「ハジメさん、私を鍛えてください!お願いします!」
帝国兵を突破したハジメ達。彼らはハルツェナ樹海の入り口付近で休憩していたのだが、シアは深く頭を下げると、ハジメにとある頼みごとをしてきた。
それは、自分自身が戦えるように鍛えて欲しいという頼みだった。
「別に構わないが・・・何故だ?」
ハジメは元より、ハウリア族による樹海の案内が完了した後にシアを戦士として鍛えるつもりだった。
樹海の案内が終われば、ハジメという盾を失ったハウリア族は再び窮地に陥ることは確実である。そのため、ハウリア族には戦える存在が必要なのだ。
魔力を持っているシアのポテンシャルは、ハウリア族の中で最も高いと言える。彼女を戦士として鍛えれば、魔力による身体強化も相まって間違いなく化けるだろう。
ハジメは、シアが自ら頼み込んで来るとは予想していなかった。そこで、シアにその理由を聞いた。
「私は今まで、家族みんなに守られて成長してきました。魔力を持った私の存在がバレた時だって、みんなが一緒に樹海を出てくれました。だから、今度は私が家族を守りたいんです!」
シアは、覚悟を宿した表情でハジメに言う。その一言一言には、明らかに強い意識が宿っていた。
「君の覚悟は分かった。君を戦士として鍛えよう」
「あ、ありがとうございます!今度から、師匠って呼ばせてもらいます!」
シアの表情がパッと明るくなる。
「ただし、ハウリア族全員にも戦士としての教育を施させてもらう」
それに対し、ハウリア族がどよめく。
「ハジメ殿、私達もですか?」
耳を疑った族長のカムがハジメに聞く。
「そうだ。たとえシアが戦えるようになったとしても、それではシア1人に過度に負担が集中する。それを避けるためにも、ハウリア族全体の戦力を底上げする必要がある」
「それもそうですな。娘に守られてばかりの父親になりたくはありませんから。ハジメ殿、宜しく頼みます」
こうして、シアを含めたハウリア族はハジメによる戦士としての教育を受けることになった。
鳥人族の戦士に鍛えられた男が、今度はハウリア族を戦士として鍛える。戦士の魂が、再び受け継がれる時が来たのだ。
ハウリア族を鍛えるに当たり、ハジメはいくつかの準備を行っていた。1つは、ハウリア族が寝泊まりするための拠点だ。
拠点は強固な防壁に守られており、アザンチウム鉱石でコーティングすることで最高クラスの防御性能を誇る。
更に、クローキング装置による光学迷彩で完全にカモフラージュされ、周りから拠点が見えることはない。そして、防衛兵器としてビームタレットを複数設置している。
もう1つは、ハウリア族が使用する武器の用意だ。オルクスに行く前に錬成の練習で製作した武器の数々に加え、追加で刃渡り30cm程のコンバットナイフを製作している。その黒い刃は精密錬成の技能によって極薄に整形されており、切れ味は抜群。タウル鉱石製なので、高い強度を誇っている。
なお、コンバットナイフを大量に生産している内に、“複製錬成”という技能が出現した。文字通り、ある物の構造を記憶して、3Dプリンターのように全く同じ構造の物を錬成することができる技能である。
準備に関しては、これで完了だ。今度は、実際に彼らを鍛えることになる。
いきなり魔獣や人間と戦わせるのは流石に無茶なので、最初は武器の扱いを叩き込む。教科書など存在しないため、ハジメの体に染み付いている合理的な実戦の動きを教えていくだけだ。ハウリア族は索敵能力と隠密能力に長けているため、いずれは奇襲と連携に特化した特殊部隊になっていくだろう。
ここまではハウリア族全員に共通するカリキュラムなのだが、これ以降はシアだけハジメを相手に訓練することになる。
動きに慣れてきた所で、シア以外のハウリア族には訓練用ホログラムを相手に戦闘訓練を行ってもらう。この訓練用ホログラムの投影装置はオルクスの隠れ家にあったものであるが、一時的にオルクスに戻ったハジメがエルダーから借りていた。
映し出されるホログラムは、スーツの戦闘記録から構築したものであり、帝国兵とスペースパイレーツ戦闘員、魔獣の3種類が存在する。ホログラムにパイレーツ戦闘員がいるのは、ハウリア族を対パイレーツ用の戦力にするというハジメの思惑があるからだ。
ハウリア族がホログラム相手に訓練している一方、シアは魔力の操作をユエに教えてもらい、戦闘に関してはハジメの指導を受けていた。
そして、一週間が経過する。ハウリア族はついに小型魔獣を相手に実戦訓練に入った。ハジメは当初、温厚な彼らが実際に敵を殺すことを拒否するのではないかと考えていたが、それは杞憂に終わる。温厚な彼らも生きるためには狩猟が必要であり、生物を殺めた経験があったからだ。
グサッ!
ネズミのような魔獣の頭部にコンバットナイフが突き刺さり、その魔獣は絶命する。そのナイフを突き出したのは、族長のカムだった。
「お嬢、今日の目標は達成しましたよ」
カムはノルマの達成をユエに報告する。そのユエの近くには、ベビーメトロイドが浮遊していた。
「ん・・・お疲れ。とりあえず、シアとお父様が戻ってくるまで待機」
ハジメがシアに付きっきりで指導しているため、ユエはベビーと共にその他のハウリア族を監督していた。
毎日、定めた数だけ魔獣を狩るということを繰り返しており、必ず最初に目標を達成して帰ってくるのがカムだった。
続々とハウリア族が目標を達成して戻ってくる。ボウガンを肩に担ぐ者、小太刀を逆手持ちする者、両手にジャマダハルを装備する者など、個性に溢れているのだが、例外なく全員が返り血を浴びていた。
「「「「総員41名、ただいま戻りました!」」」
返り血ウサギと化したハウリア族がユエの前に整列し、大声で帰還を報告する。
「ん・・・血生臭い。全員、交代で水浴びしてから再集合」
あまりの臭いに思わず鼻をつまんだユエは、ハウリア族に水浴びを命じた。
「「「了解!」」」
「前よりも動きが良くなっているな」
「ユエさんが魔力操作を教えてくれたお陰です。もちろん、師匠が動きを叩き込んでくれたお陰でもありますよ」
ハウリア族が水浴びに行った数分後、ハジメとシアが会話しながら戻ってくる。
シアは、この数週間の修行で大きく変わった。ユエの指導によって魔力による身体強化を学び、それを駆使したパワフルな戦闘が可能になったのだ。
そんなシアの使う武器は、彼女のパワーを最大限活かすことのできる大槌であった。その扱いに関しては、ハジメの教えた棒術がベースとなっている。
「お父様、シア、帰ってきた」
帰ってきたことに気付いたユエは2人の元に駆け寄ると、いきなりシアの巨乳に顔を埋める。
「ユ、ユエさん?!何やってるんですか?私、汗臭いですよ!?」
「大丈夫。私、シアの臭い大好き」
ユエはクンクンと犬のようにシアの臭いを嗅ぐ。さらに、その胸を揉み始めた。
「ユエさん・・・そんなに揉まれると、変な声でちゃいますよぉ///」
シアの顔は真っ赤に染まっていた。一方のユエは恍惚の表情を浮かべている。なお、ハジメはその光景から目を反らしていた。
ユエとシアの関係は修行が始まった当初よりも確実に深まっており、修行の終了後にスキンシップをするのが恒例になっていた。2人のスキンシップは、回を重ねる毎に激しさを増している。
「ユエ、そのくらいにしておけ。ハウリア族が戻ってきたぞ」
スキンシップを中断したユエが周囲を見ると、整列したハウリア族が顔を赤くしながら全力で目を反らしている光景が映った。
「カム、全員揃っているか?」
「はっ、大将。総員41名、全員集合済みであります」
ハジメは、ハウリア族から敬意を表して大将と呼ばれており、娘のユエはお嬢と呼ばれていた。
「本日の訓練、ご苦労だった。お前達も、シアと同様に見違えたな。あのハウリアが嘘のようだ」
ハウリア族は大きく変化した。悪意から逃げるだけだった者達が、自らの力で悪意に抗えるようになったのだ。なお、それと同時にハウリア族の口調が堅苦しい軍人のようになってしまった。
「我々を拾ってくださった大将のお陰であります。大将がいなければ、今頃どうなっていたことか・・・」
その間、整列しているハウリア族達は直立不動であり、左右に体が揺れることもなかった。
「お前達に、とある贈り物を用意している。俺に付いてきてくれ」
ハジメはオルクスの指輪を指に嵌めると、オルクスの隠れ家に続くゲートを開く。そのままハジメはゲートに入っていき、その後にハウリア族とシア、ユエ、ベビーが続いた。
シアとユエのイチャイチャ?を少し入れてみました