誤字と脱字が多いかもしれませんがお許しください。(一応確認したけど不安)
では本編どうぞ〜
海斗は先にフェリー乗り場に着いていた若葉達と合流した。
若葉達の方で何があったか聞くがやはり生存者はいなかったという。
皆表情が澱んで破壊された街並みを見ながら黙っていた。
しかし、暗い雰囲気の中球子が野営の場所を探すと明るい口調で言ってきた。
気付けば日が暮れ始めていてこれ以上の探索は危険と判断して勇者達はキャンプ場を目指した。
その後は何もなくキャンプ場に到着し付近に生存者やバーテックスがいないかを確認して安全が確保出来たら荷物を置き、焚き火に必要な木枝や飲食に使う水をキャンプ場から持ってくる。
水の方は施設自体の水道が止まっており付近に流れている川から水源を使っている。
もちろん、人が飲める綺麗な天然水だ。
たが――
「どうしてこんなことに.......」
夕飯を食べ終わったのはいい。でも、なんで俺が見張り役なんだ.....と海斗は愚痴る。
遠征の中で汗をかいた勇者達はキャンプ場付近の川で汗を流すべく水浴びをしようとする。
しかしそれは裸で水に浸かるということなのでその中男は海斗一人しかいなく、それ以外全員はまだ成長途中の少女達だ。
流石に一緒に水浴びすることはないので安心はしたが、代わりにバーテックスが襲ってこないか周囲の見張りを任された。
一応球子に「お前覗いたら承知しないからなっ!」と言われたが、そんな自分が死にに行くような事はしたくない。取り敢えず見張りを引き受けた海斗は少女達の裸体を見ないように、丁度そこにあった岩の陰に背中を付けて警戒体制に入った。
後ろではピチャピチャと水が掛かる音や女子にしか出せない甲高い声が後ろから聞こえてくる。
頭が痛くなる。考えてはいけないと自分に言い聞かせこの場を耐えるしかなかった。
まるで地獄に行って無罪のやつが閻魔に処罰を無理やり受けさせられている気分。しかし、もし敵が来た時には海斗が戦わないといけない。
それを思いながらよく分からない罪悪感に苛まれながら割り切って、意識しないように暗闇に目を向けるのであった。
「はぁ.......」
見張りをしてから暫くして若葉達が水浴びから戻ってきたので見張りを交代して海斗も川で汗を流すべく向かった。
手で水温を調べるととてもじゃないが長く浸かる温度では無い。
季節はもう三月に入ったばかりでまだ水や風はまだ冬の寒さと変わらない。
長居をすれば風邪を引くだろう。
「......ささっと流すか」
手に付いた水を軽く払い服の上を脱ぎ始めた。
体を拭くタオルを水につけて余分な水分を落とす。
落としたら腕、肩、胸、首、背中、顔の順に拭く。
汗を流しながら今日見た事が頭の中にチラついてくる。
一日目としては大分勇者達にもきたのだろう。
荒れた道、崩れた建物、人が無き街。そして生存者は影や気配すらも感じることが出来なかった。
海斗は三年前の事を思い出す。
まだ人間が壁の外で必死に抗って生きていた時。バーテックスが現れそのせいで他者と他者の醜い争いや奪い合いの殺伐とした事になっていた。
だが三年たらずでこんな有様なのだ、もう人はいないと言っても納得してまう。
「やめよう......考えるだけ疲れるだけだ」
今考えても何も変わらない。今は調査を優先すべきだと自分に納得させる。
「よし、これで上は終わりだな。後は下だけ」
そう海斗が呟くと、石が何かに当たった音が聞こえた。
「――ッ!誰だ!」
音が鳴った場所を確認するために移動したがそれが間違えだった。
それは先程海斗が岩陰で見張りをしていた場所で
先程音が鳴った正体はカエルが跳ぶ瞬間に石を蹴った音だった。
だが、それが海斗にとって大きなミスだった。カエルの後ろには長い黒髪を靡かせた少女がいた。
少女も音に気付き海斗の方に振り向いた。
海斗を見ると少女は目を見開いて声を発した。
「.......え、か、海斗.......?」
「.......その声」
海斗が声の方へ顔を向けるとそのタイミングで月明かりがその少女の方に照らされる。
その光で正体が分かってしまった。そこにいたのは千景だった。
しかも一糸纏わず姿で。
身体に付いた水が月の明かりで反射して彼女の華奢な体を綺麗に映す。
「ちーちゃん.......」
そういや若葉達が水浴びから帰ってきた時に何故か千景だけはいなかった。
まさかこんなところで一人で水浴びをしているとは思わないだろう。
だが――彼女の胸に傷跡があった。
すると途端に冷静になった海斗は顔を赤くして彼女から目を逸らした。
「すすす、すまん!別に覗くつもりはなかったんだ!」
「い、いえ......大丈夫よ........」
千景も自身の体を手で隠して見えないようにする。
彼女も顔から耳まで赤くなっている。
異性の前、しかも好きな人の前で自身の身体を見られてしまったのだ。
でも千景は海斗に怒りもしなかった。寧ろ優しい声で許してくれた。
普通なら怒るのに何でなんだろうか?
まぁ、そんなことはさておき、まずは。
「取り敢えず.....このタオルを巻いといてくれ」
「うん......」
海斗は極力見ないように手探りでタオルを探し千景に渡す。
それを受け取ると千景は体にタオルを巻き付けた。
「もう.....いいわよ」
千景の声で彼女の方に振り向いた。
それでも彼女はタオルを巻いていても海斗にとっては刺激すぎた。
水分を吸ったタオルが彼女の体に纏わりついていて逆に目を合わせられなかった。
「やっぱ
「......えぇ。高嶋さんに、皆に傷を見られたくなかったの」
千景の顔は下を俯きながら自分の傷を撫でるように触りながら話す。
あの胸の傷は海斗が唯一忘れることは無い記憶だ。
小学生の頃海斗は何時ものように千景と遊ぼうとしたが、放課後になるといつの間にか彼女がいなかった。
辺りを探しても見つからず結局下駄箱の方に行こうとるが、そこで千景を虐める生徒が彼女の服を切っている所を見てしまった。
そして、よく見れば胸に血が付いていた。
その時海斗は我を忘れてその生徒達に全治一ヶ月の怪我を負わせてしまった。
その後に先生にこっぴどく怒られたが、そもそも千景のいじめ事態を放置している大人にはどんな事を言われても何も思わない寧ろ本当に同じ血が通った人間かと疑うほど酷いと思った。だから後悔はしていない。
なんなら両親には許可は貰っている。
まぁ、『穏便に済ませろ』と言われたが状況が状況だったので仕方ない。
千景の方は胸に一生消えない傷が付いてしまい、海やプールにも抵抗感を覚える事になってしまった。
思えば、自分がもっと彼女といればこんな傷なんて負わせなかったんだろうなと何回も悔やんでしまう。
そんな千景は「海斗は悪くない。寧ろ、助けてくれてありがとう」と優しく言われ、感謝された。
どうしてこんなにも彼女は優しいんだ。そして何で周りの連中はこんな優しい子を傷つけるのだろうかと海斗は憎悪を膨らませる。
そして現在も海斗は彼女の傷を見ると目を背けたくなる。
「......海斗、私の今の姿どう?」
すると千景が海斗に声を掛けて自身の身体を見せびらかしてきた。
いくら場を和ませると思ってもそれは大胆すぎると思う。
「......どうって、言われても......」
海斗は今の彼女を見ることなんて無理だった。今も自分の理性がやばいと言うのに見れるわけが無い。
「そう......やっぱり身体に傷がある私は醜いのね.....」
そんな素っ気ない言い方をしてしまった海斗に千景はしゅん、と顔を下に向けて俯いてしまった。
「ッ!!そんなことは無い!」
彼女の言葉で思わず叫んでしまう、でも言わずにはいられなかった。
だってそれは彼女は悪くはない。悪いのは環境とあの両親のせいだ。
両親のせいで学校では淫乱女や阿婆擦れと言われているが、決してそれは彼女が望んだことでは無い。
そんな千景が住む村やその人間は彼女さえも対象として見て蔑む。
こんなに優しく、誰かを想い合える。なのに――
どうして
思い出しただけでもあの村人達に殺意が湧いてくる。
だがそんな事は千景が許さないだろう。
だからこそ海斗は今まで以上に守れる力と強さを磨くようになった。
海斗の両親に教わった護身術と対人戦での効率化などを学んだ。
これは千景には言っていない。
だって彼女が平穏に幸せに笑顔で笑っていればそれだけでいいのだ教える必要などない。
しかし海斗は彼女の事を分かっていただけでしかなかった。
「俺は、ちーちゃんを一度も醜いとか思ったことが無い!」
千景が体にタオルを巻いていても一切気にせず海斗は彼女の方に顔を向ける。
今自分が思っている事を全部吐き出すために。
「君と初めて出会って、友達になって今までが楽しかった!でもそんな無力な自分が嫌だった......」
千景の事を守るために鍛え鍛え鍛え、続けて少しでも彼女に笑顔が溢れるように努力した。
でもそんな彼女の本当の思いに気が付けなかった。
「俺は君の気持ちを分かっていたつもりでいただけだった......なんて言ったらいいか分からないけど、でもこれだけは言える。君は綺麗だ。初めて会った時も今も綺麗だ!」
「.......」
今言える事を千景に伝える。
それは海斗が唯一言える本当の気持ちだった。
「だから......自分の事を醜いとか言わないでくれ!」
「.......じゃあ私をもっと見て?」
そういうと千景がタオルをはだけさせて自分の体を見せてきた。
即座に顔を明後日の方に向いて手で目元を隠した。
「ば、バカ!隠せ!」
「何で?海斗が私の事、綺麗って言ってくれたからでしょ?」
「うぐっ.......」
さっきまで悲しそうな表情していたのに今は悪戯心をもった表情になっている。
「か、からかわないでくれ!」
「ふふっ。ごめんなさい.......少し試してみたかったの」
「心臓に悪すぎるだろ......全く」
「私も......貴方のそういう反応をするの、好きよ」
「はいはい......ささっと着替えてきなよ」
海斗がそう言うと千景は再びタオルを巻いて近くに置いてあった着替えの服を取り海斗から見えない所で着替え始めた。
その間に海斗は自身の服を取りに行きその場で着た。
千景の着替えが終わるのと同時に戻ってきた。
タイミングが良かったようだ。
「待たせたわね......行きましょうか」
「あぁ」
するといきなり千景が海斗の腕に抱きついた。
あまりの事で状況が呑み込めてない海斗は驚いてしまう。
「ち、千景さん!?」
「何.......?」
「いやいや、『何?』じゃなくて!何で俺の腕に絡みついているんですかねぇ!?」
「偶には私も人の温もりが欲しいわ......だって、まだ三月としても寒いじゃない......?」
「だからって――」
「ダメ......?」
「うっ.......」
彼女が涙目になりながら上目遣いで迫ってくるのは流石に心にきてしまう。
これは果たして断れるのだろうか?否、断れるわけが無い。
海斗はため息を吐くと苦笑しながら笑った。
「わかったよ......ただし、皆がいるテントの途中までな?」
「うん。ありがとう」
「全く......他の人とかにするなよ?」
「そんなことしないわ........海斗以外の人には、絶対に」
最後は小さくて聞こえなかったが多分大丈夫だろう。
彼女の目を見れば分かる。
それは海斗に対して絶対的な信用から来ている。
「んじゃ、行くか」
「えぇ」
海斗の合図と共に千景も応える。
二人は若葉達がいるキャンプ場に着くまで腕を離さなかった。
千景は少し恥ずかしいのか顔を赤くしており時折だが海斗の腕を触ったり指で小突いたりしている。
こそばゆいが、それが可愛く見えてなんとも癒されると思ってしまう。
それが戻るまで続いて結局は若葉達に怒られてしまった。
でも、杏とひなただけは見守るような感じで微笑んでいた気がしたが、気のせいだろう。
◇
数分後。炎が空に漂っていく中海斗はキャンプ用の椅子に座りながら小枝を焚き火の方に入れて、周囲の温度を上げていた。
暫くしてからは勇者達が交互にテントの中で数時間睡眠をしてその間に外にいる見張り三人がバーテックスが来ないかを交代制で周囲を見ていた。
最初は若葉と友奈と海斗が見張り役をしていた。
彼女達も海斗同様、椅子に座りながら焚き火を見ている。
「若葉、友奈。後は俺が此処は見張っとくから、もう寝てな」
「むっ。それはダメだ。例えお前の体力があったとしても二日目の調査に支障が出るぞ?」
「別に、このぐらいで俺は倒れはしないさ」
海斗の言葉に若葉は目を細めながら話す。
ため息を吐くと今度は友奈が海斗に声を掛けてきた。
「でも、うみくんは前科があるけど大丈夫?」
「.......」
友奈に痛いところを突かれたが気にしない。
別に好きに倒れた訳じゃないと言い返したいが、言ってもキリが無いし、本当の事だから反論すら出来ない。
「まぁ、今回は近くにお前らがいるし。その時はその時に頼むよ」
話を変えるためにポケットからブロック状のした携帯食料を口に含んだ。
味としては簡素なものだが、この一本で栄養が取れると思うと時代の進歩には些か驚く。
まぁまだ、15年しか生きていないのだが。
でも四国に来るまではこれを食うのが毎日だった。
慣れてるとこんなのは美味しいと入るのだろうか?
すると、若葉がため息を吐くとこちらに向き口を動かした。
「仕方ない。これ以上言っても退いてはくれないそうだろうしここは従うことにしよう」
ただし。と言葉を区切って若葉は席を立った。
「本当に倒れたらリーダとして、暫く海斗を監視させてもらうぞ」
一見冗談かと思ったが彼女の目を見れば本気だと理解した。
若葉は決めたことは即行動で示すのだ。
監視とは言うが、逆に何をしてくるか分からない。
「ではな。お休み」
「おやすみー!」
「おう」
そう言うと若葉は勇者達が寝ているテントの方に向かい、中に入った。
しかしまだ忘れてはいけないやつがもう一人いた。
「お前も早く寝ろ。友奈」
「うーん.....何か全然眠くないんだ、もう少し居てもいいかな?」
「勝手にしろ」
「やった!」
海斗から許可を貰った友奈は嬉しそうに微笑んだ。
これ以上何を言っても聞かないだろう。なら好きにさせてあとは離れて来るのを待てばいい。
「ふぁぁ.....今日は神戸で、明日は大阪かぁ。まだまだ先は遠いね」
あくびをしながらまったり話す友奈。
その仕草を見た海斗はため息を吐く。
「その後に東京、諏訪、そして北国の方まで行くんだからな」
諏訪から連絡は去年から途絶えているが、人が生きていると可能性が高いが、海斗自体このバーテックスが蔓延る中で生きていたら奇跡に近いだろう。もし生きていたら儲けもんだ。
先が長いと思いながらもやるしかない。
本当に大社やそこで働いている大人や世間は人任せが良すぎる。
例え無垢な少年少女じゃなくても少しは自分たちで調査とかすればいいのに。
まだ中学生の子供が世界の命運を賭けるとか割にあってない。
焚き火から漂う炎を見つめながら考える海斗。でもそれから見つかる言葉は大社とその周辺にいる何もしない大人達への罵倒。
言っても、言っても、治まらなかった。
すると友奈が海斗の肩をつんつんと小突いてきた。
「なんだ?」
「ねぇ、そういえば最近ぐんちゃんと距離近くなってる感じがあるけど何かあったの?」
「は?何もないぞ」
「本当ー?私とか若葉ちゃん達から見ると結構大胆すぎるとかって言われてるぐらいだよ?」
小突いて来たかと思ったが、千景との関係について聞いてきた。
最近は昔より近くなったとは自覚はしてるが、そこまで彼女を異性としては見ているが、それは大切な親友としてしか見ていない。
でも、海斗から見て彼女は特別な存在として変わりは無い。
しかしそこまで近いとは思わなかった。
まぁ、問題は千景が寄ってきているだけだと思うが......気のせいだと信じたい。
そう思えば先程千景との際の出来事を思い出してしまう。
でもあれは事故だからとしか言えないし誰も悪くはないのだから。
このままではいけない。何か話を変えなくては。
「.......そういや、友奈は何でそこまでバーテックスに対して戦えるんだ?」
「え?それは勇者だからだよ?」
「いや、違ったな......なんのために戦ってるんだ?」
「.......」
どうやら軽いと思ってた話が実は禁句だったらしい。
でも海斗自身友奈のことが気になっていた。
それに、確認したかった。高嶋友奈はどんな人間で、どうして自分の事を表に出さないのかを。
彼女は明るく、元気で、ムードメーカー的な存在で場を明るくする。そして偶に天然なところがある。
だが空気が重くなった時は話題を変えたり、周りに気を使って和ませる。
とても聞き上手で、でもそれがあまりにも不自然だった。
まるで自分が蚊帳の外になっていると思ったのだ。
だから最初海斗は友奈のことが好きにはなれなかった。
自分の事を蔑ろにして、他の人を気に掛けていて優先しているところが気に食わなかった。
海斗と同じ人種かそれ以上だと思った。
だからこそなんだろう。海斗が友奈のその異常性のことが気になり、今ここで彼女の真意を聞きたかったのは。
「最近、お前のそのよく分からない気持ち悪い笑顔に不快感を覚えた。だが、それはお前が周りに迷惑を掛けたくないからこそしているんだろ?」
「ち、違うよ!私はそんなつもりじゃ......!」
「じゃあもう一度聞かせて貰おうか。お前はなんのために戦ってるんだ?人を守るためか?名声が欲しいためか?地位が欲しいのか?それとも自己満足なのか?因みにその笑顔もほぼ作り笑顔でお前の聞き上手もそれで身に付けたもんなんだろ?」
「.......」
「応えろよ、高嶋友奈ッ!」
自分でも何言ってるんだろうかと自覚しつつも彼女の本心が聞きたかった。本当の気持ちを。
なぜだかこれだけは聞かなければいけない気がした。
自分から頼ることはせず、逆に自分が頼られた時は率先してやるという損をして得をされるという割りに合わないことをしている彼女に。
友奈は海斗の言動に理解出来なかった。
いきなり『何のために戦っているのか?』と強い口調で問われ体を震わせた。
こんな海斗の声なんて初めて聞いたし驚いた。
一体彼は何をしたいのだろうか?
友奈は彼の意図が読み取れなかった。
でも、言われっぱなしでも友奈は良かった。
それで海斗の気が済むならそれでと思った。
けど、こんなに言われて流石の友奈も言い返したくなった。
何も知らない癖に.......好きに言って.....と、心の内側から何かが流れてくるのを感じながら彼女は遂に口を開いた。
「――私は.......嫌なんだ、気まずくなったり、誰かと言い争ったりするのが.......つらいから。だから、相手の話を聞くばっかりで自分を出せなくて......」
懺悔をするかのように友奈は話し出す。
海斗はそれを黙って聞いていた。
彼女の本当の姿を。
「それが、お前の聞き上手で自分を出せない理由か」
海斗の言葉に友奈はコクと頷いた。
これが高嶋友奈の真実。
誰かと争うのも傷付けるのも拒んでいる。
それが起きれば二度と戻らないと思ってしまう程に。
だからこそ彼女は暗い雰囲気やその空間を嫌い、自分でそれを作らせないようにしていたのだ。
以前、丸亀城の食堂で勇者達が顔を下に向いていた時に友奈が大きい声で言って、自分に注目させていた。
その後に彼女が惚けるような感じを出して、周囲を困惑させツッコミを受ける。
その前提があった。
「(あれも意図してやったというのなら.......本当は彼女は―――)」
海斗がそう考え深けていると友奈が口を動かした。
「私、本当はね、怖いから戦ってるんだ.......臆病者なんだ」
その答えは友奈自身が応えてくれたようだ。
私が勇者になった時、どうして私がバーテックスと戦わないといけないんだろう?どうしてと思った。とても怖かった。
でも、家族と友達が失うのがもっと怖かった。と述べる友奈。
「だから私は『勇者』って言葉に憧れているのかも」
苦笑しながら言葉を零す友奈。
それを見て海斗ははっきりして理解した。
臆病者と言えば確かにそれは合っている。
しかし、それは決して間違っていなく、誰だって陥る思考だ。
誰かが戦うより自分が戦って助けたい。
そんな自己犠牲。
何時だって何度だってそれは譲れない。
異状すぎると言われてもそれを裏返せば、彼女の優しさだ。
彼女は優しく、そして......純粋すぎる。
だからこそ友奈は『勇者』という言葉に憧れていた。
世界には象徴が必要だ。
ただし、それは倒れず、挫けず、前をへと進む事。
心をすり減らし、身体すらも傷付ける。
そんなことを彼女は率先してやっていたのだ。
誰も失わないようにと。
「お前の事は分かったよ。友奈」
「失望した......よね」
「はぁ......アホか」
海斗に自分の事を話し、これから何を言われても仕方ないと思うほど友奈は顔を俯いている。
すると海斗は友奈に近づくと頭を軽く撫でた。
頭に感触を感じた友奈は顔を上げて海斗と目が合う。
「え?うみ.......くん?」
理解が出来なかった。
本当の事を言ったはずなのに、海斗は何もしなかった。
逆に友奈の頭を優しく、子供をあやすかのように撫でている。
ふと、海斗が口を動かした。
「お前は本当に優しいんだな。俺とは違くて、それを妥協せずに真っ直ぐ貫いている」
「でも、それは私が――」
「それ以上言ったら手刀するぞ」
「何でぇ!?」
明らか的にも理不尽だと抗議する友奈。でも、それさえも嬉しかった。
何故か海斗だけには本当の自分を素直に話せる気がした。
答えは簡単だ。
同じだったんだ。行動と言葉が違くても、本質は同じだった事を。
だからこんなにも友奈は海斗に親近感が湧いたのだろう。
「ねぇ、うみくん」
「私の話、聞いてくれるかな.....?」
「勿論。聞かせてくれお前の話を」
それから友奈はポツポツと自分の事を話し出した。
自分が生まれた日、血液型、趣味、好きなもの、家族、友達、そして勇者になる前の自分の事。
よく神社で隠れんぼしてやんちゃしてたこと。
その後に神主に怒られたこと。
その他色々を楽しく話した。
時には彼女の話で笑ったりもした。
でも、その仕草が場を和ませた。
語り終えた後、友奈はほぅ、と一息をついた。
「こんなにたくさん話したの、生まれて初めてかも」
一通りの話を聞いて海斗は微笑む。
「そうだな。でも、俺は友奈のことが知れて良かったぞ」
「何でうみくんはそんなドキドキさせるような事言えるのかな......」
感想を述べたはずなのに何故か友奈にはジト目で見られた。そして聞き取れなかったが、何かを言っていたのは気のせいか?
けど、暫くすれば二人はお互いに可笑しく笑った。
「なぁ、友奈」
「なにかな?」
「これからはちゃんとお前の意見も言えよ?時にはぶつかるかもしれないが、俺やちーちゃん、若葉、ひなた、球子、杏もお前の事を仲間で友達として見てるんだ。だから躊躇なく言え」
「.......うん!」
友奈に正直な言葉を送った海斗は彼女の満面の笑顔を見て思わず微笑んだ。
やはり、これがいい。
偽りでも本物の笑顔ではなく。純粋なもの笑顔。
それがいい。
これからは彼女も若葉達に自分の事を素直に話せるだろう。
それからより一層仲良くなれるだろう。
そうあって欲しい。
「じゃあそろそろお前は寝ろよ友奈。明日も早いぞ」
「うみくんは.......言っても聞いてくれないよね」
「ははっ。分かってんじゃん」
海斗はまだ見張り役を続ける。流石にこの時間はいくら勇者としても女性にとっては敵だ。
なのに夜更かしなんてしたら友奈の綺麗な肌や体がなくなってしまうだろう。
それだけは避けなくては......というか、ちーちゃんに絶対言われる。
そんな思いを考えながら海斗は表情を崩さず友奈に気付かれないように話した。
「じゃあお休み。うみくん」
「お休み」
そう言うと友奈はテントに向かい中に入った。
外は海斗一人。外は涼しい風と葉が揺れる音だけが残る。
明日は大阪に行って調査と生存者を捜索をしなくてはならない。
けどもう。
「人なんて......残っちゃいないんだろうな」
あんなビルや道路、店すらも原型が留めていないのにもし人が生きていたら奇跡に近い。
全く世界というのは何でいつもこんな残酷な事を突きつけるんだろうなと思う。
神すらも人間の敵で滅ぼしてくる始末。
絶望しか出てこない。世紀末どころじゃない。
そしたら自分達人間の生存は一体何時に滅ぶ?
十年?百年?はたまた千年すらも有り得る。
「まぁ......最後まで足掻こう。それが、俺の今出来ることだから」
空から星が流れているのを海斗は見つめ続けていた。
◇
翌日の早朝。
海斗達は大阪に来ていた。
やはり周囲は兵庫の神戸と同じ有様だった。
何も言えない勇者巫女一同。
しかし歩みは止めず、地下鉄の梅田駅に辿り着く。
大阪の地下鉄は地下シェルターみたいに広く、人が住んでいるのではないかと杏が提案したのだ。
確かにそれだったらシャッターで出入り口を防げばバーテックスは入ってこないはずだ。
そしていざ着いてみればシャッターは原型を留めず外から食われたかのように破壊されていた。
臆せず中に入れば人の痕跡がある。
そこからは暗闇で見えないのでリュックから懐中電灯を出して光を辿って前へと進む。
だが、幾ら進んでも生存者の気配すらもしなかった。
そして、半時間地下街の奥へ奥へと歩いているとそこには円形の広場があった。
中央には噴水のような設備があるが、当然ながら水道元からは水は出ていない。
そしてその周辺に勇者達全員は驚愕してしまう。
球子は驚いた声を上げる。杏は悲鳴を上げる。
ひなたは驚いて力が抜けその場に座り込む。
友奈は口元を抑えて現場を見つめる。
千景は現状を目の当たりにして海斗胸に顔を埋めてしまう。
流石に動けないので千景の事は友奈に預けた。
そして皆見た景色のその周辺には大量の白骨が大量に積み上げられていた。
そんな若葉と海斗は堪えて、噴水へと近づく。
放置された大量の白骨は雪が積もったかのように思えた。
一体何人分の死体になるのだろう。
数十?いや、百以上なんだろうか?
海斗は広場の壁に近付くとそこには今まで刻んでいた日が書かれていた。
その数は十三日ぐらいだろう。
こんなに短いと思えばやはり、中で何かがあったのだろう。
そして若葉が床に落ちている一冊のノートを見つけたようだ。
その中身を見るとこの地下街に避難していた者の日記だった。
「......くっ.....!」
流石の若葉も拒絶反応が出たのだろう。
若干眉が上がっている。
怒りを顕にしているのか震えていた。
「若葉。貸せ」
それを見兼ねて海斗は若葉からノートを奪って、読み始めた。
日記を読み進めながらページをめくるが、どれも酷かった。
「なるほどな.......」
分かってしまった。
これは
「それを読むのは勇気がいる。読みたくない奴はみるな」
忠告はしたが、結局は全員見ることになった。
一体何があったのかはこのノートで全部記されていた。
忌々しい人間との醜く、残酷な話が。
うん。
今回はそう言う事です(*^^*)
やりやがったなと思いますが、僕は無言を貫きます。
次回は日記についてと次のバーテックス進行前まで書こうと思います。
では次回にお会いしましょう!
さよなら!
次回。第15話:醜いものと樹の声