王国側にオリキャラを出すことにしました。
ユエからの情報収集も兼ねて、ここで小休止を挟むことにした。壁に穴を開けて小部屋を作り、数日ぶりにバリアスーツを脱いだ。
バリアスーツの下に着ていたのは、ゼーベスで着ていた私服だ。宇宙戦闘機のパイロットが着ている緑色のパイロットスーツ、その上に羽織っている銀色のジャケット、ジェットブーツで構成される。
そして、生身用の武装である光線銃を腰のホルスターに収めている。この銃にはスタンモードが存在し、非殺傷で敵を制圧することが可能だ。
「ふぅ…」
壁に背中を預けて座り、足を投げ出す。ベビーは犬のように体を丸めて横たわり、ユエは俺の側に寄ってきた。
それにしても“お父様”・・・か。ユエは実の娘でもない上に歳上、俺自身は父親になるような年齢でもない。だが、ユエにお父様と呼ばれた時、何故か激しく庇護欲を掻き立てられた。父親を名乗ってしまった以上、責任を取って父親を続行するつもりだ。
「お父様、ちょっと眠い・・・」
ユエは隣に座り込むと、俺の体にもたれかかって眠ってしまった。色々とユエから情報を得たいと考えていたが、これでは無理そうだ。
ユエが眠くなるのも分かる。何百年も身動きが取れないまま幽閉されていたところで、いきなり解放されて戦いに参加したのだから。
長らく運動をしていなかった者が、いきなり運動を始めたようなものだ。疲れるに決まっている。とりあえず、話を聞くのは起きてからにする。それまでは、今までのことを整理しておこう。
気になることと言えば、ユエを解放したときにスーツが青白く発光したことだろう。あの時ダウンロードしたシステムが関係しているのかと考えたが、AIによる分析によれば発光とは一切関係が無いことが判明した。
エーテルタンク内の魔力を使用した際の現象であるため、エーテルタンクに関連したものなのだろう。
あの発光現象の際、今まで以上に力が湧いてくる感覚を覚えた。あの瞬間、ステータスが大幅に上昇したのだろう。また、スーツ側の性能が大幅に上昇した記録も残っている。
間違いなく言えるのは、タンク内の魔力を使用した際にスーツが光り輝くことで、ステータスとスーツの性能を大幅に上昇させるということだ。
錬成で小部屋を作る際、一時的にタンク内の魔力を使用してみたが、発光現象が起きることはなく、力も湧いてこなかった。その発動には、何かしらの条件があるのかもしれない。
もう1つ気になることがある。それは、ユエの封印に関してだ。
ユエが封印されていたのは、真迷宮の第50階層である。ここまで来るためには、表向きの全100階層を突破した上、これまで以上に強力な魔獣が蠢いている50階層を突破しなければならない。
ユエのおじ様とやらが強いのであれば、100階層は余裕で突破できるだろう。もちろん、ヒュージ・バグを使った可能性もあるが。
だが、真迷宮に入るためにはエレベーターを起動させなければならず、アームキャノンを通してエネルギーを供給する必要がある。どうやって、彼は真迷宮に入ったのだろうか?
考えられる可能性は2つ。
1つは、別ルートを使って入った可能性。もう1つは、何かしらの手段でエネルギーを供給した可能性だ。
真迷宮に入った後は、ヒュージ・バグを活用して魔獣を蹴散らしながら第50階層まで降り、その際に奪ったアビリティスフィアを部屋に置いたのだろう。
それにしても、俺も眠くなってきたな。ユエもまだ寝ていることだ、俺も眠らせてもらおう。俺にくっついているユエの体温を感じつつ、俺は眠った。
「この迷宮は反逆者の1人が造ったと言われてる」
数十分後、目を覚ました俺とユエは情報交換を始めた。ユエが最初に話したのは、この迷宮に関することだった。
「反逆者?」
王国で目を通した資料の中に、迷宮を製作した者についての情報は無かった。それにしても、“反逆者”とは不穏な響きだ。
「神に挑んだ神の眷属のこと。世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」
どうやら、過去に神に反逆して世界を滅ぼそうとした7人の眷属がおり、その目論見を破られた彼らは、世界の果てに逃走したらしい。
その果てこそ、現代の七大迷宮である。その1つがオルクス大迷宮であり、最深部には反逆者の拠点があると言われている。
神に反逆する程の者達なのだから、迷宮の最深部には世界を越えるための何かがあってもおかしくはないだろう。オルクスを攻略するという目的は変わらない。
この迷宮に鳥人族が関わっているのは明らかだ。問題は、反逆者の正体が鳥人族なのか?それとも鳥人族が協力していたのか?ということだ。
ユエに聞いてみたが、彼女にも反逆者がどのような者達だったのか分からず、鳥人族のことも知らなかった。その答えは、迷宮の最深部にあるのだろう。
今度は俺が話す番だ。俺がユエに聞きたい話があるように、ユエにも俺に聞きたい話が多くあった。
何故ここにいるのか?俺は何者か?その鎧は・・・その武器は何なのか?色々と聞かれたので、一つ一つ丁寧に説明した。
鳥人族に育てられたこと、鳥人族にパワードスーツを授けられたこと、故郷に帰還したときのこと、香織のこと、異世界に召喚されたこと、鳥人族の声に導かれたこと等を話した。
「お父様、その香織って人がお父様の恋人ということは、その人は私のお母様になるの?」
「そういうことになるな。彼女はまるで女神のような人だ。きっと、ユエのことを優しく迎え入れてくれるはずだ」
「お母様・・・早く会いたい」
自分の知らない所で娘が出来てしまった香織。彼女がユエと会った時、どのような反応を見せるのだろうか?
「そういえば、お父様。お父様達は元の世界に帰っちゃうの?」
ユエに色々と説明していた時、俺は元の世界に帰る手段を探しに来たことも話していた。
「そうだな・・・俺は故郷に帰りたい。地球にも、ゼーベスにも・・・」
それを聞いた瞬間、ユエは俯いてしまった。ユエは、再び自分が孤独になることを不安に思っているのだろう。
「私のことは、置いて行っちゃうの?」
「安心しろ。ユエを置いて行ったりはしない。地球じゃ戸籍の問題もあるが、宇宙は広い。住める場所は沢山あるからな。鳥人族だって受け入れてくれるはずだ」
ユエの表情は、パッと明るくなった。
畑山愛子25歳は社会科教師である。生徒の味方になることを信条としていた彼女は、生徒達と共に異世界トータスに召喚されてしまう。
彼女が突然の非常識な出来事に混乱している間、カリスマのある男子生徒・・・天之河光輝によって物事が勝手に進んでしまい、彼女が落ち着いたときには大切な生徒達が戦争の準備を始めてしまっていた。
出来る限り生徒の近くに居ようと決心したものの、作農師という貴重な天職を持っていることに加え、生徒達からの説得を受けたことから、戦闘とは無縁な農地開発に行くことになってしまった。
生徒達を心配しながら、各地を護衛の騎士達と共に巡っていく彼女だったが、そんな彼女に気さくに話しかけてくれる1人の騎士がいた。
「はぁ…」
王宮内にて、椅子に座っていた愛子は、ため息をついていた。
王宮に戻ってきた後、彼女は生徒の1人がオルクスで亡くなったという報せを受けた。さらに、その数日後にはまた別の生徒が失踪するという事件が起こっており、彼女のメンタルはボロボロだった。
そこに、話しかけてくる騎士が1人。
「何だか浮かない顔だな、プリンセス」
愛子の目の前に立っていたのは、1人の神殿騎士。笑顔と白い歯が素敵な褐色肌のマッチョマンであり、スキンヘッドだ。纏っている雰囲気は、まさに陽気。
「アンソニーさん・・・」
彼の名はアンソニー。愛子が各地を巡る際、最初の頃から護衛してくれていた。そして、愛子のことを唯一プリンセスと呼んでいる男だ。彼の得物は両手で扱うような大剣なのだが、彼はそれを片手で軽々と扱っていた。
教会に所属する騎士にしては陽気でフレンドリーな彼は、生徒達から人気があり、アンソニーの兄貴と呼ばれている。
「事情は聞いてるぜ、プリンセス」
クラスメイトの死により、生徒達の中には戦いを拒絶する者が現れるのだが、王国と教会はそんな彼らに戦うように催促してくる。
愛子は、そんな王国と教会に激しく抗議し、自分の能力や立場を盾にすることで、生徒達が無理矢理に戦わせられることを防ぐことに成功する。
それによって愛子の人気は更に高まり、戦争はできないものの彼女の護衛をしたいという生徒達の一団が現れた。その名も、愛ちゃん護衛隊。
愛子という精神的な支えによって生徒達は元気になっていくが、2人の生徒が消えたという事実は、愛子の心に傷を残した。
「私はこれ以上生徒達を失いたくないんです。アンソニーさん、いざというときは生徒達を守ってください」
「まあ、プリンセスの頼みなら・・・もちろん、プリンセスを守ることも忘れないぜ?」
アンソニーはニカッと笑うと、その素敵な真っ白い歯を見せた。彼の笑顔は、愛子にとっての精神的な支えになっていた。
数日後、愛ちゃん護衛隊や騎士達と共に、愛子は再び農地開発へ向かうことになった。
その際、アンソニー以外に新しく加わった4人のイケメン騎士と生徒達の間に愛子を巡っていざこざがあったり、それをアンソニーが仲介するなど、色々な出来事が起こるのだが、それはまた別の話である。
ハジメの服装は、フォックスを参考にしています。アンソニーは、METROID OtherMに出てくるアンソニー・ヒッグスのそっくりさんです。