今回は久しぶりにプライムが出ます
「あらら、送り込んだパイレーツ達は壊滅しちゃったか。まあ、見ていて楽しかったから別にいいかな?」
真の神の使徒プライムは、戦場となったフェアベルゲンを高空から眺めながら呟く。パイレーツ地上部隊をフェアベルゲンに送り込み、虐殺を行わせた犯人は彼であった。
「最高だったよ。僕は、弱者が一方的に殺される様を見ることが大好きなんだ。しかも、それを2連続で見れた。イレギュラー、君には感謝してるよ」
1度目はパイレーツによる亜人族の虐殺。そして、2度目はハジメ達によるパイレーツの掃討作戦である。
プライムが好むのは、弱者が強者によってその命を踏みにじられる光景。彼に倫理観などない。そして、洗脳して支配下に置いたパイレーツのことを自身と主を楽しませるための道具としか思っていない。
彼は最初に、強者であるパイレーツが弱者である亜人族を虐殺する光景を楽しみ、次にそのパイレーツが更なる強者であるハジメ達によって蹴散らされる光景を楽しむなど、彼は残虐な存在である。
一通り眺めた後、プライムはワープする。彼が次に出現したのは、樹海の中だ。周囲にはパイレーツの戦闘員が何体か立っており、その足元には亜人族の死体が転がっている。
「我らの光にして偉大なる指導者よ、この死体はいかがいたしましょうか?」
プライムは捕らえた亜人族を利用してフェアベルゲンの位置を把握し、パイレーツ地上部隊をワープで送り込んでいた。
「見つかったら面倒だし、その辺に埋めておいて。そろそろ残党狩りが来るかもしれないし、速やかに離脱しよう」
死体を適当に掘った穴に放り込んだ後、プライム達はワープで撤退した。プライムの暗躍は、まだ終わらない。
あの惨劇から10日が経過した。
その間、ハジメ達とハウリア族による残党狩りや被害地域の復興支援が行われており、パイレーツを撃退したこともあって、住民は彼らに対して総じて良い印象を持っていたし、フェアベルゲンを救った英雄として扱う動きがあった。
特にシアは、扱いが魔力持ちの忌み子から救国の英雄に変わっており、その変化は手のひら返しといってもいいだろう。そして、ハウリア族は英雄の一族として扱われている。
無論、当初は同胞ではないハジメやユエに対して、熊人族を中心に懐疑心を抱く者が少なくなかった。
長老会議によって掟の内容が公表され、ハジメが“鳥人族の後継者”として、ユエがその娘として紹介されたとはいえ、他種族に対して排他的な彼らが2人を簡単に信用できるはずがない。
だが、そんな2人の行動が彼らの態度を変える。それは、犠牲者の葬儀が行われた時のことだ。2人も参列していたのだが、他の参列者からは他種族ということで良く見られていなかった。
「すまない、君達を救うことができなかった…」
だが、2人が犠牲者の墓標の前で膝をつき、目を瞑って冥福を祈ったことで、亜人族の態度が変わる。
亜人族にとって、人間族は自分達のことを全く人として見ていないという認識が当たり前であり、一部の亜人族はハジメ達もそうであると考えていた。
彼らはハジメとユエの行動を見て、2人が亜人族の死を悲しみ、冥福を祈ることができる者であることを知った。まだ、2人は全ての亜人族から支持されている訳ではないが、当初よりは関係が改善したといえる。
そして10日目の今日、ハジメ達がフェアベルゲンを出発する時が来た。その見送りには英雄達を一目見ようと大勢の亜人族が詰めかけている。
「カム、本当に後は任せていいのか?」
「はい、大将。これ以降の復興作業及び樹海の防衛は我々ハウリア族が引き受けます」
フェアベルゲンの軍隊に大きな被害が出たことで、臆病者から立派な戦士となったハウリア族は戦力として重宝され、巷では“亜人族の守護者”と呼ばれている。
また、ハジメ経由で戦闘用鳥人像がフェアベルゲンに提供されており、ハウリアと共に防衛の任に就いている。
「そうか、後は任せる。それと、ベビーのことは頼んだ」
「お任せを。こちらこそ、我が娘のことをよろしくお願いいたします」
旅立つに当たり、ハジメは弟子のシアを旅の仲間に加えることにした。そして、対パイレーツ用の貴重な戦力としてベビーメトロイドをハウリアの元に預けている。
「そういえば、新武装の使い心地はどうだ?」
ハジメは、対パイレーツ用に新たな武装を製作してハウリアに配布していた。その武器の名は、ビームマシンガン。
サブマシンガンのような見た目のそれは、横にレバーがついており、それを動かすことでビームを単射・連射・チャージショットの3種類に切り替えることができる。
「取り回しが良く、皆からは好評です。そして、射撃武器に適正のある者に全て配備済みです」
ハウリア達は一応、射撃の訓練も受けている。その時点で適正が把握されており、その人数に合わせて製作していた。
ハジメとカムが話し合う中、詰めかけていた人々の集団が2つに割れ、その間を通って2人の森人族が現れる。片方は長老のアルフレリックであり、もう片方は彼の面影がある金髪碧眼の美少女だった。
「南雲殿。大樹への案内には私と孫娘も同行させていただきます」
「アルテナです。ハジメ様、この前は危ない所を助けていただき、ありがとうございました」
美少女の正体はアルフレリックの孫娘、アルテナ・ハイピストであった。森人族のお姫様的な存在であるアルテナは、ハジメに頭を下げる。10日前の襲撃の際、逃げ遅れたアルテナはパイレーツに殺されそうになっていた所をハジメに救われていた。
「いえ、当然のことをしたまでです」
(ハジメ様は素敵な殿方ですわ……強く、優しく、礼節をわきまえ、熊人族と違って驕り高ぶるようなことをしない…それに、あの時のハジメ様は…)
アルテナはハジメに助けられた時のことを思い浮かべる。当時、彼女はパイレーツによって追い詰められ、ブレードが振り下ろされる1歩手前であった。だが、そこにハジメが現れたことで彼女は死の運命を回避した。
「怪我はないか?」
「ええ、大丈夫ですわ」
「なら、ここから移動するぞ。ここに留まるのは危険だ、君を安全地帯まで連れていく」
その時、ハジメとアルテナはパイレーツによって包囲されてしまう。ハジメは彼女を背後に庇い、こんなことを言った。
「俺から離れるな。必ず君を助ける」
この発言に他意はない。単純に、ハジメから離れなければ生きて帰れるという事実を伝えたに過ぎない。アルテナも一応それは理解していたが、吊り橋効果でもあったのか、彼女がハジメに好意を抱く一因となった。
(後でお祖父様から彼が人間族であることを聞いて驚きましたわ。でも、私達の知る人間族とは違い、ハジメ様は亜人を差別しないお方でしたわ)
「アルテナさん?」
「はっ!シアさん?少しボーッとしてましたわ」
ハジメのことを考えて別の世界に旅立っていたアルテナは、シアの声で元の世界に引き戻された。ちなみに、アルテナとシアは友人の関係にある。
「お父様、揃ったみたいだから行こう?」
「あぁ、そうだなユエ」
すでに大樹に向かうメンバーは集結済みだ。ハジメとユエ、シア、アルフレリック、アルテナ、そして何名かのハウリアの戦士である。
「シア、大樹に行くまでの先導は頼む」
「了解です、師匠!」
出発の時が迫る。ユエとシアは、それぞれが大切に思っている存在に対して別れの挨拶をする。
「父様、行ってきます!」
「またね、ベビー…」
いつも通り元気の良いシアとは対照的に、ユエは何処か寂しそうにベビーに手を振っていた。そんなユエを見たハジメは、ユエの頭を優しく撫でる。
「ユエ、ベビーとはまた会える…だから、それまで迷宮の攻略を頑張ろう」
「ん……もっと強くなった姿をベビーに見せてあげるためにも頑張る…」
一方、カムは号泣していた。
「う、うっ…シア、必ず生きて帰ってこい…その時は、みんなで魔獣狩りにいこう…」
「大丈夫、私は絶対に帰ってきます!」
シアは父親に対してサムズアップした。
「では、行こう」
巨大な木造の門が開き、一行はそこを通り抜けるべく歩みを進める。詰めかけていた人々の歓声を背に受け、フェアベルゲンを後にした。
シアに先導された一行は、15分程で大樹ウーア・アルトの下へ辿り着いた。
「……枯れている」
ハジメの第一声。その通り、大樹は見事に枯れていた。想像と違ったのか、ユエの方は微妙な表情をしている。
大樹と呼ばれるくらいなのでその大きさは途轍もなく、その幹の直径はおよそ50mはあると思われる。周囲の木々とは桁違いの大きさであるのだが、その大樹だけ葉が無かった。
「南雲殿、大樹は建国前から枯れていると伝わっています」
アルフレリックが解説する。彼によると、今に至るまで朽ちることなく枯れたままの状態で残っており、神聖視される所以となっているらしい。なお、多くの亜人族は観光名所扱いしているとのことだ。
「ハジメ様、こちらへ」
アルテナに案内されてハジメ達が大樹の根元に近づくと、そこに石板が建てられていた。
「指輪と同じだ…」
「ん…同じ文様」
その石板には七角形とその頂点の位置に七つの文様が刻まれており、その文様の1つがオルクスの指輪の十字に円が重なった文様と同じだった。
「ここに大迷宮の入口があるようだな」
ハジメは石板の回りをスキャンバイザーを駆使して調査していく。石板の裏側に回り込んだ時、あるものをハジメは発見した。それは、表側の7つの文様に対応する様に開けられている小さな窪み。早速、スキャンバイザーでスキャンする。
これらの窪みは、表の7つの文様に対応していると思われます。アーティファクト:オルクスの指輪をはめ込むことで、何らかの変化が生じる可能性あり。
スキャンバイザーの解析結果に従い、ハジメはオルクスの指輪をはめ込む。すると、石版が淡く輝きだした。しばらく輝く石板を見ていると、次第に光が収まる代わりに文字が浮かび上がる。そこにはこう書かれていた。
“四つの証”
“再生の力”
“紡がれた絆の道標”
“全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう”
「どうやら、迷宮への入口を開くには条件があるらしい。“四つの証”というのは、間違いなく迷宮を攻略した証のことだろうな」
「ん……“再生の力”と“紡がれた絆の道標”は?」
「ユエさん、紡がれた絆の道標はあれじゃないですか?亜人の案内人を得られるかどうか。それに、師匠は多くの亜人族から信頼されてますし」
「ん…なるほど。“再生の力”は、もしかして神代魔法?多分、私の“自動再生”とは関係無いと思う」
ユエが試しに薄く指を切って〝自動再生〟を発動しながら石板や大樹に触れるが、変化はない。再生の力というのは、間違いなく神代魔法なのだろう。
「まとめると、七大迷宮の過半数を攻略した上で再生に関する神代魔法を入手し、亜人族の案内で大樹まで来いということだろうな」
ハジメは再生に関する神代魔法……言うならば再生魔法で目の前の枯れている大樹を再生させる必要があると推測していた。
「ん……ということは今すぐの攻略は不可能ということ?」
「そうらしいな」
ハジメはアルフレリックとアルテナの方を見る。
「長老殿、アルテナさん、私はここ以外の迷宮から先に攻略することにします。お世話になりました」
「いえ、フェアベルゲンと孫娘を救っていただいたのですから、お互い様です」
「ハジメ様、あなたが再びフェアベルゲンに来るときまで、首を長くしてお待ちしておりますわ」
そして、ハジメは同行していたハウリアの戦士を集めて言う。
「俺が帰るまで、大樹とフェアベルゲンを死守するようにカムに伝えてくれ。それと、2人を無事にフェアベルゲンまで送り届けてくれ」
「「「了解しました!」」」
その後、ハジメ達の姿はハウリアの拠点付近にあった。
「師匠、一体ここに何があるんです?」
「ん…ただの地面に見える」
シアとユエが見る先にあるのは、何の変哲もない地面であり、樹海であるというのにそこだけ木々が生えていない。
「まあ、見れば分かるさ」
ハジメはコマンドバイザーを起動し、アームキャノンを操作する。すると、何の変哲もない地面に変化が起きた。
「ええっ!?」
「ん…!?」
ゴゴゴ…という重い音と共に10×10m程の地面が2つに割れ、四角い穴が現れる。そして、その中から穴と同じ面積の金属製の床が上昇してきた。
「師匠、これは?」
「俺のスターシップを入れておくための格納庫だ」
ここは、ハジメがスターシップを格納するためにシアの訓練の合間に作ったスペースであり、小型の宇宙船をまるまる収容可能な広さがある。
「スターシップ…話には聞いてましたけど、空よりも更に高い領域…宇宙に飛べる乗り物でしたよね?」
「そこまで理解していれば大丈夫だ」
ハジメは宝物庫からスターシップを床の上に出現させる。そこに現れたのは、黄色の外装に緑色のフロントバイザーが特徴的なガンシップ。その下部には半球状の3つのドライブユニットが3つ填めこまれ、搭乗口も存在する。
武装として、機首下の二連ビーム砲と両翼のミサイル発射管がある。いずれも強力な武装であり、ハジメの命令で敵対者や敵拠点に容赦なく破壊がもたらされるだろう。
「必要とあらばこの船を呼び出し、敵を上空から一方的に叩けるし、爆発する敵拠点からの離脱にも使える優秀な相棒だ」
「爆発する敵拠点…って、一体何があったんですか!?」
ハジメが今までしてきた任務において、敵拠点や敵の艦船、時には敵の母星が爆発で吹き飛び、ギリギリで脱出するのはよくあることだった。
「まあ、その……敵の親玉を倒したら敵拠点の自爆装置が作動したというか…」
「つまり、やらかしたんですね?」
「そうとも言う…」
(惑星が吹き飛んだとか口が裂けても言えない…)
話のペースを完全に乱されたハジメだったが、シアの発言に適当に返答すると、再びアームキャノンを操作してスターシップを地下に格納する。スライドドアが閉まり、元の何の変哲もない地面に戻った。
「とにかく……ユエ、シア、行くぞ」
ハジメ達はハウリアの拠点に顔を出した後、ジャガーノートに乗ってハルツェナ樹海から出発した。
プライムは救いようのないクズにしたいですね。元ネタのダークサムスもヤバい奴だったから多少はね?
敵拠点や惑星が吹き飛ぶのはメトロイドあるある