原作よりも残念ウサギの要素が減ってる気がする
外では魔獣に襲われる危険性がある為、ハジメはシアをジャガーノートの車内に収容して話を聞くことにした。右側にあるユエの席の向かい側に席が増設され、そこにシアは座る。
シアはウサミミと少し青みがかったロングの白髪が特徴的な少女なのだが、それ以上に存在感があるものを持っていた。それは、彼女が動く度に揺れる2つの双丘。そう、シアは巨乳の持ち主だったのだ。
ユエはシアの巨乳をガン見しており、その視線には嫉妬が込められていた。自分の小さな胸と見比べているユエは、余程シアの巨乳が羨ましいのだろう。
「じゃあ、今までの経緯を聞かせてもらおうか」
そして、シアに対する事情聴取が始まる。
「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は・・・」
シアは改めて名乗ると、今までの経緯を語り始めた。それを要約するとこうだ。
【ハルツィナ樹海】に住んでいる兎人族の一派、シア達ハウリア族は数百人規模の集落を作って暮らしていた。兎人族は聴覚と隠密行動に長けた種族なのだが、その他の能力に関しては他の亜人族よりも劣っていたために見下されており、フェアベルゲンの長老会議に代表を派遣することが許されていなかった。
争いを嫌う温厚な彼らは1つの集落全体を家族として扱っており、仲間同士の絆が特に強い種族であった。また、特に女性や少年は可愛らしい容姿をしており、人間の国では愛玩奴隷として高い値が付けられる。
ある日、そんなハウリア族に異常な女の子が生まれた。本来ならば、彼らは濃紺の髪をしているのだが、その子は青みがかった白髪であった。何よりも問題だったのは、その子が亜人族にないはずの魔力を持っており、直接魔力を操る能力と、とある固有魔法を使うことができたということだ。
その女の子こそがシア・ハウリアである。つまり、シアはユエと同類であったのだ。それを聞いた瞬間、ユエはハッとした表情になった。
魔獣と同じ力を持つ子が生まれたことに、ハウリア族は困惑した。普通であれば迫害されることは間違いないのだが、彼らは仲間や家族の絆が深い種族であったためにシアを見捨てるようなことはせず、隠して育てることにした。
樹海深部のフェアベルゲンでは、発見した魔獣は速やかに殲滅しなければならないという規則があり、魔獣がどれだけ忌み嫌われているか分かるだろう。そんなフェアベルゲンにシアの存在が露見すれば、間違いなく処刑されてしまう。また、魔力を持つ他種族が樹海に侵入した際には、すぐに抹殺することが暗黙の了解となっている。
ハウリア族は16年もの間彼女を隠して育てていたのだが、つい最近になってシアの存在がフェアベルゲンに露見してしまった。そして、ハウリア族は全員で樹海から脱出した。
行く先の無い彼らが目指したのは、北の山脈地帯。未開地なのだが、山の幸があれば生きていけると彼らは考えた。人間に捕まって奴隷になるよりはマシだと思ったのだろう。しかし、運悪く彼らは人間族の国家の1つである帝国の部隊に見つかってしまった。
一個中隊と出くわしたことで、やむを得ず南に逃走するハウリア族。女子供を逃がすため、男達が勇敢にも立ち向かっていくのだが、訓練された兵士との戦力差は歴然であり、半数程が捕らわれることになった。
最終的に、魔法の使えないライセン大峡谷に逃げ込むことで帝国から逃れることができた。しかし、帝国軍は大峡谷の入口に陣を敷いてしまった。ハウリア族が大峡谷の魔獣に襲われて出てくるのを待っているのだろう。
やがて、ハウリア族は魔獣に襲われる。食われる前に帝国に投降しようとしても、魔獣に回り込まれてしまい、大峡谷の奥に逃げるしかなかった。そして、今に至るという。
「気がつけば、60人いた家族も、今は40人程しかいません。このままでは全滅です、どうか助けて下さい!」
シアは悲痛な表情で懇願した。
「状況は分かった。君の家族を助けてもいいと思っているが、条件を付けさせて欲しい」
「条件?」
「あぁ。君達を助ける代わりに、樹海の案内人として雇ってもいいだろうか?」
亜人族以外の種族は、樹海において必ず迷うと言われている。そのため、樹海を移動する際は亜人族の協力が不可欠であった。
だが、普通に考えて人間族に協力してくれる亜人族など居るはずがない。奴隷を使う手もあるだろうが、それではフェアベルゲンからの印象が悪くなるだろう。
そこで、ハジメはシアを利用することにした。彼女の家族を助ける代わりに、彼女達に樹海を案内してもらおうというのである。
あの勇者なら偽善だと批判するかもしれないが、シアとハジメ達は初対面である。無償で助ければ、後で何を要求されるのだろうか?と彼女はビクビクしながらハジメ達に同行することになってしまう。だったら、最初から対価を要求した方が彼女も安心できる。
無論、亜人族や帝国と事を構えることになる可能性もある。だが、ハジメはそれでもハウリア族を助けるつもりだった。それは何故か?
その理由は、シアが数少ないユエと同類の存在であることにある。ハジメは、ユエに自分以外の人とも人間関係を築いてほしいと考えていた。
そこに現れたのがシアであり、同じ体質を持つ彼女ならユエの友人になってくれる可能性を感じていた。ハウリア族に対する同情という面もあったが、最大の理由はユエのためであった。
「もちろん!家族を助けてもらえるなら、樹海の案内だって何でもします!」
「なら、交渉成立だな」
「あ、ありがとうございます!これで、家族を助けられますよぉ・・・」
ハジメが右手を差し出すと、シアはその手を取って感謝しながら大粒の涙をポロポロと流す。
「ちゃんと、見えた通りで良かったぁ・・・」
「〈見えた〉というのは、どういう意味だ?まさか、未来予知の類いか?」
ハジメはシアの「見えた通り」という言葉に反応し、それについてシアに聞く。鳥人族には未来予知ができる者もおり、ハジメはその類いだと予想していた。
「あ、はい。これは“未来視”という固有魔法でして、仮定した未来が見えるんです。それと・・・危険が迫っている時は勝手に発動します。危険を察知できるので、いざというときにお役に立てます!」
「やはり、その類いだったか。危険を事前に察知できるとは便利だな。奇襲対策にもなる」
シアの説明する“未来視”は、使用者の任意で発動する場合、「〇〇したらどうなるか?」という風に仮定した選択の結果としての未来を見ることができる固有魔法であり、1回の使用で魔力が枯渇してしまうらしい。また、危険が迫っている際に発動する場合は、任意の場合の1/3の魔力しか使わないらしい。
シアはこれを使った際に、ハウリア族を救うハジメの姿を見たらしい。
「待てよ・・・?危険を察知できるのなら、フェアベルゲンに露見しなかったのでは?」
ハジメの指摘がシアに突き刺さり、シアは「うっ!」と唸った。
「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて・・・」
「何に使った?」
「その・・友人の恋路が気になったもので・・・」
「何やってるんだ・・・もう少し頭を使え・・・」
ハジメはそう言うと、深いため息をつく。
「猛省しておりますぅ・・・」
「今日から君の名は残念ウサギだ。分かったか?」
「はい・・・」
意気消沈してしまうシア。しかし、そこにユエが声をかけた。
「でも、あなたは家族思い。残念なのは変わらないけど、良いウサギだと思う」
「ありがとうございます!ええと・・・」
まだハジメ達が名乗っていなかったため、シアは言葉に詰まってしまう。
「私はユエ。そして、こっちは私の義父のハジメ」
「お二人は親子なんですね。ユエさん、ハジメさん、よろしくお願いしますぅ!」
こうして、ハジメ達はハウリア族を助けに行くことになった。