つまりは抜き穴です。
その狩人は獣の抱擁の探求の果てに生み出された聖剣のルドウイークの継嗣たる『凶剣』であった。
処刑隊の装束がその獣の特徴を多く含む姿を覆い隠し、他の狩人には半ば獣と化しているなどとは気付かせないままにヤーナムに蔓延る多くの獣と多くの上位者を狩り殺し、あるいは血の女王をも狩り殺し、遂には自身が上位者へと至った半獣半神、そんな狩人であった。
◇
黒い着物に灰の髪、黒い耳と尻尾を持ったその英霊は、ほんの少し前まで色だけの違う・同じ様な姿形と服装をした英霊と互いに爪を立て合っていた。
右前とも左前とも言い難い異次元構造の着物の下には男性でも女性でもある身体を持っていて、そして自身の内で数限りなく自身を孕み続ける事で無数の命を得ている。それが彼のもの達であった。
俗な言葉を用いるのなら「セルフマジカル生オナホ孕ませ」をしては孕んだ子の側の自分がまた「セルフマジカル生オナホ孕ませ」をして、その入れ子構造が延々と続いている生き物。そう表現してもいい。
そしてそれを行うのは気持ちの良いものなのだ。私に望まれたのはそれそのものではないとはいえ、その永続性を担保する為に同様の構造を与えられた存在だ。
「分かるよ。確かにそれは気持ちが良いし、時に気持ち良くなり過ぎて誰かに縋りたくなるというのも。だからそれは当たり前の事。恥ずかしがる必要はないさ」
私は私の身体に備え付けられた豊穣の象徴を誇示しながらそう告げた。
「それで出番に遅れたのは悪かったと思ってるけど、だからってそこを掘り下げられてもその、ちょっと困っちゃうかな~って……」
その英霊、ミリオンライヴズは乱れの隠しきれない着衣と髪を必死に直そうとしながらそう返した。
行為そのものはあけすけな内容が多いが、彼ら、あるいは彼女らは恥という概念があるだけ可愛らしいものであった。
ロマも、エーブリエタースも、ゴースも、無節操に自分自身を孕ませては所かまわず産み散らかしていた。正に売女としか言い様のない、いやらしい生き物だった。上位者としての身体を持っている事以外はただの下等生物と言ってもいい。
元から上位者として生まれたならまだしも、上位者の子を孕まされたが故に情けなくも"おまけ"として上位者となっただけの付属物・従属物に過ぎない者共すら自分自身を産むばかりというのでは、そんなものをどうして上位者と呼べようか。恥を知るべきだ。
そして、彼ら、あるいは彼女らにそういった可愛げがあるという事こそが俺の凶剣を抜き放つ動機となった。
「俺も混ぜてもらおうか」
両性として成熟したオッドアイ即身仏・蓑亀と、英霊ナインライヴズ、ミリオンライヴズの姉妹(あるいは兄弟)の異次元情報交換会に俺、凶剣アルトアイゼンも参戦しようと思った。
◇
夢を見た、などと言えば笑われるでしょう。でもこれはきっとただの夢です。夢という事にさせてください。夢という事にしました。
他人の秘め事に首を突っ込む様なものが私の祖に当たる可能性があるというのは可能性だけでも恥ずかしいですし、金輪際関係しなくて済む様に存在そのものから無かった事にしたので、これで確実に夢です。
それと成熟した蓑亀さんは性的に過ぎるので幼生のままで居てくださいお願いします。
凶剣アルトアイゼン
今となってはもはや名も面影も知るものは少ない霊廟の仲間の一人。おそらくは男性。愛称こてっちゃん。
マッシブな体形をしたいわゆる人狼の類であり、しかし衣服を着ている程度には人間としての性質も保っていた事が伺い知れる。
獣の抱擁を早期に禁字とする事で凶剣アルトアイゼン、あの人狼が生まれる可能性を断った。そのはずでした。
次に現れた凶剣アルトアイゼンは一般的な英霊でした。ナインライヴズ、ミリオンライヴズと縁のある紳士的な英霊でした。
その次に現れた凶剣アルトアイゼンは時折霊廟へと迷い込む未だ生あるものでした。人と獣の混ざりもの同士、ナインライヴズ、ミリオンライヴズとはよく関わっていました。
更にその後に現れた凶剣アルトアイゼンもナインライヴズ、ミリオンライヴズと関わりがありました。
その素性も、その能力も現れる度に別のもので、ただその名と姿と、霊廟やナインライヴズ、ミリオンライヴズとの関わりがある事だけが一定している様でした。
振り払う事も敵わない、脳裏に貼り付いた幻影の様な存在。凶剣アルトアイゼン。
私にもその正体を捉える事のできない、よくわからないそれは未だに霊廟を彷徨っています。
凶剣アルトアイゼン
当然本来は処刑隊の装束など着ていた訳も無ければ、キャラ付けも知れたものではない。
が、今回は所詮は夢の中の話だ。名と姿は遺されていても正体の無いものに、誰が触れられようか。