華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。
あけましておめでとうございます。
今年も『華結を繋ぐは勇者である』をよろしくお願いします。m(_ _)m

では本編どうぞ〜


第15話:醜いものと樹の声

 

 

地下鉄で拾った日記の内容は酷いものだった。

二○一五年にバーテックスが襲来して妹と地下鉄に逃げてきた事。

そこで何日も隠れ潜むようになる事とそこで一緒に避難してきた人達とこれからどうすればいいとかの話し合い。

だが、食料の問題や意見の対立、人種差別。

それでもまだ一部の正義感が強い人達がルールを作って公平に分けるようにしてくれていた。

だが、それも長くは続かなかった。

日にちが進めば進むほど死人が出た。

その後にも死人は増え続けて人間同士との争い合いは止まらなかった。

そして、妹も殺された。

何日か過ぎると人が減った時にバーテックスが攻めてきた。

奴らは最初からこれを狙っていたのだろう。

だからわざと放置させたのだ。

そして日記を書き記した少女は妹の亡骸と一緒に最後を迎えた。

 

「酷いもんだな........」

 

「これが.......その結末か.......」

 

死体の山を前に、海斗と若葉は呟いた。

バーテックスに追い込められ、絶望的な状況下でも必死に生きようとした。

だが結果は残酷なものであり、人間同士の対立によって次々と弱いものは死に、最後は化け物によって駆逐される。

もし、可能性として勇者が一人だけいれば状況は違っていたかもしれない。

しかし、後から考えても現実は変わらない。

ただ時間が過ぎてゆくだけ。

次の瞬間、来た通路とは反対側の通路の向こうの暗闇から、重いものがぶつかり合う音と何かが擦れ合うような音が聞こえ始めた。

 

「バリケードが破壊されてるから、いるとは予想はしていたが.......よりにもよってここで仕掛けてくるか」

 

地下に入る時にある程度は予測していた。

こんな所に現れるものといえば、奴らしかいない。

勇者達もそれに気づき、自身の武器を強く握り締めた。

先程読んだ日記の内容を思い出せば、あの化け物どもに怒りが湧き上がる。

しかし勇者達は冷静さを失わなかった。

 

「.....この地下街に、もう生き残りはいない。早々に脱出するぞ!ひなたは私たちのそばを離れるな!」

 

「オーケー......じゃ、やるか」

 

若葉が周りの仲間たちに指示を告げて、刀を抜いた。

他の勇者達も、次々に武器を構える。

同時に、地下通路の奥から、巨体の白い化け物共が姿を現した。

若葉と海斗が先頭に立ってバーテックスを向かい打ちながら地上を目指す。

既に地下の構造自体は把握している。

勇者達は迷うことなく進んで行く。

そして、地上に着きそうなところで前に三体のバーテックスが道を塞ぐ。

 

「海斗!手前の一体の方を頼む。奥の二体は私がやる!」

 

「断る!お前が手前側をやれ!」

 

「なっ........!」

 

若葉が海斗に指示を出すが、彼はそれを断り数が多い方へ向かっていき、村正で薙ぎ払った。

それを見た若葉は何故だか海斗の行動が危ういと思ってしまった。

以前の戦いとは違って、何か焦っているのか余裕がないと思ってしまった。

だが、それは一瞬のことだったため、気の所為だと思考を断ち切り目の前にいる敵を倒す事に集中した。

襲ってくるバーテックスを次々と倒していき、地下街から外に続く出口に辿り着いた勇者達は休む暇もなく一通り大阪の街を見て回った。

しかし、やはり生存者はいるはずもなく、次の目的地である名古屋に向かった。

跳躍して移動していく勇者達は、気付けば口数が減っていた。

口を開いたとしても、暗い言葉しか出てこない気がしたのだろう。

そして、『次こそは』とは、もう誰も言えなかった。

その後海斗達は大阪から名古屋に到着して、名古屋駅の前に立つ大型ビルの屋上に着地してそこから周辺を一望しようとした。

だが、それが間違いだった。

一目見れば、そこは地獄絵図と言っていいほど良い。

だって。そこは大阪と同じで、ビルも道路も放置された車も何もかも大差がなかった。

ただ一つ、違うとすれば名古屋地域全体がバーテックスの卵で埋め尽くされていた。

それはグロテスクという言葉が似合うぐらいに最早街全体としては原型すら留まっておらず、化け物の巣として作り変えられていた。

卵の中にはバーテックスがうごめていて今にも孵化しそうなぐらいに動いている。

これには勇者達も口元を抑えて見ないように目を背けてしまう。

これでわかってしまった。

街が侵攻され落とされた末路がこれだと。

人の作り出したものは一掃され、化け物共の占領地となる。

ここはもう、人間の土地では無いとバーテックスに言われているようだった。

何れ四国もこのような状況になるのだろうかと想像もしたくもないのに頭にチラついてしまう。

しかし、皆が絶望し掛けていた時に球子が声を荒げて心を奮い立たせた。

この状態にさせない為に勇者がいるんだと、人間がバーテックスに負けてたまるかと。

周囲に言い聞かす。

その瞬間にバーテックスが勇者達の周辺を囲んでいた。

すると腹を立てている球子が輪入道の力を宿して巨大化させた旋刃盤でバーテックスを焼き尽くした。

精霊の力を使うのは、勇者の体に大きな負担がかかる。

人を超えた精霊の力が、人体にどのような影響を及ぼすのか、正確には分からない。

だから遠征出発前の前日に余程の事がない限り、精霊の力は使うなと決めた。

だが結局は使用してしまい、球子は力を使いすぎて体をよろめいた。

後悔はしていないと言うが仕方ないだろう。

あの光景を見せられては使わずを得なかった。

目の前にある化け物を完膚無きまで打ち壊さなければ、心が折れてしまうと思ったからだと。

彼女の心も――何より、大事な存在の杏の心もだ。

 

「どうせだから、これに乗って名古屋を見て回らないか。空から探した方が、手っ取り早いだろ」

 

球子の提案で巨大化した旋刃盤に乗って名古屋を回った。

そして名古屋でも生存者は見つからず、

卵状のもので覆われた地域には生存者がいるとは到底思えなかったため、短時間で終わった。

本当に名古屋はバーテックスの巣と化したと再認識してしまった。

次の行先は諏訪地方だ。

 

 

 

長い道のりを跳躍して海斗達は長野県に到着した。

そして、諏訪地方の方に入り、周囲を見渡す。

 

「ここが諏訪地方か.....」

 

かつて、ここも四国と同じで結界を張りバーテックスから人々を守り、一人の勇者が戦っていた場所。

だが、三年という期間で殆どがバーテックスの侵攻を受けて結界は徐々に縮小。

そして去年に諏訪と長野県はバーテックスに侵略された。

海斗も何回も通信でその状況は聞いてきたが、実際は想像より遥かに酷かった。

周辺は徹底的に破壊されており、人が生きているかも分からない。

そして海斗達は諏訪湖に辿り着き、そこから南下して諏訪大社の上社本宮を目指した。

 

「ここも同じね......」

 

「うん。でも、目を背けちゃだめ......だよね!」

 

千景と友奈はその残酷な光景を見つつ自身が暗くなりつつも目を背けず見続けた。

そしてようやくは結界が張られていると思われる上社本宮にへと到着した。

しかし――そこに『社』と呼べるものはなかった。

鳥居、神楽殿、社務所、参集殿と全てや木材も石の残骸に変わっていた。

あらゆる天災を受けたかの如く......これまで見てきた地域よりも細かく、何もかも破壊されている。

原形を留めている人工物を探しても何一つない。

もちろんの事、人の姿もない。

バーテックスが人間を食糧として見ているのなら何故ここまで破壊尽くす必要があるのか分からない。

これではまるで、人間のが作った痕跡そのものを忌み嫌わうかのように、否定しているかのように、全てをなかったようにしようとするかのような勢いでありとあらゆる物を壊していた。

勇者達もこの光景を見て何も言えず、ただ立ち尽くしているだけ。

 

「どうする、若葉」

 

このままじゃ埒が明かないと思った海斗はリーダである若葉に指示を求めた。

若葉もこの惨状を見るのはだいぶ堪えたようで、行動すらもしてなかった。

だが、海斗はそれでも若葉には動いてもらわなければ何も出来ない。

肩を叩くとピクリと動いて口を動かした。

 

「探そう......生き残りがいないかを」

 

「わかった。じゃあ若葉達は近くにあるところを頼むわ」

 

「ああ。海斗はどうするんだ」

 

「俺は、もう一回調べてくる。それに、周囲にバーテックスがいるかもしれないし、ついでに片付けてくる」

 

「.......なるべく無理はするな、何かあったら直ぐにこちらに帰ってこい」

 

「了解」

 

彼女が指示を出すと海斗は自身の目的を若葉に言うと渋々たが了承はしてくれた。

許可が取れたことで海斗は村正を肩に背負って跳躍した。

微かに原型がある建物に着地してからまた跳躍する。

一回、二回と飛んで着地すると、やはり近くにはバーテックスがいた。

少数ではあるが油断は出来ない。

海斗の存在に気付いたバーテックスは直ぐさまこちらに向かってきて口を大きく開かせる。

 

「今俺は機嫌が悪いんだ――」

 

海斗はそれをすれ違い様に村正で切る。

 

「そこをどけ........加減なんか効かねぇぞッ!」

 

 

一体目が消滅したら次は二体目、三体目へと目標を変えて切り刻んでいく。

 

「お前らは何のために人を殺し、街を破壊しているんだ!」

 

海斗は話すらも通じない出来ない化け物対して言葉をなげ掛ける。

バーテックスはその言葉を理解しているはずもなく、ただひたすら捕食するために口を大きく開けながら歯をカリカリと音を鳴らし続ける。

まるで人間を小馬鹿にするかのように。

笑っているかと思えるその行動は海斗の逆鱗に触れるのは造作もなかった。

 

「どんな感じで楽しんでるんだ。えぇ?」

 

人殺しを、人との争いをも。奴らはただ見続けていた。

醜いと嘲笑い最後は滅ぼす。

許せない。

 

「いつもそうだ......お前らはあの時(・・・)もそうやって笑っていた」

 

村正を構え、海斗の方に向かっているバーテックスに突き刺す。

プルプルと震えながらいると中から十四機の霊力が貫通して消滅させる。

 

「答えろよ......なぁ――」

 

幾ら化け物に言っても帰ってくるのは一方的な殺意だけ。

会話というのは無いに近い。

もう分かった。

奴らは人類を滅ぼすまで止めない。

この地球全体を殺し尽くすまで。

なら、こちらは向かい打つだけだ。

完膚無きまで叩き潰して恐怖を与えてやると、なるべく苦しめるように努力を惜しまずにやると。

 

「答えろ、化け物共(バーテックス)がァァァァッ!」

 

最後の一体を消滅させると周囲には敵の気配は無くなった。

もう一度周辺を見渡す。

何処を見てもそこは壊れたものばかり。

気が付けば日が暮れてきていた。

空を見れば赤くなってきていた。

 

「.......戻ろう」

 

ここには人の気配がないと察して海斗は若葉達の方へ足を向け跳躍した。

数分で若葉がいる方へ戻ると誰もいなかった。

どうやら、別の方へ移動したのだろう。

海斗は隈なく探しているともう日が落ちて月明かりが見えるようになる。すると上社本宮から近い守屋山のふもとの辺りの方に歩いているととそこには若葉達勇者全員がいた。

そこの近くには畑があった。

あらゆるものが破壊された中で、微かに残っていた人の痕跡。

雑草に覆われていると思っていたが、どうやら若葉達が耕していたらしい。

すると若葉が海斗の存在に気付くとこちらに手を振ってきた。

ふと、若葉の手元に鍬があった。それもだいぶ年月が経っていて土が付いている。

 

「若葉、それは?」

 

「これは.....白鳥さんに託されたバトンだ」

 

「白鳥の?」

 

「ああ。これで畑を耕して、蕎麦と大根を植えていたんだ」

 

若葉が持っていたのはかつてこの諏訪地域を一人で守っていた勇者。白鳥歌野が使っていた鍬だった。

その後に若葉から歌野が四国の勇者達に書いたとされている手紙を渡されて読んだ。

その内容は諏訪の状況や四国の勇者達の心配、通信だが若葉と海斗に出会えた事。

その他はこれから先の人類の無事とこの鍬と種を託されたこと。

最後まで歌野は自分ではなく、顔を見たこともない相手すら心配していた。

諏訪が滅ぶまでずっと戦い続けながらも。

正しく彼女は勇者だった。

だからこそ――

 

「.......託された」

 

「ああ。次のバトンはこちらに渡された」

 

海斗は若葉が持つ歌野の鍬を優しく撫でるように触る。

 

「やっと......会えたな、白鳥。お前の遺志、確かに......引き継いたぞ。だから見ててくれ」

 

たとえ小さな力でも束になればどんなものにでも負けない。

人間とはそういう生き物だ。

弱くても、醜くても、足掻いて足掻いて、足掻き続ければ神だろうが見返せる。

そのバトンは勇気のバトンというのか。

はたまた希望とも言うのだろう。

託されたのなら次は離さないようにする。

あの時、諏訪が落ちた日に誓ったように。

さて、今自分が出来ることは――

 

「若葉、俺も畑を耕すのをやっていいか?」

 

「元からそうするつもりだったんだ。全然問題ない」

 

「サンキュ」

 

そうして海斗は若葉から鍬と種を受け取りまだ耕していない場所を優しく、全力に鍬を振り落とした。

過去に少しだけ畑作業はやったことはあるが、これを毎日歌野はやっていたのだ。

その苦労は想像が出来ない。

でも、耕せば耕す事にやりがいを感じで楽しくなってくる。

数分で耕し終わると次は種が入っている袋を開けて中身を指で摘み、土の中に埋める。

その後は上手く馴染ませるようにして完成だ。

 

「ふぅ.....こんなとこか」

 

「おぉ.....だいぶいい感じじゃないか?私達より上手いな」

 

「そうか?そう言われると耕す甲斐があったな」

 

そう言うと海斗は暗くなった空を見ながら口を開いた。

 

「......なぁ、若葉」

 

「何だ?」

 

「これで、白鳥も喜んでくれるのだろうか?」

 

「あぁ。喜んでくれるだろうと私は思っている」

 

「.......そっ.....か。そうだな」

 

海斗の言葉に若葉は微笑み、思ったことを伝えた。

歌野もあの世で喜んでくれるだろうと。

だからこそ人類はバーテックスに負けてはならない。

誰かが残した遺志を継いで前をへと進み続けなければならない。

若葉は気づかなかったが海斗は密かに口を緩め笑った。

 

「さて、一先ずこの鍬と残った種はどうする?持って帰るのか?」

 

「勿論だ。後世にも語り継ぐためにこれは必要不可欠だ」

 

「だな。よし......少し休憩したら次の場所に移動し――」

 

海斗が若葉と次の目的地について話していると近くで休んでいたひなたが慌てた様子でこちらに向かってきていた。

 

「若葉ちゃん!海斗さん!」

 

「落ち着けひなた。どうしたんだ?そんなに慌てて」

 

「.......先程神託が降りました」

 

「聞かせろ。一体、何を見た?」

 

慌てたひなたを宥めるように言う若葉は彼女にゆっくり息を整えるように伝えるとひなたは真面目な表情で語り始めた。

海斗はじっとひなたを見ながら彼女を見続ける。

だがその内容はその場の空気を凍らせるには十分だった。

なんせ――

 

 

『四国が再び危機に晒されている』、とひなたの口からそう伝えられたのだから。

勇者達一行は直ぐさま四国に帰還した。

まだ、戦いは続いていく。

この先に何が待ち伏せているか分からない。

ただ、海斗はこれだけはっきり分かっていた。

何か嫌な予感がする(・・・・・・・)と。




この小説を読んでくれている読者様のお陰で『華結を繋ぐは勇者である』もUAやお気に入りが増えてきました。
ありがとうございます!
これからも更新頑張ります!

さて、今回で遠征編は終わりです。

次回はバトロアまで書くつもりです!頑張るぞぉ!

では次回またお会いしましょう、さよなら!


次回。第16話: 求める為の戦い
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