デジモンアドベンチャー01 episode of CHAOSDRAMON   作:もそもそ23

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息抜きと思って書いてみれば、あれよあれよという間に書き終わりました。
やっぱり気分転換って大切ですね。
早速ネタバレがあるので苦手な方は注意して下さい。


















プロローグ あるデジモンの記憶……そして……

それは"彼"にとって予想外の出来事であった。

 

『お前は……これで終わりだ……覚悟しろ!』

 

彼と対峙する"赤錆色の機械竜"が咆哮を上げ、その背中に搭載された電磁砲を彼へと向ける。そして、

 

『テラーズ……クラスター! !』

 

直後、目の前の"敵"が放つ強大な威力を持った一筋のレーザーは、"彼"の合金の胸部を容易く貫通し、轟音と共にその戦いに終止符を討った。

 

『グ……バ……バかな……!』

 

バチバチとショートする身体。

ガコンと地に膝を着く片足。

自身の胸に深々と空いた"穴"を見ながら、彼、"ムゲンドラモン"はそう声を漏らす。

 

 

現デジタルワールドを支配するダークマスターズの一人である彼は、このスパイラルマウンテンの第三層、都市エリアの地下にて選ばれし子供達と対峙し、圧倒的な力を持って、後一歩のところまで子供達を追い詰めていた。

 

しかし、

 

「貴方だけは私達が倒す……絶対に……!」

 

その内の一人、"体の至るところに包帯を巻いた、痛々しい姿の黒髪の少女"と、彼女を守護するように立つ"巨大な赤錆色の機械竜"によって、その形成は逆転することになってしまったのだ。

 

『……グ……オ……』

 

一目で分かる程の致命傷。

今まで傷一つ負うことのなかったフルメタルの身体が、たった一撃の元に沈み、足元から分解が始まる。

 

同じダークマスターズであるメタルシードラモン、ピノッキモンが破れて尚、彼は自身が敗北するなど一切考えてはいなかった。

それでも、破壊兵器であり『感情』のない彼は、この結末に驚く事はあれど、『悔しい』や『憎い』といった心の変化はない。

 

ただ機械的に消滅するのみである。

 

『……………』

 

「助かったぜ沙綾!お前のおかげだ!」

 

彼の身体が光の粒子へと変化していくのを確認し、安心感からか、彼の目の前の選ばれし子供達は表情を綻ばせて喜ぶ。

 

『…………』

 

"自分は敗北した"

ただ、思い残すような事は何もなく、『破壊兵器』ムゲンドラモンの意識は、歴史と同じくそこで一度終わりを迎える事になる。

 

消え行く意識の中、彼が最後に"見たのは"、喜ぶ子供達の中、片目を包帯で覆われながらも、もう片方の目に今だ強い怒りを宿した少女。

 

彼が最後に"聞こえた"のは、「次で……全部が終わる」というその少女の静かな声。

 

そして、彼が最後に"感じた"のは、自身の力がまるで少女のパートナーへと流れていくような不思議な感覚であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デジモンアドベンチャー01 episode of CHAOSDRAMON

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選ばれし子供達が世界の危機を救ってから5年の月日が流れようとした頃。ここ、デジタルワールド、ファイル島にある『はじまりの街』では、デジモンベイビーの管理人であるエレキモンが、今日も今日とて彼らの世話のために町中を忙しく駆け回っていた。

 

「えーと、次はあっちのベイビーを寝かしつけて、次はこっちのベイビーに……って、うぉー!目が回るぅー!」

 

赤い額に汗を滲ませながら、辺りに並ぶデジタマを避け、彼はせっせと幼年期デジモン達をあやす。

 

一時は"死の街"と化していたこの場所も、今では再び多くのデジタマが孵る"生命の街"へとその姿を戻していた。

その間、デジモンカイザーによるダークタワー事件や、ヴェリアルヴァンデモンの暗躍など、様々な事件が発生したのだが、この街自体には目立った被害はなく、比較的平穏な日々が続く。

 

最近では、元、選ばれし子供達の活躍の効果もあり、少しではあるが、一般人もこの世界へと足を踏み入れ始めているようだ。

 

そんなありふれた一日のいつも通りの昼下がり。

 

 

「おっ!こっちのデジタマが孵りそうだ!」

 

子供達をあやすエレキモンの目が、数あるデジタマの内の一つがモゾモゾと動いているのを見つけた。

それなりに広い敷地に、なくなる事なく出現するこのデジタマ。

エレキモンにとっては、そんなデジタマ達のうかを見守るのも仕事の一つである。

 

彼は抱いていた幼年期デジモンを優しくその場に降ろし、そのデジタマの元まで急いで走りよった。

 

「今日はどんなベイビーが生まれるのかなー」

 

もう何百という数のうかを見てきたエレキモンたが、やはり新たな命の誕生には心が踊るようだ。

 

彼はその場で腰を落とし、今か今かと、真剣な表情でその瞬間を待ちわびる。

 

 

そして、

 

 

「おっ!来た来たっ!」

 

デジタマの殻にヒビが入り始め、やがて、その殻を破って一匹の真っ黒なデジモンがその中から姿を表した。

 

同時に、エレキモンはその表情を緩め、生まれたばかりのそのデジモンを優しく抱き上げる。

 

「"ボタモン"か、"ワクチン"種のデジモンだな……初めまして、これから元気に育つんだぞー」

 

「…………」

 

当然だが、生まれたばかりのデジモンに返事など出来ない。むしろ返ってくるのは大体が盛大な泣き声、もしくは、笑顔を浮かべて人懐っこく甘えてくるかである。

だが、今回のこのボタモンの行動は、そんな幼年期の中では比較的珍しかった。

 

「あれ……ぐずらない……いや、動かない……?おーい、大丈夫か?」

 

エレキモンは彼を抱いたまま首を少し捻る。

だが、生まれたばかりのボタモンはピクリとも動かず、その黄色い目だけをエレキモンへと向けていた。

 

「あれぇ? おっかしいな」

 

本来、生まれたばかりの生物を抱き上げれば、それはまず何かしらの反応を示す。デジモンとて例外ではない。

しかし、このボタモンはエレキモンの顔をじっと見つめる事以外には一切何の動きも見せないのだ。

 

「まあ……やんちゃよりは大人しい方がお世話はしやすいし、いっか……とにかく、しばらくの間だけど、よろしくな、"ボタモン"」

 

エレキモンはニッコリと腕の中のボタモンに向かって微笑む。

だが、そんな時間も長くは続かない。

 

「ピーー!」

 

「わっと、いけねー、向こうのベイビーがぐずりだした!ごめんなボタモン、また後でな!」

 

数多くの幼年期デジモンを一人で世話する彼に、休憩時間などほとんど存在しない。

エレキモンは優しくボタモンを降ろし、再び慌ただしく街の中を掛けていくのだった。

 

 

 

 

 

エレキモンは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生まれたての"彼"は喋る事こそ出来ないが、思考はすでに十二分に働いていたと言うことを。

 

(……何故だ……オレは……確かに死んだ筈……)

 

遠くなるエレキモンを見つめながら、"彼"、ボタモンこと"ムゲンドラモン"はひたすらに疑問を浮かべていた。

 

(……生まれ変わったのか……だが……この記憶は……)

 

ダークマスターズとしてこの世界を支配した事、破壊兵器としてマシーン型デジモンの頂点に君臨した事、そしてその最後。

全て鮮明に思い出せる。だが、何故生まれ変わった自分にこの記憶があるのかが彼には分からない。

 

(……どういう事だ……)

 

ただ一つだけ確かな事は、自身がムゲンドラモン、いわば『破壊兵器』であった記憶があるための"感情の欠落"。

実際、今このボタモンは疑問に思うことは多々あれど、再びこの世界に転生した事に対しては本当に"何も感じてはいなかった"。

 

しかし、

 

(……………腹が減るなど……何時振りか……)

 

あの時とは違い、今は生身の肉体。いくら"感情がない"とはいっても当然空腹はやってくる。ぐうぅ、という腹の虫を止めることは出来はしないのだ。

 

(……仕方あるまい……しばらくは……この身体で様子を見るか……)

 

『現状では少なくとも自分は何も出来ない』

結果彼は思考をそうまとめ、しばらくの間は、この流れに身を任せる事にした。この穏便な決断には、少なからず性質がワクチン種へと変更された事も影響しているのだろう。

 

彼は今、"ボタモン"として新たな一歩を踏み出す。

 

同時に、運命の歯車もまた、ゆっくりと狂い始める。

 

破壊の遺伝子を持ったワクチン種の物語が、幕を開けた。

 

 




彼の記憶、早速ネタバレが一つありましたね。

本編が結構鬱気味な展開になってきたので、少しでも皆様に安心感をもってもらえるよう、あえてそれを入れました。


もしかすると、本編と会わせて勘の鋭い方はこのプロローグだけで彼の辿る物語が推測出来るかもしれません。
もしくは……逆に"彼の存在"について疑問点が増えてしまった方もいるかもしれませんね……

ご意見、ご感想、いつでもお待ちしております。
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