お姉ちゃんにまっかせなさい☆   作:( ̄▽ ̄)

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3話

 

 

 

さてさて、この長かった試験もとうとう最終日を迎えました

上位7人以外の合格者は帝国で訓練をするそうで帝国行きの馬車に乗りもう出発してしまいました

 

上位7人はまた明日出発するらしいのでこの一日は最後の休暇の一日ということなりそうである

そう思うと、この場所も愛おしく……………ならないな。ベッドは硬いし、暇だし、ナハシュは全然相手してくれないし

 

……………、ん?そういえば他の合格者とまったく会話、もとい、顔合わせすらしていなかったな

いや、みんなすぐ治療とか言って各自のテントに行っちゃうから話しかけるタイミングがなかったのですよね

 

これから一緒に暮らすというのにあいさつしていなかったことに失念しつつ今から挨拶回りに行こうかなと考えたコルネリアは近場にあったテントを覗き込む

 

既に出発した帝国組のテントだったのか人の気配はなくガラリとした雰囲気のテントに踏み入りあたりを見渡す

 

「……ふーむ、空きテントのようね。次にいきま…………!!!!」

 

誰もおらず次のテントに移動しようと引き返そうとしたところで突然人影が視界の端を横切り思わずのけぞってしまった

いや、はじめからそこにいたがあまりの気配の薄さにまったく気づかなかったのだ。

 

目を凝らし見てみるとそこにはベットの上で小さくうずくまった黒髪の少女がそこに存在していた

 

「……………え、えーと、こんにちは?大丈夫?」

 

コルネリアが呼びかけると少女は俯いていた顔をあげコルネリアの方を見つめる

その顔にコルネリアはさらに驚いてしまった

目のまわりに薄黒い暈かさのできたその顔は鈍い鉛色をして、瞳孔は光に対して調節の力を失い真っ黒な深淵を思わせるような瞳をしていた

これほど絶望を思わせる顔をコルネリアは見たことがなかった

 

「…………ぐすっ。………クロメ…………、ううっ………」

 

驚いていると少女は何かをつぶやき静かに泣き出してしまった

 

 

 

 

 

 

…………ええ。………どうしたらいいんでしょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽつりぽつりではあったが少女からどうにや理由を聞くことができた。

なにやら一緒に試験を受けた最愛の妹と離れ離れになってしまったそうだ。

妹さんはキルランクが一つたりなかったらしく、少女は自分が守らねばならないのに、クロメがいない世界など…………、自分が弱いせいでなどと嘆き続けていた

 

 

 

………うん、これはあれですね。………かなり重度のシスターコンプレックス、略してシスコンですね

 

「………妹さん、死んだわけじゃないんでしょう?同じ帝国に所属しているわけだし、また会えるわよ」

 

「……………………」

 

なんとか考え出した励ましの言葉はまったく届かず………というより、どの言葉も耳に入らない感じだ

というか、随分とやつれているな。食事していないのだろうか

 

 

コルネリアは一息ため息をつくと立ち上がり俯く少女を置いてテントをあとにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………で、何で俺はこんな手伝いしてんだ」

 

たまたまそこにいたのをとっ捕まえ手伝わせているガイ君は沸騰する鍋を見ながらそうぼやきはじめた

ガイ君というのは私の次に合格した上位7人の1人である

 

ガイ君ったら私を見た瞬間一目惚れですとか言ってプロポーズしてきたんだよね

丁重にお断りさせていただきました

 

「コルネリアが付き合って欲しいって言うもんだから俺期待したんだぜ?

………なのにそれが料理の手伝いって

 

 

これ誰に作ってるんだ?」

 

「んー、ちょっと食べさせたい子がいてね」

 

そう言いながらコルネリアはハンバーグの挽肉を作るために肉を包丁で叩いていく

 

「肉を焼いたものだけじゃ物足りないし、スープとハンバーグと……あと何ができるかしら?」

 

「………けちくさい大人からよくこんなに肉がもらえたな。

これだったら俺の食事も、もうちっと豪華して欲しいもんだぜ」

 

「ん?……ああ、違うわよ。これ私が仕留めた………ええとヒュージタイガーって名前だったかしら

捨てるの勿体無かったから冷蔵庫で保管してもらっていたのよ」

 

「………え?」

 

鍋をかき回していたガイの手が止まる

 

「………ヒュージタイガーってあのでっかいやつ?」

 

「そうねえ、かなり大きかったわ」

 

「………ナイフで?」

 

「?いいえ、素手で。

 

ふふん、一発K.Oよ」

 

「…………ゴリラじゃん」

 

 

 

ダンッッッッ!!!

 

 

それまで小刻みにリズム良く肉を叩いていたコルネリアの方から一際大きな音が鳴り響き思わずガイが振り返るとそれまで肉を置いていたまな板が綺麗に真っ二つに切り裂かれていた

 

「……………ガイ君、何かあったかしらー?」

 

「イエナンデモゴザイマセン」

 

うむ、レディにそんなこと言ってはダメだぞ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、食べな 」

 

調理を終えたコルネリアは大皿に盛った料理を運び入れ少女の前に差し出し食べるように促す

かなりの量があり地面に覆い隠すほどの量が並べられた

 

「…………いらない」

 

…………ふぃー、落ち着こう私。

私も精神年齢は大人だからね。そう、冷静に話し合おう

 

「歯食いしばれや!!!!!!!!!!」

 

「!!!」

 

コルネリアが突き出した拳は少女の顔を見事に捉えテントのベッド、後方に備えてあった机を吹き飛ばしながら地面に叩きつけられてしまう

 

「……うっ」

 

突然の痛みに悶絶にうなだれているとコルネリアが少女の胸ぐらを掴み上げる

 

「うじうじするのは構わないわ。弱音もいい、好きなだけ吐けばいいわ!

だけどねぇ!生きるのすら諦めてんじゃないわよ!!!!!!!!!!」

 

「……………」

 

「あんたはまだ何も失っていない。妹さんはまだ生きてるでしょ!

今必死に生き残って強くなってまた会えるように生きていきなさいよ!

それもとなに?妹さんはあんたが見ていないとすぐ死んじゃうようなか弱い存在なの!?」

 

「!!!ち……ちがう!クロメは強い!

何度も私を助けてもらった!」

 

「だったらあんたの今することは決まってるでしょ!」

 

すると少女はまたぼろぼろと涙をこぼし始める。しかし、先ほどとは違い少女の瞳には決意に満ちあふれていた

涙を流しながら少女は並べられた料理の数々を胃に流し込み平らげていく

 

 

 

全く世話の焼ける子だわ。………ふふ、いい食べっぷりね。どんどん料理がなくって………え、うそ、私作りすぎて20人前くらいは作ったはずなんだけど………ええ………

 

カランッ…そんな音を立てて皿に並べられた料理の数々をものの数分で完食してしまった

幻覚でも見ているのかと呆気に取られるコルネリアの元に少女が駆け寄ってくる

 

「すみません、ありがとうございました………えっと、」

 

「あ、ああ。いいのよぜんぜん。

そういえば名前言ってなかったわね。私はコルネリアよ」

 

「ありがとうございましたコルネリアさん

私はアカメの言います」

 

「ふふ、固いわよー。

私たち、これから一緒の屋根の下で過ごしていくのよ

もっとくだけてもいいわよ」

 

「……………ありがとう………

 

 

コル姉」

 

その瞬間コルネリアは電撃がほとばしる

 

な、何この感覚。や、やばい、なんか興奮して心臓がバクバクしてきた

ふーふー

 

……コル姉……姉

 

平常を取り戻そうと必死になるコルネリアであったがアカメからの言葉脳内で幾度となく再生され余計に昂り顔を赤らめてしまう

 

「だ、大丈夫?コル姉」

 

クグギュアッ!!!

 

「ふーふー、も、問題無いわ。……ばっちこいよ」

 

悶々とうなだれるコルネリアに追い討ちをかけるアカメの攻撃を耐え忍び気持ちを必死に落ち着かせようとしていると少し暗い顔をしたアカメが訪ねてきた

 

「コル姉、………私強くなれるだろうか」

 

………………まったくこの子は

 

「………強くなれるかなんてわかんないわよ。でもね、不安かもしれないけど生きて歩き続けなさい。立ち止まっちゃ強くなれるかなれないかなんてわかんないもの

 

でももし、またどうしても不安で立ち止まっちゃう時がきたら………」

 

「………きたら?」

 

「お姉ちゃんにまっかせなさい☆」

 

 

 

 

 

 

 

 


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