南雲ハジメはバリアスーツと共に   作:ウエストモール

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時系列が少しだけ戻ります


7話 事件

 

 数日前、とある事件が起きた。

 

 俺は朝食を取った後、訓練時間前から鍛錬をしていたのだが、あるものを目撃した。それは、クラスメイトの1人である清水幸利が3~4人の人影によって人気のないエリアに連れ込まれるところだった。

 

 闇術師の清水幸利は、地球においてオタクと分類される存在であった。性格は根暗に近く、夜中までゲームをしていたことによる授業中の居眠りや寝坊をよくしているため、授業態度はよろしいとは言えない。そして、彼は裏で虐められていた。

 

 俺がその後を追っていくと、清水は4人の男子生徒に囲まれ、ボコボコにされていた。

 

 その4人は、俺が今まで見てきたなかで上位に入る程のクズと言ってもいい存在であり、自分達よりも弱い者だけを狙う彼らのことを、俺は“小悪党組”と呼んでいる。

 

 小悪党組のメンバーは、リーダー格である軽戦士の檜山大介、炎術師の中野信治、風術師の斎藤良樹、槍術師の近藤礼一。

 

 この世界に来る前、弱そうな者を狙ってカツアゲをしていた4人を制圧したことがある。あれで彼らも懲りたと思っていたのだが、この世界に来て力を得てことで調子に乗っているらしい。

 

 地球には「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という言葉がある。あの4人には、一般人と比べると確かに大きな力がある。だが、責任感というものがない。彼らには、お灸を据えてやる必要がある。

 

 

 

「なあ、清水。俺達と訓練しようぜ!お前サンドバッグな!」

 

 檜山がそんなことを言った直後、近藤が槍の石突側を使って清水の背中を殴打する。清水は「ぐぁ!?」という悲鳴を上げて前方に倒れた。

 

「訓練はまだ終わらないぞ?」

 

 今度は中野と斎藤の各々が、得意とする属性の下級魔法を倒れている清水に向けて撃つ。

 

「ここに燃撃を求む、“火球”」

 

「ここに風撃を求む、“風球”」

 

 清水はその場から何とか飛び退いて火球を回避するが、その直後に風球が腹部に突き刺さり、体をくの字に折って嘔吐した。

 

「おいおい、ここで倒れられても困るぜ。折角、訓練相手として選んでやったのによぉ」

 

 檜山は蹲る清水に接近すると、その腹部を何度も蹴りつける。他の3人も加勢したことで、その暴力はエスカレートしていった。だが、それはいつまでも続かない。

 

「だったら、俺を訓練相手にしてみないか?」

 

 いきなり乱入してきた声の方向に全員の視線が集中する。そこにいたのは、南雲ハジメだった。

 

「檜山、これは訓練に見えない。団長に報告させてもらうぞ?」

 

「まっ、待てよ南雲。こいつが弱すぎるから訓練に見えないだけで・・・」

 

 檜山は反論する。

 

「清水は闇術師だ。訓練するなら、同じく魔法に高い適正のある中野と斎藤だけで十分だろう?そもそも、闇術師は正面切って戦うタイプではない」

 

(今の俺達は強くなってる。前みたいに、南雲に負ける訳がない)

 

 この場を切り抜けるため、ハジメを倒そうと考えた檜山は他の3人に小声で言う。

 

「俺達は4人だ。今なら南雲を倒せる」

 

 この時点で、檜山には大きな誤算があった。確かに、彼らは強くなっている。だが、ハジメも同じように強くなっているということを考えもしなかったのだ。

 

「お前ら!やっちまえ!」

 

 檜山の号令で小悪党組はハジメに襲いかかった。

 

 

 

 

 

「くらいやがれ!」

 

 最初に突っ込んで来たのは、近藤だった。槍術師である彼は、並みの人間の目では捉えられない程の速さで槍を突き出す。その槍は鞘が外されて刃が剥き出しとなっているため、人を殺せる状態だった。なお、彼には自分が人殺しをしようとしている自覚はない。

 

 槍先の目標は、ハジメの喉元だ。だが、槍先は空を切る。

 

「ぶべらっ!?」

 

 それと同時に、ハジメの強烈な飛び膝蹴りが近藤の顔面に直撃する。近藤は鼻血を盛大に吹き出して地面にぶっ倒れた。その時、ハジメは近藤が槍を突き出し始めたのと同時に“瞬発”によって地面を蹴って距離を詰めており、槍が完全に突き出された無防備な瞬間に飛び膝蹴りが直撃したのだ。

 

「ふざけやがって!」

 

 今度は檜山が剣を振り下ろしてくる。ハジメはサイドステップで剣を回避し、首の後ろに手刀の一撃。檜山は一撃で意識を刈り取られ、気絶した。

 

「ここに焼撃を・・・」

 

「ここに風撃を・・・」

 

 少し離れた所にいた魔術師の2人は、接近戦担当が倒れた瞬間、魔法の詠唱を始める。だが、ハジメの初動の方が早かった。

 

「錬成」

 

 ハジメは地面に手を置き、“錬成”によって2人の足元を急激に隆起させる。2人は少しだけ宙に浮き、発動した魔法はあらぬ方法へ飛んでいく。

 

「おやすみ」

 

 そして、距離を詰めると2人の腹部に拳をめり込ませた。

 

 この場で立っているのは、ハジメ1人のみ。うめき声を上げる小悪党組の4人に対し、ハジメは一言呟く。

 

「今のことはメルド団長に報告させてもらう。そこで寝て反省していろ」

 

 別の場所で倒れている清水の所に駆け寄り、起き上がらせると肩を貸す。

 

「ありがとう、南雲」

 

「別に礼はいい。俺はあいつらの陰湿なやり方が気に入らないだけだ。とりあえず、君を香織のところに運ぶ」

 

 そのまま、応急処置のためにハジメは清水を香織の所 まで連れて行った。小悪党組に関しては、メルド団長に報告が行くまでその場で放置されることになった。

 

 

 

 ハジメが去った直後、気絶していた檜山の体が少しばかり動き、何かを呟いた。

 

「南雲、──す・・・お前を・・・殺す

 

 檜山はハジメに対して殺意を持っていた。その殺意の理由を知る者は、檜山本人のみだ。この殺意は、──の運命を最悪なものへと導く。

 

 

 

 

 

「これは酷いね」

 

 傷だらけの清水を見た香織がそう述べる。すぐさま、香織は治癒魔法で大半の傷を治した。幾つかの傷は治しきれていないが、それは時間と清水自身の治癒力が解決するだろう。

 

「ハジメ君の方は怪我してない?」

 

 香織はそう言いながら俺に密着し、体をペタペタと触ってくる。

 

「無傷だから安心して欲しい。というか、どうして俺に密着しているんだ?」

 

「えへへ、ハジメ君の体に異常が無いか調べているんだよ。名付けて、密着チェック!」

 

 あまりにも香織が可愛いので抱きしめたくなったが、清水の視線があったのでやめた。

 

 

 その後、清水と香織を伴ってメルド団長に経緯を説明する。メルド団長も彼らが何かをやらかすのではないかと予想していたらしく、内容を信じてもらえた。そして、小悪党組には数日間の謹慎が言い渡された。

 





バリアスーツの登場は後1~2話くらいお待ちください。
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