南雲ハジメはバリアスーツと共に   作:ウエストモール

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ハウリア族の強化その2です


26話 鎧の軍団

 

 ハジメ達はオルクスの隠れ家を訪れていた。

 

 すぐさま周囲を警戒するハウリア族。彼らは未知の場所に連れてこられた訳であるが、訓練された彼らは今までのように怯えることはなく、何処から敵が来ても反撃できるように備えていた。

 

「師匠、ここはどこなんですか?」

 

 ハジメが彼らの速やかな動きに感心していると、シアが自分達の連れてこられた場所について聞いてきた。

 

「ここはオルクス大迷宮の最深部だ。ここには鳥人族の設備が数多く残されている。それと・・・総員、警戒を解いていいぞ」

 

 ハウリア族は警戒を解き、殺伐とした雰囲気が消散した。

 

「オルクス大迷宮・・・ということは、ここは地下の深い場所ということですな。この光景からは想像もつきませんが・・・」

 

 カムは言う。オルクスの隠れ家の内部には自然環境が再現されているのだが、地下深くに地上と同様な自然が広がっていることなど、誰に想像できるだろうか。

 

「師匠、向こうから誰か来ましたよ」

 

 シアが指差したのは、建物群の方向。そこから向かってきたのは、エルダーバードという名の鳥人族。彼は一同に対してお辞儀すると、ハジメの方を向いた。

 

「後継者殿、1週間ぶりですな」

 

「エルダー、大量の装備を作らせてしまってすまない。あなたには感謝している」

 

「礼には及びません。あなたをお支えすることが私の使命ですから」

 

 そして、エルダーバードはハウリア族の方を向いて挨拶する。

 

「はじめまして、ハウリア族の方々。私はエルダーバード、鳥人族の技術者です」

 

「私はカム・ハウリアと申します。ハウリア族の族長を務めさせて頂いております」

 

「カム殿、話は既に伺いました。あなた方の受けた仕打ちに、胸を痛めております」

 

 エルダーバードはそう言いながら、胸に手を当てながら頭を下げる。

 

「まさか、亜人の国が魔力を持つ同族に対して、あそこまで迫害するようになってしまったとは・・・」

 

 エルダーバードの知識にある亜人族の国は、魔力を持って産まれた同族を差別するようなことはなく、魔力を持った亜人による部隊も存在していた。

 

 エルダーバードはハジメを通して現在の亜人族の国・・・フェアベルゲンの状態を知ることになり、嘆いていたのだ。

 

「あなた方を支援するため、全員分の装備を製作させていただきました。必ず、役に立つはずです」

 

 すると、エルダーバードは黒い腕輪のような物を取り出し、カムに手渡す。

 

「これは?」

 

「これはパワードスーツの待機形態です。腕に付けた後、鎧を纏うイメージを頭に浮かべてください」

 

 カムは言われた通りに腕輪をはめ、鎧を纏うイメージを頭に浮かべる。すると、腕輪を起点として装甲が広がっていき、最終的にオリーブグリーンとダークグリーンのパーツで構成されたパワードスーツがカムの全身を覆った。

 

「おぉ・・・」

 

 カムは手を開いたり閉じたりして、パワードスーツの感覚を確かめる。これは、ハジメとエルダーが開発した量産型パワードスーツであった。

 

 最低限のパワーアシストとエネルギーシールド、自己修復機能が付いているこのスーツは、このトータスどころか地球上においてもオーバーテクノロジーと呼べるだろう。

 

「カム殿、ヘルメットの左側に触れるとヘルメットの前面を開閉することができますよ」

 

 このスーツのヘルメットには黄緑色に発光する半透明なバイザーが装備されており、前面の大半がそれに覆われている。カムが頭の左側に手を添えるとバイザーが上方向に開き、顔が露になった。

 

 ちなみに、ヘルメットに入りきらないウサミミに関しては上部にある2つの穴から出す方式にしており、ヘルメットの展開と同時に丈夫なバイオ素材でウサミミが覆われる。

 

「スーツを解除する時は、鎧を脱ぐイメージを浮かべてください」

 

 カムは鎧を脱ぐイメージを頭に浮かべ、パワードスーツを解除した。

 

「カム殿、1度それをお返し頂きたいのですが」

 

 カムは腕輪を外すと、エルダーに手渡す。そして、エルダーと入れ替わるようにしてハジメが話し始めた。

 

「皆、これから先ほどのパワードスーツを配布するのだが、これから名を呼ばれる者は前に出てきてくれ。まずは、カム」

 

「はっ!」

 

 呼び出され、前に出るカム。さらに、6人のハウリア族が呼び出されていく。

 

 パル、ラナ、ミナ、ヤオ、ヨル、リキ。彼らとカムは、ハウリア族の中でも上位ランクに位置する戦闘能力の持ち主である。そんな彼らが、ハジメの前に横1列で並んだ。

 

「お前達はハウリア族の中でも特に優秀な戦士だ。そこで、7人には先程のスーツよりも少々性能の良いものを与えることにした」

 

 カム達に渡されたのは、赤いラインの入った黒い腕輪。早速、彼らはスーツを展開する。

 

 展開されたスーツの大まかな見た目は先程のものと変わらない。だが、各種機能も向上している他、背部にはスラスターが追加されている。そして、分かりやすいように右肩が赤く塗装されていた。

 

「では、残りを配布する」

 

 ハウリア族はハジメの前に列を作ると、1人1個の腕輪を受け取っていき、カムに渡したものも合わせて41人にパワードスーツが行き渡った。だが、ハウリア族は42人であり、シアだけスーツを受け取れていなかった。

 

「あの、師匠・・・私だけ受け取れてないんですけど・・・もしかして、忘れられてますぅ?」

 

 ハジメが横を見ると、シアが涙目でこちらを見ていた。

 

「安心しろ、忘れてなんかいない。シアにはまた別のスーツを用意している。付いてきてくれ」

 

 シアが案内されたのは、ある建物の一室。様々な機械がひしめく薄暗い部屋だったが、明るい場所が1つあった。それは、透明な素材に覆われたカプセル状のデバイスであり、人が一人入れる程の大きさであった。

 

 そのデバイスの中に入っていた物は、バリアスーツによく似たパワードスーツであり、カラーリングは白と水色の二色だった。装甲が薄くなったり削減された部位の存在が認められ、所々で線維状の軟質素材が露出している。そして、アームキャノンが装備されていなかった。

 

「バリアスーツを量産化したスーツだ。俺の物より性能は下がるが、カム達に渡したものよりは高性能だ。これを、君に授ける」

 

「これを私に?こんなに凄い物、私なんかが貰っていいんですか?」

 

 シアは謙遜してハジメに聞く。

 

「シア、君は俺の立派な弟子であり、ユエの友達であり、大事な仲間だ。このスーツは、君への信頼の証だ」

 

「うぅ、師匠・・・ありがとうございますぅ」

 

 ハジメに認められた嬉しさで、涙目になるシア。そのまま、彼女はハジメに抱きついた。

 

 普段なら、ハジメは抱きついてきたシアを訓練の一環で制圧しているだろう。だが、今だけは黙ってシアを受け入れていた。この光景は、数分間続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、スーツに触れてみてくれ。そうすれば、一瞬で装着できるはずだ」

 

「はい、師匠」

 

 カプセル状のデバイスが開き、内部に保管されていた量産型バリアスーツが外気に晒される。シアは、ハジメに言われた通りにスーツへ触れる。

 

 量産型バリアスーツが発光すると、次の瞬間にはシアの体がバイオ素材で構成された装甲に覆われていた。

 

「師匠、まるで私の体の一部のような感覚がします」

 

「あぁ、バリアスーツはバイオ素材で構成されているからな。シアの感じた通り、バリアスーツは装着している間に体と一体化している」

 

 当然ではあるが、シア用のバリアスーツの頭にもウサミミを通すための穴が空いており、カム達と同様にウサミミはバイオ素材で保護されている。

 

 そして、2人はハウリア族やエルダーバード、ユエ達が待つ場所に戻った。

 

「父様!見てください!師匠がくれました!」

 

 シアはカム達の前でクルクルと回ったり、跳び跳ねたりしながら、量産型バリアスーツを着た姿を見せつけており、喜びを体全体で表現していた。

 

「我が娘がこんなにも立派になろうとは・・・私は今、とても感激している!」

 

「ん・・・シア、かっこいい」

 

 シアの姿を見て、カムとユエが感想を言う。特に、カムは感激して号泣しており、それに釣られてハウリア族全員が号泣していた。

 

「大将、お嬢、エルダー殿・・・我々のために訓練を施してくださるどころか、このような装備を作ってくださり、感謝しております。我々はこの命の続く限り、あなた方に忠誠を誓う所存であります」

 

 総員41名のパワードスーツ軍団が、ハジメ達を前にして跪いた。

 

「この先、大きな戦いが待っている。お前達はその際に中心となって戦うことになるが、俺はお前達の実力を信じている。必ず、お前達は勝利をもたらす鍵となるだろう」

 

「「「了解!」」」

 

 この日、人知れず最強のパワードスーツ軍団が完成した・・・・いや、完成してしまったのである。





パワードスーツのイメージは銀河連邦軍(OtherM)のパワードスーツです。
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