「メトロイド サムス&ジョイ」を読み始めました。サムスとジョイの掛け合いが最高ですね!
ハジメ達はハウリア族を引き連れて峡谷を進んでいた。
すぐ後ろを子供を乗せたジャガーノートが速度を落とした状態で付いてきており、多くの魔獣は装甲車を恐れて接近してくることはない。散発的に接近してくる大型の魔獣がいたが、基本的に頭部へのチャージビーム1発で沈められていた。
大型の魔獣を一撃で屠るその光景を見たハウリア族達が畏敬の念をハジメに向ける一方で、車内から見ていた子供達はハジメの姿をまるでヒーローのように認識している。
ハジメは、そのような子供達に対する対応を心得ていた。以前、パイレーツから解放した惑星の多くで現地の子供達から手を振られたり、キラキラとした眼で見つめられることがよくあった。そして、ハジメの基本的な子供達への対応はサムズアップすることだった。
魔獣を屠りながらしばらく進んでいたところ、一向は遂にライセン大峡谷から出られる場所の付近に到達した。ハジメはジャガーノートを停止させると、出口の方をズームして見る。
そこには岸壁に沿う形で壁を削って作ったと思われる立派な石の階段が存在していた。その階段は、約50mで反対側に折り返す構造になっていた。そして、岸壁の向こう側には樹海が薄っすらと見えている。その樹海は、この出口から徒歩で半日の所にあるらしい。
「帝国兵はまだいるでしょうか?」
シアは、ハジメに不安そうな声で話しかける。
「どうだろうな?仮にいた時は、俺が何とかする」
「何とかするって、ハジメさんは同族と戦うつもりですか?」
「そういうことになる。そもそも、ハウリア族を守るという契約だ。それを妨害する者は、たとえ人間であろうと排除させてもらう」
ハジメ自身、ヒューマノイド系の種族と交戦したことが何回もあった。その大半は銀河を荒らすならず者であり、捕縛よりも殺傷することが多かった。
「はっはっは、ハジメ殿は契約に忠実ですな。ならば、我々も全力で樹海を案内させていただきます」
カムは朗らかに笑う。ギブ&テイクの関係に基づき、互いの義務を果たすために動く。そこに、善意も悪意もない。カムは、その関係の方が信頼できると判断していた。
「ユエ、俺は帝国の連中と
「ん・・・分かった」
すると、ハジメは高く跳躍して岸壁の向こう側に姿を消す。その数十秒後、何発かの爆発音と帝国兵の悲鳴が響き渡った。
体に風穴を開けたり、手足があらぬ方向へ曲がった帝国兵の遺体が折り重なるようにして倒れている中に、ハジメは立っていた。この惨状を作り出したのは、勿論ハジメである。
接敵した直後、いきなりミサイルを放って帝国兵の足元に着弾させ、その爆風によって前衛の多くを吹き飛ばした。そして、後衛が撃ってきた魔法を最小限の動きで回避しながら、パワービームの速射で1発につき1人に風穴を開けて全滅させたのだ。
ハジメはちょうど、帝国兵の隊長格と思われる生き残りにアームキャノンを突き付け、尋問しているところだった。
「吐け。お前達が捕えた兎人族はどうした?それなりにいたはずだが、帝国に送ったのか?」
「た、多分…て、帝国に…移送済みだ…人数は絞った…ガ…ガハッ…」
情報を吐いた直後、その帝国兵は血を吐いて息絶えた。死因は、爆風を受けたことによる内蔵の損傷であった。
「ユエ、来ていいぞ」
ハジメはユエに通信を送る。数分後、ハウリア族を引き連れたユエがやって来た。一帯の惨状を見たハウリア族は、口を押さえて「ウッ…」と気持ち悪そうにしていた。
「ハジメさん、本当にやっちゃったんですね…」
「あぁ、そうだ。俺は帝国兵を皆殺しにした。彼らに罪はない」
帝国兵達はあくまでも任務の1つとして亜人狩りを行っており、彼らは任務を遂行していただけだった。だが、運の悪いことにハウリア族の護衛をしていたハジメと出会ってしまった。彼らには守るべき家族がいるだろう。しかし、ハジメにも守るべきものがいた。これは、生存競争である。弱き者が喰われ、強い者だけが生き残る。今の場合は、帝国兵が弱き者になっていたに過ぎない。
「何人かくらいは逃がしてあげてもよかったのでは・・・」
シアの発言から、ハウリア族がかなりの平和主義であることが分かる。ハジメは帝国兵を逃がさなかった理由を語ろうとしたのだが、ユエがハジメの代わりに答えを言ってくれた。
「1人でも逃がしたら、間違いなく増援を連れて戻ってくる。お父様は、無駄な争いを避けるために全員殺したのだと思う」
「ユエ、その通りだ。1人でも生かしていれば、終わらない戦いが始まってしまう。帝国が捜索に乗り出すかもしれないが、報復のつもりで来られるよりはマシだ」
「そう…ですよね…」
シアはそう言って暗い表情で俯いてしまう。
「シア…悲しいかもしれないが、この世界は残酷だ。優しさのみでは生きてはいけない」
そして、ハジメはハウリア族達を帝国兵が残していった馬車と馬の所に案内し、分乗してもらうことにした。
「そういえばハジメ殿、あの乗り物は置いて行ってしまうのですか?」
カムは、階段の前に停めてあるジャガーノートのことが気になっていた。
「心配は無用だ。すぐに呼ぶ」
アームキャノンを操作すると、ホバリング機能で空を飛んできたジャガーノートがハウリア族の近くに着陸する。それを見たハウリア族は、一斉に口をポカンと開けて唖然としていた。
子供達を乗せたジャガーノートに馬車を連結させ、馬に乗る者と分けて一向は樹海へと出発した。なお、帝国兵の遺体に関してはハウリア族に手伝ってもらい、全てを丁重に埋葬した。
私、シア・ハウリアは気付かされました・・・逃げているだけでは、何も変わらないということを。戦わなければ、生き残れないということを。
今はハジメさんによって守られていますが、樹海の案内が終わったら私達は敵から逃げる生活に逆戻りです。フェアベルゲンだって、助けてはくれません。
だから、私は決めました。私だけでも戦えるようにするため、ハジメさんとユエさんに頼んで鍛えてもらうことを。
私は、今まで家族に守られて生きてきました。だから、今度からは私が父様達を守ろうと思います。
私には魔力があります。鍛えればきっと、私の武器になってくれるはずですし、魔法だって使えるかもしれません。
樹海に着いたら、鍛えてくれるようハジメさんに頼み込もうと思います。
争いに関わるのは、私1人だけで十分なんです。もう、私は逃げません!
一匹のウサギが、覚悟を決めた瞬間であった。