幼年期の後、あるいは新時代の前に   作:杉鋸

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Amygdala
1.偏桃体。アーモンドの様な形をした記憶と情動を司る脳の一部位。通常1つの脳に2つで一対の部位として存在する。
2.アーモンド
3.アメンドーズ


アメンドーズ、あるいはamygdala

 ヤーナムから回収された資料において散見された謎めいた言葉「アメンドーズ」とは何を意味していたのか。様々な可能性が検討された。

 ――後知恵で語るのなら「それは上位者であり・信仰の対象として像の残されている多数の腕を持つ巨人の様な存在達」とは分かっている。

 しかし、未だなおその名の意図――由来・意味については分かっていないのだ。

 

・Almond

 アーモンド、あめんどう。「その頭部の形状からアーモンドに擬えた名を与えられた」というのが現在主流の解釈だ。

 だが、本当にそれ以上のことはないのだろうか……?

 

・amen dose

 血の医療を、すなわち「神秘的な血の投薬(dose)こそを信じている」という信仰の告白であるだとか、「血の医療とは信仰そのものを投薬している」だとか医療教会の施す血の医療に関連した言葉という解釈もあった。

 血の医療とは聖血の投与であり「信仰そのものを投薬していた」というのはあながち間違ってもいないだろうが、見えた上位者の一つに過ぎぬそれにその名を与える理由がどこにあったというのだろうか。

 

・天の瞳

・天の坊主

 あめんどう、あめんぼうず。ヤーナムから遠く離れた極東に由来する言葉としての解釈だ。

 血の医療の成立以前、戦国時代末期に海を渡った侍(厳密には「後にそうであると解釈された」という事だけが伝わっている)がカインハーストと縁を持ったという話もあれば、血の医療の成立以後には多くの病み人が時に極東からも来たという。彼らの言葉が残されていても不思議ではない。

 無数に存在したというアメンドーズが未だ知られぬ本体となる上位者の分け身・似姿であったとするのならば、それは上位者が世界を見る為の瞳であり、坊主――本体となる上位者へと祈る聖職者――と呼ぶに相応しいものだろう。

 しかし、不思議ではないとはいえ、妥当かはまた別の話だ。アメンドーズが更なる上位者の分け身・似姿であるというのなら、本体たる上位者とはどれほどまでの大きさになるというのか。

 

 

 

 

 

 

 アメンドーズは憐れなる落とし子とも呼ばれているが、子であると伝わっている上位者はもう一つ存在する。

 

 星の眷属(Kin of the cosmos)の一つとしても知られる、星の娘(Daughter of the Cosmos)、エーブリエタース。

――眷属とは言ってもこれは上位者の1グループを指す言葉であり、他の眷属ではない上位者と上下関係にあるという訳ではないらしい

 

 エーブリエタースとは見捨てられた上位者であるといい、「憐れな境遇にある子」としての上位者という点では類例と考えられる。

 もちろん落とし子――本命足りえぬ胎から、あるいは副産物として産まれた子、とはされていない事にも留意するべきではあろうが。

 

 類例であるのならば「元より期待などされていなかった子と、期待に見合うものなく見捨てられた子」であったのだろうか。

 対する「本命として生まれ期待通りの素養を開花させた」あるいは「本命へと成り上がった」、憐れまれる理由のない子たる上位者は存在したのだろうか?

 アメンドーズとエーブリエタースの他に子たる上位者が伝わっていないのはそれだけ子の数が少なかったからなのか、十分な成果を得たからこそ――子としてではなく――親や祖として伝わっていてそうであると気付けないだけなのか。

 ただ今日という日にその名が伝わっていないというだけで、子たる上位者なんていくらでも居たのか。

 

 長い時という断絶を経て墓場から掘り起こされた断片的な資料からしか知れぬそれらについて、どれ程の物事が取り零されてしまっているのか。

 多くの資料は永遠に失われ、二度と目にもされないだろう。

 彼らにとって常識であったのならば、きっと書かれもしなかっただろう。

 真に希少な事象であろうと、目にした者に知恵が足りなければ気にも留められないだろう。

 ……なんと悪夢的で、冒涜的な事だろうか。

 

 

 

 

 

 

 上位者にとっての子とは何か。

 そも上位者とは人類に知覚できる次元においては社会と表現されるものに近しい形態を取った、高次元的な構造において一体の生物であり、人類の様にその社会を構成する個体同士が繁殖を行い個体数が増加したとしてもそれは親個体も子個体も等しく自分の一部でしかない。

 その人間を構成する細胞が分裂して成長する事を「その人間に子供ができた」とは表現しないのと同じ事で、その上位者を構成する個体数が増加したとしてもそれは「その上位者に子供ができた」という訳ではないのだ。

 つまりそれは上位者の子とは親たる上位者との断絶がなければならない、という事を意味する。

 

 親と同じものを見る事も語る事も出来ず、同じ様に生きる事も出来ない子。

 それは子と成りたかったのかどうかではなく、ただ親の一部では居られなかっただけではなかろうか。

 


 

 生きる為に親とは別のものへと成った子と、親と同じ様に生きようとして結局生きたままに死に果てて別のものへと成り果てた子。

 時が過ぎても同じ事を同じ様にただ続ける事のなんて困難な事でしょう。

 それとも死にすら嘘を吐けるから「口先で吐ける嘘くらいなんて事は無い」とでも言うのでしょうか?

―― 回収された走り書き




MISTELTOE/ミステルトゥ
『宿り木』。
幽かな生物を増殖させる為の鉢植えと人に似た(人に比してごく小型で脚部を欠いた)姿の制御ユニットを合わせたもの。
幽かな生物そのものは広く蔓延しているが、これの元でしか増殖する事はない。
ある種の感覚器として機能するものでもあり、エグゼキュータの補助にも用いられている。

これは時に大樹とも呼ばれるガーランドへ無数と寄生する宿り木であり、しかし人体にも宿りうるものだ。
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