俺のスターシップは地球の近くまでたどり着いた。とはいっても、アメリカ辺りの大国に見つかると流石にヤバいので、衛星軌道上には入っていないが。
「地球は青かった」
地球を見た俺はふと呟く。かつて、こんなことを言った偉人が地球に居たらしい。今の俺には、その人の気持ちがよく分かる。
「おっさん、大気圏に突入するぞ」
先ほども言った通り、見つからないようにするため、ジャミングと光学迷彩を行う。そういえば、さっきからレイヴンクローの返事がない。
「おっさん?」
「ハジメ、これを見ろ」
おっさんに言われて振り向いた先にあったのは、荷物を詰めた俺のリュックサック。その蓋が少し開いており、カサカサと音がしている。
「何かがいる?」
俺は光線銃、おっさんは振動刃ナイフを構えて警戒する。すると、蓋が一気に開いて何かが飛び出してくる。それは、クラゲのような小さな生命体。
「おまえ、ベビーじゃないか!」
「キュイ…」
俺は、可愛い声を出したそいつの正体を知っていた。彼?は鳥人族による実験で生まれたメトロイドという人工生命体の最後の生き残りで、ベビーと呼んでいる。一応、俺のペットということになっているのだが、どうやら隠れて付いてきてしまったらしい。
「どうする、おっさん?」
「そうだな。できればゼーベスに返すべきだが、もうここまで来てしまった。リュックの中にいてもらおう」
「まあ、そうだよな。ベビー、お前は鳥人族の技術の塊なんだ。捕まったりしたら困るから、この中にいてくれ」
ベビーは俺の言葉を理解し、すぐにリュックサックの中に引っ込んだ。俺は操縦席に引っ込むと、ジャミングと光学迷彩を起動させ、大気圏に突入した。
目標、日本・・・
数分後、ハジメは地表に到達したスターシップを日本の何処かにある森の中に隠す。そして、搭載してある鳥人族製の高性能なコンピュータを使い、ハッキングを行って情報収集を開始する。
「南雲菫、少女漫画家。南雲愁、ゲーム会社社長。どちらも生存確認。住所は・・・・変わらないな」
コンソールの画面に俺の両親の名前、写真、プロフィール、住所などの詳細な情報が表示されていた。普通なら知り得ないような情報もあるが、それはハッキングによるもの。
鳥人族の技術者に言わせてみれば、鳥人族のコンピュータで地球のコンピュータをハッキングする場合、容易く地球のセキュリティを突破できるらしい。
「父さん、母さん・・・元気そうでなによりだ」
写真の中の両親は笑っていた。
「そういえば、俺の情報は?」
コンソールのキーボードを叩く。すると、俺に関する情報も表示された。
「警察は捜査を打ち切り、南雲夫婦は仕事を続けながらも情報を収集中・・・・そうか、10年も捜し続けていてくれたのか」
早急に会いに行く必要がある。スターシップを再び動かし、俺の故郷である町に向かった。
ハジメの両親、南雲菫と南雲愁は失踪したハジメのことを10年も捜し続けていた。それも、各々の仕事もしっかりこなした上で。
2人が仕事を疎かにしない理由は、どこかにいるであろうハジメに、作品を発表し続けることで自分達が元気に生きていることを知らせるため。そして、ハジメが帰ってきたときに無職でいないために。
ある日の夜中、南雲家のインターホンが鳴らされた。夜中に人が訪ねてくるのだから、よほど重要な用事なのだろうと思い、2人は玄関に出る。そこには、1人の青年 が立っていた。
「こんな夜中にすいません。私は南雲ハジメと申します。信用していただけますか?」
2人は、南雲ハジメと名乗る青年のことをじっくり見た後、目を見合わせる。
「菫、彼は・・・・」
「えぇ、彼にはハジメの面影があるわ」
「あぁ、俺達には分かる。彼は10年間もずっと捜してきた俺達の息子、ハジメだ!」
南雲夫妻は、目の前にいる青年がハジメであることにすぐに気付いた。
「ただいま。父さん、母さん」
これが、南雲夫妻と南雲ハジメの実に10年ぶりの再会であった。止まっていた時間は、動き出す・・・
「ハジメ、今まで何処で何をしていたんだ?」
俺は懐かしい実家の居間に通された。夜中ということもあり、出されたのはコップ一杯の水だけだ。そして、最初に口を開いたのは父さんだった。
「それなんだが、話せば長くなる。それに、信じてもらえるか怪しい内容なんだ」
俺は、今までのことを全て話した。スペースパイレーツの偵察隊に連れ去られたこと、鳥人族によって助け出され、養子として育てられたこと、パワードスーツを纏って敵と戦ったことを・・・
「ハジメ、宇宙人に拐われたことは信じられるが、宇宙人の円盤で人体実験を受けて偽の記憶を埋め込まれていたりしないか?」
「おい、宇宙人に連れ去られたことは信じるのかよ。どうなっていやがる、この親父・・・」
さらに、母さんの方も口を開く。
「もしかしたら、今のハジメはハジメそっくりに作られた機械兵器かもしれないわ。どうしましょう、これじゃ世界征服できちゃうわ!」
「母さんもか!2人ともSFの見過ぎだ!まあ、この調子ならこいつを見せても大丈夫そうだな」
交差させた両腕を広げると、白い光に包まれたハジメの体にバリアスーツが装着される。それは、赤とオレンジ、黄色を基調とするパワードスーツ。さらに、アームキャノンを展開した。
「「・・・・・・・」」
2人は無言になった後、再び目を見合わせる。
そして・・・
「「スゲェェェェェ!」」
2人はバリアスーツを見て、興奮して叫ぶ。
「父さん決めたぞ!そのパワードスーツのデザインを開発中のゲームで参考にさせてもらう!」
「新作少女漫画のアイデアが浮かんだわ!新作の主人公はパワードスーツを着た美少女よ!」
「あぁ、それと会わせたい人がいる。その・・・今まで俺を育ててくれた宇宙人なんだ」
それを聞いた2人ははしゃぐのを一旦ストップする。
「宇宙人?」
「本物に会えるのね?」
「レイヴンのおっさん、入ってきてくれ」
レイヴンのおっさんは光学迷彩を起動した状態で玄関先に待機させてある。レイヴンクローは人間とは思えないような足音と何かがぶつかるような音を立てて、居間に入ってくる。そして、出入口で頭をぶつけてしまった。
「私はレイヴンクロー。鳥人族の戦士であり、このハジメを戦士として育てた者です」
今日は、ハジメを除く地球人と鳥人族が初めて出会った記念すべき日である。
この作品のベビーメトロイドは手の平サイズです。