南雲ハジメはバリアスーツと共に   作:ウエストモール

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お待たせしました!ヒュドラ戦です!


17話 最後の試練

 

 突然、ヒュドラの赤い頭が口を開き、まるで壁のような火炎を放ってくる。ハジメとユエは左右に散開して回避し、ハジメのアームキャノンから飛んだ反撃のチャージビームが赤頭に直撃する。

 

 チャージビームは赤頭を吹き飛ばすに至る。だが、白い頭が現れて咆哮したかと思えば、白い光に包まれた赤頭が、何事もなかったかのように元の姿へ戻る。白頭は回復役であったのだ。更に、ユエの放った氷の槍が緑の頭を吹き飛ばすも、同様に回復されてしまった。

 

「ユエ、白頭を!」

 

「んっ!」

 

 ハジメが指示した直後、青い頭が現れて氷の礫を大量に吐き出してくる。回避した2人は、白頭を狙って同時攻撃を行う。

 

「“緋槍”!」

 

 チャージビームと炎の槍が白頭に向けて飛んでいく。だが、直撃する前に黄色の頭が割り込んでくる。その黄頭はコブラのように頸部を広げると輝き、攻撃を全て受け止めてしまった。

 

「なるほど、盾役か。ならば・・・!」

 

 ハジメは黄頭をロックオンし、数発のノーマルミサイルを放つ。先ほどと同じく黄頭が防いでしまうが、黄頭の視界は爆煙で覆われる。

 

 その瞬間、ハジメはスピードブースターを起動させ、高速ダッシュでヒュドラの方へと走り出す。他の頭が攻撃を仕掛けてくるが、高速ダッシュで発生したエネルギーを纏っているため、ハジメには全く効かない。

 

 そして、加速を利用して回転ジャンプを行い、視界を煙で覆われた黄頭に向かって一直線に飛ぶ。

 

「クルゥアン?!」

 

 ハジメは煙を引き裂いて黄頭の目前に現れる。突っ込んできたことに驚く黄頭だったが、直後に踏み台として利用される。

 

 黄頭を蹴って飛んだハジメは、白頭の上に着地した。流石に大切な回復役を撃てないのか、攻撃は飛んでこない。

 

「この手に限る」

 

 ハジメはアームキャノンの砲口を白頭に押し付けると、至近距離から最大チャージビームを撃ち込んで離脱する。白頭は、何が起こったのか理解する前に撃破されてしまった。

 

 普通に撃ったところで黄頭によって防がれてしまうのだから、割り込まれない程の至近距離で撃てばいい。それこそが、ハジメの考えた白頭の攻略方法だった。

 

「ユエ、一気に畳み掛けるぞ!」

 

 ハジメは、ユエと共に残った首を掃討しようとする。だが、いきなりユエの悲鳴が響き渡った。

 

「いやぁあああああ!!!」

 

「ユエ?!」

 

 何事か?と思い、急いで駆け寄ろうとするハジメ。赤頭と緑頭が火炎弾と風の刃を無数に放って妨害してくるが、センスムーブで何とか回避していく。その間も、ユエは悲鳴を上げ続けていた。

 

「そういえば・・・」

 

 ヒュドラの頭の中で、未だに動いていない頭があった。それは、黒い頭。

 

「まさか?!」

 

 黒頭がユエに何かしたのではないかと予想したハジメは、センスムーブの効果によって瞬時に最大チャージされたビームを黒頭に撃ち込む。黒頭は一撃で吹き飛び、ユエは悲鳴を止めて倒れた。

 

 だが、今度は青頭が口を大きく広げてユエを飲み込もうと迫る。

 

「まずい!」

 

 ハジメは青頭とユエの間に割って入ると、青頭の下顎を踏みつけ、左腕で上顎を持ち上げることで押さえ、口内にノーマルミサイルを叩き込む。口内で爆発したミサイルにより、青頭の肉片が飛び散った。

 

「しっかりしろ!ユエ!」

 

 ユエを抱えたハジメは柱の陰に退避すると、青ざめた表情で震えているユエを目覚めさせるために呼びかける。ユエの目は、虚ろになっていた。呼びかけ続けながら神水を飲ませていると、ようやくユエの目に光が戻る。

 

「大丈夫か?」

 

 目覚めたユエは、涙を流しながらその小さな手でハジメの手を握った。

 

「よかった・・・また見捨てられたかと・・・」

 

 ユエによると、再び見捨てられてあの部屋に封印される幻覚を見させられたらしい。

 

「ユエ、大丈夫だ。俺は決して娘を見捨てたりはしない」

 

 ハジメはユエの目を真っすぐに見つめ、ユエの両肩に手を置いて言う。

 

「お父様・・・」

 

 ユエにとって、ハジメは心の支えであった。自分に名前を付けてくれたハジメは父親のような存在であり、彼女が吸血鬼族であっても恐れることがなく、おまけに血を吸わせてくれるのだから。

 

「ユエ、必ず一緒に帰るぞ」

 

「はい、お父様」

 

 覚悟を決めた目になるユエ。ヒュドラから白頭と黒頭が消えた今、戦いにおける心配事は無いに等しい。

 

「ユエ、俺が援護するから最後は君に任せる。異論は無いな?」

 

「んっ!」

 

 そして、2人は柱の陰から飛び出すと、行動を開始する。残っている攻撃用の頭である赤頭と緑頭が再び火炎弾と風の刃を無数に飛ばしてくるが、ハジメはディフュージョン効果を付与した最大チャージビームを放つことで、拡散した衝撃波と爆発で纏めて迎撃する。

 

 その隙に、ユエは魔法を放った。

 

「“天灼”」

 

 3つの頭を囲むように現れる、6つの放電する雷球。球体同士の放電が繋がることにより、雷で構成される檻となる。そして、檻の中を電撃が埋め尽くした。

 

 雷属性の最上級魔法はその威力を発揮し、防御力の高い黄頭も含めた3つの頭を完全に消し炭としてしまった。

 

 魔力の大半を使い果たしたのか、座り込むユエ。完全にヒュドラを倒したと思ったハジメは、ヒュドラに背を向けて彼女の元へ向かおうと歩き出す。その刹那、ユエの切羽詰まった声が・・・

 

「お父様!」

 

 ハジメがユエの視線を辿ると、そこには今までいなかった7つ目の頭があり、銀色の頭だった。その口内には光がチャージされており、次の瞬間には極光が放たれた。その向かう先は、ユエだ。

 

「ユエ!危ない!」

 

 ハジメはセンスムーブの要領でジェット噴射して飛び込むと、極光の射線に割り込む。極光はその身を盾としたハジメに直撃し、ハジメは爆炎に飲み込まれてしまった。

 

「お、お父様?」

 

「・・・」

 

 煙が晴れた後、現れたのはその場に仁王立ちするハジメ。スーツの各所からはスパークと煙が出ており、ユエの呼びかけに反応しない。そして、ハジメは膝を折って前のめりに倒れてしまった。

 

「お父様!しっかりして!お父様!」

 

 魔力が枯渇してまともに動けないユエは、無理やり体に力を入れてハジメに駆け寄る。スーツの重量によって重いハジメを必死に揺するが、起きる気配はない。更にヘルメットを外そうと試みるが、全く外れない。実は、スーツの着脱は装着者の意思が無ければ不可能なのである。

 

「こうなったら・・・今度は私がお父様を守る!」

 

 ユエは、懐から光線銃を取り出す。これはハジメの所有物なのだが、ハジメは魔力切れの際の護身用としてユエに渡しており、使い方も教えていた。

 

 ユエに残されているものは、光線銃と身体強化された吸血鬼の肉体、そして固有魔法の自動再生のみである。

 

 ユエは光線銃を銀頭に発射する。放ったのは、チャージビームと同じように最大チャージされた光線だ。それは銀頭に直撃するものの、スーツの武装よりも威力が低いために傷1つ付けることは叶わなかった。

 

「効かない・・・」

 

 ヒュドラは、そんなユエに対して光弾を連射してくる。数発は光線銃で迎撃し、身体強化によって回避していくが、ついにユエは被弾する。当たったのは、肩だった。

 

「あぐっ!?」

 

 さらに、ユエが姿勢を崩したところに銀頭が極光を放つ。ユエはその場を何とか飛びのくことで躱すが、その代わりに光弾が腹部に直撃。吹き飛ばされたユエは、倒れているハジメの目前の地面に叩き付けられた。

 

「うぅ・・・うぅ・・・」

 

 呻き声を上げるユエ。銀頭はユエを見下ろすと、咆哮する。そして、極光のチャージを始めた。

 

(ごめんなさい、お父様。私、ここで死ぬみたい。でも、一緒なら死ぬのも怖くない)

 

 ユエは完全に諦め、銀頭の口内から溢れている光を見上げる。このまま発射されれば、射線上にいるユエとハジメを完全に消し飛ばすだろう。

 

 だが、次の瞬間に、青白く光り輝く人型が銀頭の前に立ち塞がっていた。その光は、ユエを解放したときのバリアスーツの輝きと同じだ。

 

「お父様!」

 

 その人型は、バリアスーツを纏ったハジメだった。

 

「すまない、遅くなった」

 

 

 

 

 

 ハジメが意識を取り戻した時、スーツのエネルギー残量が大幅に低下したことを知らせる警報が鳴り響いていた。あの一撃で相当持っていかれたようだ。

 

 痛む体に鞭打って首を動かし、前を見る。そこには、たった1人で銀頭に立ち向かうユエの姿が。その手には、ハジメの光線銃を持っていた。

 

(ユエ・・・逃げろ・・・このままでは死んでしまう・・・!)

 

 ハジメは声が出なかった。その直後、銀頭が光弾をばらまきながら極光をユエに向かって放つ。ユエは極光を回避したが、その代わりに光弾を腹部に受けて吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた。

 

「うぅ・・・うぅ・・・」

 

 多くのダメージを受けたユエは動くことが出来ず、呻き声を上げるのみだった。

 

(娘1人守れないで、何が父親だ!俺は約束した、必ず元の世界に連れて帰ると!ユエだけでなく、香織も一緒に!)

 

 やがて、銀頭は「クルゥアアン!」と勝ち誇ったように咆哮すると、極光をチャージし始める。

 

(俺は父親だ!ユエのことを絶対に守る!動いてくれ、俺の体!)

 

 その時だった。

 

 バリアスーツが青白く発光し始めると同時に、ユエを解放した時とは桁違いな力がハジメの体に湧いてきた。どうやら、タンク内の魔力が使用されたらしい。

 

(凄い力だ・・・これなら、ユエを守れる!)

 

 再び立ち上がったハジメは、極光をチャージする銀頭の前に、ユエを守るように立ち塞がる。

 

「お父様!」

 

「すまない、遅くなった」

 

 直後、銀頭から放たれた極光が直撃し、ハジメは爆煙に包まれてしまう。だが、閃光が煙を吹き飛ばし、青白く光るスーツを纏ったハジメが無傷の状態で現れた。

 

 この発光状態ではスーツのスペックが向上するのだが、それでもヒュドラの極光を受けて無傷ではいられない。何故、今は無傷で防げているのだろうか?

 

 それには、ハジメのスーツの特性が大きく関わっている。

 

 装着を維持するために装着者の強い精神力が必要になるこのスーツには、装着者の精神によってスペックが無限に上昇するという特性がある。

 

 ハジメの「ユエを守りたい」という意思がスーツに影響を与え、極光を受けても無傷でいられる程にスーツの防御力を底上げしたのだろう。

 

 そして、向上したのは防御力だけではない。攻撃力も上昇しており、多くのエネルギーが集中しているのかアームキャノンが一際輝いている。

 

 そのエネルギー量は、もはや計測不能。解放されれば、多大な破壊が撒き散らされるのだろう。

 

 ハジメは一際輝くアームキャノンを銀頭に向けると、エネルギーを圧縮すべくチャージを開始する。

 

「クルゥアアン!」

 

 銀頭はそのエネルギーが解放されるのを恐れたのか、発射を阻止するために極光を何発も撃ってくるが、ハジメは全てを無傷で耐えていた。

 

 やがて、計測不能な程のエネルギーがアームキャノンの内部で最大まで圧縮される。どこかにエネルギーを逃がさなければ、アームキャノンは吹き飛んでしまうだろう。

 

「消え失せろ!」

 

 ハジメの叫びと共に、解放されたエネルギー。それは、極太の青白い光芒となってヒュドラを飲み込んだ。

 

「俺達の勝利だ・・・」

 

 ヒュドラは塵も残さず完全に消し飛ばされた。それを確認したハジメは、突然スーツが解除されると後ろにぶっ倒れた。

 




ようやく、オルクス大迷宮の最後の戦いが終わりました。長かった・・・
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