華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。
ゆゆゆいのメモリアルブックとクロボン原作が届いてめっちゃテンション上がりました。
今回はタイトル通りです。
では本編どうぞ〜(∩´。•ω•)⊃


第13話:遠征

 

「......壁の外の調査?」

 

「あぁ。大社からひなた経由で連絡があってな」

 

勇者が住んでいる寄宿舎の一室にある海斗の部屋で若葉がベットに寝っ転がりながら携帯ゲームをしている海斗に伝える。

少しつまらなそうな表情をしながら視線を一瞬だけ若葉の方に向かせ。

画面に集中しながらコマンドを打ち込んでいた。

 

「はぁ......海斗。少しは人の話を聞け」

 

「あ!今ボス戦なんだよ取り上げんな!」

 

海斗の行動にため息をつきながら若葉は彼のゲーム機を取り上げテーブルに置いた。

勿論、画面は一時停止にしている。

そしてやっと観念した海斗はベットから起き上がり面を向かって座る体勢をとった。

若葉は海斗に先程について話を始めた。

いわく、四国以外にも人が生きていると大社が判断したらしいこと。

それで大社は壁の外でまだ人類が生存しているのを確認するために調査するという形で表向きではそう人々に公表しているが、海斗的にはやはり壁の外がどうなっているか大社は研究したいのだろう。

つまりは遠征だ。

諏訪が墜ちてからもう一年は経った。

バーテックスが侵攻してくるにつれてあちらも戦力を使いすぎたのか暫くは侵攻してこないと神託で伝えられた。

今のうちに勇者達を壁の外に行かせようとしたのだろう。

勇者達に課せられた任務は四国外の環境状態の調査、及び生存者が生き残っている地域はないかを調べること。

探す地域は、諏訪、北方の大地、そして各地都市の捜索。また、各地で水質や地質調査のためのサンプルも採取もせねばならず、やることは山々だ。

どうも大社は勇者を使いやすい駒と勘違いしているのか便利な道具としか見ていないんじゃないかと思ってしまう。

 

「全く.....人任せな連中だな」

 

「気持ちは分かるが、今壁の外に出れてバーテックスに対抗できるのは私達勇者だけなんだ。仕方あるまい」

 

若葉も海斗の気持ちを理解している。

彼が言っていることは間違ってはいないし、最もまだ成人もしていない子供が人類の命運を賭けて化け物と戦うのだ。

それを常人の人が聞けば正気の沙汰じゃないと思うだろう。しかしバーテックスに対抗出来るのは無垢で穢れを知らぬ少年少女だけ。

本当に世界は不条理で非条理で理不尽で残酷だ。

若葉はそれを心の中で理解しておきながら割り切るしかなかった。

 

「ま、若葉の言う通りだな。今動けるのは俺ら勇者で、バーテックスを倒せるのも勇者の御役目......だからな」

 

そんな、若葉の表情が強ばった瞬間。海斗がため息を吐くように鼻で笑い、呟いた。

若葉は先程の強ばった表情から困惑した顔になった。

だが、すぐに頬を緩み笑みを浮かばせた。

どうやら無意識に表情が変化していたらしい。

海斗はそれを見て空気を和ませようとしたのだろう。

感謝を言うべきだろうが必ず彼はとぼけるだろう。

すると海斗はスマホを起動しながらゲームをやり始めながら若葉に聞いてきた。

 

「そういや、遠征はいつ行くんだ?」

 

「一週間後だ。荷物の方は球子に準備を頼んでいる」

 

若葉は悠長に応えた。

今回の遠征に球子の協力は必要不可欠だった。なにせ、勇者達の中で彼女がアウトドアに一番詳しかったからだ。

球子も二つ返事で了承してくれて今はその準備を待っている状態だ。

 

「OK。なら後は一週間後まで英気を養っとくか」

 

「相変わらず、随分と呑気だなお前は」

 

「......」

 

若葉の言葉にゲームをしていた海斗は指を止めた。

冗談混じり表情も先程とはうって変わって、眉をひそめるとこちらに向き直り口を動かした。

 

「一つだけ.......お前と勇者達に忠告しといてやる」

 

「......なんだ?」

 

海斗の表情ががわりと変わると空気そのものも支配されたかのように重かった。

若葉を息を飲むと海斗はゆっくりと唇を動かした。

 

「お前達が思っているほど外の現状は甘くないぞ?」

 

その言葉は彼が実際に体験したから言える言葉だった。

若葉も十分それは承知しているが、バーテックスが襲来してからこの四年間は壁の外は見ていないのだ。

しかし海斗は世界が崩壊した所も目の当たりにしている。

だからこそ、彼は希望を見いだせないのだろう。

たとえ、小さなものでも。

そんな淡いものは心を蝕むだけだと彼は知っているから。

若葉は何も言えなかった。

こういう時はリーダーとして何か言えばいいと思うが、海斗の前だけではどうも語りかける言葉が見つからなかった。

少々こちらは夢見すぎていると自覚はしている。それでも、もしまだ人が四国の外に生きているという淡い希望が僅かにあるのなら若葉はそれに賭けたいと思った。

でも、何も言えなかった。

その重みの言葉はとても現実味を帯びていたのだから。

 

 

 

 

 

一週間後。若葉達勇者六人と、巫女のひなたは、瀬戸大橋記念公園に立っていた。

勇者たちの格好はバーテックスと戦う際の勇者装束の姿でひなたの方は巫女服になっている。

勇者たちが背負っている荷物の中には、食料、キャンプ用具、着替えの服、医薬品、水質地質調査のサンプル採取用具などが入っていた。

 

 

「にしてもさ、四国の外に出るのって何年ぶりだろ」

 

球子の口調と表情からは、遠足に出掛ける子供のように、楽しげな雰囲気を醸し出していた。

 

「私、バーテックスが出てきた時に本州から移って来たから、三年半ぶりくらいだよ!」

 

「あんまり遠出とかしなかったので、私は四国を出るの初めてです」

 

「私も......そうね......」

 

「タマは四年ぶりくらいだな〜。家族で広島に行った時以来だ」

 

「......」

 

みんなでワイワイと話す。しかし海斗だけは無言で球子達の方を見つめていた。

これから若葉たちは、結界の外へ出る。

四国から出発し、歌野が守っていた諏訪や、人類生存の可能性が見出された北方を目指す。

因みにヘリや船を使った移送は、バーテックスを引き寄せるかもしれないので、移動は基本徒歩だけだ。

しかし勇者達は勇者システムのお陰で身体が強化されて問題はないが、ひなたの方は勇者ではなく普通の人間と変わらない。そのため他の勇者たちが彼女を背負って移動することになっていた。

 

「すみません、皆さん」

 

申し訳なさそうに言うひなたに、友奈は明るく答える。

 

「気にすることないよ、いつもヒナちゃんには、私たちが出来ない巫女のお仕事をやってもらって頑張ってるんだから!」

 

「ありがとうございます、友奈さん」

 

友奈の言葉に、ひなたは微笑む。

 

「それじゃ、最初は誰がひなたを背負っていくか、ジャンケンで決め――」

 

「球子、それは必要なさそうだぞ」

 

「は?何言ってんだよカイト。タマ達がジャンケンしなきゃ一体誰がやるんだよ?」

 

海斗が球子に指摘している間にその横で、若葉がスッとひなたを抱き抱えた。

俗に言う姫様抱っこで。

 

「では、行くか」

 

 

「「「「.......」」」」

 

「な、言っただろ?」

 

ごく自然とひなたを抱えた若葉に、他の勇者達は呆気を取られてしまう。

海斗はある程度予想がついていたため呆気を取ることはなかった。

 

「しかも背負うっていうか、お姫様抱っこですし......」

 

「なんか、見てるこっちが照れるっ!」

 

杏と球子は頬を赤くする。

 

「......?何かおかしいか?」

 

周りの反応に対して意味がわからず、若葉は怪訝そうな顔を浮かべた。

 

「まぁ......あなたがおかしいと思わないなら、いいんじゃないかしら......」

 

「お姫様と王子様みたいだね!」

 

「いや、なんでお前はそんな目を輝かせ.......もう、いいか......」

 

やや呆れた表情の千景と感心したように目を輝かせる友奈、そしてそれをツッコもうとしたが、これ以上何を言っても無駄と判断して諦めを感じた海斗。

ひなたは照れたように笑みを浮かべ、それを見ても若葉はやはりきょとんとしていた。

 

「......」

 

「ん?どうしたちーちゃん?」

 

ふと、千景が海斗の方を見つめているのに気付き海斗が顔を向けると千景は即座に逸らしてしまった。

 

「――!?な、なんでもないわ......!」

 

「お、おう......そっか」

 

いきなり声を大きくして海斗に言う千景。

海斗は彼女の声に圧倒され困惑してしまい何も言うことはしなかった。

だが何故だろうか、彼女の方をよく見ると若干耳が赤くなっていた。

一方千景の方は自身の髪をくるくると回していた。

 

「(い、言えない.......乃木さんが上里さんを姫様抱っこしててるのを見て羨ましいと思って、それを海斗にしてもらいたいとか言えるわけがないじゃない........!)」

 

あれを見て千景はもし、自分がひなたのポジションで若葉の方は海斗でそれをお姫様抱っこで抱き抱えてもらえたらいいなと考えてしまった。

誰でも一度は好きな人にされたいとかは思うだろう。実に乙女的ではあるが、しかしそれを本人(海斗)の前で言えば失望されるに違いない。

それだけは絶対口が裂けても言えなかった。

 

「(.....うーん、最近の女子には色々あるもんなのか?それだったら仕方ないか)」

 

千景が何かに思い悩んでいるのを後ろ姿でみながら海斗は呑気に思うのだった。

 

「じゃあ、若葉ちゃんの荷物は私たちで持つね」

 

「そうだなっ!」

 

すると友奈と球子が言うと若葉用の荷物を他のみんなに渡してそれぞれ分担した。

しかし、何故か海斗だけやけに荷物が重く感じた。

若葉の荷物を渡してきたのは球子だった。彼女の方を見るとこちらを見てニヤニヤと笑っていた。

どうやら他のみんなより重くされたらしい。

あの野郎......と海斗は眉間に皺を寄せてしまうが別にこんな荷物なぞ気にする事ではないと思い、一息ついた瞬間に軽々と肩に持ち運ぶ。

少々球子は驚いていたが予想外だったのだろう。

ざまぁみやがれと心の中で笑った。

 

「よーし!それじゃあ勇者、しゅっぱ〜つ!」

 

友奈の掛け声を合図に、彼女たちは記念公園から跳躍した。

瀬戸大橋を通って本州へと向かう。

そして大橋を渡り、瀬戸内海を超えていく。

その先に神樹が作った壁が幾多の樹が絡み付くように覆われている。

西暦2015年から2019年の今に掛けて人類を守っている。

だがこの壁もまだ未完成だ。

この防護壁が完成するまで勇者がバーテックスの相手をする。

それが完成すればもうバーテックスとは戦わなくてすむ。

でも、果たしてそれは何年保たれるのだろうか?

五十年?百年?決して何れかはまた戦う事になるだろう。

出来れば海斗達の代で終わらせたいとは思う。

その為にはもっと力を付けなければならない。

だが今は壁の外の調査が先だ。

バーテックスが出現してから大気の状態は寧ろ良くなっていた。

自然の力は凄いと思わず驚愕してしまう。

そして瀬戸大橋も終端に来て、岡山が見えると、勇者達全員の表情が曇った。

もはや原型が留めていない工場跡だった建物、高層ビルやかつて人が住んでいた一軒家も破壊されていた。

まるで、何かに食われたかのように。

そして他の建物も見てみると化学物質による大規模な爆発が起こったのか内側から吹き飛ばされておりその周辺辺りもその余波の熱によって形が変形しているものもあった。

勇者たちは、そんな無惨な姿を残す工場群の中に降り立った。

 

「ひどいな、これ......」

 

球子が周囲を見回しながら、険しい表情を浮かべる。

 

「人間が築き上げてきたものなぞ、奴ら(バーテックス)にとっては全て蹂躙の対象でしかないんだ」

 

球子の後ろに立っていた海斗が工場跡の壁を触りながら呟く。

外の光景を知っていた海斗は彼女たちより表情は険しくはならず真顔で言った。

だがその目だけは僅かに怒りを露わにしていた。

バーテックスの考えは分からないが、ここまで建物ごとやられているということは文明すらも破壊尽くすという事なのだろう。

すると若葉の腕に乗っていたひなたが彼女の腕から降り、大社への報告用として、デジカメで工業地帯の様子を撮影した。

 

「念のために......生き残りがいないか周辺を探そう」

 

重い口調で若葉が言う。

勇者達は、工業地帯である臨海部から、倉敷市内で最も人口が多かった平野部までを捜索した。

跳躍して上空から様子を見たり、地上を歩き回ってみたりしつつ、生存者を探す。

たが、幾ら探しても、結局人の気配すらなく見つけることさえも出来なかった。

かつて美しかった街並みも、今は変わり果てている。

その次に向かう場所もきっと同じなのだろう。

だが、落ち込んで足を止める時間は勇者達にはないのだ。

 

「行こう。先はまだ長い」

 

若葉は再びひなたを抱き上げる。

その後若葉達は予定のルート通り、東方へ移動を始めた。

 

 

 

 

 

「ここも全滅か......」

 

岡山県を通り過ぎて兵庫県に入った海斗達はそこにかろうじて形を残しているビルの屋上に降り立って、そこから神戸の全景を一望する。

大都市である神戸も、今はもうその名残さえ見えない。

ビル、民家、道路の至る所はほとんど破壊され、淡路島と神戸を繋ぐ明石海峡大橋も崩れ落ちていた。

そこで若葉の提案で効率を考え二手に分かれて調査する事になった。

危険性は増えるかもしれないが、調査遠征の期間も無限では無いし時間短縮するならやった方がいいだろう。

若葉、ひなた、千景と、友奈、球子、杏というグループ分けで決まった。

三時間後に神戸港のフェリー乗り場近くに集合する事に決めた。

一方海斗はというと一人で別行動すると若葉に言ったが、勿論勇者の皆には心配な目で見られた。

だが、海斗は外の出来事を体験している身であり、一人で行動するのは慣れていた。

それを説明すると渋々だが了承してくれた。

特に千景の心配そうな表情はだいぶ海斗の心に来たのは別の話。

 

「四年も経てばこんなになるもんなんだな......」

 

ボロボロになったビルの屋上で海斗は村正を地面に置きながら辺りを見渡す。

そこも岡山と同じでとても人が生きているかと思えない程周りが破壊されていた。

そして付近を歩いていた時に建物の壁や道路に乾いた血が壁に付着していた。

ここも襲われたのは明白だ。

もう四国以外生存者はいないと海斗は諦めている。

例えバーテックスから逃げられたとしても果たして人間同士で協力し合ってこんな残酷な世界を生き残れるかどうかと言うとNOと応えるだろう。

 

「.......ん、もう時間か」

 

スマホを見ると気付けばもう三時間が経とうとしていた。

そろそろフェリー乗り場に行かなければ若葉達に怒られるだろう。

最後に壊れた道路とビルを一瞥すると海斗は村正を持ちフェリー乗り場がある所に跳躍した。

 

「なんでだろうか、全然悲しく(・・・)ない」

 

悲惨な光景を見たはずなのに何も思えなかった、何も感じなかった。

ただ怒りだけはある。

寧ろ人が死んだ想い()が入って来なかった。

だが、それを考えるのは今は後回しだ。

まだ遠征は始まったばかり、油断はしない。

ここで亡くなった人達の為にも生きていかなければいけない。

だからこそ前に進まなくてはならない。

海斗はフェリー乗り場に着くまで崩れた街並みを跳躍しながら睨み続けるのだった。

 

 

 

 





海斗君大丈夫かな?段々雲行きが怪しくなるんですけど......まぁ、大丈夫でしょう!(迫真)

次回も遠征編まで書くつもりです。
ではまた次回にお会いしましょう、さらば!

次回。第14話:その瞳で見たものは
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