ヤマト2198 第二次火星沖海戦 The ORIGIN   作:岩波命自

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 episode2から随分日を開けてしまいましたが、これにて完結です。


Episode 3

 国連宇宙海軍の保有するあらゆる艦艇を文字通り圧倒する機関出力が生み出した莫大な陽電子が、ゲルマルクの主砲の砲口部で丸い帯電の渦を巻く。発射に充分なエネルギーが帯電の奔流の中に溜真理込むや、それは光芒となってゲルマルクの二基六門の主砲の砲口から解き放たれ、おっとり刀で陣形を再編している国連宇宙海軍艦隊へ向けて、六条の赤いビーム光となって漆黒の宇宙を貫いた。

 途中、浮遊するデブリに直撃して、スペースデブリだったものや、航宙艦艇だったものと言った、今では宇宙を漂うオブジェクトの塊に過ぎない物体を砕き、爆砕してそのエネルギーを浪費する中、一条の赤い光芒がスラスターを吹かして回頭中のアリゾナを捉えた。

 ガミラス艦に対して対抗可能な唯一と言っていいショックカノンをゲルマルク含むガミラス艦隊へ向け、更なる打撃を加えようとしていたアリゾナとそれに倣って回頭中のムラサメ型一〇隻はゲルマルクに対して、斜め七五度と言う概ね正対完了直前と言っていい程には回頭を完了し、ショックカノンの再充填も九〇パーセントは終わっていた状態だった。アリゾナの機関部は全力で主機関の核融合炉で発電を行い、ショックカノンのコンデンサーへと地球艦で言えば膨大なエネルギーを蓄える作業に注力している状態だった。

 ゲルマルクとリッテンス、ヴィンデマンにとっては幸運にも、国連宇宙海軍にとっては悪夢同然にも等しい事がこの時起きた。ゲルマルクの第一主砲右砲の放った陽電子ビームがアリゾナの右舷舷側の船殻を貫通し、艦体表面と艦内の各区画を瞬時に陽電子の濁流で溶かしてショックカノンコンデンサーを直撃したのである。

 被弾から一拍置いて、アリゾナの左舷側から放水の様な炎が噴き出し、北米管区所属のコンゴウ型戦艦は瞬時に炎に包まれた。程なくして誘爆を起こした艦体が真っ二つに折れ、周囲に飛散していく戦艦アリゾナだった残骸が、ムラサメ型数隻に衝突し、ある艦は戦闘そのものが不可能に、ある艦は航行不能になり、火星沖のデブリだらけの虚空を漂う全長一五〇メートルの物体と化した。

 

「第二群旗艦アリゾナ、轟沈!」

「第一六巡洋艦戦隊、オーガスタ、ピッツバーク大破、戦闘不能の模様!」

「第一九巡洋艦戦隊ボルチモアより入電、『我操舵不能! 我操舵不能!』

 拙い、と沖田は表情を強張らせる。地球艦隊の三つの主力陣の一角を担っていたアリゾナが真っ先に轟沈し、更に同艦の爆散した残骸が三隻のムラサメ型を、アリゾナと同じショックカノンを撃てる貴重な戦力を、乗り込む乗員諸共に戦列から引き剥がしてしまった。

 一一隻の主力艦の内、四隻が撃沈ないし戦闘不能に陥る第二群に対し、沖田は速やかに轟沈したアリゾナに変わる次席旗艦を指定した。

「ミルウォーキーに打電、第二群の指揮を取れ。体勢を立て直し次第、第二群はプランCに従い、二手に分かれて二段構えのショックカノン射撃体勢に移行。第一、第三群もプランCに移行せよ」

 プランCはガミラス艦に接近を許した場合、或いは許す可能性がある状況が想定された時に発動される作戦案だった。地球艦のショックカノンの長いインターバルを、射撃を行う群と再充填を行う群の二手に分かれて、ガミラス艦を邀撃するのだ。これを三群による三段構えにしたプランDも想定してあった。

 恐らく旗艦であろうガミラス軍戦艦のアウトレンジ砲撃が合図となったのか、「戦艦」として識別されるガミラス艦が距離を詰めて、砲撃を再開し始めた。赤い光芒が多数宇宙を走り、特別混成艦隊へと弾道を伸ばすが、それらは全て地球艦を捉える事は無かった。いや始めから地球艦を狙ってすらいなかった。彼らの狙いは、地球艦を庇い続けて来た、多数の大型デブリだった。

 地球艦隊にとって、庭も同然の宙域に浮かぶそれらデブリは、当然ながらその軌道は国連宇宙海軍には把握済みであり、そのデブリでガミラス艦の射線を切りつつ、ショックカノンの再充填を行う腹積もりだったのだ。それが赤い陽電子のビーム光が伸びて来て、微かな閃光を放つとと同時に一つずつ、地球艦の盾となっていた宇宙ゴミを砕いて行った。

 砕かれるスペースデブリの破片は、細かな散弾となって、遅滞戦闘の為に打って出ようとした宙雷戦隊の駆逐艦にも襲い掛かった。実体弾の様に炸薬を充填している訳でもなく、直撃したらエネルギーの奔流を流し込んで来るビームの光芒とも違う、真空の宇宙で減速する事のない小さな破片の雨が、装甲と言う概念において最も薄いイソカゼ型突撃宇宙駆逐艦の艦体に突き刺さり、艦内の気密を突き破り、VLSや魚雷、高圧増幅光線砲のコンデンサー、そして内部の乗員に襲い掛かった。

 ガミラス艦の間接的な攻撃によって、地球軍の宙雷戦隊は、たちまち大混乱に陥った。彼らは光速に近い速度で飛来するガミラス艦の砲撃では無く、スペースデブリと言うレーダーで捕捉しづらい、矮小な、しかし危険な破片群からまず逃げなければならなかった。当然だが先にデブリ群に貫かれて行動不能になった僚艦の救助などやっている場合でもない。

「宙雷戦隊、ガミラス艦が起こしたデブリの群れからの回避の為、遅滞戦闘に移行出来ません!」

 絶望的な報告がキリシマの艦橋に上げられて来る。

 

 

「敵艦隊主力艦前面のデブリ群の排除を確認!」

「敵の一群の主力艦数隻に損害を確認」

「よし、敵の隊列を完全に破壊する。第二、第四戦闘団、左右から突撃せよ! 敵陣を食い荒らせ」

 手にボールを持っていたら前に投げ出す様な勢いでリッテンスは右手を前に振った。彼の右腕に同調するかの様に、第二、第四戦闘団を構成するデストリア級、ケルカピア級、クリピテラ級の三種からなる小規模な艦隊が、手綱を解き放たれた猟犬の如く飛び出していき、遮るものを喪った地球艦隊と言う獲物に向かって突進を開始した。

 二個戦闘団の突撃開始に遅れて、随伴していたポルメリア級強襲航宙母艦から通信がリッテンスの元へ届けられる。

「空母打撃群より入電。艦上攻撃機の航続距離に到達」

「宜しい。後続の空母に命令、メランカ部隊を発進させろ」

「了解」

 リッテンスの発令から程なくして、空対艦ミサイルを搭載したDMG229メランカが次々に宇宙へと飛び出していった。編隊を組んだメランカ隊は先行する二個戦闘団の砲撃開始に先立って、対艦ミサイルを発射し、地球艦隊側へ圧と混乱を押し付けた。メランカ隊の攻撃を阻む戦闘機は地球艦隊には無く、対宙機銃による弾幕で迎撃を行うのが関の山だった。

 メランカ隊の放った対艦ミサイルは、ほぼ全てが撃墜された。目標を捉えたのはたった一発。それもコンゴウ型宇宙戦艦クレムリンの内火艇格納庫を破壊したにとどまった。それで充分だった。地球艦隊はショックカノンに回していたエネルギーをカットして、対宙機銃を動かすのに必要なエネルギーを回さなくてはならなくなり、ショックカノンの再充填が更に遅れた。

 ようやく再充填が終わり、射線を確保しようとした時点で、第二、第四戦闘団は赤、灰、黄の三色の色に大別される地球艦に牙を剥いた。

 デストリア級とケルカピア級の主砲が赤い陽電子ビームの線条を地球艦に撃ち込んでいき、クリピテラ級がミサイルを、魚雷を撃ち散らし、防御を固めようとしたムラサメ型の舷側に突き立てた。

 

 主力の第一群の前衛を務めるムラサメ型タカオの艦橋では、ショックカノンの照準を付けていたタカオ戦術長兼副長の北野誠也一尉がタカオを狙うデストリア級をロックオンしていた。タカオの傍で僚艦アシガラ、チョウカイが被弾し、戦列から黒煙を上げて脱落していく中、タカオの艦首は高速で吶喊して来るガミラス艦の集団先頭のデストリア級に向けられていた。遮蔽物となるデブリを喪ったと言う事は、同時に地球艦隊も射撃の際留意すべき存在がなくなった事を示す。交戦環境で言えば今は地球もガミラスも対等だった。

 味方艦の爆発による衝撃波、艦体を乱打するデブリ、ありとあらゆるものがタカオの射撃を邪魔しようとする中、タカオ航海長の自見壮介二尉が懸命に舵を切り直し、北野が求める射線方向を確保した。ブレにブレる状況の中、決して悪態を含めて無駄口をたたかない航海長の地味ながら重要な活躍を北野は無駄にしなかった。

「射線確保! 行けます!」

「ショックカノン、てぇっ!」

 照準器越しに接近して来るデストリア級を睨む北野の背後から、タカオの艦長が叫ぶ。

 眩い蒼白い帯電の光がタカオの艦首に煌めき、艦内全体に響く衝撃音と発射音を轟かせ、ショックカノンの陽電子の光が、デストリア級へと突き進む。同時にデストリア級も主砲を発射し、回避運動に入った。勢いがついていたデストリア級がスラスターを噴射してタカオの上へと出ようとした時、タカオの放った蒼白い光芒がデストリア級の船底を貫き、反対側の艦橋を艦体から吹き飛ばして串刺しにした。

 光秒単位でも無い、数万キロも無い距離の向こうで爆散するデストリア級を見て、北野は良し、と内心喝采を叫んだ。これで二隻目。

 その時、タカオの艦体を撃沈したデストリア級の放った陽電子ビームが直撃した。艦橋の前面に直撃した陽電子ビームはタカオの艦体を射抜く事は無かったが、十分以上の損害を与える事には成功した。

 直撃の瞬間、北野は戦術長席から吹き飛ばされ、天井に激突した。五階建てのビルの屋上から身投げをしたのにも等しい衝撃が彼の全身を襲い、遅れて艦橋の窓を突き破った撃沈したデストリア級の置き土産の飛散粒子が彼の身体に襲い掛かった。

 記憶が消し飛ぶ寸前、北野は隣の席の通信長が、飛散粒子を浴びて上半身が一瞬で溶けて消滅するのを見た。宇宙服のヘルメット越しに破損した艦橋の窓に代わって緊急閉鎖するシャッターの閉鎖音を聞く中、艦長は? 艦の指揮は……と考えたところで、彼の意識はぷつりと落ちた。

 

 

「てぇーっ!」

 古代の叫びがキリシマの艦首陽電子衝撃砲と一体となったかのように、蒼白い光がキリシマの艦首から迸り、キリシマに速射する陽電子ビームを浴びせて来ていたガミラス軍巡洋艦ことケルカピア級の艦首にめり込み、内部で複数の爆発を引き起こしながら、艦尾へと突き抜ける。

 轟沈するケルカピア級を確認した船務士が「敵艦撃沈」を報じる中、再度赤いビームの光がキリシマの左右上下を掠め、周囲にいた僚艦の艦体を抉り、既に手負いだったアシガラとチョウカイに止めを刺す。

「アシガラ、チョウカイ、撃沈!」

「アオバより報告、我敵巡洋艦一隻撃沈を確認!」

「キヌ、イスズ、大破!」

 入って来る戦果報告と味方の被害報告がまるで釣り合わない状況下、地球艦隊は抗った。

 そんな中、問題は続けざまに起きる。弾着観測機として艦隊に射撃データを転送していたソード隊に、ミサイルを撃ち尽くしたメランカ隊が気付き、ドッグファイトを挑んで来たのだ。

 奇襲に近いメランカ隊の射撃で瞬く間にソード1、ソード2が撃墜される中、ソード3だけはその攻撃を躱し、艦隊とのデータリンクを維持しながら回避機動を行い、数で圧倒的に勝るメランカ隊の追撃をかわした。

 逃げの一手を続けるソード3の動きは、メランカ隊の機動力ではそうやすやすとは追随し切れなかった。空間戦術偵察機SSR-91コスモスパローの動きは、高推力だが機動性は鈍重気味なメランカの銃撃を易々と躱し切り、このままいけばメランカ隊の残弾が切れるまで逃げ切りそうな雰囲気すら出していた。

 新たに出来たデブリの直前で急旋回し、追っ手のメランカをそれに叩き付けて逆に三機を撃墜してのけるソード3の技量に、メランカ隊の隊長は敵乍ら本当に惚れそうな程に上手い飛び方をする、と感心していた。機動力と言う点において、メランカはコスモスパローの敵にはならなかった。

 そう言った機体性能の差はメランカ隊のパイロットも自覚していた。故に彼らは彼らが取れる戦術を取った。メランカ隊の隊長の指示の元、彼らは味方艦隊の被害を防止する為にも、多対一と言う卑怯さは承知でソード3を追い込んだ。

まさに追い込み漁と言う形でソード3を包囲したメランカ隊は、味方の誤射、残弾と言った全てを無視して、最後の一斉射撃をソード3に浴びせた。どれ程、投げられた火箭の鞭を躱す事が出来ても、投げかけられた細く細かい網の目を掻い潜るのはソード3の技量を以てしても、出来なかった。

 

 最後のコスモスパローが失われても、沖田の指示で地球艦隊各艦は僚艦と通信を取り合い、ショックカノンの再充填が終わっていない艦を後方に下げ、再充填が終わっている艦は肉薄して来るガミラス艦に直接照準でショックカノンを浴びせた。所謂溜め撃ちだったそれまでの射撃を取りやめ、腹八分程度のエネルギー充填に切り替えて速射性を上げた射撃によって、地球艦隊はショックカノンのインターバルを短縮し、ガミラス艦へ応射を行った。

 だが地球艦隊がやっとの思いで、それも本来の定格出力よりも落とした一撃を放つ一方で、機関出力において圧倒的優位に立つガミラス艦は、息を切らした様子も無く陽電子ビームを乱れ撃ち、ミサイルを、魚雷を、じりじりと全艦隊で後退を始めた地球艦隊に惜しみなく、容赦なく叩き込んだ。

 総旗艦キリシマに向かって、ガミラス艦の放った一際大きな一撃が迫った。ガミラス艦隊の総旗艦、ゲルマルクの艦砲射撃だった。

「敵弾、来る!」

 悲鳴の様な声で古代が叫ぶ。山南が回避を叫ぶ。沖田は無言で、視線を合わせた者全てを目力だけで圧する程の眼力で睨みつける様にゲルマルクとその放った射撃を見据えていた。全長二〇五メートルのキリシマがスラスターを目一杯吹かしてもっさりとした挙動で回避を試みる。

 駄目だ、避けられない、とキリシマの艦橋に居た全員が覚悟を決めた時、不意にキリシマの前に割り込む艦が居た。

「巡洋艦アキ、本艦前面に展開!」

「何をするつもりだ!?」

 戦闘中、滅多な事で動じない沖田がはっきりと動揺を浮かべて言う。巡洋艦アキの動きは明らかに総旗艦キリシマの盾になる動きだった。

 制止の言葉は誰の口からも出る間すらなかった。キリシマの盾となったアキの右舷側にゲルマルクの射撃が直撃する。重い衝撃がキリシマの艦橋の窓をびりりと震わせる中、アキの艦体中央部で爆発が起き、巡洋艦の艦体が真っ二つにへし折れた。前後に切断されたアキの艦体の切断面が燃えながらキリシマの艦橋の左右を流れていく。

「ショックカノン再充填まであと何秒だ……?」

 押し黙った声で沖田は山南に尋ねた。

「あと……三〇秒です」

 定格の上限を落とした事と、金剛型宇宙戦艦の核融合炉そのものの出力の高さも相まって、再充填は第二射の時よりも更に縮まっていた。

「古代、アキが繋いだこの瞬間を無駄にするな」

 絞り出すような声で山南が若い砲雷長に言う。古代は振り返る事無く、ただ「了解」と短く答え、照準器を覗き込んだ。

 

 

「敵艦隊、主力艦複数に損害、及び撃沈を確認」

「我が方損害、デストリア級一隻、ケルカピア級二隻、クリピテラ級二隻」

「損害に構うな。本艦と随伴も前へ出せ。一気にテロン艦隊を蹴散らし、一隻残らず殲滅せよ! 損傷艦及び通信可能な沈没艦に打電。『後で迎えに行く』だ」

「了解!」

 損害は出ていたが、ザルツ人旅団とリッテンスの士気は高いままだった。いや寧ろ旅団を構成するザルツ人乗員達の報復心に突き動かされた士気は天を衝く程に高かった。僚艦を沈めた仇、劣等民族如きが、と普段ガミラス本星の一等臣民から劣等人種と嘲られ、二等臣民の身に甘んじて来たザルツ人旅団に日頃から蓄積していた鬱屈が、自分達よりも更に劣等人種と見下していた地球人の抵抗で味方艦を沈められ、傷つけられ、同法の命を殺められた怒りから来る報復の炎となって手の付けようのないレベルに燃え上がり、手加減と言う言葉すら失う寸前だった。

 リッテンスはその怒りのままに掻き立てられる部下達を止めようとはしなかった。逆にそれでいい、とすら思っていた。報復心は全ての闘争心の源だと彼は考えていた。軍人にとって戦う時の心構えの燃料の様な存在に水を差すのは、却って逆効果だ。無論、報復の憎しみに捉われては視野が狭まるが、そこは自分が手綱を引く番だと俯瞰した視線でリッテンスは前を見据えていた。

 

 デブリ群で大混乱を起こし、遅滞戦闘どころではなくなっていた宙雷戦隊がガミラス艦隊に襲い掛かった時には、地球艦隊は多くの犠牲を出していた。ムラサメ型宇宙巡洋艦は大破艦にも止めの一撃が加えられ、戦線離脱に成功したタカオを除く七隻が爆沈、コンゴウ型宇宙戦艦もアリゾナが失われ、傷ついたクレムリンと無傷のキリシマが残存艦と共に必死の抵抗を試みていた。

 最初の優勢は何処へやら、これまで何度となく地球圏の各地で繰り広げられて来た絶望的な技術力の差から来る戦術的不利が、再び地球艦隊に悪夢となって蘇り始めていた。地球艦隊が振り絞る様に発射した一撃の数倍の砲火がガミラス艦隊から絶えず浴びせられて来る。無論、地球艦隊の反撃を前に、攻勢に一点張りになりつつあるガミラス艦隊も無傷ではない。複数の艦が撃沈され、ザルツ人旅団戦力は少しずつ削られていた。

 それでも地球、ガミラス共に引き金を引く指を互いに離す事は無かった。例え誰かが引き金を引く指を止めたとしても、仲間の仇に燃える誰かが、引き金を引き続けただろう。既に双方ともに戦況は引き返せない所まで入り込んでいた。

 そんな中で、長期戦となるにつれて比例的に拡大するであろう艦隊の損害を憂慮したリッテンスは、作戦を短期決戦に切り替える事にした。

 地球艦隊の駆逐艦六隻が、航空機か宙雷艇を思わせる高機動を行いつつ、ゲルマルクが撃ち上げる対空砲火を掻い潜って、実体弾砲を発射し、艦体に砲弾を叩き付ける。鐘楼の中にいるかと錯覚するほどの轟音がゲルマルクの艦内に響く中、更に別の駆逐艦六隻が、本隊を追い立てるデストリア級に意味のない光線砲を発射し、魚雷とミサイルを叩き込んで離脱していく。

 更に別方向から小さい、一〇〇メートルも無い小柄なイソカゼ型突撃宇宙駆逐艦が、クリピテラ級すら凌ぐ圧倒的機動力を生かして一撃離脱を見舞っては入れ替わりに別の隊が再度一撃離脱を見舞う。

「敵の宙雷戦隊が息を吹き返したか」

 よろしくない兆候だ、とリッテンスは顔面を曇らせた。窮鼠猫を嚙むと言う言葉はガミラスにもある。例え無力であっても、最初に攻撃を仕掛けて来た地球艦の様にエンジンノズルと言ったガミラス艦の中でも装甲が薄めなところに集中砲火を浴びせられたら、宙雷戦隊の非力な火力による波状攻撃でも損害が拡大しかねない。

「全戦闘団隷下の駆逐戦隊に告げる。敵宙雷戦隊への対応に当たれ。敵主力艦は本艦並びにデストリア、ケルカピアにて撃破する」

「了解、主砲、照準、敵戦艦」

 ゲルマルクの主砲が射角を微調整し、一隻の地球戦艦に照準を合わせた。

「照準良し!」

「撃て!」

 ヴィンデマンの射撃号令が下り、ゲルマルクの前部二基六門の主砲が斉射を放った。

 

 

 数千キロ先から届いたゲルマルクの砲火は全弾がクレムリンに直撃した。堪航性において、地球艦艇最強の強さを持つコンゴウ型と言えど、三三〇ミリのガミラス二等航宙戦艦の一斉射撃を浴びては耐えられなかった。

 クレムリンの艦体に赤いビームが六本突き刺さり、総旗艦キリシマと違って灰色を基調とした船体色で塗られていたクレムリンが文字通り、艦内のショックカノンコンデンサー、高圧増幅光線砲コンデンサー、ミサイルや魚雷の予備弾と言ったあらゆる武器弾薬に誘爆して爆散して果てた。一瞬前までクレムリンだった焼けた鋼鉄の欠片が周囲へと飛び散り、ガミラス艦隊の砲撃で細分化された大型デブリに変わる新たな大型デブリと化していく。

「クレムリン、轟沈!」

「ヴァリャーグより入電、我クレムリンの指揮を引き継ぐ」

 第二群のアリゾナ、そして第三群のクレムリンが失われ、とうとう地球艦隊の戦艦はキリシマただ一隻になった。

 抵抗虚しく沈んでいく僚艦の爆発炎が艦橋内部に照らし出される中、沖田は前方から向かって来る超弩級戦艦にだけ、視線を合わせていた。

「古代、これが最後だ。敵の旗艦を狙撃、撃沈し、この戦闘における敵の指揮中枢を破壊する!」

 幾度に渡るショックカノン再充填に伴う後退で、射程距離外に居たゲルマルクも今ではキリシマがフル充填のショックカノンを放てば何とか有効なダメージを入れられる距離にまで迫っていた。敵旗艦を破壊すれば、ガミラスは怒りのままに駆られて行っていた攻勢の中で冷静に統率をして来た指揮官を喪う。そうすれば敵には混乱が生じるだろう。その隙に地球艦隊の残存全艦で最後の一斉攻撃を行い、ガミラス艦隊に再起不能な損害を与える。

「目標、敵旗艦。ショックカノン、最大出力にて発射。機関室、状況知らせ」

 直に号令を下し、機関室に融合路の状況を問う沖田に、機関室から機関長徳川彦左衛門三佐の回答が返って来る。

「機関温度急激に上昇中、されど安定は辛うじて維持。発射に支障なし!」

 これまで定格主力より落とした出力で連射して来たキリシマの機関部もそろそろ限界の様だった。ムラサメ型だったらオーバーヒートを起こしていたかもしれない程にキリシマの機関部は全力運転を行い、電力をショックカノンに供給し続けていた。

 

 徳川は猛暑の空間と化している機関部で、艦橋との通信を切ると、全力運転を続ける機関部に振り返って優しく、我が子を諭す様に声をかけた。

「いい子だ。頼むぞ」

 

 

「ショックカノンへ全エネルギー充填、古代、出し惜しみは無しだ、フルチャージで撃て。復唱はいらん」

「ショックカノン、スーパーチャージャー全門開放。機関部回転全開。出力80……90、緊急弁全閉鎖、リミッター解除」

 山南の命令に従い、古代は黙々と発射準備を進める。発射サイクルが長くなり、沈黙したキリシマの周囲に、残存するムラサメ型が、イソカゼ型が密集し、ガミラス艦のターゲティングをキリシマから逸らそうとする。その間にもガミラス艦隊の砲撃は間断なく続き、被弾したムラサメ型が、イソカゼ型が宇宙(そら)に散る。

「出力100、110、115……」

 そこまでカウントして、古代はエネルギー充填が唐突に鈍り出した事に気が付く。エネルギー充填メーター表示が中々上がらない。

 以上を察した山南が徳川のいる機関室に問う。

「機関室、どうした!?」

「エンジンが息を切らせ始めました。頼む、あと少しだけでいい、粘ってくれ」

 前半は艦長の山南へ、後半は酷使され、息を切らせ始めた機関部を宥め、励ます様に言う徳川の言葉に、沖田も、山南も、そして古代他乗員達も押し黙って、エネルギー充填が完了するのを待った。

 

 しかしガミラス艦隊は待ってはくれなかった。

 旗艦を担えるであろう戦艦の周囲に巡洋艦、駆逐艦が群がり、壁になる意思を見せるや、その壁を砕かんとばかりに、より一層激しい集中砲火が飛来し始めた。

 巡洋艦スズヤ、ノシロが敢え無く轟沈し、キリシマをアキの様に庇ったアキグモ、アマツカゼが火星沖の塵となる。犠牲が、多くの犠牲が地球、ガミラス関係なく積み上げられていく中、ガミラス艦隊の砲撃が遂にキリシマを捉える。

 掠り傷と言っていい程度の被弾ではあったが、キリシマの左舷から黒煙と炎が上がる。被弾し、血を流しても尚、狙撃銃を絶対手放す事のないスナイパーの鋼の精神の如く、キリシマは姿勢を維持し、機関部があと少し足りないエネルギー分の時間を稼ぐ。

 

「敵旗艦、沈黙した模様。残存敵艦は、敵旗艦を中心に再編成する模様」

「全艦、一斉撃ち方用意。目標、敵旗艦。一斉射撃を持って、敵の指揮機能を完全に破壊する」

「ザー・ベルク!」

 最早掃討戦と何ら大差ない戦況、いやそれにしては些か払った犠牲も大きすぎたか、とリッテンスは故郷から遥か離れた宇宙で命を散らしたザルツ人旅団兵士達の事を忍びながら思った。勝ったところで、どの道この損害の帳尻を埋め合わせるための査問会に自分は招かれるかも知れない。確かに地球艦隊の最新兵器の事は認知出来ていなかったし、未確認の地球艦艇の奇襲に対応出来なかった自分の指揮に問題があるだろう。

 だが、それはこの戦いを終わらせた後の事だ、リッテンスは頭を軽く振って、全艦の射撃準備完了を待った。

 

 

「奴さん、最初に仕掛けた我々の事を忘れたんですかね?」

 酷く憤慨した表情でオリンパス・モンス戦術長は前方のガミラス軍の超弩級戦艦を見て言った。

「ふむ、沖田さん達も苦戦している様だし、我々火星の子も、最後にガミラスの奴らに一泡吹かせてみるとしようか」

 そう言ってフィリオンは国連宇宙海軍の制帽を脱ぐと、艦長席の横にかけられていた旧火星自治政府海軍の制帽を被った。これでいい。

「全艦、行動開始!」

 フィリオンのその一言と共に、オリンパス・モンス以下、作戦行動可能、と判断された僅か四隻のオリンパス・モンス級巡洋艦が作戦宙域から外れたところにあったが為に無事だったコロニーの残骸から姿を現した。ガミラス軍への奇襲攻撃、機雷原への誘因等で損耗したオリンパス戦隊の残存艦の内、六隻は損傷や弾薬の消耗で作戦継続困難と判断され、オリンパス・モンス以下の艦隊と既に岐れ、大破漂流する地球艦や撃沈された地球艦の生存者捜索に出ていた。

 たった四隻の殴り込み艦隊。オリンパス・モンス以下はエンジンノズルから猛煙を吐き出して、最大推力でガミラス艦隊本隊の中央に布陣するゲルマルクへと突撃を敢行した。

 

 

「右舷、敵艦出現! 数四隻!」

「近寄らせるな、第五戦闘団、全火力を敵艦に浴びせろ」

 煩いハエを追い払う様な仕草でリッテンスは命じた。

 右側面を固める第五戦闘団のデストリア級、ケルカピア級、クリピテラ級が砲撃を開始する。猛烈な弾幕が単縦陣を組んで吶喊して来る四隻のオリンパス・モンス級巡洋艦に浴びせられる。ガミラス艦隊の猛砲撃を、四隻のオリンパス・モンス級巡洋艦は宙雷艇には届かないが、それでも巡洋艦としては破格の機動性を生かして躱した。赤い陽電子ビームの豪雨を、バレルロールを駆使して回避していく四隻は反撃の高圧増幅光線砲を放ち、デストリア級一隻を撃破はせずともたじろがせるくらいは成功させた。

 砲撃は回避し、ミサイルや魚雷はチャフ・フレアを放出して回避して、ととれる回避手段を全て取った四隻は、ゲルマルクまであと一息と言う所で単縦陣に切り替えた。一直線の槍となって突っ込む旧火星自治政府海軍艦隊に、集中砲火が浴びせられ先頭の艦が複数発被弾し、戦列から脱落する。

「アウソニア沈黙!」

「コプラテス、前へ出ろ。怯むな艦隊特攻だ!」

 ゆくゆくは火星入植者の末柄たるフィリオン達の手による新生火星の復興を願う沖田の願いに反する行いだったが、元よりフィリオン達はこの火星沖の広大な海に骨を散らす覚悟だった。それで地球が救われ、地球が救われる事によって火星が救われるなら、本望だ。

 

 

「て、敵艦尚接近!」

「撃ち落とせェ!」

 ヴィンデマンの焦り交じりの叫びが艦橋に響き、遅れてゲルマルクの主砲発射の轟音が艦内に轟く。また一隻、オレンジの巡洋艦が砕け散る。

 残り二隻。

 

 

「コプラテス、轟沈!」

「ゲリュオン、前へ出ろ!」

 

 

「体当たりする気です!」

 意図を見抜いたヴィンデマンが顔面蒼白になってリッテンスに言う。

「蛮勇か、愚行か、それとも……」

 迫り来る二隻のオレンジの巡洋艦の先頭に立つ艦が、ミサイルを食らって爆発四散する。その煙を突き破って、最後尾にいた巡洋艦が迫る。

 

 

「これは、覚悟だ!」

「総員、衝撃に備え!」

 十中八九、体当たりによってオリンパス・モンスの艦体は砕け散るだろう。だが、それで何か問題が発生してもたついている本隊のロスを取り戻せるなら……。

 尚旗艦への体当たりを阻止しようとするガミラス軍艦艇の砲火が艦橋を掠め、窓をがたがたと震わせ、至近弾の粒子がオリンパス・モンスも艦体を点々と焼き切る。艦体の数か所から黒煙を引きながら、オリンパス・モンスはそれ自体が巨大な弾丸となってゲルマルクの右舷側へと突っ込んだ。艦橋の窓一杯に大きくなるガミラス軍超弩級戦艦を前に、フレデリック・フィリオン大佐は叫んだ。

「人類に栄光あれ!」

 

 

 今までに経験した事のない衝撃がゲルマルクを襲った。オレンジ色の巡洋艦はゲルマルクの右舷測に激突して、自壊し、爆沈して果てた。

 ゲルマルク自体は、オリンパス・モンスの特攻に艦そのものに深刻な損害は出なかった。精々激突された区画の隔壁が歪んだくらいで、損傷の程度で言えば小破と言うくらいであった。

 だがゲルマルクは何とか無事でも、その内部にいたリッテンス、ヴィンデマン達まで無事とはいかなかった。総重量数千トンに及ぶ物体の衝突で、ゲルマルクの艦内に居た乗員は一人残らず弾け飛んだ。壁、床、コンソール、或いは艦内の備品、ありとあらゆるものにゲルマルクの乗員は叩き付けられ、中にはその時の打ち所の悪さで死んだ者も出た。

 リッテンスもメインモニターに叩き付けられ、メインモニターのディスプレイを叩き割りながら艦橋の窓に激突し、更に床に叩き付けられた。

 ヴィンデマンも、ガルガを始めとする参謀達も一人残らず吹き飛び、艦橋内の何かに叩き付けられた。

 ゲルマルクが左舷側に傾いで、沈黙した時、ゲルマルクの艦内で健全な指揮官は一人もいなかった。

 

 

 玉砕したフィリオン大佐以下オリンパス戦隊の最期は、キリシマの艦橋からも見えていた。

 沖田が無言で白手袋に包まれた両拳を固く握りしめた時、機関室から徳川の叫び声がスピーカーを通して艦橋内に響いた。

「ショックカノンへのエネルギー伝達、安定しました!」

「ショックカノン、エネルギー充填120パーセント! 全艦対ショック、対閃光防御」

 最大出力で発射するショックカノンのトリガーに古代は指を駆ける。照準器の向こうで、オリンパス・モンスの残滓を周囲に漂わせるガミラス軍超弩級戦艦が力なく漂う。

「ショックカノン、発射ッ!」

「てぇーッ!」

 山南の渾身の叫びが艦橋内に響き渡る中、古代は撃発ボタンを押し込んだ。

 刹那、キリシマの艦首が蒼白い閃光に包まれた。眩い光が艦橋の偏向モードすら貫通して内部を真っ白に照らし上げる中、青と白で形作られらた三六サンチの陽電子の光芒が葉巻型のキリシマの艦体の艦首から解き放たれ、真一文字に漆黒の宇宙を駆け抜けた。

 ゲルマルクは迫り来るキリシマのショックカノンの奔流を前に、成す術を持たなかった。もし誰かが舵を握れていれば、最後の足搔き程度の回避運動は出来たかもしれない。しかしゲルマルクの艦内はオリンパス・モンスの激突の衝撃で死屍累々同然の有様であり、舵を握れるものは一人もいなかった。

 全長二五〇メートルの二等航宙戦艦の艦体が、三六サンチのショックカノンの奔流に貫かれ、艦内部の各所、機関部からの内部爆発を複数回起こした後、ガイデロール級二等航宙戦艦ゲルマルクだった塊は、爆炎と共に粉々に砕け散った。

 旗艦ゲルマルク轟沈の影響は直ぐに出た。ザルツ人旅団の各残存艦艇は、旗艦轟沈によって明らかに浮足立った。どの艦に座乗する戦闘団の指揮官が代理指揮官となるのか、それとも戦隊司令官が代理指揮官になるのか、混乱した通信が飛び交い、ザルツ人旅団の艦艇は一斉に射撃を止めてしまった。

 

 ガミラス艦隊の砲撃停止は、地球艦隊には戦意喪失と映った。多くの仲間を、母星を傷つけられ、家族を、友人を、戦友をガミラスに殺されて来た彼らに、手を緩めると言う選択肢は無かった。

 最大出力でショックカノンを撃ったが故に、砲身が文字通り焼け落ちた旗艦キリシマが後退した後、ムラサメ型キーロフ、ヴァリャーグがショックカノンを放った。二隻のロシア航空宇宙軍所属のムラサメ型に乗り込む乗員達は、母国の首都モスクワを遊星爆弾で破壊した異星人に向けた引き金にかけた指に、躊躇いを持たせる事は無かった。二隻のショックカノンの砲火はデストリア級二隻を一撃で撃沈した。

 キーロフ、ヴァリャーグの射撃に続いて、残存するムラサメ型が次々に、射撃準備が完了したショックカノンの閃光を放った。蒼白い一条の線が漆黒の宇宙を貫いた時、オレンジの爆炎が煌めき、その炎の中にガミラス艦は消えて行った。

 残存するイソカゼ型各艦も、追撃を仕掛けた。射撃効果は無いと分かっていても、彼らは光線砲を撃ち、残る魚雷、ミサイル、実体弾を全て撃ちこみ、離脱していった。

 旗艦も艦隊司令官も、それに戦意も失ったガミラス艦が自発的に、戦場から離脱を開始した時、ムラサメ型の何隻かは追撃をかけようとしたが、出来なかった。沖田が深追い無用と命じたのもあったが、それ以前に彼らの機関部は目一杯ショックカノンにエネルギーを回し続けたが為に、全艦がオーバーホールを要する程に機関部を酷使し切り、ショックカノンの砲身も腔発でムラサメ型自らを破壊しかねない程にまで加熱し切っていた。

 最後のショックカノンと申し訳程度の陽電子ビームの砲声が、火星沖に鳴り響いた後、後には再び静寂と、少しばかり熱くなってはいるが冷たい真空の宇宙が無限に広がっていた。

 

 

 

 

 

 冥王星に拠点を置くザルツ人旅団の司令官シュルツ大佐は、帰還して来たボロボロの艦隊を見て、驚愕すると同時に、リッテンス少将の戦死の知らせを聞かされた。

 程なく彼は同作戦の責任を問われ、一時本国への出頭命令が下される事になる。対地球戦線の尖峰を担うザルツ人旅団の壊滅的損害は、直ちに補充が成されたが、火星沖での記録的な大損害を被って以降、ガミラス軍ザルツ人旅団の艦隊は艦隊による積極的攻勢を控え、遊星爆弾によるロングレンジ攻撃へと方針を切り替えて行く事となる。

 

 ガミラス軍損害。

 撃沈、ガイデロール級二等航宙戦艦ゲルマルク、デストリア級航宙重巡洋艦四隻、ケルカピア級航宙高速巡洋艦九隻、クリピテラ級航宙駆逐艦一二隻。

 大破、デストリア級一隻、ケルカピア級三隻、クリピテラ級三隻。

 メランカ未帰還機二機。

 死傷者数についてはガミラス帝星国防軍未発表の為不明。

 

 

 

 

 地球側呼称「第二次火星沖海戦」は、地球人類が遂にガミラスに対して歴史的勝利を収めた戦いとなった。

 しかし、地球側も多くの、多すぎる犠牲を再度払う事となった。国連宇宙海軍に残されていたコンゴウ型宇宙戦艦はとうとうキリシマただ一隻を残すのみとなり 多くの熟達した宇宙艦艇乗員を含む、艦隊戦力の多くを火星沖に散らした。

 戦略的に見れば一時的な勝利を掴んだ地球ではあったが、この後、ガミラス軍が艦隊による攻勢を控え、遊星爆弾によるロングレンジ攻撃に終始するようになったのを鑑みれば、結果として意味のある勝利だったのか。沖田を始めとする将兵は疑いを持たざるを得なかった。

 それでも、曲がりなりにも地球がガミラスに対して初めて捥ぎ取った勝利であることに変わりは無く、国連政府は第二次火星沖海戦の結果を大々的に報道し、沖田を始めとする「国連宇宙海軍全将兵」は「軍神」として崇め奉られ、多くのプロパガンダ放送が地球にて制作される事となった。

 しかし、そのプロパガンダ放送にて喧伝される国連宇宙海軍の「勝利」の一員の名として、奮戦し、火星の海に命を散らした旧火星自治政府海軍将兵の名が上げられる事は決してなかった……。

 

 

 国連宇宙海軍損害。

 撃沈、コンゴウ型宇宙戦艦アリゾナ、クレムリン。

 ムラサメ型宇宙巡洋艦オーガスタ、ピッツバーク、ボルチモア、アシガラ、チョウカイ、イスズ、キヌ、アキ、スズヤ、ノシロ、バンクーバー、ゴトランド。

 イソカゼ型突撃宇宙駆逐艦アキヅキ、ヨイヅキ、マツカゼ、ハマカゼ、アマツカゼ、ハックルベリ―、バトラー、モホーク、ズールー、ディフェンダー、タルワート、ソブレメンヌイ、オスモトリテルヌイ。

 オリンパス・モンス級巡洋艦オリンパス・モンス、パヴォニス・モンス、アレス・パリス、ケンタウリ、エチェス、ペラエア、フレグラ、ネレイドゥム、リビア、ラべアティス、アルギル、アルシア、アスクレウス、チャルケ、シレヌム、アウソニア、コプラテス、ゲリュオン。

 大破ないし中破、小破、コンゴウ型宇宙戦艦キリシマ。

 ムラサメ型宇宙巡洋艦アオバ、イブキ、ナチ、タカオ、ユリシーズ、カンバーランド、アトランタ。

 イソカゼ型突撃宇宙駆逐艦テルヅキ、フユヅキ、タチカゼ、フレッチャー、ワトソン、スプルーアンス、トーマス・ハドナー、アウダーチェ、モンテコックリ、アルピノ、デヴァステイター、ディヴォーション、シヴァリク、ヴィクター。

 オリンパス・モンス級巡洋艦ステイギス、アブス。

 コスモスパロー未帰還機三機。

 戦死二四五九名。行方不明、五七名、負傷者一一二名。

 

 

 

 第二次火星沖海戦にて戦没した地球、ガミラス両軍戦死者全てに哀悼の意を捧げて。

 

 

 (完)




 お付き合いいただきありがとうございました。

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