オレンジの誓い   作:黒の夢

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第7話 想い出

 十年以上前のあの日のことを今も、ときどき夢に見る。

 忘れられない、忘れるわけがない。本当にどうにもならなかったのか、もっと別の最適な方法があったんじゃないか、何度も何度も自問自答を繰り返している。今さら何を悔やんでも遅いことは、もう判っているのに――。

 

           ☆  ☆  ☆

 

 新チームの仕上がりはまずまず、思いがけない嬉しい誤算もあって、来月の新人戦へ向けての見通しも立った。より精度を高めていけば、いい結果を残せる可能性は充分ある。

 

「グッドゲーム! スバらしい試合だったね」

「ありがとうございます。お忙しいところ、ありがとうございました」

「いやいや、中々顔を出せなくて申し訳ない。さて、相手校の責任者と話しをしてくる。任せてもいいかな?」

「はい。グラウンド整備が終わり次第、解散予定です」

「うむ。報告は省いてくれていいよ。僕も直接、職員室へ向かう」

「分かりました。お疲れさまです」

 

 無堂先生に軽く会釈をして、試合で使用したグラウンド整備後、ベンチで水分補給をしながら今後のスケジュールに関して短いミーティングを行い、昼の十二時を迎える前に解散。

 報告は省いていいとのことだったため、部室の戸締まりを確認し、いつもの様に聞こえる吹奏楽部の演奏が止まったのとほぼ時を同じくして、校門を出る。すると、上杉と一緒によく零奈先生にしばかれている女子が待ち構えていた。

 

「待ってたぜ。ちょっとツラかしな」

「イヤだ。それじゃ」

「即答すんな! 大事な話がある」

「俺には、無い。疲れてるんだ」

「お前に無くても、私にはあんだよ。いいから来いって」

 

 半ば強引に連れて行かれた先は、町の喫茶店。ちょうど昼時ということもあって、それなりに繁盛している店内の四人がけのテーブル席で、向かい合って座る。

 

「いらっしゃい。何にする?」

「いつもの。こいつも同じやつ」

 

 勝手に決められた。しかも、常連のやり取り。店員さんも顔馴染みなわけで、突っ込んだ話しもしてくる。

 

「はいよ。もしかして、彼氏君?」

「今年の夏は、過ごしやすいですね」

「ああー⋯⋯そうね」

「はあ? なに言ってんだ?」

「あ、すみません。アイスティーお願いします」

「アイスティーね。少し待っててね。ドンマイ」

「なにがだよ? てか、シカトすんな。まあ、いい」

 

 注文した品が届くのを待つ間に、下田は話しを切り出した。当然、というべきだろうか。話題は、あの二人のこと。

 

「なんか、学校側とモメてんだろ?」

「どこ情報だよ」

「教えねー。やっぱ、辞めんのかな? あいつら⋯⋯」

「まあ、いずれはそうするしかないとは想う」

 

 三年だったとしたらまだしも、まだ二年の夏。もし仮に、万が一在籍が認められたとしても、宿した命を産むと宣言した彼女の留年は確実。上杉も同様に、二人を、新しい家族を護っていかなくてはならない。親族のサポートがあったとしても、子育てをしながら通うのは、現実的に不可能。

 

「ハァ、だよな。病院行けって言ったの、私なんだよな」

「それは、関係ないだろ。早いか遅いかだけで、いずれ判ってたことだ」

 

 頬杖を付いた下田は、窓の外へ顔を向けた。

 互いに言葉は発せず、汗をかいたコップの氷が溶けてカランッと小気味よい音を奏でる。その音を合図にしたかのように、トレイを持った店員がテーブルに来た。

 

「お待たせしましたー」

「キタキタ!」

「どうも、って⋯⋯」

 

 注文を取りに来た店員とは別の人で、今まさに話題にあがっていた女子だった。それに、あまり思い詰めたようには見えない。

 

「びっくりした? ここ、私のバイト先」

「この顔見れば、分かるだろ」

「ふふっ、はい、どうぞ」

 

 下田がオーダーしたメニューは、手作りサンドイッチ。

 

「うっま! お前も食えよ」

「あ、ああ⋯⋯」

 

 まだ混乱している頭のまま、一口ほおばる。

 

「美味い」

「やった」

「だろ? コイツが焼くパンは、格別だからな!」

「パンも手作りなの?」

「うん。お店のオーブン使わせてもらってるんだ。はい、アイスティー」

 

 ストローを添えたアイスティーを置いた彼女は、トレイを前で持ち直して会話を続けた。

 

「学校辞めた後も、ここのバイトは続けさせてもらえるんだ」

「そうなんだ」

「なあ、ホントに辞めんのか?」

「もう、決めたことだから。それに元々、進学するつもりはないから。私、自分のお店を出すことが夢なの」

 

 ――将来、自分の店を開く。

 その夢を持ったきっかけが、上杉との出会い。一年前の夏休み、ここでのバイトを始めばかりの頃、昼間の忙しい時間が過ぎて、店主が用事で店を留守した時、偶然来店して来た上杉たちが注文したメニューが、手作りサンドイッチ。

 

「美味しいって言ってくれたんだ。ちょっと焦がしちゃったのに」

「アイツ、味音痴なところがあるからな。私らは、普通に残した」

「だったね。でも、嬉しかったんだよ」

 

 微笑んだ彼女は、本当に嬉しそうで。

 

「コイツ今、え? そんなことで? みてーな顔してたぞ」

「してない」

「ひどーい」

「だから、してないって」

「あははっ、冗談だよ。だからね。私は、みんなより少し早く卒業するってだけなんだよ」

 

 その言葉には、後悔も、憂いも、淀みも一切感じなかった。

 

           ☆  ☆  ☆

 

 後日、喫茶店での出来事を、生徒会室で待機中の中野に伝える。

 

「では、彼女の両親の方は、一定の理解は示しているんだな?」

「ああ、そう話してた」

 

 本音の部分は、判らないけど。ただ少なくとも、頭ごなしに否定している訳ではなさそうな話し方だった。問題は、上杉の方だろう。彼女の両親との話し合いの機会が今、零奈先生立ち会いのもと設けられている。

 

「今回の場は、学年主任、生徒指導教諭は同席していない。誘導的な質問は受けないはずだ」

「はあ? 誘導尋問だったのか?」

 

 中野は取り出した一枚のプリントを、長机に置いた。

 

「零奈先生が事前に、互いの両親に聞き取り調査した話し合いの内容だ」

「なんだ、これ⋯⋯子供に関しては、まったく織り込んで無いじゃないか」

 

 卒業した方が将来ためとか、相手の素行は普段から問題視され目に余るものがあるとか、学校側の糸は見えるが、こと核心部分においては曖昧に言葉を濁して踏み込んでいない。子供を堕ろすこと、堕胎を望む声は一切記載されていない。

 

「上杉の両親に対しても、似たような内容だったそうだ。彼の場合は、素行の悪さを盾にしたような内容だったけどね」

「じゃあ、執拗に迫ってたのは――」

「穿った見方をすれば、感情的になりやすい上杉を挑発するためとも捉えられる。手を出せば、立場は確実に悪くなる。勘ぐりは、きりがない」

 

 実際、零奈先生が間に入っていなければ、手を出していた可能性を否定出来ない。彼女の口から出た「勘当」という言葉も。

 よくよく考えてみれば、上杉たちは自ら学校に報告して、自主退学を申し入れた。妊娠が発覚したのは夏休み前、両親とも事前に何度も話し合いを重ねていたに違いない。だとすれば、土壇場でひっくり返されたと想ってしまっても不思議じゃない。

 

「⋯⋯アンフェアなやり方だ。彼らは、定められた校則を破った。ならば、公正な聞き取り調査を行った上で、学校として厳正な処罰を下せばいいだけの話しだ。強要するような話しではない」

「⋯⋯だな」

 

 不正を嫌う中野が憤る理由がよく分かる。馬が合わない相手のことであろうとも、この件に力を入れる理由も頷ける。

 

「しかしこれで、明日の学校側との話し合いを持って、この件は決着を見ることになるだろう。僕たちの務めも終わりだ」

 

 零奈先生の人気にあやかって集めようと企てていた嘆願書の準備も無駄に終わった。俺たちの力なんてものは最初から必要なくて、先生は一人全てやってのけてしまった。

 不意に、扉がノックされた。中野の返事の後、一呼吸間を置いてから入ってきたのは、零奈先生。

 

「零奈先生――」

「そのままで結構ですよ、中野君」

 

 姿勢を正そうとした中野を制し、先生は話し始める。

 

「ご両親との話し合いは終わりました。最終的に、二人の意思を尊重する方向でまとまりました。ご苦労さまでした」

「いえ、大して力になれず申し訳ありません」

「決してそんなことはありません。あなたたちは、二人の味方でいてくれました。心強かったことでしょう。それから、彼女のご両親から言づてを預かっています。気付いてくれてありがとう、と」

「だってさ」

「⋯⋯僕に振るな」

 

 何とも言いがたい気恥ずかしさのようなものを感じて、振った先の中野の口元は、ほんのわずかに緩んで見えた気がした。

 とにかく、何はともあれ今回の件は、決着⋯⋯と思いきや、まさかの言葉が続いた。

 

「あなたたちにお願いしたいことがあります」

 

 今度は、零奈先生から直接の依頼――想い出を作ってあげてください。

 

「なぜキミが、僕の隣を歩いている?」

「お前が、安請け合いしたからだ」

 

 零奈先生の依頼は、この夏の終わりに学校を去る二人に、いい想い出を作ってあげて欲しい。その願いに間髪を入れず「分かりました。任せてください」と返事をした張本人が、隣を歩いているコイツ。しかも、先生が生徒会室を出て行ったあと、まるでこの世の終わりを迎えたかのような絶望感に満ちた表情を浮かべ、途方に暮れていた。

 

「先生は、『お願いします、“二人とも”』って言った。あの時点で、俺も頭数に入ってるんだよ」

「僕ひとりで十分だ、キミの手は煩わせない。既に方向性も固まりつつある」

「触りだけでいい」

「間もなく思いつく。もう少しだ」

「堂々と虚栄張るな」

 

 完全にノープラン。同じクラスになって五ヶ月あまり、一度も談笑している姿を見たことがない。ひとつ大きく息を吐き、少し短くなったオレンジ色の夕日に目を細め、前を向く。

 

「行くぞ」

「⋯⋯どこへ行こうと言うんだ?」

「聞き込み」

 

 先日、下田と共に訪れた町の喫茶店へ中野を連れて行く。

 シフトに入っている上杉の彼女が少し驚いた顔をして取りに来てくれた注文と一緒に、用件を伝えた。

 

「心の残り?」

「そう。何かやり残したこととかないかなって想って」

「んー、やり残したことかー」

 

「あ、はーい! 今、うかがいます。また後でね」と言って、返事を保留した彼女は、他の客の注文を取りに行った。すると、正面の席に座っていた中野はテーブルに両肘をつき、やや前屈みで眉をひそめる。

 

「こういったことは、当人に内密に進めるべき事案だと想うのだが?」

「手段を選んでる余裕はない。そもそも、喜んでくれなかったら意味がないだろ。ただのありがた迷惑だ。お前、遊園地のペアチケット貰ったとして使い道あるか?」

「当人の意向を尊重しよう」

 

 即答した。寂しいやつだ、人のこと言えないけど。注文した品を持って戻って来た。改めて聞き取りした結果をメモする中野を見た彼女は、どこか可笑しそうに笑った。

 

「なんだい?」

「あ、気を悪くさせちゃったらごめんね。ただ、ちょっと意外だなーって想って。珍しい組み合わせだしね」

 

 他者との関わりを積極的に持とうとしない中野らしからぬ行為だけではなく、俺も対象の一部だった。

 

「後悔は本当にないよ。気遣ってくれて、ありがとう」

「そっか」

 

 それなら、良かった⋯⋯と簡単にいかない事情がある。

 

「上杉の家、知ってる?」

「知ってるけど、もう少し待ってくれればお店に来るよ」

 

 と言うことのため、二人がけの席から四人掛けのテーブル席に移動し、バイトを終えた彼女を交えて、一年の頃の想い出話に花を咲かせる。

 

「今もだけど、何かいろいろ振り回されてた気がする」

「違うよー。頼り甲斐があるんだよ。ね、中野君」

「さあ⋯⋯」

「そこは、嘘でも頷いておけ」

「軽々しく言える程の仲じゃない。無責任な発言は、差し控えさせてもらう」

 

 その割にこの件には、安請け合いした。生徒会に在籍する者の責務か、はたまた別の理由があるのかは定かではない。そんなことを話していると、前見た時よりも日焼けした上杉が店に来た。

 

「あ、お疲れさまー」

「おう。って、なんでお前らがいんだよ?」

 

 訝しげな顔をしつつ、彼女の隣に腰を降ろした。

 

「はい、タオル」

「サンキュー。んで?」

「聞きたいことがあるんだって。晩ご飯用意してくるから」

 

 濡れたタオルを渡し、厨房へ入って行った彼女の後ろ姿を見送った上杉は身体の汗を拭いながら、改めて理由を尋ねてきた。簡単に事情を話す。

 

「やり残したことねぇ。ま、暴れたりねーってのはあるな!」

「ただの迷惑行為だ。やはり、聞く価値などなかった」

「んだよ、お前らが聞いてきたんだじゃねーか」

「初手で言い争いするな。店の迷惑になる」

 

 犬猿の仲とは正に、このこと。互いに視線を合わそうとしない。俺も上杉とは、さほど深い間柄ではない。話しをする中で何か拾えるかもしれないと考え、ひとまず、打ち解けることから始めることに。

 

「随分、日焼けしたな」

「休み中、建設工事の日雇いでバイトしてんだよ。何だかんだ言って、肉体労働が一番稼げるからな。ま、来月からはツテでカメラマンの助手もすることになってっけど」

「お待たせー」

 

 喫茶店らしからぬ、ボリューム満点の大皿が出てきた。

 

「よかったら、二人もどうぞ」

「遠慮すんな。うめぇぞー」

「あ、じゃあ、いただきます」

 

 割り箸を割って、ご相伴に預かる。手作りサンドイッチ同様抜群の味付け、これは箸が進む。しかし、中野の手をつけようとせずに黙ったまま、目の前の料理を見つめている。

 

「もしかして、苦手なものあった?」

「そういう訳では――」

「食えよ。せっかく身長(タッパ)あんのに、もやしかってくらいひょろひょろじゃねーか」

「⋯⋯頂こう」

 

 挑発に乗って、ひと口運んだ。普段と変わらない憮然とした表情に何となく、緊張感が走る。それは二人も同じなようで、彼女は、恐る恐る感想を伺った。

 

「どうかな?」

「やや塩気が強い」

 

 ご馳走して貰っている立場で容赦ない辛口コメント、かと思いきや。

 

「が。大量に汗をかく人には、ちょうど良い加減の塩梅だろう。味付けも、食材の火の通り具合も、栄養バランスも考えられている。及第点といって申し分ない」

 

 何て言うか、まるで評論家のような口振り。口下手が過ぎる。

 

「素直に、褒めればいいだろ」

「そのつもりだが?」

「褒められてたんだ!」

「何だよ、分かりづれーやつだな。ほら、食え食え!」

「止めろ」

 

 彼女の手料理を褒められて上機嫌になった上杉は、中野の取り皿にこれでもかと盛り。四人で囲んだ夕食は二人はとても仲むつまじく、おのずと話しも膨らむ。

 

「じゃあ来月から、調理学校に通うんだ」

「うん。そのためにずっと、貯金してたの。中野君に言われた日に、晩ご飯作ってちゃんと話した。それで、足りない分は出して貰えることになったんだ。妊娠してても通えるしね」

 

 上杉は上杉で、二人で生活出来る基盤を整える準備を。双方の両親の力添えを借りて、ちゃんとした計画を練って進めている。周りが心配するほど、深刻な状況ではないのかもしれない。

 

「ま、そういうことだからさ。あんま考えてる余裕ねーんだ」

「ありがとね。たくさん気遣ってくれて。すごい嬉しい。本当に、ありがとう」

 

 そう言った二人は、眩しいほど笑顔だった。

 

           ☆  ☆  ☆

 

 未練と言えるほどのことはない。確かに、その通りなんだろうと想った。だけど、だからこそ想った。

 

「何かしてあげられないかな?」

「理解できるが、彼らは、それを望んでいない」

「そうなんだけど、な」

 

 夏の日も落ちて、すっかり暗くなった夜空を仰いで見ても、都合よく妙案は浮かばない。

 

「――な」

「ん? 何?」

「厄介だな、と言っただけだ。彼らが望んでいないとしても、僕たちには先生からの依頼がある」

「想い出作りか」

 

 そもそも二人はもう、既に先を歩き始めている。その歩みを止めさせてまで、ブレーキをかける必要があるのだろうか。それにもう、時間がない。夏休みが終わるまで一週間もない。

 

「そこは、考えなくていい。先生は、期限を設けなかった」

「けど、遅くなればなるほど選択肢は狭まる」

 

 極力迷惑をかけず、想い出に残ること。

 そんな都合のいい方法は、果たして見つかるのだろうか。

 考えが浮かばないまま、数日が経ち。部活の休憩時間に大型のバスが学校の駐車場に停まった。降りてきたのは、真夏にも関わらず、冬服の制服に身を包んだ生徒たち。

 

「あれ、吹部か?」

「そうみたいだな」

 

 副キャプテン豊橋の疑問に返事を返し、バスを降りる吹奏楽部の部員たちを眺める。どこか、肩を落としているように感じた。それは、予想通りの展開で――。

 

「ダメだった、全国届かなかった⋯⋯」

「そっか。お疲れさん」

 

 涙混じりの声を震わせ顔を伏せた、同級生の瀬戸。

 

「ふぅ、よし! 来年は、絶対全国行く!」

「立ち直り早いな」

「のんびりしてられないもん! 私、部長に指名されたんだ。だから教えて、せーんぱいっ」

「キショい」

「キショい言うな! もー。でさ、本当に相談なんだけど。三年生の送別会ってどんな感じにやった?」

「送別会? 大々的にはやってないかも。うちの部、残る三年も居るから」

「そうなんだ。インターハイで引退じゃないんだね。うーん、去年の参考にするしかないかな? でも、同じだとマンネリだし⋯⋯」

 

 うちが特種だっただけで、いろいろ大変のようだ。

 その時、ふと思いついたことを。部活終わりに訪ねた生徒会室で、中野に伝える。

 

「なるほど、確かに想い出に残るだろう。しかし実行するには、クリアしなければならない要件が幾つものある。何をおいても先ずは、会場だ」

「学校を使えばいい。相応しい時期もある」

「⋯⋯まさかとは想うが」

「そのまさかだ。お前のチカラが必要だ、頼む」

 

 中野は、大きく息を吐いた。

 しかし、上手くいけば間違いなく記憶に残る。

 提案したこと、それは、二人の送別会もとい、新しい門出を祝う卒業式。

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