以前にも同じ設定で書いていますが別物なので読まなくても大丈夫です。
というか恥ずかしいので読まないで……
強烈な痛みで目を覚ます。いや、それは正確な表現ではない。実際のところ瞼を焼くような痛みに俺は目を開くことができなかった。
意識がはっきりしてくると分かった。ようなではなく本当に瞼を焼かれていることが。瞳を押し続ける熱い金属のようななにかを俺は必死に振り解こうとして失敗する。どうやら両手両脚が拘束されているようだ。俺は痛みを誤魔化すように必死に叫ぶ。
「やめろぉ!やめてくれぇっ!」
そんな俺の懇願で果たして相手が止めてくれるかどうか、今の自分のことすら何も分からない俺でもなんとなく予測はついていたが、その反応はそんな予測を超えて余りに酷いものだった。
「はっ!やめろだって?お前はこれから獣ですらねぇんだ!お前は俺たちの道具に成り下がるんだよ!」
「道具は道具なりに口を閉じろよ!」
首を踏み締められながらも怒涛の罵声を受けて、俺は混乱しながらも今の状況を懸命に理解しようとした。なんとなくではあるが、俺?は今コイツらの奴隷になるところらしい。瞳を焼くものは恐らく焼印だろうか?奴隷の効率的な運用を考えたら眼の部分に焼印なんて頭おかしいんじゃないかと問い詰めたかったが、返ってくるものが録でもないものだとは俺の足りない頭でも理解できていた。
だが、一体全体なんでこんなことになっている?俺はいつも通りに就寝したはずだ。普段通りの日常に、このような被害を受ける謂れはなかったはずだ。
それならこれは夢?確かに夢ならこんな突飛な状況もおかしくないだろう。ストレスかなんかで自分が酷い目に遭う夢を見たなら明日は休みでも取ろうかな?と考えるところだが、瞼を焼く痛みはこの状況が夢ではないということを明確に教えてくれる。
だったらなんなんだ。俺は寝ている間に秘密の組織にでも攫われて組織の奴隷にでもなるのか?それともこれは俺自身の体験ではなくかつて奴隷になった人の経験を追体験しているのか?それとも娯楽として好んで読んでいた小説のように俺自身が奴隷制度が残っている世界にでも転生したとでも言うのか?
分からない。今考えたところでその判断は付くことはない。何故ならそれを確かめる為の目が俺にはないからだ。どうやら焼印の処理は終了したらしく、瞳に当たっていた金属のようなものはやっと引いたが、それで痛みが消えるわけではない。瞼を開こうとする度に更なる激痛が走る。
だから拘束が解かれ、自身に繋がれた首輪かなにかを引っ張る衝撃に対しても、俺は抵抗するどころかその衝撃に縋るように必死についていくしかなかった。
「キサマらの犬小屋はここだ!業務は明日の4時からだ!遅れた者には死ぬ方がよっぽど嬉しいと思うような目に遭わせてやるからな!」
冷たい土の感触に、ここがこれから奴隷の住む場所なのだと他人事のように思いながら俺は、未だに痛む眼を抑えながら周囲の気配を伺った。そこには気配を探るなんて大それたことが出来ない自分にも分かるほど、大勢の人間がいることが周囲の息遣いや身じろぎする音で分かった。
それでも俺は何も行動に移すことはできなかった。相も変わらず瞳を焼き続ける痛みに、言葉未満のなにかを呻き続けるので精一杯だったからだ。
「大丈夫?僕だよ、カラバだよ」
そんな中、俺の肩を叩きながら囁いてくる声があった。聞いた限りでは若い少年のように聞こえる。俺はその少年に自分の置かれている状況を整理しつつも落ち着いて返答する。
「……すまない。俺は君のことは勿論、自分のことすら誰か分からないんだ。この状況も含めて、できる限り教えてくれないだろうか?」
その自分の声も意外にも高かったことから、どうやら自分の体も別の若い人間のものであるらしいということが分かった。そして恐らくは自分という存在は一度消え、別の存在へと転生しただろうということも。
「そっか、さっきの衝撃で記憶が……僕は脚だったけど、君は特に反抗してたから眼を焼かれたもんね……」
「酷い……」
「どうして俺達が……」
周囲からも俺の惨状や自分達の境遇を嘆く声が聞こえる。どうやら瞳を焼かれたのは自分くらいだったらしい。まあ普通に考えりゃ奴隷の焼印なんて腕とかが相場だろう。奴隷の焼印の相場ってなんだよ。
「君はアダムっていう名前だよ。ここで君がそう名乗った名前だから、偽名とかじゃない限りそうだと思うよ」
「そうか、俺はアダムっていうのか」
どうやらこの肉体の持ち主の名前はアダムっていうらしい。特に異論は無いから今後もそう名乗ることにしよう。
それにしてもアダムか……アダムっていう名前は原初の人間として伝承が残っている分、他の色々な創作で度々見かける名前だ。この名前だけじゃこの体の持ち主や今いる世界を特定するのは難しい。そもそもこの世界が創作じゃない可能性はあるし、もしこの世界が知っている創作のものだとしてもこの体の持ち主はただのモブである可能性はあるから真面目に考えるだけ無駄だと思うが。
「そして僕の名前はカラバ。こっちに来てちょっと自己紹介したくらいですぐにアイツらに連れられて今に至るからお互い名前くらいしか知らないけど」
「アイツらは何なんだ?どうして俺達がこんな目に遭っている?」
その質問にカラバが答える前に、周りにいた男達が答えてくれた。どうやらここに連れてこられたのはシュニーダストカンパニーと呼ばれる奴らの仕業で、俺達ファウナスはここでダストを掘らなければならないらしい。
シュニー、ファウナス、ダスト、なんとなく聞き覚えのある単語達に俺は嫌な予感を振り払いつつ、未だに痛む眼と現在進行形で痛みだした頭を抑えつつ俺はカラバに尋ねる。
「なあカラバ、もしかして俺の頭って変?」
「え!?変かどうか……は分からないな。だけど記憶喪失らしいしなぁ……」
「違うわ!そっちの変じゃなくて、俺の頭に何か身体的な特徴はあるか?例えば髪の色とかさ」
「ああ、そっちね!それなら分かるよ。綺麗な赤色だと思うし、そのツノも立派だと思う!」
気を利かせてくれたのか、カラバが俺の頭を褒めてくれるが生憎俺には全く届いてなかった。
RWBYじゃねぇかよ!?しかも俺はあのクソロリコンストーカーメンヘラDVクズ男!最悪の最悪だわ!
はい、俺はアダム・トーラスです……現在は炭鉱奴隷として働いています……ここでアダムを始めとしたRWBYについて振り返りたいと思います。何か考えとかないと寒さとひもじさで死にそうだからね、仕方ないね。
RWBYとは海外で制作されたアニメ作品シリーズだ。少年少女(少女の割合が高い)がハンターという人助けの職業になる為にアカデミーに通いながら、闇の軍勢と戦うというのが大まかなあらすじである。
主人公は4人の少女達で、この肉体の持ち主であるアダム・トーラスはその主人公達に立ち塞がる悪役だ。悪役……なんだけども。
このアダムってキャラの印象は先程も言った通り最悪に尽きる。主人公の1人であるブレイクという黒髪美少女の元彼である彼は、別れたはずの彼女を執拗にストーカーしながら、今のブレイクのパートナーであり主人公の1人でもあるヤンという金髪美少女を嫉妬から襲撃し、その腕を斬り飛ばしたりするのだ。
しかもヤツはファウナス(いわゆる獣人)の差別を撤廃するための団体であるホワイトファングという組織を私物化し、闇の軍勢達と手を組んで襲ってくる最低最悪のクズ野郎だ。
そして無駄にアクションだけはカッコいいから、アダムの全盛期は最初のオープニングトレーラーで暴れるシーンだけとか言われる始末だ。パクリ元のバージル兄貴も比例するようにクズ野郎になったから、個人的にはそこも嫌いポイントだ(完全な逆恨み)
そんな彼の最期はブレイクとヤンのカップルに挟まって死ぬ(物理的に)。ファンの間ではケーキ入刀とか言われたりするが、あまりに情けない最期である。
こう長々と原作の描写を羅列するだけでもアダムというキャラクターがクズであるというのは理解できるだろうが、彼自身も被害者であるというのは死ぬ直前まで身につけていた仮面を取ることで分かる。
そこには今の俺と同じようにSDC……つまりシュニーダストカンパニーの焼印があり、これからの俺のようにここで奴隷として扱われたことへの復讐心を糧にして、これまでを生きてきたのだろうというのは伺えた。だからってブレイクを心の拠り所にしてストーカーするのは気持ち悪いけどさ。
そして俺がアダムということは、恐らく自分もここで散々人間に復讐したくなるような目に遭うということなのだろう。シュニーダストカンパニーの拠点は常に雪が降るような酷い環境だし、ファウナスの扱いからして死ぬより酷い目に遭っても不思議じゃない。
ファウナスとは獣人のような存在だが、これまたファンタジーにはありがちな設定として普通の人間からは差別されており、数々の運動によって表立って差別されることはなくなったものの、現在のファウナス達の多くが自分達で集まって隠れるように遠く離れた大陸に住んでいる。
そしてシュニーダストカンパニーはダストと呼ばれる魔法のようなエネルギーを生み出す鉱石を製造する会社で、今代の社長であるジャック・シュニーはアダムに負けず劣らずの畜生だ。隠れてファウナスを奴隷のように扱うことで莫大な利益を生み出しており、その劣悪な労働環境や悪辣な経営戦略も相まってシュニーという名前に拒否反応を示すファウナスも多い。
原作ではそのことが原因でシュニー家の娘であるワイス・シュニーと、先述したファウナスであるブレイク・ベラドンナが主人公チーム内で諍いを起こすなどのイベントもあった。
それだけ今俺が立たされている環境というのは酷いのだ。酷い環境に酷い役割(キャラ)さらに舞台そのものだって数ある創作の中でも大分酷い方だ。
RWBYの世界はレムナントと呼ばれているが、その状況は薄氷の上に成り立つ平和の一言で、原作が始まるとその平和もめちゃくちゃになる。簡単にまとめると、不死身の黒幕が同じく無限に湧く怪物を使って4つ揃えると世界が滅びる聖遺物を狙ってるのだ。さらにその聖遺物はハンターになる為の学校の地下に封印されていて、うち1つは学長ごと懐柔済み。ホント終わってんな。
そんな世界じゃ多少の悲劇に介入したって無駄に終わるだろうし、そもそもファウナスで奴隷という社会的弱者の極みみたいな俺ではまともに生きていくのでさえ難しい。ファウナス達が隠れ住むメナジェリーであれば安全に暮らしていけるだろうが、あそこには俺の死亡フラグであるホワイトファングとブレイクがいる。まあブレイクは俺から近づかなければ問題ないだろうが、人間の元奴隷で腕が立つ(予定の)男など、ホワイトファングは差別撤廃の旗印として見逃すはずがないだろう。
焼印を隠すにしたって限度がある。俺の焼印は右の目頭から左の目尻にまで到達しており、眼帯では恐らく全て隠し切ることは難しい。ちなみに原作のアダムは眼の部分をカバーする仮面をつけていた。人間どもに恐怖の象徴と知らしめるとか言ってたな……実際はただのカモフラージュだが。
当然普通に暮らすのにそんな仮面つけてたら目立って仕方ないし、せっかく使える眼を屈辱を理由に抑えていても強くはなれないだろう。その辺りもここを出たら考えないといけないなぁ……
ここを出るアテに関しては原作のアダムの存在がそのまま根拠になる。彼がここを出られたなら自分にだって出られる可能性はあるはずだ。問題はそれが外部の力によるものではないかもしれない点にあるが。
まあそれも多分今すぐの話ではないだろうし、俺はしばらくはここで死なない為に力をつけなきゃならない。
この鉱山の奴隷は歩合制のようなナニカで、業務終了時間までに1番採掘が進まなかった奴隷は懲罰室に連れて行かれてそこでお仕置きを受ける。勿論それに慈悲なんてものはなく、まだ奴隷になって1週間も経ってないのに死者が出る有り様だ。そうならないためにも少なくともオーラに目覚めて採掘ペースを上げなければならない。
オーラとはこの世界における不思議な力だ。これを身体や武器に纏わせることで怪物とも渡り合える力を手にすることができ、また使用者によって異なる特殊能力であるセンブランスに目覚めることもある。
オーラは環境にも有効で、冬場の本格的な寒さが来る前に覚えないと一般南国生まれの俺は凍え死んでしまう。
幸い自分がオーラやセンブランスに目覚めることは知っているから修行のモチベーションは高い。心を落ち着けて、自身の内部にある力を知覚する。採掘しながらだとよく分からないが、それ以外の時間の時はなんとなく分かるからそこまで難しくはないはずだ。
ここを出たら鍛えた力を活かして傭兵やハンターもどきにでもなろうかな?差別だってある程度力をつければ跳ね退けるくらいはできるだろうし。
楽しい夢を見て現実逃避しながら、俺は今日もつるはしを振り下ろしていた。そこ、そんな楽しいかとか聞くのはダメだぞ。
この小説を書き始めたのは主人公を虐めたかっただけだったりします。今連載してるのだとね……女の子は虐めにくくてね……