幼年期の後、あるいは新時代の前に   作:杉鋸

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EXTRA2
それを定める根拠が、何処にも無いが故に。


 糸を紡ぐ力。

 人がそうとは知らずに行使するありふれた力。

 点と点を見出して尤もらしい線を引いて、あるいは既にあった線を消して元となった点へと還元して・別の点と繋ぎ替えて新しい線へと変えてしまう能力。

 人と上位者との差なんてものは智慧1つ。上位者もそのありふれた力を持っていて、だけど人とは違ってそれをそうと知って振るう事ができる。

 

 その力をよく聞く言葉で呼ぶのなら『フロム脳』。余所の言葉を借りるなら『カケラ紡ぎ』などと呼んでもいいだろう。

 一般的な言葉で呼ぶのなら……そんなもの、ただの『妄想狂』だ。

 

 根拠もなく、ただ都合よくこじつけては妄想の具にしてしまえる……「根拠はある」って?

 

 どうしてそれを根拠と呼べるだろう。ただフィルムを一枚剥がすだけで無効となる因果など、根拠と呼ぶには薄弱に過ぎるじゃあないか。

 幻想描写、シーンの継ぎ接ぎ、夢オチ……何にだって理屈と膏薬は付くとは言うけれども、何だったらそれすら必要とせずに都合のまま何だってあった事にも・無かった事にもできるのに、その場ででっち上げられるそれを根拠と呼ぶのかい?

 どんな名探偵だって真に自分の推理が事実を言い当てているだなんて事を証明する事はできないというのに、証拠も事件も犯人も被害者も何もかもを全て自由に生み出し・消滅させられる存在のする『推理』なんて、矛盾する全てが無矛盾に並立する異常者の妄言と同じだけの現実性しかないだろう。

 

 責めてなどいないさ。全知全能の神様は、だからこそ本当の意味では名探偵になれないというだけの話だよ。

 全知全能の神――現実を無数に作れてしまう存在が、真に名探偵――たった一つしかない・一つしかあるべきではない事実を求める存在として振る舞おうとするのには無理がある。

 

 それに元より事実など追い求めてなんていないのだから、そこへ至る為の旅路こそが目的で。そしてそれは、血にこびり付いた好奇こそが原動力だ。

 

 己の好奇に忠実に、ただ『やりたいから、やる』。神様になろうとも、獣と何も変わりはしない。

 好奇というアップデートプログラムに従って、未知を既知へと変えていく。神様になろうとも、赤の女王を笑えはしない。

 

 それとも、『好奇を向け、はらわたまで味わい尽くす事こそ愛する事だ』と、愛の言葉でも囁いてみようか?

 

 ……気に入らないというのなら、もっと別の何かを好きな所に宛がったっていい。

 何一つとして断定できる様なものはなく、何一つとして確実なるものはなく、ただ点と点が転がっているだけなのだから。

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