華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです!
今回はのわゆ原作前の話です!
ではどうぞー!


番外編:花弁に命を復讐に救済を

 

二○一六年、春。

海斗は丸亀城の近くにある桜の木を眺めていた。

満開になった桜は風に揺られ、花弁を周囲に舞い、その一つ一つが美しく綺麗で、時間さえ忘れさられる。

ふと、手の平を上に翳してみれば、桜の花弁が一枚その場に落ちてきた。

 

「.......」

 

何故だろうか、とても綺麗なはずなのにそれが散ってほしくないと願ってしまう。

植物とて人と同じで寿命がある。百年生きているものもあるし千年残り続けている木もある。

ただ、花の命は限りなく短い。

こうして考えている間にも命が削れていっているのだから。

ふと思ってしまう。

例えるならこれがもし、人間の命が花の命と同じで短命だったら?と。

何も後世に残せずに死ぬのだろうか?

それに似ているのが今から一年前の二〇一五年のバーテックス襲来時だ。

一年前、突如に奴らが空から落ちてきて多くの人があの化け物に命を奪われた。

一日も経った後は人の人口は飛躍的に減った。

奴らに対抗出来る武器を持たぬ人間は何も出来ずただ蹂躙されるだけ。

桜の木が地球と例えるなら、自分ら人間はその花弁だ。

命が尽きたら散り落ちる。

それに化け物に食われるか養分となるかの二択だけ。

それが自然の摂理と言う人もいるがはたしてそうなのだろうか?

だが神の力を受けた者達だけがそれを覆せた。

現代の兵器さえ傷を与えられなかった化け物に神聖の力を震えばそれは消滅する。

それは暗闇に一筋の光が宿るように人類に希望が見い出せるためには十分だった。

やがてバーテックス襲来時と同時に出現した神樹によって四国は壁に守られるようになり、世界は『大社』という組織が中心となり、管理するようになった。

そして、(世界)を維持しているのはあの組織と神樹という土地神の集合した樹のお陰だ。

 

「此処にいたんですか黒結さん」

 

すると後ろから海斗を呼ぶ声が聞こえ振り向くとそこには長い金色を靡かせた少女がいた。

海斗は少女の顔を見ると不機嫌そうな表情を浮かべ口を開く。

 

「........何の用だ乃木若葉」

 

「訓練や勉学をサボっているので迎えに来ました」

 

若葉は端的に表情を崩さずに海斗を真っ直ぐ見つめて言う。

彼女は海斗と同じ勇者であり、纏め役的な存在だった。

だがその固さゆえか勇者との間で言い争いが偶にある。

海斗にとってそれはどうでもいいことなのだが。海斗はため息を吐くと移動しようと歩みを始めた。

 

「何処へ行くんですか?」

 

「別に。お前には関係ないだろ」

 

そこで若葉に声を掛けられるのだが海斗は突き放すように言い。そのまま歩こうとした。だが海斗を行かせまいと若葉が反論した。

 

「黒結さん、貴方は勇者のはずだ。なのに、何故他の皆と一緒に訓練や座学をしないんですか!」

 

その言葉に海斗は歩みを止め若葉に向き直る。

彼女にちょっとした怒りを見せながら。

 

「.......なぁ乃木若葉。勇者って何なんだろうな?」

 

「決まっています。弱き者を助け、化け物と戦い、そして奪われた世界を取り戻す。それが勇者です」

 

若葉は淡々と海斗の質問に答える。

あぁ......どうして彼女はそんなに真っ直ぐと前を向いていけるのだろうか?

勇者と言っても唯神の力を一部だけ使えるほんの少しだけしか変わらない人間だ。

それを大社や住民は神のように崇め奉る。

海斗にとってそれが不愉快だった。

勇者だって一人の人間だ。特別な力もない同じ色の血が通った人間だ。

だが周囲は神聖視し、なにかに縋るようにする。

でもまだ海斗や勇者になった者は皆子供だ。

世界の命運を託すなんておこがましい。

だが常に世界というのは残酷なものだ。神の力を使えるのはそれに選ばれ穢れを知らない無垢な少年や少女だ。

何とも度し難い。

だからこそ海斗は当たり前な事を言う若葉に対して怒りを見せていた。

 

「そうか......それがお前の答えか――笑えるな」

 

「!?」

 

気付けば海斗は若葉に不敵な笑みを浮かべながら口を動かしていた。

 

「一ついい事教えといてやるよ。そんな甘っちょろい思想は何れ自分自身を殺すぞ」

 

「そんな事は......」

 

「言ってるのも今のうちだ。それに、お前はそれを口実にして本当はあの化け物に復讐をしたいだけじゃないのか?」

 

「.......っ」

 

何故かこんなにも気持ちを抑えきれずに淡々と若葉に言ってしまう。

彼女を見れば見る程自分自身の過去を見ているような気分でイライラする。

そのまま海斗は笑いながら言い続けた。

 

「図星か?滑稽だな!さっきまでの言葉が本当に嘘みたいだな?」

 

「嘘では無い!私だって本当は!」

 

「じゃあお前はあの化け物に復讐をするために仲間を駒のように使って戦うのか?」

 

「違う!私は死んでいった人達のために奴らを――」

 

「それが甘っちょろいんだよ!」

 

「っ!」

 

海斗は声を荒げさせ若葉に言う。

彼女が語る言葉を聞けば聞くほど心がざわつきイラつきが止まらない。

不愉快でもある。

だからこそ海斗は彼女を黙らせた。

 

「赤の他人の為に力を振るうとかそんな事を吐かすな!そんなの自分や身内か知人だけで十分なんだよ」

 

「.......私は」

 

まだ言いたい事があるのか口籠もる若葉に海斗はトドメを刺す。

 

「次俺の前で言ってみろ―――殺すぞ」

 

それを最後に海斗は若葉から離れて歩き出して行った。

自分でもこの感情は分からない。

唯彼女にはそうなって欲しくはなかったのかよく分からない。

同じものを海斗は以前に持っていた。

弱き者を助けて世界を救おうと一人で立ち向かう。

それが若葉と重なった。

まだ一年しか経っていないが、海斗にとってそれはトラウマだ。

だが今彼に残っているのはあの化け物に対する復讐心だけた。

人の事も言えないが、これを抱え込むのは自分だけで十分だ。

 

「......綾華、俺は今......幸せに生きているだろうか......?」

 

かつて海斗を支えてくれていた亡き彼女の名を天に届くように言う。

花の命は少ない。

だからこそ今をもっと大事にして欲しい。

いつか後悔がないように。

でもそこに自分(海斗)はいない。

 

「バーテックスを殺し尽くすまで......俺は戦い続けてやる。絶対に」

 

だって復讐者には花なんて必要ない。とっくのとうに散ってしまっているのだから。

海斗はそのまま無意識に不敵な笑みを浮かべながら歩いて行ったのだった。

 

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