クズ男転生   作:sesamer

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ワイスちゃんの父親は公式でも庇いようがない程のクズだと明言されています。なので本小説で悪く書いてもアンチヘイトにならない可能性が…?



3話 姫 クズと遭遇する

 ワイス・シュニーとはRWBYにおける主人公の1人で、優れた判断力と多彩な能力を発揮するセンブランスで主人公チームのサポートを得意とする、蒼白い髪色の少女だ。だがその胸は平坦であった。

 

 そのパーソナリティは大企業シュニーダストカンパニーの御令嬢で、アトラス軍に所属する厳格な姉と会社の跡継ぎである弟の板挟みになっている。更に父は既にご存知の通りクズで、母はそのクズのせいで心を病んでしまったので本人は大分お労しい生い立ちである。今のワイスがどうなってるかは分からないけど。

 

 そんな現実逃避の思いでワイスについて思い出しながら、俺は彼女を瞬時に取り押さえてロッカールームへと連れ込む。ワイスがどうやってここに来たのかは分からないが、監視カメラの目がある以上は下手なことはできない。今の行動も大分怪しい気がするが、監視カメラに映ってないことを祈ろう。

 

 そして監視カメラの無いロッカールームへと逃げ込んだ俺は、ワイスを解放して全力で謝罪と命乞いをする。どうやらワイスは俺がファウナスだと分かったようで(このツノを見れば当たり前だ)殺されると恐怖していた。

 

 とにかく俺はここの奴隷として働かされていること、脱出の機会を探る為にここに潜入していること、ワイス達に危害を加える気は無いからどうか見逃して欲しい、といったことを全力で伝える。

 

「そう、あの噂は本当だったのですね……我が社が貴方達を不当に働かせているという噂は」

 

「あぁ、そうだな。この焼印を見れば誰だって分かるか」

 

 ワイスは自分の会社がそのような悪どいことをしているのがショックだったらしい。そりゃそうか、本編のワイスに比べてかなり幼いこのお嬢様は、暗い物事から離されて育てられたとしても何ら不思議ではない。

 

「君が正義感を働かせて俺達を解放しようとしても無駄だろう。この方針を定めたのは君の父君だ。彼がいる限り俺達の扱いは変わらない」

 

「お父様が……そんな……」

 

「ここで出会ったことは忘れよう。その方がお互いのためなんだ」

 

 ワイスを諭すように説得する。実際この邂逅が原因で原作に影響を与えたなんてことになったら洒落にならない。もしワイスがチームRWBYに参加しなかったら、シナリオの至る所で弊害が出るくらいには彼女は有能なのだ。

 

「それは、嫌です。犠牲を知っていながら見捨てるなんて、それは知らないままでいることより残酷ですわ」

 

「だが、現状ではそれが1番なんだ。君がどんなに頑張ったところで、君の父君を始めとした人達が俺達を解放するとは思えないし、ここにいる俺達は俺達で脱出するための希望を捨ててないんだ」

 

 言外に君の存在は不要だとワイスに伝える。ここで彼女が余計なことをして俺達が全滅したら最悪だし、それでワイスが気に病んでしまって後の行動に支障が出る、なんてことは絶対にあってはならない。

 

 

 

「それなら……」

 

 だが、俺はこの時ワイスを侮っていた。原作でも周囲の反対を押し切ってビーコンアカデミーに入学した強情な彼女を、この程度の説得で制御できると思うのが間違っていたのだ。

 

「それなら私にも貴方達の脱出を手伝わせてください。例え我が社が被害を与えているファウナス全員に対し、私が出来ることは何も無くても、貴方達くらいになら出来ることはあるはずです」

 

「マジ?」

 

「ええ、大マジです」

 

 確かに言っていることは間違いではない。この状況じゃ猫の手でも借りたい気分だし、元々このお嬢様の騒ぎで今後の潜入が厳しいものになるだろうとは思っていたのだ。

 

 それにここで彼女を無下に突っぱねて、独自で行動されてしまったら元も子もない。ここは協力を結んで彼女の行動をコントロールするのが最善だろう。

 

「……分かった。なら君にはこのマントル支部の構造を探って欲しい。それに、君がいることで俺達に対する監視も緩くなる」

 

「でしたら、私は貴方達の脱出を決行する日には、ここの人の目を集めておくのもアリですわね」

 

 

 

「……いや、それはダメだ」

 

 彼女は知らない、この脱出騒ぎが間違いなく血を伴うものになることを。それは俺が意図的に知らせてないことだ。ワイス・シュニーはそのような暴力を絶対に認めない人だから。

 

 幼い少女を騙すクズの所業に罪悪感を覚えながら、俺は彼女をそれらしい言葉で言い含める。

 

「君がいることで監視が緩くなるのは事実だが、実際には君がいる分で警備自体が厳しくなっている。脱出するという意味では君はいない方が良い。その辺りは次に接触する時に決めた方が良いだろう」

 

「分かりました。では貴方にはコレをあげます」

 

「これって……えぇ……」

 

 そうして手渡されたのはスクロールだった。スクロールとはこの世界での通信手段で、端的に言えばスマホである。そんなお小遣い程度のノリで渡すものじゃないと思うんですけど……

 

「安心して下さい、替えのスクロールだってあります。そこに映っている番号に掛ければ私へと繋がります。スクロールの使い方は分かりますか?」

 

「あぁ……多分……」

 

「多分って……まあいいですけど。では私がここの構造を把握したらデータを送りますので、その時にまた連絡を取りましょう」

 

「分かった。それと、今の時間はここで伸びている男と話していたことにしてくれ。コイツは警備員の1人だ」

 

 そう言ってワイスを置いて俺は帰還する。紆余曲折ありすぎて作戦は滅茶苦茶になったが、本部の構造を把握するという目的に関してだけ言えば、ほぼ完了したと言っていいだろう。奴隷が抜け出して潜入することと、社長令嬢がマップデータをもらうのでは天と地ほどに難易度が違う。

 

 

 

 帰還すると最初に出迎えてくれたのはカラバだった。俺の姿を見ると顔を輝かせて近づいてくる。

 

「おかえり!大丈夫だった?」

 

「ああ、なんとかな。本部の構造に関しても、ある程度把握できる見通しが立った」

 

 俺はワイスから貰ったスクロールを見せていると、そこへリーダーの男が駆けつけてきた。

 

「おいおい、そりゃスクロールじゃねぇか。大手柄だな」

 

「はい、潜入した先でちょっとした協力関係を結べた人がいまして。その協力者が本部の構造を調べて、これに送ってくれるそうです」

 

 俺の報告に男は露骨に不機嫌そうな顔をする。

 

「はあ?協力者って、そいつも人間だろ?本当に信用できんのかよ」

 

「俺は信用しました。それに、スクロールに加えて本部の情報の横流し、騙そうとするには協力者の犯すリスクが大きすぎる」

 

「ふん、まあいい。ならばその情報とやらを入手次第、俺達も作戦の決行を決めるぞ!」

 

 その一言で周囲が沸き立つ。どうやら本格的に脱出が現実的なものとなったのが嬉しいようだ。まあ俺も嬉しいしな、ようやく自由になれそうだ。

 

 

 

 そこから先はトントン拍子だった。ワイスからデータを貰った俺は、リーダーにそのデータを渡しながら皆と話し合って決行の日時を決める。それは1週間後の深夜に決定した。少し遠い気もするが、まあそれだけの猶予があれば皆脱出に向けて英気を養うことができるだろう。

 

 俺としてもワイスに連絡を入れて彼女が予定を決められるくらいの猶予があって助かった。その日の夜に作戦決行が決まったことと、とりあえずスクロールは返したいことを伝えた。小市民である俺からしたらこんなものただで貰うのは気が引けるからなぁ……

 

 ワイスからの返事は3日後に直接会いたい、という内容だった。まあスクロールを返すのに絶好の機会だし、この機会に色々と感謝しないとな。

 

 

 

 

 

 私は今まで何も知らなかった。流石に噂が立つ以上、我が社だって完全な清廉潔白ではないとは薄々感じていたが、こうして直接アダムと会ったことでそのような噂が本当のものであり、今まで私は会社の社長令嬢という立場でありながら何も知らなかったことが分かった。

 

 そんな私をアダムは責めなかった。彼らからしたら私は憎しみの対象になってもおかしくないのに、私には彼らに何かをしないといけない義理はないのだと。

 

 だが、私はそうは思わなかった。彼らに何かをしてあげて、自分が父と同じような非道な人間ではないと思いたかった。要は自己満足だったのだ。

 

 

 

 この頃は会社の方針以外にも父への不信感は高まっていた。彼はいつも会社が忙しいと家族の時間を作ることはなかったし、そんな彼に母は不満を口にするのも多かった。私はこの環境を変えたくて、父の仕事現場を見学したいと彼に伝えた。

 

 それを聞いて父は大層喜んでいたが、それが娘の成長を思ってではなく会社の利益を思ってだと分かったのは実際の見学が始まってからだった。

 

 彼は私を現場に近づけることなどせず私を名目にしたパーティを開くばかりで、どう見ても私を客引きマスコットにする気にしか思えなかった。私はそんな父に反抗して夜中に抜け出し、アダムと出会った。

 

 

 

 彼の脱出を協力することで私は自己満足を得ることができた。彼らに同情したのは事実だし、今だって本気で彼らを助けたいと思っているが、この行動自体は客引きマスコットではない、私にしかできない何かを探して申し出たものであったのも事実だった。

 

 だけど、今の私はそれだけ欲しかったのだ、私にしかできない何かが。もう数日で私も10歳になる。ウィンターお姉様は既にアカデミーに通う為に父に許可を取り付けた。弟も既に我が社の後継として決まっている。そんな中で私だけが宙ぶらりんだった。

 

 だからここ数日の私は満ち足りていた。父の悪行を真っ向から立ち向かうことはできないけど、アダム達を助けることでそんな父と私は違うのだと思うことができた。

 

 

 

 自分のやりたいことも見つかった。父を超えて、シュニーダストカンパニーを本当に清廉潔白な企業に変えるのだ。まだ何も具体的な方法は分からないけど、今までの自分を変えられたことを喜び、10歳の誕生日を晴れやかな気持ちで迎え、

 

 父と母の大喧嘩で家庭が崩壊した。

 

 

 

 

 

 皆には本部の動きを見てくると言い残して配管を通って本部に向かう。そう時間も掛からずに本部の運搬室まで着いた俺は、配管から出てワイスの後ろ姿を確認する。

 

 今回はワイスからの申し出でここで落ち合うことになっていた。俺としてもスクロール返したいと思ってたし、直接会えるならそれに越したことはないだろうとワイスに呼びかけて、思わず怯んだ。

 

「アダム……」

 

 目に涙を浮かべたワイスがこちらに駆け寄って抱きついてきたんだが!?ナニゴト!?とにかく俺はセクハラに抵触しないように慎重に何があったのかを聞き出す。

 

 どうやらワイスの話では先日自身の10歳の誕生日があって、そのパーティーに父親であるジャック・シュニーが同席せず、母親であるウィロウ・シュニーと大喧嘩をし、そこでジャックが自分達の結婚はシュニー家の権力を狙ったものであったのを暴露したらしい。ほんとクズ!

 

 それで母親も荒れに荒れ、今や酒に溺れているような状態だそうだ。ワイスは彼らの姿にショックを受けて、家族がいないところに居たかったと。

 

「そうか、辛かったな」

 

「ごめんなさい。辛い境遇なのは貴方も同じなのに……」

 

「いや、人の悲しみは人それぞれだ。他人の境遇の方が辛いからってその悲しみまでは否定できない」

 

 実際今の俺は本来のアダムとは別人だから、ここに来るまでの生活は全く分からない。もしかしたら家族に囲まれて幸せに過ごしていたのかもしれないし、最初からそんな人はいなかったのかもしれない。

 

 そんな俺からすると、家族環境が酷いことへの悲しみは分からないし、分からないからと言って貶めるものでもない。

 

「だから俺は君の気持ちを分かってあげられないし、何もしてあげられない。精々元気出してくれと言うくらいだ」

 

「……私を連れてって下さい。もうあんな場所、居たくありません」

 

「な、何を言っているんだ、君のような、女の子が、家出なんて、するものじゃ、ないぞ」

 

 思わず片言になってしまうほど焦りながら説得を始める俺の姿に、ワイスは暫くこちらを見ていると、吹き出したように笑い始めた。

 

「ふふふ、貴方のそんな顔、初めて見たわ」

 

「……人を騙すのは良くないぞ」

 

「ご、ごめんなさい。ふふ、あまりに貴方が必死なものだから、おかしくって」

 

 将来は悪女になりそうだなと原作での姿を思い出しつつ、ワイスから借りたスクロールを返す。

 

「はぁ……はい、スクロールは返すよ。これまでありがとうな」

 

「え?それは貴方にあげると申しましたわ。というか既に新しいものも買ってもらってるから、要りませんわそんなの」

 

「……やっぱりアンタお嬢様だわ」

 

 じゃあ今日は何の為に来たんだと内心呆れつつ、俺はワイスに別れを告げる。これから脱走の日までは数日あるが、ワイスの安全の為にも実家にいてもらった方が良いだろう。

 

「では、さようなら。貴方のご健闘を祈っていますわ」

 

「ああ、そっちこそ。辛いかもしれないが頑張ってくれ」

 

 

 

 

 

 配管を通って鉱山へと帰還する。先日はカラバのお出迎えがあったが、今回はそんなものなかった。悲しい。

 

 

 

 ……いや、そもそもおかしい。カラバどころか他の人も見当たらない!一体何があった!?もしかしてこの段階になって計画がバレたのか!?

 

 必死に誰か他に人が残ってないか、痕跡がないかを探した俺はそれを見つけた。それは俺が普段から寝床にしてる場所に小さく走り書きされていたものだった。

 

 

 

 ごめん、アダム。リーダーは君と君に協力している人が信じられないから、作戦の決行日をずらしてたんだ。今、僕たちは本部を襲撃してる。騙しててごめんなさい。

 アダムは先に脱出しといてよ。僕達と違って、本部の人達に恨みはないんでしょ?

 

 それはカラバの残した書き置きだった。それが本当なら今頃皆は……

 

 

 

「ワイスが危ない!」

 

 俺はスクロールを開きながら、先程通った配管へ走る。何もかも手遅れにならぬように急ぎながら。

 

 

 




ワイスも大概酷い家庭環境ですよね。他のチームRWBYのメンツが温かい家庭環境な分、ワイスの冷え切ったそれが際立ってます。というかワイスの父親はマジでクズ。
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