原作でのファウナスについて主にブレイクの口から語られますが、彼女は両親に大事に育てられてきたので実態はもっと酷いと思います。
はい、俺はアダム・トーラスです……鉱山奴隷なってから大分経ちますがなんとか生きてます……
相変わらず寒くてひもじくてちょっと手を休めようとしたら鞭が飛んでくるような酷い労働環境だが、オーラを習得した俺に死角はない。いや、本当に死角があったら死んでしまうような環境だから必死だったんだが。
先述した通り、オーラとはこの世界における魔法のような力だ。少年ジャンプに詳しい方々なら気とか、霊力とか、念とかと言い換えても良い。体の内に宿る魂のエネルギーであり、これを纏わせることで肉体や武器の攻防力を高めることや、肉体を損傷から回復させることなどができる。
RWBY世界での人類の敵であるグリムとの戦いにはオーラが必須である。厳密に言えば武器によるダメージは通るから必須とまでは言えないだろうが、グリムのちょっとした攻撃でさえ普通の人間には致命傷になり得ることを考えるとオーラ無しで戦いたくはない。まあオーラを習得せずにアカデミーに入学したおバカさんもいたりするのだが……
そしてこの世界ではオーラの発展系としてセンブランスがある。センブランスはそれぞれがオーラを実体化させることで発現する特殊能力のことで、個人によってその効果は異なる。例えば俺の能力は受けたり受け流したりした衝撃を自身のエネルギーに換えて行使できる、というものである。
これと非常に似たもので主人公チームのヤンが持つ、受けたダメージを自らの力にするというものがあるが、彼女のは一度発動すれば戦闘中は持続するのに対し、俺のは使うと再度溜めなければいけないという違いがある。ただし俺の場合は直接ダメージを受けなくても良いという長所があるから一長一短ではある。つまり同じセンブランスは存在しないということだ。
俺のセンブランス自体はまだ発現してないが、この能力はどうやって発現させればいいんだろうな……懲罰室でひたすら虐められたら発現したりして。絶対やらないけど。
そんな風に色々と試行錯誤してオーラを習得した俺だったが、他の皆が同じようにオーラを習得しているかというとそうではない。普通に考えたら日々を生きるのに精一杯で、オーラなんて身につけようとも思わないだろう。というか一般的にはオーラの存在自体があまり知られていなかったはずだ。
だからこそ俺の持ってる力はこの狭い世界の中では異質であり、隠そうと思っても隠せるものではなかった。
「おいアダム!お前さっき鞭打たれてたのに全然応えてなかったよな?なんかしてんのか?」
「あ、はい。自分なりにですが鍛えてまして」
この奴隷達の中で最も古株らしいリーダーの男が俺に聞いてくる。オーラなんて言っても理解できるとは思えないし、強制的に目覚めさせることもできるが確か危険だったはずなので(これハンターハンターの設定だったかも)オーラのことはぼかして説明する。
「成程、鍛えてるのか……確かにアダムはまだ小さいのに採掘量は多いよな」
「……そうですね。日々の努力の成果があって嬉しいです」
リーダー格の男が薄く笑みを浮かべながら俺に確認してくる。その笑みになにか嫌な予感を感じながら俺は適当に相槌を打つ。
なんというか、当然のことなんだけどここの人達は人間に復讐したいって話ばかりだからあんまり仲良くなれないんだよな……俺は楽しいことだけ考えて生きていきたいってスタンスだし。
「それならよぉ、お前にちょっと頼み事があるんだよ」
「頼み事、ですか?」
「そうだ!お前がこれに協力してくれれば俺達はここから脱出できるかもしれねぇんだ!」
「脱出!?」
その言葉の内容に周りで思い思いに過ごしていた人達が一斉にこちらを見てきた。勿論こんな場所に防音室なんてものはなく話す内容は周囲にほとんど筒抜けだ。流石に内容が内容だから告げ口する者はいないだろうが、1人残らず俺にプレッシャーを与えてくる。
「その内容はな、このダスト運搬用の配管を遡って本部を偵察して欲しいっていうものだ」
「……正気ですか?」
「勿論だ!この配管はここと本部を繋ぐ唯一の通路、ここさえ通れれば向こうの状況を把握して脱出に役立てることができるだろ?」
「だけどこの配管は狭くて、しかも本部へは上向きだから通れませんよ……もしかして、それで俺に?」
「そうだ、お前は小さいからこの中にも入れるし、鍛えてるから登るのも不可能じゃないだろう?」
オーラを使えば確かにギリギリ出来そうなラインの無茶振りが来て大変困ったので、取り敢えず他の路線から反論する。
「そもそも偵察って言ったって何するんですか?本部の構造を把握したところで、脱出には何の関係もないと思います。脱出するなら警備の緩い夜中に決起してトラックを奪ってしまえばいい。その為には俺が本部を通じてここを抜けるのは必要かもしれませんが」
「何言ってるんだお前?」
俺の冷静な反論に男は激情を顔に浮かべて俺の首を掴みかかる。
「お前本当にそれでいいのかよ!?俺の知り合いはアイツらに全員殺されたんだぞ!お前だってここに来るまでに親しい人を殺されたはずだ!アイツらに報復したいとも思わんのか!」
「俺は……っ!」
反論しようとして周囲の目線に気づいた。そうだ、彼らも同じようにここで奴隷にされるまでに酷い目に遭ってるはずなんだ。じゃないと奴隷になんかならない。そして、俺だけがその記憶が無いんだ。もしかしたら親しい人を失ったのかもしれないのに。
「分かりました。本部を偵察して構造と見張りを調べるんですね」
「ああ、なにも完璧にこなせとは言わない。最低でも武器庫かそれに値するものだけでも調べてくれれば十分だ」
「……はい。時間を掛けて慎重に行います」
「当たり前だ。これでお前がバレたりなんかしたらここの班は全員処刑なんだからな。お前の気が狂って密告なんかしても多分同じだぞ」
男が怖い顔で脅してくるが、そもそも俺が密告なんかできるはずもない。それはこの人達を殺すのと同じことだ。確かにこの人達の殺伐とした価値観は自分には合わないけど、それだけで知っている人達を間接的に手に掛ける覚悟は俺にはない。
男が自分の寝床の方に戻ると周囲の目線は消え、代わりにカラバが話しかけてきた。
「大丈夫?君の方だって記憶を失くして大変なのにね」
カラバは優しく慰めてくれるが、この状況がそこまで悪いものではないのは自分にも分かっている。原作における脱出手段が描かれていない以上、この命令を無視した結果脱出できないなんて可能性もあるからだ。
「まあ脱出できる可能性があるならやらなきゃいけないのは決まってたさ」
「うーん、僕にもアダムみたいに筋肉があれば代わりに出来たんだけどなぁ」
カラバが自らの体を見下ろしながら呟く。彼は線が細くて中性的な顔の上、猫のファウナスということで灰色の猫耳を持っている。その可愛らしい姿から放たれた言葉に、俺はムキムキになった彼の姿を想像して思わず顔を青くする。あまりにも恐怖だ。
「いや、カラバはこのままでいい……」
「???……それにしても、脱出なんて考えたこともなかったなぁ!普段は懲罰室行きにならないように無心でつるはしを振ってたから、そんな明るいこと考えもしなかったや!」
「そうだな。カラバは外に出られたら何がしたいとかないのか?」
俺の問いにカラバはう〜んと唸る。その唸りにはやりたいことが思い浮かばない悲しみではなく、多すぎて絞り込めないような楽しげな思いが込められていた。
「取り敢えずは、師匠に家出しててごめんなさいって謝らなきゃ!」
「師匠なんているのか?」
「うん!凄いハンターなんだ!僕も将来はあの人みたいになりたくて、あの人の家事を手伝ってたんだよ!」
あの人今頃困ってないかな〜とニコニコしているカラバを見て、俺はこのままじゃコイツはハンターより専業主夫になりそうだと思ったが、そっちの方が似合ってる気がしたので黙っておいた。
「そうだな。その為にはまず俺が頑張んないとな」
「無理しなくてもいいんだからね?あの人も慎重にやれって言ってたし、キツいならやめておいた方が……」
「いや、大丈夫だ。体力的に余裕があるのは事実なんだ。それに今後もずっとこんな所にいるくらいなら多少は無理もするさ」
「そっか……ありがとう、アダム」
ストレートに感謝を伝えられて思わず照れる。決してこれはカラバの顔に惚れたわけではないはずだ。ワシはホモじゃない!逃げるように自分の寝床につく。
リーダーが言うには忍び込むなら1週間後がベストらしい。どうやら本部にお偉い方が滞在する予定だから、そこに監視が集中してその分ダスト運搬場の監視の眼も緩くなるはずだとか。
取り敢えず監視カメラとかに映らない動き方とか考えないとなぁ……これが命の懸かってない状況ならスパイ映画みたいで興奮してたのにさ……
そして1週間後、ほどほどに採掘に手を抜いて体力を温存した俺は、第一次本部潜入作戦を決行した。カラバ達に見送られながら配管に潜り込んだ俺は、斜め上へと通じている中を体幹と腕の力でよじ登っていく。本来ならこの配管の中はエレベーター式となっていてボタンひとつで向こうまで登っていくのだが、夜中はそれが切られているため自力で登らなくてはいけない。
普通の人間には絶対に無理な芸当でも、筋力に優れたファウナスであり更にオーラも使える俺にとってはそこまで難しいものではない。時間を掛けながらも確実に登っていき、遂には本部へと到達することができた。
配管から外に出る前に慎重に警備員の存在や監視カメラの位置を確認する。リーダーの言った通りここの警備は手薄だったらしく、スムーズに確認を終わらせて室内に潜り込むことができた。
さて、ここからが本番だ。警備の目を盗みながら武器庫の場所を調べる。当然警備に見つかってしまえばアウトだし、多くはないであろうが監視カメラだって存在するだろう。それを全て避けて探すのは無理がある。
ということで俺は創作ではよくあるダクトを通って潜入する作戦を取ることにした。と言ってもダクトだけでは完全に調べることはできないからあくまでも繋ぎの作戦ではあるのだが。
配管からダクトと、狭い場所ばかり通ってて嫌な気分にもなるがそれを押し殺して部屋を見て回る。流石に帰ってこれなくなるのはまずいから頭の中で簡易的ではあるが地図にしていく。ゲームで鍛えたマッピング力を活かして時間は掛かったものの、取り敢えず周辺の部屋の構造は理解できた。
流石にそう簡単に武器庫の情報は得られなかったものの、運良くロッカールームの存在を確認した俺は第二の作戦を決行すべく、その部屋のダクトで息を潜めながら誰かが来るのを待つ。
そうしていると扉が開き、警備員の制服を着た男が疲れた様子で入ってきた。彼は自分のロッカーを開けると私服に着替えてロッカーを閉める。そして鍵を掛けて扉へと戻ろうとする瞬間、俺は動き出した。
暗闇に乗じて警備員の背後から手刀で首筋を狙う。手刀は吸い込まれるように警備員の首筋に命中し、警備員を昏倒させた。ファウナスは暗視能力に優れているから暗闇での奇襲なんて容易いのだ。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
あとは気絶した警備員をベンチに運び、ロッカーの鍵を拝借して制服を頂くというわけだ。制服も何着か替えがあったので心置きなく盗める。あとはこの警備員の反応次第で今後の俺の動きやすさも変わるだろうが、多分大事にはならないだろう、ヨシ!
では失礼してと制服に着替え、平然と廊下へと出る。ダクトを使わなかったのは単純に気分の問題だったが、ダクトからの光景と実際通った時の光景の擦り合わせっていうのは早めにやっといた方がいいはずだ。特に今はある程度目的を達成したから余裕がある。
だがその判断がフラグであったとは、この時の俺は気づかなかった。
取り敢えず周囲の状況を確認した俺は、本当に今日は警備員は別の所にいるのだなと実感した。いくら制服を着ていながらでも直接接触すればバレるのは必至だから絶対鉢合わせしないように気をつけていたのだが、その必要も無かったくらい周囲に警備員の存在はいなかった。
ここまでくると、ここに来たというお偉い方の正体が気になってくるな。警備を厳重に固めるくらいなんだからよっぽどの人のはずだろうけど、わざわざこんな辺鄙な支部までくるなんて何を考えてのことだろうか。
確かにシュニーダストカンパニーとしてはここはかなり大きな支部だろうが、あくまでマントルの中ではってくらいだ。
俺達のいるここソリタス大陸には全土がアトラス王国と呼ばれる国となっており、マントルはその中の都市のひとつだ。元々はマントルが首都だったがアトラスという都市に首都を移した結果、マントルは寂れていったという歴史を持つ。
だからその偉い人がアトラスにある本部ではなく、わざわざマントルの支部を訪ねてきた理由が分からないのだ。鉱山という意味でも本部の方が資源も豊富だろうし。
そうやってお偉い方へ思いを馳せていたのが悪かったのかもしれない。俺は前方にばかり警備員の存在を注意していて、後ろに関してはかなりお粗末だった。だから突然後ろから声を掛けられた時、咄嗟に出てきたのは声にならない悲鳴だった。
「あなた!」
「 」
俺はギギギと首を振りながら後ろを向く。奇襲は考慮に入れながら、戦闘に入ってしまえば最悪殺しまで覚悟しなければならないと相手の顔を見て、完全に思考停止した。
「道に迷ったのですが、どこがお父様の部屋か教えてくださる?」
そこにいたのは、小さな氷の女王だった。
ファウナスの差別描写ですが本編だとあんまり感じませんよね。これに関してはオズピンの元で統治しているヴェイルや資源が少なく生きるのに必死であろうヴァキュオでは差別意識が育たないからだと思ってます。
個人的にやばいと思うのは今主人公がいるアトラスですね…あそこはSDCvsホワイトファングの対立が起きているので相当根深い問題だと思います。
あの時止めわんこも相当苦労してただろうな…