TS悪役令嬢になったオレ! 王子と婚約してるけど悪役令嬢だから婚約破棄されるだろうし、気にせず生きていくぜ!   作:冬月之雪猫

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第四十二話『運命の分かれ道』

 ゲームをスタートさせるとオープニングムービーが流れる。燃え盛る街を背景にアルヴィレオ王子が光を纏う少女を見つめている。

 彼は『女神……?』と口ずさみ、彼女に向かって手を伸ばす。すると少女が纏う光が強まり、『エターナル・アヴァロン ~ エルフランの軌跡 / ザラクの冒険 ~』のタイトルロゴが現れる流れだ。

 ゲーム本編でそのシーンが流れるのは少し後の事になる。

 アンゼロッテの好感度を一定以上まで上げるか、近くの広場に零から家を建てるか、特定の条件を満たしてヴァイクに案内してもらえる廃墟を修繕するとアンゼロッテが街へ行く事を提案して来る。

 買い物が出来るわけではなくて、道中はアンゼロッテと主人公(エルフラン)が楽しそうに街を歩くムービーが流れるだけだ。

 その帰り道、迷いの森と隣接しているエリンの街が燃えている事に二人が気づく。

 

『誰か……、誰か……』

 

 エルフランは必死になって生存者を探した。そして、アルと出会う。

 彼は魔獣に襲われていて、エルフランは再び『英雄再演』の力を発動する。

 その後、シーンは終わる。画面が暗転して、次に明るくなった時にはエルフランが森に帰っていた。

 

「……アル」

 

 アルの事はエルフランが助けてくれる。

 あらゆる選択肢が分岐となる『エターナル・アヴァロン ~ エルフランの軌跡 / ザラクの冒険 ~』だけど、どんな選択肢を選んでいっても必ず起こる固定イベントがある。その内の一つがアルとエルフランの出会いだ。

 だから、アルが死ぬ事などあり得ない。そう頭では大丈夫だと分かっているのに不安がこびり付いて離れない。

 

「ゲームのシナリオではそうだったけど……」

 

 ここはゲームの世界だ。そこに異論はない。だけど、仮想現実(ヴァーチャル・リアリティ)ではない。

 VRゲームは存在するけれど、あくまでもVRゴーグルによる視覚的なものだ。そもそも、オレはこの世界で既に十二年の歳月を過ごしている。睡眠の時間を抜いても、一切のラグを感じさせないVR世界を年単位で継続させる事など最新鋭のスーパー・コンピューターを用いても不可能だ。

 ならば、この世界はなんなのか? オレは一つの仮説を立ててみた。ゲームが存在するからこの世界が存在するのではなく、この世界が存在するからゲームが存在する。要するに、この世界はフィクションの産物ではないという仮説だ。

 生まれ変わる前の世界で生きていた頃からこの世界は実在していた。そう考えると色々辻褄が合う。

 剣と魔法のファンタジーに科学という言葉はあまり似つかわしくないかもしれないけれど、科学的に考えてみよう。

 ポイントは転生だ。生まれ変わる前の世界において、転生とは哲学、あるいは宗教用語の一つでしかなかった。実証されていない概念だ。しかし、元より物理法則というものはあくまでも現代の人間が観測出来た法則でしかない。万有引力も相対性理論も質量保存の法則も世界を構成する要素の一部を解明しただけの事だ。ピタゴラスが否定するまで地球を平らだと信じていたように、まだまだ人類が解き明かせていない未知の法則は幾らでもある。だから、転生や魔法、魔王、勇者、竜王といった存在をファンタジーの一言で終わらせてはいけない。

 転生は実在する。そして、転生時に記憶を持ち越す事も可能だ。その事はオレ自身の存在が証明している。

 ならば、エターナル・アヴァロンというゲームの世界観とシナリオを作り上げた者も転生者であり、この世界の記憶を持ち越していたのだと考える事も可能だ。

 そして、恐らくだけどゲームのシナリオはシナリオライターにとっての過去なのだろう。もっとも、この世界と生まれ変わる前の世界の時間の流れの誤差については確認する術が無いから、これも仮説に過ぎない。あるいは未来予知のようなスキル、魔法を使える存在だった可能性もあるけれど、本で調べた限り、時に纏わる魔法やスキルは存在しない。著者が知らないだけかもしれないけれど、可能性は低いと思う。

 もっとも、そこはあまり重要じゃない。今の所、フレデリカ・ヴァレンタインがアルヴィレオ・アガリアの婚約者となり、竜姫シャロンの力を身に宿すなど、ゲームの展開と辻褄が合う事ばかり起きている。

 だから、ゲームのシナリオは一種の予言と捉えて良いと思った。

 

「……やっぱり、何かした方が」

 

 ゲームでは犠牲者が出なかった。だからこそ、アガリア王国はエルフランを王立アザレア学園に招待する事になる。そして、その功績故に彼女はフレデリカと幾度も戦う事が出来た。

 普通に考えれば分かる事だけど、次期王妃である公爵令嬢という地位は特別なものだ。

 アガリア王国の王族は優しい人ばかりだけど、王権を維持し、国を成立させる為に法律を厳守する一面もある。本人が許していても関係なく、庶民でなくても、同等である公爵家の人間でさえ罵倒すれば重罪となり、刃を向ければ死罪もあり得る。

 それなのにエルフランはゲーム中で何度もフレデリカと衝突している。それが許される立場にあったからだ。

 アルや王国騎士団、延いてはマグノリア共和国の窮地を犠牲者ゼロで救った英雄。迷いの森の魔獣を一方的に討伐出来る戦闘能力も合わさり、彼女はアガリア王国やマグノリア共和国のみならず、バルサーラ大陸全土にその存在を知らしめた。

 勇者とまでは行かずとも、エリンの一件でそれに近しい立場となったのだ。

 もっとも、それは彼女にとって良い事ばかりでもないのだけど……。

 

「ゲーム通り、エルフランは全員を助けてくれるのか? そもそも、彼女が間に合わない可能性もある」

 

 オレは彼女をゲームでしか知らない。彼女は今、オレと同じ十二歳の女の子だ。

 そんな子が魔獣相手に絶対に臆さないという保証などない。むしろ、怖がるほうが普通だ。

 人間の思考なんて、その時の状況次第で幾らでも変わる。

 アルを含め、エリンに居た人々が全員救われる確証なんてない。そんな事に今更気がついた。

 

「……魔王再演を使えば間に合う?」

 

 だけど、その後は? オレは公爵令嬢だ。そして、次期王妃だ。

 勝手に行動した時、そのツケを払うのはオレだけじゃない。

 きっと、兄貴の立場まで危うくなる……。

 

「でも、行動しなきゃアルが死ぬかも……」

 

 息が苦しい。助けに行くなら一刻を争う。この思考の時間は無駄でしかない。

 だけど、助けに行った場合のデメリットが大き過ぎる。

 

「いや、デメリットとか、何を考えてるんだよ!?」

 

 兄貴の顔が浮かぶ。きっと、オレが何をしても許してくれる。

 だけど、だからって何をしてもいいとはならない。

 正直、他の事なんてどうでもいい。でも、兄貴の事だけは困らせたくない。

 でも、アルが心配だ。アルが死ぬなんてイヤだ。

 

「どうしたら……、どうしたら……」

 

 焦りが思考を鈍らせていく。ダメだ。このままだと動けないまま時間を無駄にしてしまう。

 もう、アルはエリンに到着している。どのタイミングで魔獣の襲撃が始まるのか分からない。

 グダグダ考えている暇なんてない。

 

「……そうだ、魔王の力!」

 

 スキルは自らの意思で魂に刻み込むもの以外にも幾つか種類がある。

 その一つが信仰によるスキルだ。分かりやすく言えば、他者の意思で魂に刻み込まれたスキルだ。

 ゲームでは通常スキルを『(スキル)』と表記し、信仰によるスキルを《権能(スキル)》と表記していた。

 権能は万を超える人の意思が束ねられたものだ。それ故に個人よりも立場に付随する場合が多い。例えば、ネルギウス王が持つ《王気》は王という立場に備わる権能だ。

 魔王にもそうした権能が存在する。その内の一つが《ゲート》だ。ゲームにおいて、魔王は常に敵だったから思いつくまでに時間が掛かってしまった。

 飛んでいけばイヤでも気付かれる。だけど、ゲートで移動すればバレずにアルを助けに行ける。

 もちろん、エルフランとの出会いを邪魔する気はない。ただ、犠牲者が出ないようにフォローしたい。

 

「よし……、やるぞ!」

 

 オレはアイリーンに思念を飛ばした。お互いのプライバシーを守る為に普段は使わないようにしているけれど、彼女が永遠の忠誠を誓ってくれた時からオレと彼女の間には見えない繋がりが生まれている。

 その繋がりを通じて、声を出さずに言葉を交わす事が出来る。念話(テレパシー)というものだ。

 

 ―――― アイリーン。ちょっと、アルの所に行ってくる。

 ―――― お、お嬢様!? それは一体!?

 ―――― 魔王再演を使う。なるべく早く戻るけど、誤魔化しておいて欲しいんだ。

 ―――― か、かしこまりました。しかし、その……、危ない事はなさらない下さいませ。

 ―――― うん。ありがとう。

 

 念話を終えて、オレは呼吸を整えた。

 

「よし」

「んー、少しだけよろしいですか?」

「え?」

 

 いきなり声を掛けられて、オレは言葉を失った。

 凍りついたオレの視界に入り込んできたのはオズワルドだった。

 

「オ、オズ……、オズワルドさ、ま」

「おやおや。少し、驚かせ過ぎましたか?」

 

 心臓が止まるかと思った程度には驚かされた。

 

「……あ、あの」

「ああ、止める気はありませんよ? 魔王の権能ならば問題なくたどり着く事が出来るでしょう」

 

 全部バレている。だけど、止める気がないとなれば、むしろ有り難い事だ。

 なにしろ、彼は王弟だ。しかも、王宮専属魔法使い。

 彼のお墨付きがあれば大手を振って行動出来る。

 

「ただ、忠告を」

「忠告で御座いますか……?」

 

 オレは居住まいを正した。彼はゲーム中でも常に主人公に重要な助言を与えてくれる存在だ。

 

「もしも、危機に陥った時は遠慮せず、すべての力を解き放ちなさい。後の事を考えてはいけません。わたくしがフォローします。いいですね?」

「は、はい……」

 

 ありがたいけれど、なんだか怖くなってくる。

 

「あの……、どうして……」

「あの森には魔女がいます。名はアンゼロッテ・ウィオルネ。彼女は善良です。ですが、今は時期が悪い。子育て中の獣は非常に凶暴なのですよ。縄張りに他の魔王がくれば、間違いなく戦闘になります」

 

 勿体ぶる事なく教えてくれた情報はかなりヤバイものだった。

 アンゼロッテは七大魔王だ。勇者メナスはすべての七大魔王を討伐した筈だけど、何故か彼女は生き残っていた。メナスが見逃したのか、そもそも討伐の記録自体が誤りなのか分からない。

 なにしろ三百年前の事だから。

 

「レディ・フレデリカ。今、勇者は魔界に赴いております。竜王の時のように彼を頼る事は出来ません」

「……魔界」

 

 魔界とは北極圏と南極圏の事だ。初代魔王が現れた地であり、勇者以外の人間が立ち入る事の出来ない魔獣の領界。

 

「勇者様は大丈夫なのですか?」

「分かりません。魔界は勇者以外の立ち入りを炎王や妖王が禁じておりますからね。人界を覆い尽くす二王の超巨大結界は非常に強力です。わたくしが王国各地に再現してみた結界も所詮は劣化品に過ぎない。まったくもって、素晴らしい……」

 

 素晴らしいのはオズワルドの魔法技術の方だと思う。彼の結界のおかげでアガリアの安全は保たれている。

 

「さて、お引き止めしてしまい申し訳御座いません」

 

 そう言うと彼は一歩下がった。

 オレは一度深く息を吸い込んだ。

 

「『魔王再臨』」

 

 自然と口から『魔王再演』ではなく、『魔王再臨』という言葉が零れた。

 公爵領で試した時と同じだ。おそらく、一定以上の力を引き出そうと思うと使うスキル自体が変わってくるのだろう。

 暴走した時を含めれば三回目だ。ドレッサーの鏡に映る自分の姿を見ても取り乱したりしない。

 金色の髪、真紅の瞳、真紅のドレス、ドラゴンの翼、ドラゴンの腕。

 

「……よし」

 

 手を前に伸ばす。

 

「『魔王の権能』」

 

 光のリングが現れた。

 

「おや、ヴァレンタイン公爵領に開いてしまっていますねぇ」

「え?」

 

 オズワルドに言われてゲートの先を見ると公爵邸が見えた。

 彼が言う通り、そこは公爵領だ。

 

「あ、あれ?」

「失礼致しますよ」

「は、はい!」

 

 オズワルドがゲートに手を伸ばした。

 

「『魔王の権能』」

「え?」

 

 オズワルドの言葉に耳を疑った。

 

「わたくしのようにハイエンドな魔法使いともなると魔王の力を再現する事も可能なのですよ」

「な、なるほど……」

 

 この人、何でもありだな。

 ゲートの向こうの光景が変わっている。

 

「って、魔獣だ!?」

 

 魔獣の群れが草原を駆け抜けている。

 その先には火の手が上がっている街がある。

 

「おや、大変ですねぇ」

「行ってきます!」

 

 おそらく、今から始まるんだ。

 ゲームのオープニング。アルとエルフランの出会いのシーン。

 オレはゲートに飛び込んだ。

 

「多過ぎだろ!?」

 

 魔獣の数は千を超えている。

 

「あれは……」

 

 眼下に魔獣へ挑もうと走る戦士達の姿が見えた。

 街へ視線を向けると避難する人々の姿があった。その中に王国騎士団の姿がある。

 

「アル!」

 

 見えた。数キロ離れた先の子供の姿がバッチリ見えた。

 おそらく、魔王再臨によって視力も大幅にパワーアップしているのだろう。

 アルはまだ襲われていない。

 

「……つまり」

 

 もうすぐ、地上の軍勢が魔獣の群れと接敵する。アルを助けるタイミングでエルフランが来る筈だから、彼らの救出には間に合わない。

 

「だったら!」

 

 あの人達を守る事がオレの責務だ。

 

「『ブラッド・ジャベリン』!」

 

 魔王の権能(スキル)ではない。竜姫シャロンの権能。真紅の魔力を練り上げて生成した魔槍を投擲する。

 槍は極光と化して魔獣の群れ目掛けて飛んでいく。すると、魔獣達は脅威の襲来に気がついた。

 一斉に眼光をオレに向けてくる。

 

「……うっ」

 

 怖い。魔王の力を宿していても、オレには喧嘩の経験すらない。たった一回の修羅場で勇気なんて育たない。

 敵意を向けられたら恐ろしい。殺意を向けられたら、それだけで死んでしまいそうだ。まして、命の危機を感じて猛る魔獣の憎悪なんて耐えられるわけがない。

 

「気合だ、気合! 根性だ!」

 

 耐え難い恐怖に打ち克つ為には根性しかない。

 足りない勇気を気合で補う。

 

「初めから殺す気なんてない!!」

 

 ブラッド・ジャベリンは命中前に消してある。魔獣だって生き物だ。殺したくなんてない。

 魔獣の意識をオレに向けさせられれば、それで十分だ。

 

「オレが魔王だ!!」

 

 やり方なんて分からない。だから、とにかく声を張り上げた。

 すると魔獣達がこぞって森に帰っていく。

 

「やった!」

 

 ゲートに次ぐ、魔王の二つ目の権能。それは『覇気』だ。

 ゲームにおいては一定レベル以下のキャラクターや魔獣を威圧するスキルだった。

 それ故に魔王と戦う時は覇気に耐えられるレベルまでキャラクターを育てなければいけない。さもなければ何も出来ないまま負けてしまう。

 その覇気をオレも使えた。だけど、問題はここからだ。オレの覇気に耐えた魔獣達はむしろ闘志を燃やしている。

 

「しまっ!?」

 

 魔獣の一体が光熱のエネルギーを放った。射線に割り込んで真紅の盾を生み出したけれど、他の魔獣達も炎や光線を放ち始めた。

 

「にゃろう!!」

 

 まだ、眼下の戦士達と魔獣の間には距離がある。

 オレは真紅の光をその狭間に向けて放った。

 

 ―――― ブラッド・ウォール。

 

 光が破裂する。消えてしまったかのようだけど、実際には見えないほど薄く広がった魔力の壁がある。そこに魔獣達の放った技が衝突した。

 

「っし!」

 

 薄くても、そこに広がるのは魔王の魔力だ。(レベル)の差が浮き彫りとなった。

 実を言うと、ゲームではフレデリカとの初戦の前にレベルMAXまで上げる方法がある。すると、フレデリカもそんなチートなエルフランに対抗してくる。

 完全な無理ゲー状態となる為、その状態で勝利出来たプレイヤーはいない。敗北した場合もストーリーは続いていくが、無理ゲーが続く為に全敗ルートで進む事になる。

 フレデリカは努力が嫌いという設定であり、その状態でそんな事になるわけだ。要するにオレのレベルは既にカンストしている。

 まだ使いこなせてはいないけれど、オレが戦闘で負ける事はほぼあり得ない。

 

「おっ!」

 

 王国騎士団がやって来た。アルもいる。久しぶりだ。会って話がしたい。だけど、そんなわけにはいかない。

 ここで会うべきはオレじゃない。ブラッド・ウォールだけ維持して、オレは見つからないよう高度を上げた。雲の上に上がっても寒く感じない。風で態勢を崩す事もない。これが魔王の力というわけだ。

 やろうと思えば世界を滅ぼせてしまう力。だけど、使い方次第で誰かを守る事も出来る。

 

「……へへっ」

 

 眼下に光が溢れ出した。どうやら、エルフランが到着したようだ。

 

「あれが『英雄再演』か」

 

 容赦のない攻撃が魔獣達を襲う。だけど、さすがは魔王の覇気に抗った連中だ。一匹足りとも死んでいない。

 

「退いていく……」

 

 ホッとした。魔獣達は不利を感じ取ったようだ。森の方に撤退していく。

 

「大丈夫そうだな」

 

 帰ろう。そう思った矢先だった。

 

「……お前、シャロンか?」

 

 高度数千メートルの位置で話し掛けられた。

 振り返ると金髪の女性が空中に浮いていた。

 

「アンゼロッテ?」

 

 問い掛けると、彼女は大きく目を見開いた。

 

「ほ、本当に……」

 

 手を伸ばしてくる。まずい。オズワルドが言った通りになってしまう。

 だけど、戦闘なんてごめんだ。

 

「『魔王の権能』」

 

 ゲートを開いて飛び込む。念の為に何度もゲートを開いて追い掛けられないようにした。

 そして、なんとか王宮の自室に戻って来た。

 

「おかえりなさいませ!」

 

 オズワルドがニコヤカに出迎えてくれた。

 

「……ただいまです」

 

 魔王再臨を解く。すると、ドッと疲れが出た。

 

「ねみゅい……」

 

 なんとかベッドにたどり着くと、そのまま瞼を閉じた。

 

「……やれやれ」

 

 その言葉と共に少し暖かくなった。そして、胸の勇者の御守りが煌めいた。

 

「え?」

「おや?」

 

 驚いて目を見開いた途端、急に意識が遠のいた。

 そして、オレは燃え盛る大地を見た。

 

『あれは……』

 

 声が奇妙に反響している。だけど、そんな事は気にしていられない。

 炎の中に勇者の姿があった。その片腕が胴体から離れた場所に転がっている。

 

『勇者様!?』

 

 何が起きているのか分からない。ただ、凄くまずい事が起きている。それだけは分かった。

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