幼年期の後、あるいは新時代の前に   作:杉鋸

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道の半ばにある始点

 最後の夢の狩人、青ざめた血の魔物、墓守。向かい合うものにとっては親であるもの。

 四人と一匹にして一なるもの、771番目の名の無い存在。向かい合うものにとっては子であるもの。

 向かい合う二柱はその身の内に秘めたものへと力と情報を込めて弾として撃ちあっていた。

 

 そのどちらが放つものも昔日の上位者達ですら受け止めるには大きすぎる――端的に言えば受けた個体は即座に発狂する程の――情報が込められていて、しかし現在の上位者である二柱にとってはちょっと興奮しながらの思い出話でしかなかった。

 平易な言葉で要約するのであればそれはこれまでどう過ごしてきたのかについてのあらましであり、それに対して「自分も同じ目線で話ができる」と返したという程度のもの。

 とはいえ彼らにとっての「これまで」とは人々の様に唯一無二のものではなく無数に存在するものであり、人にとってはそれだけで無限と等しい情報量を持っているものであった。

 

 

 

 先に彼らの事を「親と子」と表現したものの、これは一面的なものの見方である。彼らにとっては子と親でもあり、同時に全くの他人ですらある。

 人にとっては全く別のものである瞬間と永遠、あるいは何であろうとも挟まる余地の無い程に強く抱きしめ合う様な近さにある事と何もかもを挟み込んでなお余る程に距離を隔てている事と同じ様に彼らにとってはどれも何一つ変わりの無いもので、人からすれば無限と等しい・無数の過去を持つ彼らにはその全てが一切の矛盾なく並び立つ。

 

何もかもが事実であって、何もかもが事実ではない。

 

 彼らとは御伽噺に出て来る魔法使いだってもう少し遠慮というものを知っているんじゃないかという様な途方もない不条理そのもので。彼らは自身の過去だと謳う御伽噺について語らう事で相手の好みや輪郭というものを知ろうとしていた。

 

 それはその遺志を継ぐべきか継がざるべきかを篩い分けて、時に同じものを求め、時に別のものを求め、時に二の轍を踏まない様に先へと進んで全てに決着を付けたという、一つの歴史に終わりを告げに行く御伽噺だった。

 恐ろしき末路達の受け止め難き攻撃を躱し、いなし、時に命を零しながら歴史の端へと終わりを告げに行くものが居た。

 戦いの内に過ぎし日の意思を示し後代のものへとその全てを託そうとした、導きも自身の業も見失い狂い果てる他無くなった始まりの祈り手と、陶片の檻の内へと自身を閉じ込めて盲目に自身の業を続けようとする始まりの祈り手が居た。

 始まりの祈り手と同質なれど、その意味をきっと理解できない内に出会う事となるまた別の祈り手が居た。

 好きな時にもはや因果も無く祖先とその敵とが折り重ねられた場所を訪れてもよかった。

 子を求める親と親を求める子と、子を棄てた親と親を棄てた子とが折り重なり積み上がって舞台を形作っていた。

 誰もが同じ様に届き難きものを求めていて、実際にそれを叶える事が出来るのは極僅か。

 だけれども、終わりを告げるまで終わる事のない御伽噺はその内に終わりを告げるまで終わる事のない御伽噺そのものを含んでいて、作中作の方の御伽噺もまた御伽噺を内包している無限の入れ子構造を持っているから望ましい結末が得られるまで無限に御伽噺を続ける事が出来るし、結末がいくつあってもそれが全て事実となる。不条理なものが語る、理不尽そのものの御伽噺。

 

 二柱の語る御伽噺は同じだと言ってのけるには多くの違いがあって、さりとて別の話であると言い張るには共通項が多くもある。そんな話だった。

 

 

 

 他人としての二柱としてはお気に入りの登場人物が他方の登場人物の隙を突いて腸を抉り出せるだけの理由を作り出す事は造作も無くて、そしてそれは昏くとも温かい歓びを伴う『狩り』と呼ぶのが妥当な一方的な殺戮を作る事ができるものだった。

 そうして相争うのもまた心地のよい獣性の発露であったけれども、親/子としてある今日の二柱が求めていたのは様式美であったから「共に立つ事すら無くとも同じものを見つめていればそれで十分だろう」と、そういう事になった。

 

 ◇

 

 そんな二柱の歓談場にえびちりとアイスキャンディーを持って入り込むものが来るのはもう少し先の話である。




アイスキャンディー
 ソーダアイスの外見を与えられたmトランキライザ。
 3秒ルールの適用外の空を舞い落ちて行く観測のお供。
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