スーツの装着描写ですが、光に包まれて装着する感じに変えました。
「え?ユエさんも、私と同じように直接魔力を操れたり、固有魔法が使えるんですか?」
「ん・・・」
シアの家族を助けに行くためにジャガーノートで移動中、シアはユエと後部座席で会話していたのだが、そこでユエが自身と同類の存在である事実を知った。
シアは突然、目を輝かせてユエの小さな手を両手で握りしめる。
「ユエさん!私とお友達になってくれませんか?」
「友・・達・・?私、友達というものがよく分からない・・・」
今まで、ユエには友達という存在がいなかった。一応、王族だったユエには遊び相手のような存在はいたらしいが、遊び相手として与えられた存在であったために友情が育まれることはなく、先祖返りで力に目覚めてからは疎遠になり、王位に就いてからは完全に関係が断たれた。そして、裏切った叔父によって大迷宮へ封印されてから数百年間、身動きも取れないまま孤独だった。
現在、ユエはハジメとエルダーバードの2人と人間関係を構築しているが、ハジメを父親として、エルダーを祖父的な存在として扱っており、友人と呼べる存在はいなかった。そこに現れたのが、シアである。
「友達との関わり方は、今から学べばいいんじゃないか?」
「お父様・・・」
操縦席のハジメがユエにアドバイスする。
「でしたら、私がユエさんの最初のお友達になります!」
「最初の友達・・・ん、よろしくシア」
「はい!よろしくです!」
2人は握手する。その時のユエはいつもの無表情ではなく、微笑んでいた。
「これでよし・・・」
一方、後部座席確認用のミラーを通して様子を見ていたハジメは、穏やかな表情で呟いた。
やがて、ジャガーノートはシアの家族がいる地点の付近に到達する。
「ハジメさん!あそこです!」
いつの間にか操縦席のすぐ後ろに来ていたシアは、座っているハジメの上に身を乗り出して前方を指差す。なお、ハジメの頭の上にシアの巨乳が乗っていたが、ハジメは強い精神力で興奮を抑え込んでいた。
フロントバイザー越しに見えたのは、岩場に身を潜めるハウリア族達のウサミミだった。その数から推測するに間違いなく20人はいる。40人いるとシアは言っていたため、見えない部分に残りの20人がいるのだろう。
そんなハウリア族を上空から狙っているのは、ワイバーンのように前脚と翼が一体化している飛行型の魔獣であり、体長は3~5m程であり、長い尾の先にはモーニングスターのような棘のついた膨らみが存在していた。
「ハ、ハイベリア・・・」
それを見たシアの声は震えており、怯えていることが分かる。どうやら、あの魔獣はハイベリアというらしい。そのハイベリアが6頭、ハウリア族の頭上を旋回していた。
「ハジメさん、私の家族をお願いします」
「任せろ。それと、今から見るものに驚かないでくれ」
すると、操縦席に座っているハジメの体が白い光に包まれ、肩の丸い防楯が特徴的なバリアスーツの姿に変わる。
「その鎧、まるで・・・」
シアはバリアスーツの姿に何かしらの見覚えがあるらしい。
シアの発言を聞いていたかどうかは定かではないが、ハジメはアームキャノンを操作して上部ハッチを解放し、操縦席をエレベーターのように上昇させることで車体の上に出る。そのまま立ち上がると、ハイベリアの群れの方へとアームキャノンを向けた。
ハイベリアの1頭が動いた。ハウリア族が隠れている大岩に急降下すると、縦に1回転して勢いを付け、その勢いのまま遠心力を乗せて尻尾の先端を大岩に叩き付けることで、その大岩を粉砕する。隠れていたハウリア族は悲鳴を上げて飛び出した。
ハイベリアは地面に這いつくばる獲物に対し、その大顎を開いて襲いかかる。奥の方でも同じ事態が起こっており、それも合わせて合計2体のハイベリアが地上の獲物をロックオンしていた。
ハウリア族は狙われている仲間が無残に喰われる光景を幻視した。だが、その光景が来ることはなかった。何故なら、彼らに力を貸すと約束した銀河最強クラスの戦士がここにいるのだから。
ズドン!! ズドン!!
突如として飛来した光の尾を引く2発の
「な、何が・・・」
ハウリア族の1人が呆然としながら、自分達に襲いかかろうとしていたハイベリアが一瞬で肉片となり、その肉片の雨が周囲に降り注ぐ光景を見て呟いた。
飛翔体は更に飛来する。仲間がやられたことで警戒していたハイベリアであったが、音速で突っ込んでくる飛翔体に反応できず、2体分の肉片が増えた。
そして、ハウリア族の方へと橙色の人影が走って来る。よく見ると、それは
それが仲間の命を奪った存在であると判断したのか、残り2体のハイベリアはロックオンする対象をハウリア族から鎧の人型に変え、咆哮を上げて攻撃を仕掛けようとする。
ハジメは、先に向かってきたハイベリアにグラップリングビームを打ち込んで地面に叩き付けると、その頭をチャージビームで吹き飛ばす。
もう1体の方は大岩を割る威力を誇る尻尾叩き付けを繰り出してくるが、ハジメは冷静にメレーカウンターで尻尾を上方向に弾き返した。
尻尾を弾き返された勢いで、逆方向に1回転するハイベリア。元の体勢に戻った時、その視界に映るものがあった。それは、砲口を輝かせるアームキャノン。直後、仲間と同じ末路を辿った。
「無事だったのか!シア!」
「父様!」
ハウリア族の中から歩み出てきたのは、濃紺の髪をした初老の兎人族の男性。ウサミミを生やしたおっさんという微妙な組み合わせである。シアは父親と抱きしめ合い、涙を流しながら互いの無事を喜ぶ。そして、シアは今までの出来事を父親に説明した。
ハジメはその光景を温かい目で見守っていたのだが、そこにユエがやって来る。
「お父様、私も抱き締めてもらいたい」
どうやら、シアと父親のやり取りを見て、自分も同じようにしたくなったらしい。
「しょうがないな。だが、今はスーツは脱げないぞ?それでもいいなら・・・」
いつ新手のハイベリアが来るか分からない状況で、バリアスーツを脱ぐわけにはいかなかった。
「お願い」
ハジメは姿勢を低くすると、飛び込んで来たユエを抱き締める。なお、バリアスーツを着ているので・・・
「ん・・・固い」
「まあ、そうだろうな」
2人がそんなことをしている間に、互いの話が終わったのかシアと父親がハジメの所に近付いて来た。
「ハジメ殿でよろしいか?私はカム・ハウリア、シアの父でハウリア族の族長をしております。この度は我々を救ってくださり、ありがとうございます。この恩、一族総出で返させて頂きます」
カムと名乗ったハウリア族の族長は、ハウリア族一同と共に深々と頭を下げた。
「それには及ばない。こちらとしては、樹海の案内さえしてもらえれば十分だ。しかし、亜人族は人間族に対していい感情を持っていないと聞いていたが・・・」
彼らは人間族によって仲間を失っており、更には峡谷に追い詰められている。それにも関わらず、彼らは人間族のハジメに対して一族総出で恩を返す意志を示した。生き残るにはそれしかないと割り切っている可能性もあったが、彼らからは嫌悪感のようなものが一切見えなかった。
ハジメの疑問に対して、カムは苦笑いで返した。
「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから」
それに対するハジメの感想は「警戒心が薄すぎないか?」の一点に尽きる。ハジメは彼らが一族全体を家族として扱うほど絆の深い種族であることは知っていたが、仲間が信頼しているからといって初対面の人間族を信用するとは、人がいいにも程がある。だが、簡単に信用してもらえるに越したことはない。
「聞きたいことがあるのだが、構わないか?」
「えぇ、答えられる範囲でしたら」
「〈鳥人族〉という言葉に聞き覚えはあるか?」
ハジメがそのようなことを聞いた理由、それは鳥人族という存在を亜人族がどれ程認識しているか調べるためである。エルダーが言っていた予言が失伝している可能性もあるため、フェアベルゲンとの無意味な争いを避けるためにも必要なことだ。
「鳥人族ですか。勿論、知っております。昔、フェアベルゲンの前身だった亜人族の国が魔人族に襲われた際、異世界から現れた鳥人族の戦士達の助力によって撃退に成功したという話が残っておりますので。その鳥人族も、何処かへと消えてしまったようですが」
少なくとも、鳥人族という存在は認識されているらしい。そして、鳥人族の戦士の存在から、ソウハ族以外にマオキン族もこの世界に来ていたと思われる。また、カムによるとハジメのバリアスーツと戦士の鎧は酷似しているらしい。
「そういえば、小耳に挟んだ程度の話なのですが、各種族の長老には鳥人族に関するとある予言が伝わっているそうです。内容までは分かりませんが」
「なるほど、それを聞いて安心した」
鳥人族の予言は忘れられていない。そのことに安堵するハジメであった。
「もしかして、ハジメ殿は鳥人族と関係があるのですか?鎧もよく似ていますし・・・」
「関係もなにも、俺のスーツは鳥人族が作った代物だ。それに・・・俺自身、鳥人族の遺伝子を継いでいる」
鳥人族の後継者、南雲ハジメによって救われたハウリア族。後に、彼らはハジメに忠誠を誓い、亜人族の守護者として名を馳せることとなる。
次回はVS帝国兵です。帝国兵の運命やいかに!?