本作のハジメ君が色々と完璧なせいで、ストーリーがつまらなくなっている気がする…のが今の悩み。メトロイド要素をもっと入れて面白くしたかったけど、Xやフェイゾンは厄ネタ過ぎてトータスが破滅するのでNG。特に、Xはエヒトでも手に負えなそう。一応、リドリー擬きとかファントゥーンを出すつもりではある。
樹海を後にしたハジメ達は、ジャガーノートに乗り込んで平原を進んでいた。
「師匠、次の目的地はライセン大峡谷でしたよね?」
ハジメの左斜め後ろに座っていたシアが目的地を再確認する。ちなみに、車内にあるユエとシアの席は人が1人通れる程のスペースを隔てて設置されている。
「そうだ。ライセン大峡谷には七大迷宮の1つがあると言われているからな。判明している迷宮の1つ、大火山が存在するグリューエン大砂漠への通り道でもあるから、途中で迷宮を発見できたら本望だ」
現在のところ判明している大迷宮は【ハルツィナ樹海】と【グリューエン大砂漠の大火山】と【シュネー雪原の氷雪洞窟】の3つである。ハルツィナ樹海は条件が揃っておらず、シュネー雪原は魔人族の領土であるため問題となる。そのため、消去法で最終的な目的地は大火山となっていた。
「ライセン大峡谷…師匠とユエさんに出会った懐かしい場所ですね」
「魔法が主な私からしたら最悪の場所…」
ライセン大峡谷はシアの一族が全滅しそうになった場所だが、今のシアは精神的に成長しているのかその地名を聞いても動揺することはなかった。一方、ユエの方は魔力が分解されるライセン大峡谷の性質から、あまり気乗りしないようだったが。
「それで、今日はこの乗り物の中で一泊ですか?それとも近場の町に?」
「町で一泊しよう。素材の換金や物資の調達もしておきたいからな」
「そうですね。フェアベルゲンで何も受け取ってませんでしたから」
実を言うと、フェアベルゲンから報酬や物資補給の打診があった。だが、復興の方を優先してほしいということで全て断っていた。
「向こうは復興中だ。こちらに物資を寄越すくらいなら、復興に使ってもらった方がいい」
数時間後、夕日が沈みそうな頃になって前方に町が見えてきた。周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町であり、その入り口には門がある。門の上の櫓には弓を持った兵士が配置され、門の脇には門番の詰所があった。
そろそろで町の方からハジメ達を視認できる距離であるため、目立つジャガーノートを収納して徒歩に切り替えて進む。もしもこのまま行けば、魔獣の襲来として町から攻撃を受ける可能性があるからだ。勿論、バリアスーツも着ていない。
「ユエ、シア、門番との問答は俺に任せてくれ。ユエはステータスプレートを持っていないし、シアは……言わなくても分かるな?」
「私は師匠の奴隷の振りをすればいいんですよね?私みたいな超絶☆美少女☆兎人族☆だと拐われる可能性がありますから」
シアの首には奴隷用の首輪に似せた黒い首輪が付けられている。白髪の兎人族で珍しく、容姿もスタイルも抜群なシアは、誰かの奴隷であることを示さなければ、人攫いに狙われるからだ。
この首輪は普通の首輪ではない。その内部に通信機と発信器が仕込まれた高性能な首輪である。
尤も、シアならば人攫いなど簡単に返り討ちにできるだろうが、念には念を入れておくに越したことはない。
「よく分かってるな。だが、超絶☆は余計だ。まあ、美少女という点は否定はしないが…」
「師匠って、意外と私のことを美少女だと認識してたんですね…良かったです、師匠が同性愛者じゃな……ぐぇ!?」
ハジメの肘鉄がシアの頬に直撃し、シアは美少女とは思えない叫び声を上げて吹き飛ぶ。綺麗に空中で3回転半した後、地面に落下して全身を強打した。
「誰が同性愛者だ。これで吹き飛ぶとは、身体強化の発動が間に合わなかったようだな。もっと早く発動できるようにしろ」
「忘れてました…師匠には愛する女性がいるんでした…」
ハジメは、すでに香織のことをシアに話している。それを忘れていたシアは、少しばかりハジメの逆鱗に触れてしまったようだ。
「ん…お父様もシアも早く行こう?このままだと日が暮れる…」
「あぁ、こんなことをしている場合では無かったな。シア、早く起きろ。置いていくぞ」
ユエに促され、一行は門まで急いだ。
「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」
町の門に到着すると、脇にある詰所から門番の男が出てきた。皮鎧と長剣を装備した冒険者風の門番は、ハジメ達にマニュアル通りの質問をした。
「食料の補給だ。旅の途中だからな」
ハジメは、どこか気怠げな門番の質問に答えながら、隠蔽機能で隠蔽したステータスプレートを提示した。何故なら、そのステータスの高さや“言語理解”の存在によって神の使徒であることが露見してしまうからだ。
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:10
天職:戦士/錬金術師
筋力:110
体力:102
耐性:80
敏捷:120
魔力:110
魔耐:60
技能:槍術・棒術・射撃・格闘術・回避性能[+見極][+瞬発]・飛躍[+宙躍]・錬金・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]
ちなみに、本来のステータスは次のようになっている。
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:?
天職:戦士/錬金術師
筋力:1100
体力:1020
耐性:800
敏捷:1200
魔力:1100
魔耐:600
技能:槍術・棒術・射撃・格闘術・回避性能[+見極][+瞬発]・飛躍[+宙躍]・錬金・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・生成魔法・言語理解
「意外と強いんだな。それに、天職が2つもあるなんて珍しいな」
隠蔽されたステータスを見た門番が言う。隠蔽されているとはいえ、この世界ではそれなりに強いステータスであるようだ。また、天職が2つあることにも注目された。
「それで、こちらの2人のステータスプレートは?あっ…」
ユエとシアにもステータスプレートの提出を求めようと2人を見た瞬間、門番は顔を赤くして硬直した。そして、焦点の合わない目で2人を交互に見ている。どうやら、2人の美少女に見惚れているらしい。
ハジメはわざとらしく咳払いして門番をこちらの世界に引き戻すと、2人のステータスプレートについて説明する。
「実を言うと、魔獣の襲撃の際に娘がステータスプレートを紛失してしまってな。こちらの兎人族は…分かるだろ?」
それだけで門番は納得し、ステータスプレートをハジメに返却する。
「それにしても、随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当なレア物では?あんたって意外と金持ち?」
門番は、羨望と嫉妬の混じった表情でハジメに尋ねる。
「想像にお任せする」
その返答の後、これ以上の質問が来るようなことは無く、ハジメ達は町に入ることを許可された。
「冒険者ギルドはこの先か…」
町に入った一行は、冒険者ギルドを目指してメインストリートを真っ直ぐ進んでいた。ギルドは、入る際に門番に聞いた素材の換金場所である。
ちなみに、この町はブルックの町という。ブルックのメインストリートは露店が多く出ており、呼び込みや値切り交渉の声で賑やかだ。しばらく進むと、冒険者ギルドの看板が見えてきた。
“ギルド”という言葉を聞いた時、ハジメが真っ先に思い浮かべるのは賞金稼ぎギルドだった。ハジメが依頼を受けるようなことは無かったが、情報収集のために出入りするようなことはあった。
賞金稼ぎギルドは荒くれ者が多く、冒険者のことを賞金稼ぎのような存在として認識していたハジメは、冒険者ギルドもそのようなものだとイメージしていた。
だが、実際の冒険者ギルドはそのようなことは無く、清潔さが保たれていた。入り口の正面にカウンターがあり、左手には飲食店、右手の壁には依頼の契約書が貼られた長大な木製のボードが設置されていた。
ハジメ達がギルドに入った直後、中の冒険者の視線が一斉に突き刺さる。最初は見慣れない者達が入ってきた程度の注目であったが、美少女であるユエとシアに気付いた瞬間、冒険者…特に男性が強い好奇心を抱いた。
見惚れる者、感心する者、2人を凝視し過ぎて恋人の女冒険者に殴られる者など多種多様であるが、意外と理性があるのか目で見るだけで接触してくる者はいなかった。
予想されたトラブルが無かったことに安心しながらも、ハジメは正面のカウンターに向かった。
「冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」
カウンターにいたのは、ベテランと思われる受付のオバチャンだった。笑顔で応対してくれたオバチャンは恰幅が良く、ユエ2人分の横幅であった。
「素材の買取りをお願いしたい」
「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」
「買取りにステータスプレートが必要なのか?」
ハジメの疑問に、オバチャンは「おや?」という表情を浮かべる。
「あんた、冒険者じゃなかったのかい?買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば1割増で売れるんだよ」
「そうなのか。なら、冒険者としての登録をさせてもらえないだろうか?」
「構わないけど、登録には千ルタ必要だよ」
オバチャンによると、登録していればギルドと提携している店や宿で割引が使えるし、高ランクなら移動馬車を無料で使えるらしい。
ルタというのは、北大陸共通の通貨のことである。通貨の色には青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。日本円と通貨の価値が同じため、日本人にはありがたいだろう。
「実は、持ち合わせが無いんだ。買取金額から差し引く形にしてくれないだろうか?」
「そういうことなら、買取金額に上乗せしてあげるよ。可愛い子を2人も連れているんだから、不自由させちゃだめよ。特に、あんたの娘さんにはね」
「何故、俺の娘だと?」
ハジメには、ユエが自分の娘であると紹介した覚えが無かった。
「オバチャンの勘よ。その反応だと、本当に娘さんのようだね」
ハジメはオバチャンの厚意を受け取り、ステータスプレートを差し出した。なお、ハジメはユエとシアに関しては登録を断っている。
ステータスプレートを持っていない2人はプレートの発行からしなければならず、技能欄に載っているであろう魔力操作の存在が知られてしまうからだ。
戻ってきたステータスプレートは、載っている情報が増えていた。天職欄の隣に現れた職業欄に“冒険者”の表記があり、その隣に青色の点が付いている。
この点の色が冒険者のランクを示しており、上昇するにつれて赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する仕組みだ。この色は通貨の価値を示す色と一致しているのだが、青は最低ランクの色であり「お前は一ルタ程度の価値しかない」と言われているようなものだ。
「男なら最低でも黒を目指しなよ?娘さん達にカッコ悪いところ見せないようにね?」
「努力する。それで、これが買取を希望する素材なのだが…」
ハジメは予め宝物庫から袋に入れ換えておいた素材を取り出し、カウンター上の籠に入れていく。樹海の魔獣の素材と奈落の魔獣の素材が半々の割合で出されている。
「これは……樹海産だね?樹海産の素材は良質ものが多いし、売ってもらえるのは助かるよ」
ハジメは内心、奈落産の素材という未知の素材を出したことで騒ぎが起きないか危惧していた。だが、オバチャンが樹海産の素材だと勘違いしてくれたお陰で特に騒ぎになることはなかった。
「樹海に入って素材を取りに行けたのは、連れの兎人族のお嬢さんが協力してくれたからかい?」
「まあ、そんなところだ」
そして、オバチャンは買取金額を提示した。四十八万七千ルタ。中々の金額である。換金を終えたハジメ達はギルドを立ち去ろうとするのだが…
「あんた達、この町の地図を持っていきなさい。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」
渡された地図はとても精巧なものだった。店や宿についての有用な情報が簡潔に記されており、十分に金を取れるレベルだった。
「こんな凄い地図を無料で貰っていいのか?」
「別に大丈夫よ。あたしが趣味で書いているものだし、“書士”の天職を持ってるから落書きみたいなもんだよ」
何と、この地図は手書きだったのだ。こんなに優秀であるなら、辺境のギルドの受付ではなく設計の仕事に携わった方がいいのではないか?というのがハジメの感想だった。
「いろいろとすまないな」
親切なオバチャンに感謝した後、ハジメ達は今度こそ冒険者ギルドを立ち去った。
「ふふ、色々と面白そうな連中だね…」
オバチャンはそんなことを呟きながら、立ち去るハジメ達を見送った。
本作の南雲ハジメの設定を文章にしてみた
○南雲ハジメ〈
主人公。天職は戦士と錬金術師。6歳の頃にスペースパイレーツによって宇宙へ攫われたが、鳥人族によって保護され、惑星ゼーベスで10年間育てられた。惑星ゼーベスの環境に適応するために鳥人族の遺伝子が移植されており、身体能力は常人を超える。鳥人族の技術が惜しみなく投入されたパワードスーツを身に纏い、幾度となくスペースパイレーツと対決した。地球に帰還した後に高校生として生活していたが、突然クラスごと異世界に召喚される。体格や容姿は原作における変貌後のハジメだが、髪は黒い。
原作のハジメと異なり1人の戦士としてすでに成熟しており、召喚された当初から高い戦闘力と精神力を有している。戦闘力が高いとはいえ決して脳筋ではなく、頭脳の方も優れている。話し合いの余地がない敵やスペースパイレーツに対しては容赦しないが、優しさや慈愛の心も持ち合わせており、封印されていたユエを救出して父親代わりになったり、自分の無事を恋人の香織に伝えるために王宮に忍び込み、2章ではフェアベルゲンを無償で救っている。