが起こったのは、訓練を始めてから数日後のことだ。

 

 ある日、訓練場の1つに後衛を担当する生徒達が集まって訓練していた。皆、魔法に高い適性がある者であり、配置されている的に向けて火炎弾や風刃といった魔法を放っている。その中には、もちろん香織の姿もあった。

 

「聖なる弓よ、邪悪なる者を撃ち抜き、光と帰せ──“聖弓”」

 

 杖を弓に見立てて左手で構え、詠唱しながら右手を後ろに引いていく。それに伴って杖の中程に光が集束し、極太の矢の形を成す。そして、放たれた光の矢は射線上にあった複数枚の的を射貫いた。

 

 これは、香織が訓練に励む中で作ったオリジナル光属性魔法、“聖弓”である。貫通力に優れた攻撃魔法であり、彼女が“治癒師”の天職の都合で主に回復・支援魔法を使用していることを考えると、彼女の戦う覚悟を垣間見ることができるだろう。

 

「カオリン、凄く頑張ってるよね!オリジナルの魔法を作るなんて、鈴もびっくりだよ!」

 

 光の矢を放つのを見守っていたクラスメイトの1人が、香織に話しかけてきた。谷口鈴、それが彼女の名だ。身長142㎝というクラスの中で最も低身長な彼女であるが、その小さな体躯には無尽蔵の元気が詰め込まれており、短いツインテールが特徴的だ。ピョンピョンと跳ねる姿はウサギのように愛らしく、マスコット的な存在である。

 

「でもね、まだまだ努力不足だと思ってるの。この魔法も安定して撃てるわけじゃないし、ハジメ君に見せられるレベルに達してないから…」

 

「そんなことないよ!それに、光の矢を放つなんて素敵な魔法だと思う!ねえ、エリリンもそう思うでしょ?」

 

 鈴は急に話を隣にいた眼鏡の女子生徒に振った。

 

「うん、私も素敵だと思うよ」

 

 眼鏡を掛けている彼女の名は中村恵理。黒髪をナチュラルボブにした美人だ。大人しく温和な性格であり、基本的に一歩引いて全体を俯瞰している人間だ。また、本が好きな彼女は図書委員をしていた。

 

 谷口鈴と中村恵理は、香織も所属する勇者パーティの一員であると同時に、香織が高校生になってから最初に親しくなった友人である。

 

「そういえば最近、香織ちゃんが武器の扱いを学んでるって耳にしたけど、それって本当なの?」

 

 恵理が香織に聞く。

 

「本当だよ。自分自身も強くなってハジメ君に頼り過ぎないようにしたいからね。直接的な戦いは苦手だけど、ハジメ君のことを想うと勇気が出るんだ」

 

 香織はメルド団長に頼み込み、武器の扱いを学ばせてもらっていた。彼女が特に学んでいるのは、長物の扱いだ。香織は常に魔法の行使を補助する長い杖を所持しており、長い武器の方が馴染むだろうという団長の判断である。

 

「愛の力ってやつだね!私の場合は、カオリンとエリリンのことを想うと勇気が出るよ!」

 

「鈴ちゃん…」

 

「て、照れるなあ…」

 

 香織と恵理は口々にそう言いながら鈴の頭を撫でる。

 

「香織ちゃん、あの夢が正夢になるといいね」

 

 鈴の頭を撫でている状態のまま、恵理が言う。

 

「うん。私は信じてるよ、ハジメ君にまた会えるって」

 

 香織は、ハジメが現れた出来事を“夢”としてクラスメイトに話していた。恵理と鈴、そして雫といった香織の友人達はそれを一笑に付すようなことはせず、ハジメとの再会を願う香織を応援する立場にあった。

 

 後衛の女子3人がイチャイチャする中、訓練場に乱入者が現れた。

 

「香織!香織はいるか?!」

 

 それは、勇者の天之河光輝だった。

 

「光輝君、どうしたの?」

 

 香織が問いかけると、光輝は彼女に近付いて開口一番こう言った。

 

「香織、君の優しいところは好きだ」

 

「「「え?」」」

 

 突拍子の無い発言に、香織達は思わず声が出てしまう。

 

「でも、南雲の死に、いつまでも囚われてちゃいけない!南雲のことは忘れるんだ!」

 

「は?」

 

 香織は困惑する。

 

「香織は南雲の呪縛に囚われている!南雲に関するものは全て捨てるんだ!そうすれば、君は苦しみから解放される!特に、その指輪は捨てるべきだ!」

 

 そこに、クラスを纏め上げるカリスマのある光輝はいない。いたのは、1人の女に執着する小物と化した光輝のみだ。そんな光輝に対し、周囲のクラスメイト達から冷たい視線が突き刺さる。

 

「光輝君、どうしてそんなことを言うの?」

 

 ハジメに関する物など、ハジメを想っている香織に捨てられるはずがない。

 

「酷いかもしれないが、これは君を救うためなんだ。大丈夫、俺が傍にいる。俺は死んだりしないし、もう二度と誰も死なせはしない」

 

 そのイケメンフェイスで口説くようなセリフを言い連ねる光輝。しかし、光輝を男として見ていない香織には響かない。

 

「私は、光輝君のことが信用できない」

 

「俺を信じて欲しい。俺は南雲のようなヘマはしないし、ベヒモスだってきっと倒してみせる!」

 

 その時、香織の中で何かが切れた。

 

「ハジメ君はヘマなんてしてないよ!そもそも、あの時に光輝君が意地を張ってベヒモスに挑まなければ、こんなことにはならなかったのに!」

 

 クラスの女神と呼ばれる香織は、滅多に怒らない。また、今言ったような光輝の失態について批判もしていなかった。しかし、彼の失言が怒りの導火線に火を付けた。

 

 杖を握る手をワナワナと震わせながら、香織は光輝に近付いていく。そして、空いている片手を彼の頬に向けて振り抜いた。

 

 パンッ!という乾いた音が訓練場に響く。それは、怒りのあまり香織が光輝をビンタした音。

 

「香織…!?」

 

 光輝はヒリヒリする頬を手で押さえ、目を見開いて香織を見る。

 

「ごめん、光輝君。どうしても我慢できなくて……光輝君が私のことを心配して言ってくれたのは分かったけど、私にも譲れないものがあるの……大丈夫、私は勇者パーティーを抜けるようなことはしないから、安心シテ…」

 

 やり過ぎたと思ったのか、謝罪する香織。そんな香織は女神の如き微笑を浮かべているが、その目はハイライトが消えており、目だけ笑っていない。それどころか、その背後に般若の幻影が浮かんでいた。

 

「あ…あぁ…その、すまなかった…!」

 

 光輝は初めて香織に恐怖を覚え、思わず少し後ずさりする。何とか謝罪の言葉を捻りだした後、逃げるようにして訓練場から去った。

 

「ねえ、エリリン。い、今の見た?」

 

「うん、見た…まるで、般若みたいなス〇ンドが浮かんでた…」

 

 ス〇ンド擬き…もとい般若の姿はこの場の全員が見ていた。そして、香織を怒らせたらヤバいという認識が共有された。

 





八重樫さんが空気になってるというか、そもそも出てない。次のクラスメイトsideで出すしかないな。坂上?知らない子ですね

その…勇者のアンチを書くのが一番大変です…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。