南雲ハジメはバリアスーツと共に   作:ウエストモール

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16話 オルクス最深部へ

第60階層

 

「お父様・・・ごめんなさい・・・」

 

 悔しそうな表情のユエは、ハジメに謝罪する。

 

 ユエは、とある魔獣によって人質に取られていた。それも、単なる人質ではない。ユエは頭に生やされた赤い花を通して、体のコントロールを奪われているのだ。

 

 それにより、自らの意思とは関係なくユエはハジメに攻撃することになってしまう。先ほど、ハジメはユエの放った風の刃をアームキャノンで横から殴りつけて破壊したところだった。

 

 ユエの背後に、彼女の体をコントロールしている魔獣が現れる。それは、人間の女と植物が融合したような魔獣だった。近い存在を挙げるなら、RPGに登場するようなアルラウネだろう。

 

 ハジメがアームキャノンをアルラウネ擬きに向けるのだが、すぐにユエの体が射線に入って来てしまう。逆に、ユエの放った風の刃をハジメが避けたり迎撃しようとすれば、ユエの手が彼女自身の頭に向けられるため、ハジメはスーツとエネルギーシールドを信じて体で受け止めた。

 

 何故、ユエは人質に取られてしまったのか?それは数十分前に遡る。

 

 

 

 ハジメ一向は、ラプトルのような魔獣の群れによる襲撃を何度も受けていた。

 

 襲撃を何度も退けるうちに、ラプトル達の頭にはいずれも花が生えていることに気付き、最終的にはその花を通してラプトル達はコントロールされていたことが判明する。

 

 エーテルバイザーで魔力の流れを見たことで、ラプトル達をコントロールしている本体の位置を特定。そいつが潜んでいると思われる洞窟に殴り込んだ。

 

 洞窟内では、全周から飛んでくる緑色のピンポン球のような球体による攻撃を受け、ハジメ達は背中合わせになって迎撃した。

 

 ここで、問題が起きる。飛んできた球体には、例の花を生やさせるための胞子が内包されていたのだ。

 

 迎撃によって球体が破壊された結果、狭い空間の中に胞子が充満してしまい、バリアスーツを着ていたハジメと何故か胞子が効かなかったベビーを除いたユエのみが、胞子の影響を受けてしまった。

 

 そして、今に至る。

 

 迎撃したりすれば、不死身とはいえユエを傷つける結果となってしまうため、アームキャノンは下ろされた状態だ。

 

 口だけはコントロールを奪われていなかったユエが、ハジメに向かって叫ぶ。

 

「お父様!私はいいから・・・撃って!」

 

 覚悟を決めたような様子だった。だが、ユエを傷つけるなど、責任を取ってユエの父親を遂行すると決めたハジメにとって、許せない行為だ。そもそも、こんな事態になったのは自身の迂闊さのせいであると考えていた。

 

 傷付けずにユエを助ける。それが、今のハジメに課せられたミッションであった。

 

 傷付けずに助けるために要求されるのは、目にも止まらない速さの照準合わせと、精密な射撃。それにより、ユエを盾にされる前に敵を撃ち抜くのだ。

 

(大丈夫だ・・・俺ならできる)

 

「俺を信じろ、ユエ!必ず助ける・・・」

 

 ハジメは目を閉じ、深呼吸しながら精神統一を行う。その間に風の刃が次々と直撃するも、彼の精神が乱れることはない。操られている状態では威力の高い魔法を使えないことが幸いした。

 

 そして、バイザーの下でハジメの目は見開かれた。見つめる先はただ1つ、アルラウネ擬きの頭・・・

 

 下げられていたアームキャノンが敵の頭部に指向される。この間、わずか0.05秒。目にも止まらぬ速さだ。それと同時に、パワービームを撃った。

 

ピュン!

 

 洞窟に響く発砲音。直後、ドサッと何かが崩れ落ちる音が・・・

 

「え?!」

 

 その音が聞こえたのは、ユエの背後。崩れ落ちたのは、頭に風穴を開けたアルラウネ擬きだった。自分が無傷であるという事実に、ユエは驚いていた。

 

 わずか0.05秒の間に行われた早撃ちにアルラウネ擬きは反応することが出来ず、ユエを盾にする前に頭を撃ち抜かれたのだ。

 

 本体が死んだため、ユエは解放される。

 

「お父様!」

 

「ユエ!」

 

 ユエは、ハジメに一直線に飛び付く。ハジメはそんなユエを抱きしめた。

 

「私・・・お父様を傷付けた・・・」

 

「大丈夫。スーツのお陰でダメージにはなっていない。気に病むことはないさ」

 

「でも・・・お父様を攻撃した・・・」

 

 操られていたとはいえ、ユエからすれば自分がハジメに攻撃したという事実は、彼女の心に後ろめたさを残していた。

 

「結果的にユエは無傷だったのだから、何ら問題ない。本当に、ユエが傷付かなくて良かった・・・」

 

 ユエが傷付かないこと。それがハジメにとって一番重要だった。

 

「うぅ・・・お父様・・・ありがとう・・」

 

 ユエは泣き始める。ハジメはユエが泣き止むまでの間、彼女の頭を撫でながら抱きしめ続けていた。

 

 

 

 

 

 それから数日、ハジメ達はついに真迷宮の第100階層に到達した。ここが、オルクス大迷宮の最深部である。

 

 ハジメが先頭、その次はユエ、最後尾をベビーメトロイドが進む。やがて、多くの太い石材の柱が立ち並んでいる広大な空間が奥に見えてくる。その突き当たりには全長10mはある巨大な両開きの扉が存在し、美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

 そこへ向かおうとする一向。だが、突然彼らの頭上から謎のエネルギーが降り注いでくる。それが向かう先は、ベビーだった。直後、退避が間に合わなかったベビーはバリアのようなものに囚われてしまった。

 

「シールドか」

 

 スキャンバイザーによると、今のハジメの武装では破ることは出来ないらしい。どこかに制御装置があると推測されるが、どこにも見当たらない。

 

「何故ベビーだけが?」

 

「お父様、ベビーは締め出されたのかも。お父様の言う鳥人族が迷宮に関わっているなら、メトロイドのことを知っていてもおかしくない」

 

 メトロイドのエネルギー吸収能力は驚異的なものだ。仮にどんなに強力な魔獣を出したとしても、エネルギーを吸われれば一巻の終わり。メトロイドを締め出したくなる気持ちも分かる。

 

「この後、重要な戦いがありそうだ」

 

 2人は扉に更に近づくのだが、そこで異変が起こった。なんと、ハジメ達と扉の間の30m程の空間に、赤黒い光を放つ直径30mの巨大な魔法陣が出現したのだ。

 

「ベヒモスを思い出すな。まぁ、サイズは大きいが」

 

「多分、これで最後の戦い・・・お父様も一緒なら怖くない・・・」

 

 これから始まるのは、オルクス大迷宮の攻略者となるための試験。当然、現れる魔獣は今までとは桁違いの強さを誇るもの。

 

 やがて、そいつは魔法陣から現れた。

 

 体長30m、6つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の魔獣であり、その名は“ヒュドラ”といった。そして、六対の眼光がハジメ達を睨み付けた。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 その咆哮を常人が聞けば、蛇に睨まれた蛙のようになってしまうだろう。だが、2人は強力な魔獣が闊歩する大迷宮を突破してきたのだ、恐れる理由など存在しない。

 

 直後、スキャンする隙を与えずに赤頭が口を大きく開いて火炎放射してくる。迫りくる炎の壁をハジメとユエは左右に散開して回避すると、反撃を開始した。

 




メトロイドは過剰戦力なので締め出しました。
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