南雲ハジメはバリアスーツと共に   作:ウエストモール

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クリスタベル店長とかいうヤベェ奴…プレデターすら返り討ちにしそう…


33話 ブルックの町 後編

 ハジメ達がオバチャン特製の地図の中から選んだ宿は、“マサカの宿”という宿屋だった。もはやガイドブックと呼んでも差し支えないその地図によると、料理が美味く防犯がしっかりしている上にお風呂に入れるらしい。その分少し割高となっているが、金はあるので問題ない。

 

 宿屋の1階は食堂になっており、食事を取っている男の冒険者達がいた。ハジメ達が足を踏み入れると、ギルドの時と同様にユエとシアに視線が集まる。

 

 そのような視線にはギルドで慣れていたため、無視して宿のカウンターに向かう。すると、15歳くらいの女の子が元気な挨拶と共に現れた。

 

「いらっしゃいませー、ようこそ“マサカの宿”へ!本日は宿泊ですか?それとも、お食事だけですか?」

 

「宿泊だ。この地図を見て来たのだが、記載されている通りでいいか?」

 

 ハジメはオバチャンに貰った地図を見せる。女の子はそれを見て理解したのか、大きく頷いた。

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

 

 女の子は仕事に慣れているらしく、すぐさまテキパキと宿泊の手続きを始める。なお、ハジメはオバチャンがキャサリンという名前だったことに内心驚いていた。

 

「1泊で頼む。食事とお風呂付きで」

 

「はい。お風呂は15分100ルタです。今のところ、この時間帯が空いていますよ」

 

 女の子が時間帯表を見せる。日本人といえばお風呂の文化であるが、ハジメは長いこと鳥人文明に身を置いており、そこまでお風呂に思い入れがあるわけではない。そのため、ハジメはお風呂の時間を長く確保しなかった。

 

 確保した時間は30分。ハジメで15分、ユエとシアが一緒に入って15分という内訳である。

 

「お部屋はどうされますか?2人部屋と3人部屋が空いてますが…」

 

「2人部屋を2つで頼む」

 

 ハジメの考えとしては、ユエとシアで1部屋、自分は別室にするつもりであり、男女で分けることは当然だと思っていた。

 

 だが、ここでユエとシアが意見した。

 

「ん…3人部屋がいい。お父様とシアと私で同じ部屋で寝たい」

 

「わ、私もユエさんと同意見です!」

 

 2人の発言に、男の冒険者達はザワッとなった。そして、嫉妬の表情を浮かべてハジメを見る。美少女2人と同室なんて妬ましいと思ったのだろう。

 

 ハジメは、3人部屋を希望する娘と弟子の説得を試みようとした。

 

「ユエ、シア、巷の女子達は仲の良い女子同士で同じ部屋に泊まり、同じベッドの中で雑談しながら夜を過ごすらしいぞ」

 

「そうなの(ですか)!?」

 

 この情報の出所は、ハジメの母であり人気少女漫画家である南雲菫だ。情報の真偽の程は定かではないが、ハジメは2人の説得の為にこの情報を投入した。

 

「これを機に2人でじっくりと話すといい。俺が一緒にいると話せないようなことだってあるだろ?」

 

 ハウリア族を訓練してから大樹に行くまで、忙しさと疲れから2人がじっくりと話す機会はあまり無く、ベッドに入ってすぐに寝てしまっていた。

 

「ん…分かった。シアとあんなことやそんなことをしてイチャイチャと…」

 

「ユエさん?いったいナニをする気ですか?」

 

「ふふっ…今夜は寝かさない…」

 

 2人の様子に周囲がニヤニヤする。特にニヤニヤしていたのは受付の女の子であり、色々と妄想しているのか天を見上げながらブツブツと何やら呟いている。

 

 なお、その女の子は母親らしき人の手で宿の奥に連れていかれ、代わりに父親らしき人が対応してくれた。

 

 その後、宿の美味しい食事に舌鼓を打ち、お風呂に入り、それぞれの部屋に別れた。ハジメが頼んだ通りに2人部屋が2つであり、ハジメだけ別室になっている。

 

 ハジメはすぐベッドに入ろうとしなかった。何故なら、夜の間に新兵器を製作するつもりだからだ。

 

「さて、やりますか…」

 

 ハジメは宝物庫から取り出した物を床に並べていく。それぞれ、杭打ち機のような装備、ブーツのような装備、頭が角張った戦鎚のような装備、機械的な首輪だ。

 

 これらは現時点で製作途中の装備であり、武装と首輪に関しては全てシアに使わせる予定になっている。そして、ブーツのような装備はユエとシアの両方が使用する。早速、ハジメは作業に取り掛かった。

 

 ハジメが作業を進めている一方で、ユエとシアは同じベッドに入り、身を寄せ合いながら会話していた。

 

「ハジメお父様のこと、シアはどう思う?」

 

「そうですね。師匠…ハジメさんは尊敬する人です。戦い方や戦士としての心構えを教えてくれましたから」

 

 シアは、師匠としてのハジメについて語る。だが、それはユエの聞きたいことではなかった。

 

「ん…私が聞きたいのは、師匠としてではなく男としてのハジメお父様についてどう思うか」

 

「男として…ですか」

 

 シアは言葉に詰まる。彼女は弟子になってからハジメのことを師匠としか呼んでおらず、気付けば異性として見ることが無くなっていた。改めて、彼女はハジメのことを異性の視点から見つめ直す。

 

「ハジメさんは理想的な男の人だと思います。生身でも強いのは勿論ですけど、優しさも兼ね備えてます。それに…」

 

「それに?」

 

「……引き締まった身体と筋肉が素敵です///」

 

 シアによると、以前ハジメが水浴びしているところを目撃した際、ハジメの肉体に関心を持ったとのことだ。

 

「確かに、お父様の身体は素敵…この前一緒に風呂に入った時、隅々まで観察した」

 

「私も師匠と風呂に入りたいですね。でも、師匠には大切な恋人がいますし、その人に許可を取ってからにします。駄目なら諦めますけどね」

 

 その後、ハジメの前ではできないような会話が数時間繰り広げられ、話すのに疲れた2人は同じベッドの中でぐっすりと眠った。なお、話すことがメインだったため、イチャイチャはあまり無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、朝食を取ったハジメ達は町に買い出しに出かけることにした。必要としている物資は、食料と調味料、薬、シアの衣服であり、道具や武器はハジメが作るので問題ない。

 

 ハジメが食料関係と薬、シアとユエが衣服を買う担当となっている。負担の殆どがハジメに集中している訳だが、これは2人にゆっくり町を楽しんでほしいというハジメの配慮である。

 

 町の中は賑やかだった。レンガ造りの店舗だけではなく露店も多く出ており、露店の店主が盛んに呼び込みをし、冒険者や主婦といった人々との値段交渉に精を出している。食べ物や装飾品、玩具、美術品など、露店によって扱っている商品は様々であった。

 

 ユエとシアが目指しているのは、衣類を扱っている店だ。オバチャン…ではなくキャサリンさんの地図にはオススメの店が記載されていて、きちんと普段着用の店、高級な礼服等の専門店、冒険者や旅人用の店と分けられているため、店選びはスムーズに進んだ。

 

 選ばれたのは、冒険者向けの衣服を扱っている店だった。ある程度の普段着も買えるという点が決め手である。2人は露店の方から漂ってくる肉の焼けた香ばしい匂いやタレの焦げる濃厚な香りの誘惑に何度も負けそうになりながらも、その店に足を運んだ。

 

 しかし、その店にはとんでもない奴がいた。ハジメですら裸足で逃げ出しそうな、化け物クラスの変態が…

 

「あら〜ん、いらっしゃい♥️可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥️」

 

 それは、筋肉モリモリマッチョマンの変態だった。肉密度1000%のそいつは、はち切れそうなメイド服を着ており、多くのリボンやフリルで武装している。

 

 そんな化け物を目の前にして、ユエとシアは硬直する。シアに関しては意識が飛びかけている。そして、思わずユエは言ってしまった。「……人間?」と。

 

 化け物はクレイドの如く咆哮し、激昂した。

 

 取り敢えず、咄嗟にユエが謝ったために事なきを得たが、もしもそれで止まらなければブルックの町は吹き飛んでいたかもしれないし、ハジメが何十発ものスーパーミサイルを叩き込む事案になっていたかもしれない。

 

 そして、超きめぇ!な化け物…ではなくクリスタベル店長はシアの服を見立ててくれた。彼のセンスは見事であり、シアの魅力が更に引き出された。

 

 

 

 

 

 一方その頃、ハジメの姿はとある露店の前にあった。すでに買い物は済ませてあり、買った物は全て宝物庫に放り込まれているため、荷物は無い。

 

「ユエに何か買っていくか」

 

 その露店は、小さな装飾品を取り扱っていた。ハジメは、ユエに何かしらプレゼントを買うつもりである。

 

 陳列されている装飾品の数々を見ていく中、とあるペンダントがハジメの目に留まった。

 

「ベビーみたいだ…」

 

 そのペンダントの装飾は、メトロイドの体内にあるコアを彷彿とさせるものであり、球状で赤い3つの水晶が埋め込まれていた。ハジメはベビーと別れて悲しんでいるであろうユエのため、このメトロイドのような装飾のペンダントを購入した。

 

 そして、ハジメは集合場所として決めておいた町の広場に向かったのだが、ここでユエ達に問題が起こっていたのを目撃してしまった。

 

「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」

 

「「「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」」」」

 

 ユエとシアは数十人の男連中に囲まれ、求愛されていた。冒険者が大半だが、中にはどこかの店の店員らしき者もいる。

 

 2人は美少女だ。男連中がその見た目に一目惚れしないはずがない。ハジメは取り敢えず様子を見ることにし、男連中が直接手を出すならば、間に割って入ることにした。

 

 そんな男連中への2人の返事は当然…

 

「「断る(ります)」」

 

 眼中にないと言わんばかりの返事に、男連中は崩れ落ちる。だが、それでも諦められない者達が暴走を始めた。

 

「なら、力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

 暴走男の1人が野獣のような雄叫びを上げ、諦めていた者達もそれに釣られて2人を取り囲む。そして、雄叫びを上げた奴がユエの小さな体に掴みかかろうとした。

 

 それを見たハジメの動きは速かった。その脚力をもって一瞬で男連中の囲いを突破し、暴走男の肩を掴むことで目論見を阻止する。

 

 肩を掴まれた男が殺気を感じて振り返ると、そこには笑顔だが目が笑っていないハジメの顔があった。男はハジメの殺気に身震いしながらも、何とか声を発する。

 

「ユ、ユエちゃんのお…お父さん、この俺にユエちゃんをください…!」

 

 だが、それは彼の寿命を縮める結果となる。

 

「俺の可愛い娘に手を出すとは、度胸があるな。面白い奴だ、気に入った。お前を殺すのは最後にしてやる」

 

 そして、ハジメは男連中に対して言い放った。「2人に手を出すのなら、俺を倒してからにしろ」と。完全な宣戦布告である。

 

「相手は1人だ!やっちまえ!」

 

 男連中は一斉にハジメに襲い掛かった。ハジメは瞬時に“錬金”と“錬成”で鉄の棒を作ると、それを即席の得物としてリアルアクション映画を繰り広げる。

 

 広場に重い打撃音と男連中の悲鳴が響き始めてから数分後、広場は男連中の屍(死んでない)が転がる場所となった。

 

「お前は最後に殺すと約束したな?」

 

 その中で、先程の暴走男はハジメに首を掴まれた状態で持ち上げられていた。

 

「お義父さん…た、助けて…」

 

「誰がお義父さんだ!」

 

 暴走男の命乞いも虚しく、彼はハジメによってどこかへと放り投げられた。そして、ハジメはユエ達の方へ向く。

 

「ユエ、シア、帰るぞ」

 

「ん…」

 

「はい、師匠!」

 

 ハジメ達3人は宿への進路を取る。その途中、ハジメはユエにプレゼントを渡した。

 

「ん…ベビーに似てる。ありがとう、お父様。これをベビーだと思って頑張る…」

 

「あの…私にはプレゼント無いんですか?」

 

 自分も何か貰えるのではないかと期待していたシアが聞く。

 

「シアにもあるぞ。昨日の夜に完成させた、シア専用の新装備だ。宿に戻ったら渡す」

 

 今日の出来事により、ハジメは様々な異名で呼ばれて恐れられることになった。“最強親父”、“地獄の番犬”、“抹消者(ターミネーター)”など、挙げたらキリがない。

 

 ユエとシアに手を出せばハジメによる制裁を受けるということがブルックの男連中の共通認識であり、後に冒険者ギルドを通して王都にまでその異名が轟いたというが、それはまた別の話だ。




隙あらばコマンドーネタを突っ込むスタイル

次回はシアに新装備を渡すところからスタートです。
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