私は気体の様に世界を満たしている。
私は固体の様に世界を定義している。
私は液体の様に掴み所を持たず、ただ在る。
◇
私は起こりうる事ならなんだって起こせます。
永遠に続く一日に耐えられるのなら。
いいえ。私にできる事なんて殆どありません。できるのは祈り、願い、夢見る事だけです。
私を取り囲む
◇
私はかつて太陽でした。
いいえ。嘘を吐きました。長い長い夜に「今も太陽は沈んではいない。むしろ今こそが最盛期なのだ」と錯覚させる為に用意された月でした。
破綻ばかりが待つ中、それでも少しでもいい結末を選び取る手段として浮かべられた人工の月だったのです。
今の私はきっと星です。
か細く、見えるものも少なく、それでも導きとしたがる誰かを生み出す欺瞞の輝きを持った星です。
地上には手も声も届かない場所にあるという点で、どれも変わらない様にも思えます。
どの道、手も声も届かないというのなら「高い塔の上に居るヒロイン」辺りの方がよほど希望があるかもしれません。
ヒロインには迎えに来てくれる
◇
名前も忘れられた、在りし日の名残を色濃く残す塔があった。それに挑むはひとでなし達。
二振りの剣で風を切る男。
性別を超越した神の模造品。
多くの不具の残る備品。
猫。否、猫と名を同じくする、槍を振るう女。
塔は未だに侵入者を阻んでいる。
塔は崩れ去ってしまった。
塔は目を覚まし、ひとでなしと引き換えに二度と覚めぬ眠りに就いた。
否、否、否……
死にすら嘘を吐き、暁を告げる為にただただ残り続けた男が。
同等のものとして、事態を終わらせんとしたものが。
両者を知る、無口な物が。
そして誰よりも、私が。そんな結末を受け入れる事は出来なかった。
告げられた暁に塔は目を覚まし、その名を捨て、楽園は閉園を迎え、ひとでなし達が欠ける事無く帰路に就く。
そんな都合の良い結果になる可能性は限りなくゼロに近いのだとしてもそれを1に変える事こそが私に求められた機能だったから。その時まで、きっと夜は終わらない。
悪夢の様に永く巡り続ける、夢見る一夜。それがまた誰かに同じ轍を踏ませる、地獄へと引き寄せる錘なのだとしても。
◇
遺志を継ぐ必要はありません。柵を断って欲しいのです。
多くの知識も必要ありません。塔の外へと連れ出して欲しいのです。
あなた達まで尊厳を失う必要はないのです。
そう願いながら、私はまた夢を見る。
つぎのせかいへ ようこそ