説明書くのが苦手だな・・・
その日の夜、ハジメとユエは風呂に入っていた。風呂があるのは、エルダーバードに案内された建物の1階である。
ハジメは、風呂に1人で入る予定だった。しかし、ユエはハジメから離れたくないらしく、風呂場に突入してきた。
体を洗った後、2人は横に並んで湯船に浸かる。そのまま、2人の雑談が始まった。
「ねえ、お父様。お父様は解放者の意思を継ぐつもり?」
「鳥人族が絡んでいる以上、彼らの意思を継いで神と戦うつもりだ。だが、最優先ではない。俺が最優先とするのは、帰還する手段だ」
ハジメが最も優先しようとしたのは、帰る手段を探すことであった。
帰還する手段として最初に考えたのは、鳥人族の技術を使って世界を越えること。エルダーバード達が世界を超えてトータスにやって来たのだから、エルダーバード達は世界を越える手段を持っていたと考えるのが妥当である。
しかし、エルダーバードによると鳥人族がトータスから撤退した際、漏洩を防ぐために技術を破棄してしまったという。
だが、エルダーバードがハジメ達に耳寄りな情報を持ってきてくれた。それは、全ての神代魔法を手に入れることで神のような力の魔法を行使できるようになり、それによって世界を越えられるのではないかという情報だった。
「とりあえず、俺達は七大迷宮を攻略して全ての神代魔法を手に入れる。そして、帰還する手段が見つかり次第、ユエ達を地球に逃がす」
「待って、お父様。私も神と戦う」
「いいのか?ユエ。これは俺の戦いだ」
ハジメとしては、神との戦いにユエ達を巻き込みたくなかった。最低でも、香織とユエだけは地球に逃がすつもりだった。
「私はお父様に助けられたから、借りを返す。それに、私はお父様と一緒に帰りたい」
「そうか・・・」
ハジメは、ユエの願いを否定できなかった。
「まあ、全ての神代魔法が集まらなければ、先に進むこともままならない。どうするのかは、全て集まった時に決めよう」
「ん・・・」
現時点でやるべきことは、オルクス以外の6つの大迷宮を攻略すること。ハジメ達はその準備をするため、しばらくオルクスの隠れ家に留まることにした。
それから1ヶ月が経過した。その間、ハジメ達はエルダーバードの協力を受けながら、鳥人族が残した設備と魔法を活用して装備の開発を行っており、それと同時にバリアスーツの発光状態についての研究も進んでいた。
ちなみに、発光状態について当初から判明していたことは、エーテルタンク内の魔力を使うことで、スーツの防御力と武装の攻撃力、装着者自身のステータスが強化されるということだけだ。
まず、ハジメはスーツの発光状態のことを“ハイパーモード”と呼び、ヒュドラ戦で撃った強力なビームのことを“ハイパービーム”と呼んだ。
このハイパーモードなのだが、発動条件としてタンク内の魔力を99使うことが条件となっており、さらに感情が高ぶっていることが必要だと判明した。
実際、ユエを解放した時とヒュドラ戦の時、ハジメの感情は高ぶっていた。
さらに調査を重ねていくと、確率は極めて低いが、感情が高ぶっていなくともハイパーモードを発動できることもあり、その際はハイパーモードが25秒しか持続しなかった。
なお、感情が高ぶっている場合の発動であれば最低でも1分持続し、精神状態によっては無限に持続時間が伸びるようだった。
ハイパービームに関してだが、感情が高ぶっている際の武装がハイパービームに一本化されてしまい、発射した際には装着者とスーツに多大な負担がかかってしまう。
体とスーツに多大な負担がかかれば、戦闘を継続できなくなってしまう。敵が1人とは限らないため、それでは問題がありすぎる。加えて、発動が感情に左右されてしまうのは、武器として問題がある。
そのため、発動中に湧き出る膨大なエネルギーを制御し、体に多大な負担をかけない攻撃手段に転用した上、感情に関係なく発動できるようにする必要があった。
現時点では、ハイパービームのエネルギーをミサイルに変換したハイパーミサイルと、通常のビームウェポンに転用して放つ各種の強化ビームが構想されており、ハイパービーム程の負担は体にかからないものとしている。
ハジメは、そのための制御装置の開発を始めた。長い時間がかかりそうだが、完成すれば感情に左右されずに発動できるようになり、ハイパービーム以外の武装も柔軟に使用できるようになるだろう。
次に、ハジメの製作した装備を見ていくのだが、特にハジメが力を入れていた装備を紹介しよう。
それは、主砲を備えた4輪の装甲戦闘車両だった。デザインはハジメのスターシップを踏襲し、黄色の車体と緑色のフロントバイザーが特徴となっている。
メインの武装である360度旋回が可能な主砲はプラズマ砲になっており、現時点のハジメの武装の中では最大級の火力を誇る。また、ノーマルミサイルを撃つことも可能だ。
悪路を踏破するために4輪のタイヤは大型になっており、生成魔法によって錬成を付与しているため、悪路を整地しながら走行可能だ。また、車体下部のブースターによるホバリング能力を有している。
曲線的な車体には錬金によって用意されたアザンチウム鉱石を採用し、装甲化された車体の各所には古代鳥人族のマークや文字が刻まれている。車体表面にはエネルギーシールドが装備され、内部には自己修復装置も装備されている。
また、車体自体には“金剛”という一時的に防御力を上昇させる魔法が付与されている。金剛はサイクロプスの固有魔法なのだが、サイクロプスがハジメ達と対峙した際には金剛を使う前に瞬殺されていた。
ハジメはサイクロプスの死体を解析したことでその存在を知り、死体から複製して車体に付与することにした。使用する際には、車体に搭載したエーテルタンク内の魔力を装甲の表面に流すことによって効果を発揮する。アザンチウム鉱石の耐久性とエネルギーシールド、金剛の組み合わせは、過剰な程の防御力を生み出すだろう。
積載能力としては、操縦者1名以外に乗客8名を乗せることができるスペースが存在する。現時点では乗客がユエしかいないので、空いているスペースは荷物置場と化すだろう。
ハジメは、この装甲車をジャガーノートと名付けた。これ以外にも開発された装備は存在するが、ここでは割愛させてもらう。
そして、ハジメが製作したわけではないが、隠れ家で入手したアーティファクトが2つあった。その1つは、攻略者の証となるオルクスの指輪だ。その指輪には、扉にあったものと同じ十字に円が重った文様が刻まれている。
それを渡してくれたエルダーバードによると、その指輪に魔力を流すことで、オルクスの隠れ家に繋がる空間の穴を開くことができるらしい。隠れ家の設備が使いたい場合には、これを使うことで瞬時に戻れるはずだ。なお、隠れ家から外に戻る場合には、元居た地点に戻される仕掛けになっている。
もう1つは、“宝物庫”と呼ばれる指輪型アーティファクトだ。オスカーの遺品であるこれは、装飾である赤い宝石の部分に作られた空間に物を収納できる。
ハジメ自身はマザーから贈られた量子収納腕輪という似たようなものを持っているのだが、容量の制限がある。実際、スターシップという大きな物体をしまっているせいで、容量の大半が埋まっている。
一方、宝物庫の容量は無限である。スターシップと同じく大型の物体であるジャガーノートを収納するため、ハジメは宝物庫を使うことにした。そして、腕輪はユエに譲渡することになった。
そして、ハジメ達が地上に戻る日がやって来た。2人と1匹は、世界の真実を知ったあの部屋に来ており、地上へ転移するための魔法陣の前に立っていた。その近くには、見送りに来たエルダーバードの姿もある。
「俺の武装とユエの魔法は地上で異端となるだろう。特に、俺のバリアスーツは目立つ。そこで、本当に必要な場合を除いて人前でスーツを着ないことにした」
「ん・・・」
「ユエも、無詠唱で魔法を使ってしまえば、直接魔力操作が可能なことがバレて問題になるし、教会と全面戦争になりかねない。人前では適当でもいいから詠唱してほしい」
「ん・・・」
「ベビーは魔獣と同じ扱いを受けるだろうから、ユエのリュックの中に隠れてもらう」
皆、各国や教会に目を付けられる要素を持っていた。
「世界を敵に回すかもしれない危険な旅だ。命が1つで足りるとは思えない」
「今更・・・」
「キュッ!」
ハジメは深呼吸する。そして、バリアスーツを纏った。
「可愛い
「んっ!」
2人の覚悟は決まった。
「後継者殿。地上に出たら、ハルツィナ樹海にある亜人族の国フェアベルゲンに向かってくだされ。そこに、鳥人族の残したアイテムがあるはずです」
エルダーバードは、地上に出た後に向かう場所をハジメに示した
「亜人族・・・たしか、人間を嫌っているはずだ」
「ご安心ください。彼らの国には、解放者の1人リューティリス・ハルツィナが鳥人族と共に伝えた、“鳥人族の後継者”の予言があります。そのパワードスーツを着ていれば、あなたに敵対する可能性は低いはずです」
「分かった」
地上に出た後の行先は、フェアベルゲンに決まった。
「エルダーバード、しばらく世話になった」
「エルダーおじい様、お話楽しかった。また今度お話したい」
ハジメとユエはエルダーバードに礼を言う。
「こちらこそです、ユエ殿。あなたとのお話は楽しいものでした。そして、後継者殿。我が友オスカー達の意志を継いでくださり、感謝します」
そして、ハジメとユエ、ベビーが魔法陣の中央に入る。
「エルダーバード、必要なものがあったら再びここに戻ってくるかもしれない。その時は、また世話になる」
「ええ、私はいつでもお待ちしております」
エルダーバードは、胸に左手を当ててお辞儀をする。そして、魔法陣が起動してハジメ達は光と共に転移した。
これで1章は完結です。これ以降は投稿の速度が遅くなるかも。