南雲ハジメはバリアスーツと共に   作:ウエストモール

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樹海突入です!
原作と異なり、戦闘はハウリアが担当します!


28話 霧の中で

 ハジメ達はハルツェナ樹海の入り口に集結していた。外側から見る限りでは草木が鬱蒼と生い茂る森にしか見えないのだが、中に入ると一瞬で霧に覆われてしまうのだという。

 

「カム、後は任せる。俺とユエでは迷うのが確実だからな」

 

「お任せください」

 

 濃い霧に覆われた樹海の中では視界が塞がれ、自分が何処にいるのか分からなくなってしまう。だが、感覚の鋭い亜人族は迷うことなく樹海を通り抜けることができるのだ。

 

 この霧はXレイバイザーを妨害することが確認されており、どう足掻いても霧を透視することは不可能である。

 

「これより、各行動隊は樹海内に散開し、本隊周辺の脅威の排除と並行してフェアベルゲンの警備隊の位置を捕捉、報告せよ」

 

 カムの指令を受け、パワードスーツを装備した4〜5人で構成される7つのチームが樹海に散開していく。その場に残ったのは、スーツの右肩を赤く塗ったカム達7人の精鋭。そして、バリアスーツを纏ったハジメとシアの2人とユエも残っている。

 

 ハジメは、カム達精鋭の7人のことを〈レッドショルダー〉と呼称している。彼らのスーツの肩が赤く塗られているのが、名前の由来である。

 

「大将、お嬢、それでは行きましょう」

 

 散開した7つの行動隊に続き、本隊も樹海に足を踏み入れた。ハジメ達の周りをレッドショルダーが囲む形で、霧に包まれた道無き道を進んでいくのだが、カムの足取りに迷いはない。

 

 時折、散開した行動隊が撃ち漏らした魔獣が接近してくるが、最高戦力であるハジメが動くまでもない。

 

 ある時、襲いかかってきたのは腕が4本ある体長60cm程の猿。そんな彼らが3体、霧を掻き分けるようにして飛びかかってきた。

 

 そのうちの1体が、先頭のカムに迫る。

 

「分かりやすい動きだ」

 

 カムはバックステップで飛びかかりを回避すると、コンバットナイフを構えて踏み込み、その黒刃を連続で振るう。すると、次の瞬間には猿の4本腕が宙を舞う。

 

「はっ!」

 

 黒刃を一閃。その首を飛ばされた猿は、その断面から血を吹き出した。

 

 2体目の猿が、頭に矢を受けて絶命する。矢が飛んで来た方向には、ボウガンに次弾を装填する小柄な戦士がいた。ハウリア族最強の狙撃手、パル君(11歳)である。

 

 未成年の兵士という存在は地球では問題になりそうだが、この世界では異世界から連れてきた未成年を戦わせたりするので、大丈夫だと思いたい。

 

「ふっ、止まって見えるぜ」

 

 信じられないかも知れないが、彼は11歳の少年である。

 

 2体の魔獣がカムとパルによって狩られたが、その隙に最後の1体がレッドショルダーの囲いをすり抜けてハジメ達に迫る。だが、ここでシアが動いた。

 

「どりゃぁぁぁ!!」

 

 上段に構えた戦鎚が振り下ろされる。身体強化とスーツのパワーアシスト、戦鎚に蓄えられた位置エネルギーが合わさり、その一撃をもって猿を叩き潰した。

 

「スーツの使い心地はどうだ?」

 

「前よりも体に馴染んできた気がします!」

 

 シアはそう言いながらピースサインを作る。

 

「それなら良かった。だが、戦いの際に必ず装着できるとは限らない。いざという時は生身で戦う心構えを持っておけ」

 

「はい、師匠!」

 

 そして、彼らが樹海に入ってから数時間が経過する。その間、魔獣の襲撃が何度かあったものの、レッドショルダー達とシアの敵では無かった。

 

〈こちら、行動隊01。フェアベルゲンの警備隊を捕捉しました。マーカーを打って位置を共有します〉

 

 すると、全員のバイザーにマーカーが表示され、警備隊の居る場所が共有される。

 

〈よくやった。各隊は打ち合わせの通りに行動せよ〉

 

「カム、ここからが重要になるぞ」

 

「はい、大将。我々ハウリアが成り上がる為の、重要な局面です。そして、大将が目的を完遂するためにも・・・」

 

 本隊は、警備隊の居る地点に向けて一直線に移動を開始する。案の定、数分で警備隊と真正面から接触した。

 

「貴様ら!何者だ!?」

 

 目の前に現れたのは、筋骨隆々の虎の亜人で構成された部隊だった。その全員が両刃の剣で武装しており、パワードスーツに身を包んだハジメ達を、殺気を放ちながら警戒していた。

 

 そして、隊長と思われる亜人の視線がユエに向けられる。

 

「人間族!?そうか、貴様らは奴隷狩りか!フェアベルゲンに手を出させはしないぞ!」

 

 ユエは吸血鬼族であるが、見た目は人間族そのものである。彼が勘違いするのも無理はない。一方のハジメはスーツを装着しているため、人間族だと認識されていない。

 

 そんな中、前に1歩踏み出したカムとシアがヘルメットを外し、素顔を亜人達に見せた。すると、隊長の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれた。

 

「白い髪の兎人族…だと?なるほど、貴様らは報告にあったハウリア族だな!?亜人族の面汚し共め!同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは!反逆罪だ!総員、かッ!?」

 

バスンッ!

 

 攻撃命令を出そうとした瞬間、1発の矢が彼の頬を掠り、背後の木に深々と突き刺さる。そして、それを皮切りに周囲から姿を現したハウリアの戦士達が警備隊を包囲した。

 

 急に起こった事態に、虎の亜人達は状況を飲み込むことができない。それどころか、四方八方からカミソリのような殺気を浴びせられ、心なしか浮き足立っているように見える。

 

(こいつら、本当にあの軟弱な兎共なのか!?まるで、命を確実に刈り取る処刑人じゃないか!)

 

 第二警備隊の隊長である虎の亜人は、冷や汗を流しながら内心で喚く。矮小な存在だったはずのハウリアの姿が、今では命を刈り取る凶刃を首元に振り下ろさんとする処刑人に見えていた。

 

 彼は確信した。攻撃命令を出した瞬間、先程の矢とハウリアが持つ黒刃が自分達に襲いかかり、生き残れる可能性が低いことを。

 

「大将、奴らを黙らせました」

 

「あぁ、後は俺が話をつける」

 

 ハジメはヘルメットのみを部分解除して前に出ると、警備隊の隊長のことを見る。

 

「人間族・・・何が目的だ・・・?」

 

 隊長はハジメを睨み付けて端的な質問をする。その目には、ハジメの返答によっては最後の一兵となるまで立ち向かうという覚悟が籠っていた。

 

「長老衆と話がしたい」

 

「長老衆と話をしたい…だと?何のために?」

 

 隊長は少し困惑する。樹海の亜人族を奴隷にするために来たのかと思えば、単純に長老衆と話がしたいという予想外の目的だったのだから。無論、それは嘘である可能性も彼の頭には浮かんでいたが。

 

「私は鳥人族の後継者だ。亜人族であれば、鳥人族の名ぐらいは知っているはずだが…」

 

「勿論だ。亜人の国を鳥人族が救ったという伝説なら知っている。しかし、人間族が鳥人族の後継者というのは…」

 

「私は鳥人族によって育てられ、その遺伝子を受け継いでいる。そして、七大迷宮の1つであるオルクス大迷宮を攻略したことで、鳥人族最後の生き残りから鳥人族の後継者として認められ、フェアベルゲンに向かうように指示された」

 

 隊長は、ハジメの言っていることが信じられなかった。人間族であるハジメが鳥人族に育てられたこと、遺伝子を受け継いでいること、鳥人族の生き残りから後継者として認められたということ等・・・普通なら戯言として切り捨てているだろう。

 

 しかし、ハジメはハウリアという戦力のお陰で圧倒的に優位な立場にある。そんな彼が適当なことを言う必要はなく、一言一言が確信に満ちているように感じられる。そこで、隊長はハジメに提案した。

 

「本当に長老衆と話がしたいのなら、少人数であればフェアベルゲンに案内してもよいと、俺は判断する。部下の命を無駄に散らしたくはないからな」

 

 隊長の言葉に、周囲の亜人達からは動揺する気配が広がる。何故なら、樹海に侵入した他種族を抹殺するのが通例だった彼らにとって異例の判断だったからだ。

 

「だが、1人の警備隊長に過ぎない私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。長老衆ならば、何か知っておられるかもしれない。本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 

「その提案、承知した。私が鳥人族の後継者であることを伝えて頂きたい。あなた方の譲歩に感謝する」

 

 ハジメは彼の提案を受け入れ、感謝の言葉と共に頭を下げる。人間族が亜人族に頭を下げるという衝撃の光景に、亜人達は驚愕した。

 

「ざ、ザム!聞こえていたな!長老衆の方々に嘘偽りなく伝えろ!」

 

「了解!」

 

 ザムと呼ばれた虎の亜人は、包囲するハウリアの1人が退いた所を通してもらい、霧の中に消えていった。

 

 両者とも警戒を解くことはない。そして、樹海の一角を重苦しい雰囲気が支配する状態のまま約1時間経過した頃、霧の奥から数人の亜人が現れた。

 

 彼らの中央にいる初老の男が特に目立つ。美しい金髪、深い知性を感じられる碧眼、吹けば飛んでいきそうな細い体、先が尖った耳が特徴的であり、森人族であることが分かる。その威厳に満ちた顔にはシワが刻まれており、彫刻のような美しさを放っていた。

 

 ハジメは、彼が長老の1人であると推測する。

 

 ハジメの姿を見た長老(仮)は目を見開くと、威厳に満ちた姿を何処に捨ててしまったのか、腕をブンブンと振り回しながら、興奮したような様子で駆け寄ってくる。

 

 周囲のハウリア達は彼の正体を知っているのか、彼を止めることをしない。そんな彼はハジメに近づくと、バリアスーツの表面をペタペタと触り始めた。

 

「おおっ!この鎧は鳥人族が作ったものに違いない!丸い肩、腕の火を吹く筒、橙色の装甲!まさしく、“鳥人族の後継者”の予言にある装備だ!」

 

「・・・」

 

 彼の挙動を見て、この場にいるハジメを含めた全ての者がドン引きする。皆、口をポカンと開けており、微妙な空気が流れた。

 

「おぉ、すまんな…少し興奮してしまった」

 

 流石に周りの微妙な空気に気付き、バリアスーツに触るのを止めてハジメから少し離れると、気を取り直して名乗った。

 

「私はアルフレリック・ハイピスト、フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。お前さんの名は何という?」

 

「私は南雲ハジメと申します、長老殿」

 

 ハジメは、誰の血も流すことなく亜人族の長老の1人と接触することに成功した。

 





○行動隊
→アークナイツの影響
○レッドショルダー
→元ネタは某最低野郎

この作品のハジメは、話す相手によって一人称が変わります。
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