華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。
ちっともモチベが上がらなくてずっとゲームやってました\(^o^)/
これからはモチベ上げるために頑張りますぜぇ!
今回は戦闘会です

ではどうぞー


第10話:責任の灯火

 

「........数が多すぎる」

 

スマホに表示されたマップを見ながら、海斗は険しい表情を浮かべる。

若葉の方も見てみると彼女も海斗と同じ表情をしていた。

バーテックスの侵攻が起こったのは、勇者達が丸亀城に帰ってから半月ほどした頃だった。今回はマップに表示されるバーテックスの数が異常なほど多い。

 

「今までの十倍......?ううん、もっといるかも」

 

「......そうね。この数は苦戦が強いられると思う」

 

友奈も千景も敵を示すアイコンで埋め尽くされたマップを見ながら呟いた。

二人のその声には緊張が混じっているのがよく分かった。

過去のバーテックスの襲来はでは、四国へ侵入してきたのはせいぜい百体ほどだった。だが、今回は違う。

バーテックスはその倍を増やし、勇者たちにぶつけてきた。

数は千以上だ。戦闘に慣れてきた勇者達にとって、バーテックスの一体一体を倒すのは造作でもない。しかし、これ程の数になれば、状況が変わるのは目に見えている。

総力戦になればこちらが敗北する。

以前、学校の授業でバーテックスは知性を持っていると説明された事を思い出した。

やはり奴らは回数事に戦術を変えてきている。

このまま数で押し切られれば危うい。

 

「(......やっぱ俺が前出るしかないよな)」

 

瀬戸内海の向こう側から押し寄せてくる敵群を見据えながら海斗が心の中で呟く。すると同時に若葉が自身の持っている刀の柄を握りながら口を動かした。

 

「私が先頭に立つ」

 

その一言を残しながら若葉は地面を蹴り、敵群へ一人で向かって跳躍した。

 

「待ってください、若葉さ――」

 

背後で杏が制止の声をあげるが、既に若葉は一人で突っ込んでいる。

その声はもう届かなかった。

敵群へ向かう若葉は途中、すれ違いざまに刀を抜き放ち、数体を撃破していた。

するとバーテックスは丸亀城から一人だけ突出して来た若葉を取り囲んでいく。

そのバーテックスの動きの異常性に勇者たちは気づいた。

 

「どういうことだよっ!?あいつらタマたちの方へちっとも来ないぞ!」

 

球子の言葉通り、バーテックスは若葉を取り囲んだまま、他の勇者達の方へは全く近づいて来ない。

人を本能的に狙うバーテックスは、これまで勇者達に平等に『敵』と見なして、攻撃をしてきた。

しかし、先程言った通りバーテックスには知能がある。

負け戦が続き、奴らも戦術を使うようになったのだろう。

だが、この数は勇者一人潰すのには容易いぐらい配置している。

この考えが合っていればやはりバーテックスは――

 

「バーテックスは、まず若葉さんを潰す気です......!」

 

杏が若葉を取り囲んでいく無数の敵たちを見ながらそう叫んだ。

彼女も海斗と同じ考えだったらしい。

そして、ここからが辛い状況だ。

若葉を助けには行きたいが、その他のバーテックスを神樹に行かせないように防衛をしながら向かうのは難しい。

今まさに、若葉を助けに行こうと向こうとする勇者達。しかしそれより先に、バーテックスの動きが変わった。

若葉を取り囲んでいた一部が別行動を始め、神樹の方向へ向かい始めた。

 

「厄介ね.....」

 

千景は状況を睨みながら、苛立つようにつぶやいた。

『一部』と言っても、そもそも数が多すぎて、何が一部なのか麻痺してくる。

神樹の方へ向かったバーテックスの数は普段勇者達全員が立ち向かう数なのだ。そして、神樹がバーテックスによって倒されでもしたら四国は―――滅ぶ。

勇者として仲間を助けることよりも、神樹を守ることが優先せざる得ない。

そんな酷な選択が海斗達を悩まさせる。

友達として仲間として神樹を見捨てて助けに行くか、一人を見捨てて神樹を守るかをと。

 

「――ちーちゃん、ここを頼む」

 

千景の隣にいた海斗が突然彼女に告げる。咄嗟の事に千景も海斗の言っていることが分からなかった。

千景の有無も聞かずに彼はすぐさま若葉がいる方へ跳躍した。

 

「.....!?ダメ、海斗!」

 

千景が気づいた頃にはもう海斗の姿は段々と小さくなっていた。

その方向に手を伸ばすが掴むことは出来ない。残るのは不安と恐怖だけだった。

その彼女が発した声は彼には聞こえず、ただ純粋に聞こえるのはバーテックスが消滅する音だけだった。

千景が海斗の方へ見るのも束の間、彼女の前にバーテックスが接近してくる。

 

「――ッ!!......邪魔、なのよ!」

 

鎌の一振で数体のバーテックスを撃破する。

恨みを込めながら千景は一振、一振、また一振と。

まだ数が減っていない今だと海斗も若葉も助けに行くとさえままならない。

内心焦りを覚えつつ何としても早く神樹を守りつつバーテックスを倒して海斗の方へ向かう。

千景は今はそれしか考えられなかった。

ふと、状況を整理させる。どうしてこうなってしまったのか?

それは乃木若葉が一人で突出したことと周りが見えていないことなのだ。

柔軟に攻撃を回避しつつ鎌を振り続ける。

千景は今ここに若葉に怒りを覚えながらバーテックスを殲滅する。

 

「(.......乃木さん、私はあなたを許さないわ。もし、彼にあったらその時は――)」

 

十体のバーテックスが千景に向かってくるが千景はそれを軽々と刈り伏せる。

 

「......この鎌で貴方の命を刈り取ってあげる」

 

風船のように割れて消滅するのを見つめながら千景は呟くのだった。

 

 

 

千景達と別れた海斗は一人で若葉がいる方へ全速力で向かう。

実際彼も若葉と同じで無謀な事は少なからずやっている身だ。

一人で数体相手するのはいい。だが、数百体相手するのはわけが違う。

何に対して彼女はそこまでバーテックスを一人で一体でも多く倒そうとするのか海斗は分かっていた。

かつて若葉はバーテックス襲来時に友達を殺されたと聞く。

その死んだ人達に報いる為に彼女はバーテックスを倒して必死になっているのだ。報いを受けさせるために。

だが、その弊害は頭に血が上りすぎて周りが見えないことだ。

杏の制止を無視して一人で突っ込んでいく。

そのせいで今勇者達は若葉を助けに行こうとするが、バーテックスが百体程度を神樹の方へ向かわせ若葉の救助を邪魔してくる。

このままじゃジリ貧だと考えた海斗は千景達に神樹の防衛を任せて若葉の救援に向かった。

 

「さて......と」

 

樹海化した蔦に着地すると息を吸いながら村正を構えて力を込める。すると霊力が現れる。

海斗の所に数百体という尋常じゃない数の多さのバーテックスが迫ってくる。

だが、それは関係ない。

なんせ海斗はその状況には慣れていた(・・・・・)のだから。

 

「ここからは......どっちが先に倒れるか、勝負だ!」

 

村正をバーテックスに向けて走って脚に力を入れて跳躍する。

まずは横薙ぎに斬りつけて次の目標には縦に斬り伏せた。

剣が届かなかった時は村正の先端にある霊力の刃のリーチを伸ばして周りを一掃する。その一瞬で百体いたバーテックスは五十体になる。

残り半分を過ぎた頃には海斗は若葉がいる方に近づいていた。

流石にあと半分を今のままじゃ、若葉を助けることが出来ない。先に彼女が死んだら元も子もない。

なら、アレ(切り札)を使うしかないと海斗は判断した。

海斗は目を瞑り神樹が持つ概念的記録にアクセスする。

今回は『再生(鳳凰)』ではなく、一撃必殺の力を持つ精霊を体に降ろす。

沢山の敵を相手に出来るのならこの精霊なら行ける。

 

「.......来い――!!」

 

海斗は叫ぶ。仲間も助けるために、誰も犠牲を出さないために。

そして、昔の自分と同じに道に進んでほしくない為に。

勇者装束が青と赤から緑と白に変わり身体全体が濃い紫の炎を纏う。

その炎は今にも海斗のを身体を焼き焦がしそうな色合いをしている。

実際これを降ろした時は体に異常をきたす。

 

「......っ......」

 

全身あらゆる箇所が悲鳴を上げているかのように熱くて痛い。

でもこれで仲間を助けられるなら、これで誰も犠牲を出させないのならそれでいい。

精霊を降ろした力で思いっきり跳んでバーテックスに村正を使って斬る。

その数を二百......三百を超えたところでやっと若葉の所に辿り着いた。

 

「若葉........!」

 

海斗が叫ぶとこちらの声に反応して振り向く。

 

「海斗!?」

 

若葉は驚いた表情をしながら海斗に近づいた。お互い背を合わせて立ちながら刀と大剣を構えながら周りのバーテックスに目を向けていた。

 

「どうして......なぜここに来た!?それに.....」

 

その中、若葉が海斗に向かって叫ぶ。ここは自分に任せろと言うかのように。

しかし若葉は海斗の姿を人目見ると驚愕した。それもそうだろう。精霊を降ろしながらこちらに来たのだ。今一番肉体的疲労があるのは海斗だいつ倒れてもおかしくは無い。

だが海斗にとってそれは関係なかった自分より彼女の状態の方を見ればすぐにでも分かる。

右腕が酷い有様だ。先程バーテックスに噛まれて出血したのだろう。

今まで海斗が助けにくるまでずっと左腕で戦っていたという事になる。

今利き手が使えない状況はまずい。最初はいいが、一気に追い返されるのが目に見えてる。

ならここは自分が頑張りどころを見せるしかない。

 

「.......仲間を助けるのに理由がいるかよ?まぁ、そうだな――」

 

間を開けて海斗は言う。なんで彼女を助けたのかいまいち海斗も分からない。自分と過去が似すぎているからの同情心かそれか、単なる気まぐれかは分からないが、これだけは分かる。

 

「大切な仲間が一人戦う姿を黙って見るのは嫌だからな」

 

あとはお前まだ中学生の女の子だからなとバカにするかのように笑ってみせながら言う。

恥ずかしくなったのか若葉は一瞬頬を染める。

しかしそれはすぐに消え、臨戦体制になる。

 

「......海斗、必ず生き残れ」

 

「お前もな。先に死んだら許さねぇぞ猪リーダー」

 

疲労と苦痛を押し殺し、海斗は言葉を返す。

お互い、戦闘と精霊降ろしで満身創痍、それでも二人の勇者は周囲の無数のバーテックスへ武器を振るう――

かつてないほど大規模なバーテックスの攻勢だった。

その戦いは、止まった時間の中で行われるが、勇者達の体感時間にして六時間は軽く超える。

長い戦いの末、勇者たちはかろうじて、バーテックスの撃退に成功する。

しかし、勇者全員の負傷と疲弊はひどく、特に海斗が戦闘中に精霊を降ろし、そのまま戦闘を続行したことで彼の身体は大きな切り傷、打撲、内蔵の損傷、骨折、火傷その他色々みられた。

戦いが終わった後、彼は意識を失ってすぐに大社管理下の病院へ緊急搬送される事になった。

樹海化が解け、海斗が丸亀城から病院へ運ばれて行った後。

海斗の状況を目の当たりした千景はこの現状を作った張本人である若葉に平手打ちをし、胸を強く掴んだ。

 

「乃木さん......どうしてあなたは、勝手なこと、したの!?......あなたが一人だけで勝手に戦おうとするから.....海斗が.......海斗がッ!!」

 

千景の責めを止めるべきか迷う勇者たちだが、

いつも明るい友奈も今回だけは彼女が言っていることは間違っておらず、彼女たちも心のどこかでは共感しているからだ。

もし、ここで千景が怒鳴っていなかったら、珠子が代わりにやっていたかもしれない。

 

「自分勝手に特攻して......海斗を巻き込んで......!せめてあなたも神樹の精霊の力を使って戦えば、海斗の負担は減ったはずなのに.....あなたはそれもしなかった.......!」

 

彼女の言葉は事実で、若葉は何も言い返さない。

千景もこんなことは海斗も望んでいないというのは分かってる。

でも、大切な幼馴染で好きな人が危険に晒されれば怒るのも当然である。

唯一無二の存在で千景にとって生きる希望なのだから。

それを守れなかった彼女も自分に苛立っている。

もう嫌なのだ、何もない頃に自分に戻るのが、一人になりたくない。寂しいのは嫌だと。

だからこそ千景は彼女、乃木若葉を許さない。

だって彼女は自分で責任を負っていないのだから。

 

「あなたは.......これで満足なのでしょう?でも、私は許さない。一人で突撃するあなたも、周りが見えていないあなたも、結果的にだけど海斗に負担を押し付けたあなたも.....っ!絶対に許さない!」

 

千景は若葉を強く睨みながら言う。この世に憎悪をぶつけるかのように吐き捨てる。

そして、強く胸を掴んでいた腕が緩んだ。

 

「乃木さん.....あなたに忠告するわ。......自分が、勇者のリーダーだってことをもっと自覚しなさい!そうしなきゃ、私はもうあなたとは一緒に戦いたくないわ」

 

千景の言葉に若葉は身が凍りつく感覚を感じて脱力してしまった。

若葉は自分のしてきた行いに後悔する。

果たしてこれから自分が勇者として、リーダーとして相応しいか分からない。

大社が運営する病院の病室で若葉はベットに横になりながら考え続けていた。

責任をどうやって取ればいいか悩みながら海斗が目を覚ますまで、ずっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





海斗何をしている!よせぇ!
というわけで若葉を助けに行くのは高奈ではなく、海斗君ですね。
こっちの方だと何かと活躍しさせやすいのと、千景ちゃんの悲しい顔が見たかった.....というのもあるんですねぇー
やっぱ大切な人が傷つけばそりゃ怒りますよ( ˙꒳˙ )
というか、海斗君精霊憑依してるけど大丈夫か?

さて、次回は日常会ですねー果たして海斗君は大丈夫なのかな?

次回。第11話:自分が出来ること
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