華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。つい最近、身内が勇者シリーズの二次創作執筆したらしくて読んだのですが、いやぁ.......エグいねw
鬱の展開が好きな子でしてねそれに描写も良く書けてて想像出来ちゃうんですよ〜
自分はこう思いましたよ「コイツ、やりやがった」と。

さて、話はこの辺にしといて今回はタイトル通りです。
どうぞー!


第19話:怒る炎は羽に舞う

 

意識を失っていた杏は目が覚めると頭を抑えて状況を確認した。

 

「あれ.....?私、確かタマっち先輩と一緒にサソリの進化体と戦って......」

 

精霊の力を使ったはずなのに、攻撃が一切効かなった。

あれは敵が勇者達の戦闘を通じて強化されていっている証拠だ。

だが今はそんな事を考えているほど杏には余裕がなかった。

そして杏は隣にいる球子の存在に気付き彼女の名前を呼んだ。

 

「タマっち先輩!良かった無事だったんだね!良かっ――」

 

杏は声を掛けるが、球子は反応しなかった。

それに微動にもしなかった。

様子が変だと思い球子の方を見てみるとそこには進化体に腹部を針に刺されていた海斗がそこにいた。

球子は反応しなかったんじゃない、出来なかったんだ。

だってそこには本来球子と杏がいたはずだったのに。

 

「え.....海斗さん、何で.......?」

 

杏は分かってしまった。

海斗が二人を庇った事を。

後悔が巡る。もっと上手く立ち回れたのではないかと、精霊の力を使うなと言わなければ良かったと。その後悔の念が積もり積もっていく。

すると海斗が顔をこちらに向いて、何かを呟いていた。

よく聞けばそれは謝罪の言葉だった。

 

「――ご.....め......さ.....く.....ぁ」

 

桜と彼は言ったのだろうか?.....それは花見の事だと思った。

桜を一緒に見れなくてごめんと残りの力を振り絞って海斗は言ったのだ。

 

「......ッ何言ってんだよ、カイトっ!お前、タマ達が許すと思ってんのか!何で.....何でなんだよ!何でお前がっ!」

 

今まで何も言わなかった球子が感情を爆発させ声を発した。

それは彼に届いているのか分からないが、もう意識がないと察してしまう。

すると次の瞬間、進化体が針を思いっきり抜くと海斗の腹部から夥しい血が吹き出した。

海斗は口からも血を吐きそのまま倒れた。

 

 

「い、いやぁぁぁぁ!海斗さんッ!」

 

「カイトッ!」

 

球子と杏の二人は海斗の名前を呼ぶが、今度こそ彼は返事すらも動作もしなくなった。

二人は顔を俯かせてしまった。

結局守られたのは自分たちの方だった。

精霊の使用を控えるように指示をして、球子に負担を掛けさせて挙句の果てには海斗を殺してしまった。

 

「あぁ......あぁ.....!」

 

すると背後から声が聞こえ振り向くと友奈が倒れている海斗を見て震えていた。

 

「うみ......くん......?だめ.......だめだよ、そんな......」

 

友奈がこんなにもなるとは思わなかった。

でも最近、友奈は海斗と少し距離が縮まっている時が多々あった。

大切な人を化け物に殺されればこうもなるだろう。

後悔と無力差でぐちゃぐちゃになりそうだった。

そして唇を噛みながら拳を強く握りしめ――

 

「くっ.......う.......うぅ.......ッ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

友奈は怒りを爆発させ、バーテックスの方に飛び出した。

 

「バーテックスゥゥゥゥッ!!」

 

サソリ型に拳を叩き込むが、幾ら攻撃しても効いてはいなかった。

 

「よくも......!よくもぉぉぉぉ!」

 

だがそれは友奈には関係なかった。

ただ今はそのバーテックス自体が憎くて仕方がなかった。

初めて自分の本当の気持ちを理解してくれた人をあんな風にして、許せなかった。

サソリ型を殴り続けるとその中から通常個体が数体出てきて友奈を押し返す。

しかし友奈は意図も容易くそれを殴り倒す。

すると進化体にその隙をつかれて逆に友奈は攻撃を食らってしまい樹海の木に吹き飛ばされた。

だがそれでも高嶋友奈は止まらなかった。

 

「........っ!だぁぁぁぁぁ!ッ!!」

 

拳を木に何回も叩きつける。

憎い、殺したい、許さない、絶対に!

と内側から黒い何かが溢れ出るような感じがした。

でもそれは関係ない。

一目連の攻撃が効かないならそれに効くものを用意すればいい。

一目連の力を解除した友奈は意識を集中させ、神樹の概念的記録にアクセスしてそこから人に宿すには危険すぎる精霊を呼び出した。

 

「ッ!もう......命の、出し惜しみなんかァッ!来い――酒酒呑童子ぃぃぃぃ!!」

 

人の身に余る強力さ故に、使用を禁じられていた鬼の王の力を。

友奈の勇者装束が変化し、武器である手甲が強化されていく。

その形は少女の体に不釣り合いなほど過剰に巨大化した手甲。

それは歪であった。

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

友奈は地面を蹴り、サソリ型の方へと跳躍した。

酒呑童子の力は、その巨大化した手甲が示す通り、破壊への打撃力に特化している。

友奈は恨みを込めるかのように進化体に、拳を叩きつけた。

 

「おぉぉぉぉぉっ!!」

 

拳を振った箇所は跡形もなく一撃で粉砕される。

先程までに精霊の力ですら通らなかった攻撃が友奈の宿した精霊によってついにその巨体の一部が破壊されたのだ。

だが、その強大故の力は肉体への負担を度外視にしていた。

以前大社は友奈に『酒呑童子』だけは絶対に宿すなと言われていた。

本来なら絶対使うまいと思っていた切り札中の切り札。

だが、彼女はそれを破り使用した。

果たしてその後、彼女の体はどうなるのだろうか。

友奈はバーテックスを殴れば殴るほど腕から血が滲み出て、出血していた。

しかし友奈は止まらない。

ひたすら目の前にいる敵を殴り続ける。

 

「ううぁぁぁぁぁっ!!」

 

友奈はサソリ型を破壊しながら、叫び続けていた。

喉が枯れるまで叫び、泣いていた。

だが、その背後には数百体にも及ぶ通常個体が友奈に接近していて、彼女がそれに気が付いたのがもう数メートルぐらいのことだった。

 

「ッ!!」

 

間に合わない。

間に合ったとしてもサソリ型が回復してしまう。

攻撃を止める?それだけはダメだ。あいつは海斗を殺した。

だから消えるまで殴り続けなきゃ、だって存在しちゃいけないやつなのだから。

友奈の中はサソリ型を倒すのにいっぱいで周りが見えていなかった。

本来なら通常個体でもなんらくに倒せるが、今回は出来なかった。

すると次の瞬間。

数百体いた通常個体が一瞬にして消えた。

そしてそこから影が通り過ぎると友奈の方に向かってきてその瞬間に抱き寄せれるような感覚に襲われた。

でもそれは暖かった。

 

「え......?」

 

わけが分からなかった。

いきなり何があったのか状況が理解出来ずにただぼーっと見ていた。

そして自分が誰かに背負われているのに気付きゆっくりとその人の顔を見るとそこには、サソリ型に腹部を刺され死んだと思っていた海斗がいた。

 

「うみ......くん?」

 

「よっ、友奈」

 

その青と白と赤の装束を着飾るその姿はまさしく空から姫を助ける勇者のようだった。

 

 

 

暗い、ここはどこなのだろうか?

ただひたすら闇の中に沈んでいく。深く底は無い。

サソリ型のバーテックスに腹を刺され、意識を失ってからあまり覚えていない。

多分だが、自分は死んだのだろう。

でも最後に仲間を守れて良かったと思う。

ならもうあの世でゆっくりと休むとしよう。

 

「もういいや。あとはあいつらに任せよう」

 

海斗はそう言い、目を閉じようとすると誰かの声が聞こえてきた。

 

――諦めるのですか?

 

「......何がだよ、俺はもう使命は果たしたよ」

 

――いえ。貴方はまだ、終わってはいませんよ。

 

「......何が言いたいんだよ」

 

――逃げ出すのですか?また貴方は。

 

誰だか分からない声に海斗は少々イラつきを覚えるが、淡々と応えていく。

 

「違う。ただ現実を認識しただけだ」

 

――誰かを救えたのなら貴方はこれを聞いても言えますか?

 

「何を......」

 

すると脳裏から誰かの叫び声と泣き崩れる人の声が聞こえた。

どれも知っている声だ。

 

「これは......」

 

――今現実で起きている事の結末です。

 

「なんで.......」

 

――確かに貴方は仲間を守ったかもしれない。でも、それが良い方に運ぶと思ったのですか?

 

謎の声は冷たく言葉を掛ける。

まさに正論だ。

海斗は後先考えず、ただ身代わりになっただけだ。

根本的な問題は何一つ解決すらとしていなかった。

ただ状況を悪化させていっただけだった。

 

――これを聞いても貴方は楽になりたいのですか?

 

誰かを守り、そして死んだ。楽になりたい.......そう思っていた。

誰かに認めて欲しかった。

自分がこの世界に生きて誰かの記憶に残っていることを願った。

そんな子供じみた事かもしれないが、海斗にとってそれが良かった。

小さい頃から周囲には『会社の息子』とでしか見て貰えず、特別扱いされてばっかだった。

だからこそ海斗は一人の人間として周りに覚えていて欲しかった。

そして脳裏にあの日が思い浮かぶ。

海斗と千景が初めて出会った頃の記憶。

この時はお互いに立場が違えど、人として見られていなかった。

そしてこの時、この瞬間に黒結海斗という人間は生まれたのだ。

初めて海斗の存在を認めてくれた少女――郡千景。

今までない接し方が毎日楽しかった事を覚えている。

そして今海斗は彼女を置いていってしまった。

それを思うと悔いが残ってしまう。

 

――もう一度問います。貴方は諦めるのですか?

 

謎の声が再び言ってくる。

心の中で諦めてたまるか、こんな所で死んでたまるかと本心が聞こえる気がした。

千景が悲しんでいる、友奈が悲しんでいる、大切な仲間が悲しんでいる。

なら生きろ。

どんな状況でも生きてみせろよ。

勝手な理屈や綺麗事で終わらせるな、死から足掻け。

そうだ、世界は残酷なんだ。

だからこそ人は足掻き続けるんだ。

海斗の目には闘志が宿った。

 

――もう大丈夫そうですね。

 

「ああ。俺は逃げない、今度こそ守りきってやる」

 

――死んでもですか?

 

「死んでも、また生きて、生き抜いて守り続ける」

 

――なら、ただ進みなさい。鋼の心で、風のように。

 

謎の声がそう言うとその空間から巫女服を着た少女が現れた。

海斗は目を大きく見開かせた。

それはかつて海斗を導き、救ってくれた彼女だったのだ。

また助けられてしまった。

これじゃあ頭も上がらない。

けど、これだけは言える。

 

「――ありがとうな、綾華(・・)

 

 

そして海斗の意識は白い空間に飲み込まれた。

 

「――うっ......」

 

意識を覚醒させると体には激痛が走って上手く声が出せない。

すると隣には球子、杏、千景、若葉がいた。

彼女らがこちらに気が付くと皆驚いた表情をして動かなかった。

それはそうだろう、本来死んでいるような傷なのに意識があって目を開けているのだから。

すると先に球子が声を発してきた。

 

「.......あ、あぁ.......!カイトっ!良かった、良かったぁぁぁ!」

 

球子が海斗の体に抱きつくが流石に痛すぎて何も言えずに腕で彼女を剥がして、杏に任せた。

杏の方も涙を流しながら何か言おうとしたが、状況を察して何も言わないでくれた。

ついでに球子を抑えてくれもした。

千景は杏より重症で涙を流しながら、今すぐにでも海斗を殴りそうな勢いで迫ってきそうだった。

若葉が止めていなければ多分またあの世の狭間に行きそうだった。

少し自分の状態を見た。

体はまだ動く、それならいいと海斗腕を動かして起き上がる。

まだ出血が酷く足がまだおぼつかないが、海斗は意識を集中させた。

 

「.......宿れ、鳳凰」

 

海斗は体に鳳凰を宿し腹部に空いた傷を瞬時に再生させていく。

傷が塞がると鳳凰を解除して球子達の方に向き直った。

 

「迷惑かけてすまん......ちょっと状況を確認してもいいか?」

 

球子から海斗が意識を失ってからのことを軽く説明してれた。

海斗がサソリ型に刺されて友奈がそれを見て酒呑童子を宿した。

何か言おうと思っても、掛ける良い言葉が見つからなかった。

 

一度生きることを諦めた身でありながら海斗は頭を下げた。

謝る資格はないと思いつつもせめてのけじめとしてやった。

そして球子は拳を震わせて口を開いた。

 

「.......タマは許さない」

 

「.......」

 

「勝手に庇って、勝手に死んで......タマは気が気じゃなかったぞっ!」

 

不満をぶつけるかのように球子は言い続ける。

海斗は何も答えなかった。

反論も弁明すらもしなかった。

ただ球子の言葉を受け入れるだけだった。

 

「......私もタマっち先輩と同じです」

 

球子の後ろで杏も話を始めた。

 

「私たちが食らうはずだった攻撃を海斗さんが代わりにもらって私は胸が痛かったです」

 

「......すまん」

 

「それは何回も聞きました。海斗さん、約束しましたよね?バーテックスを倒した後に絶対お花見をするって......あれは嘘だったんですか!」

 

杏の瞳には涙がこぼれ落ち、地面に染みを作る。

彼女の言い分は最もだ。約束をしたはずなのにそれを破り勝手に死のうとした。

たとえ海斗以外全員生きて帰って来れて花見をしたら果たして皆は笑えて楽しめているのだろうか?

だが、それは絶対にない。

一人欠けたらそれは花見とは言えなかった。

球子と杏を交互に見る。

二人とも涙を流してこちらを見つめていた。

あぁ.....結局悲しませてしまった。

どうしたら罪を償えばいいのかどうしたら彼女達は笑ってくれるのだろうか。

なら、今出来ることをやればいい。

 

「......許せとは言わない。けど、今は......行かせてくれないか?」

 

「また、あんなことになるかもしれないのに行くんですか!」

 

「あんずの言う通りだっ!カイト、お前はもう休んでろ!」

 

「それでも、行かなくちゃいけない」

 

「それはバーテックスを倒したいからですか?それとも自分のために行くんですか?」

 

海斗を行かせることを拒んだ杏と球子。説得をしようとしても彼は止まらなかった。

杏に問われた。何故そこまで行きたがるのか、死んだ思いをしたのにどうして立ち上がれるのかと。

だって――

 

「約束したから」

 

海斗は微笑んだ。こんな状況でもバーテックスはまだ残っている。

なら行くべきだ。

今度こそ守るために。

 

「......分かりました。貴方を信じてみます」

 

「あんず!?」

 

「ありがとうな......」

 

「必ず帰ってきますよね?」

 

「勿論だ」

 

「なら、行ってらっしゃい......気を付けて」

 

「カイトっ!」

 

「ん......」

 

「絶対帰ってこいよ!絶対だからなっ!!」

 

杏と球子に言葉を貰いやる気に満ち溢れる。

誰かが信じてくれるならきっとなんだって出来る。

今の状況を見てみれば相当時間が経っているはずで時間が過ぎれば過ぎるほど手がつけられなくなる。

まだサソリ型も存在している。

なら早く行かなければ。

そして海斗はバーテックスのいる方に体を向かせ村正を呼び出す。

霊力を纏わせ準備を済ませる。

 

「........待って.......海斗........!」

 

今まで何も言わなかった千景が海斗を止めた。

その赤い瞳は揺れていた。

行ってほしくないと止めた。だけど千景が何を言っても彼は止まることはないだろう。

だからこそ彼にはここで止めなくちゃいけない。

次は絶対に無いのだから。

そして海斗は行く前に千景に伝えないといけないことがあった。

 

「ちーちゃん.....俺はもう、自分のせいで誰かが傷つくのはいやなんだ」

 

「......いや、いやよ!私達の精霊の力でも敵わなかった相手に海斗が生きれる根拠が......ないじゃない!」

 

「それでも、俺は行かなくちゃならないんだ」

 

あのバーテックスには精霊の力が通用しなかった。

でも行かなくちゃならない。攻撃が効かなくても諦めたりしたら今まで戦った人達の魂すらも報われない。

例え自分が耐えれてもそれが大切な人達に被害が合えば耐えられない。

だからこそ守らないといけない、今度こそ。

そんな泣きそうな千景を海斗は抱きしめた。

子供をあやかすように優しくゆっくりと。

 

「......いか.......ないで......私を一人に.....しないで」

 

「......ちーちゃん、俺は君を一人にしないよ。絶対に」

 

「本当.......?」

 

「うん。約束だ」

 

「.......死んだら私も後を........追うわ」

 

瞼を腫らしながら千景は海斗を見つめる。

重い言葉を言うが目を見れば本気でそう思っている。

 

「それは、嫌だなぁ」

 

「なら.......生きて帰ってきて」

 

「約束する。必ず君の元に帰るって」

 

そして海斗は千景から離れて駆け出した。

また彼女を悲しませてしまった。

罪悪感はある。 けど、信じて待つと言ってくれたのだ。

必ず帰ると彼女に約束したのだから。

ある程度進むと通常個体のバーテックスが口を開けながら迫ってきた。

それを村正で切り伏せる。

その次の個体も同じように切る。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

バーテックスの攻撃を掻い潜ってやっとサソリ型の近くまで来た。

そしてそこには酒呑童子を宿した友奈がサソリ型バーテックスと戦っていた。

よく見ればサソリ型は友奈が放った拳であらゆる各所が破壊されていた。

 

「すごい力だな......」

 

友奈が宿した酒呑童子の力に驚愕する海斗だが、このままいけばあのバーテックスは倒せるだろう。

しかしその背後で数百体の通常個体が友奈に接近していた。

 

「――!?ッやらせるかぁ!」

 

この光景にデジャブが起こる。だけど今度こそは自分も守り通してみせる。

だって、帰りを待ってくれている仲間がいるから。

そして海斗は村正の力を最大にして数百体の通常個体を纏めて切り裂いた。

その隙に友奈を背負って一旦サソリ型から距離をとった。

 

「うみ......くん?」

 

「よっ、友奈」

 

すると友奈がこちらに気付くと信じられないような顔でこちらを見つめていた。

海斗はそんな事お構い無しに笑顔で言葉を返した。

心の中では何とか間に合ったと安堵した。

 

 

 

友奈は困惑していたが、海斗は彼女に微笑みながら声を発した。

 

「な、なんで......だって、さっき......」

 

友奈は海斗の腹部を見るとそこには貫通されたであろう痕跡が残っていた。

しかし、海斗の腹部にはその跡すらもなかった。

 

「正直俺でも奇跡だと思ったけどな、だけど俺はこうして生きている。本当に迷惑かけたな」

 

友奈に謝罪をする海斗は空いている手で彼女を撫でた。

その手の温もりが今の友奈にとっては嬉しかった。

すると目元が熱くなるのを感じて咄嗟に海斗に抱きついた。

 

「......うっ......ひっぐ......ばかぁ!うみくんのばかぁ!」

 

「うぉ!?いきなり泣くなよ!」

 

「うみくんのせいだもん!」

 

「あー......ごめん」

 

友奈がこんなにも海斗は思っても見なかった。

けど、仲間や友達を大事にする彼女は誰かが死ぬのは耐えれなかったのだろう。

 

「うみくん.......」

 

「ん?」

 

「もう.......離れないで」

 

「.......分かったよ」

 

友奈からそんな言葉が出るとは思ってもいなかった。

すると友奈は安心したのか海斗に体を預けるように眠るように気を失った。

どうやら相当メンタルにきたのだろう。自分が満身創痍になりながらも体を張って戦い続けた。

海斗はそんな友奈の勇気を賞賛した。

そしてあのバーテックスだけは絶対に許さないと心に決めた。

サソリ型と距離を取ってから友奈を安全な場所に移動させるとそこには若葉と千景、そして球子と杏がいた。

 

「ちーちゃん、友奈を頼む」

 

「......分かったわ」

 

後の事は千景に任せて海斗はすぐさまサソリ型の方へと跳躍した。

サソリ型の方へと着けば完全では無いが再生が完了しそうな所まで回復しきっていた。

 

「よぉ.....さっきは随分世話になったなぁ......」

 

海斗はその巨大な化け物に恨みをこぼすように口を開く。

 

「お前のせいで球子も杏も友奈もちーちゃんも若葉にも迷惑掛けさせたんだ」

 

村正をサソリ型に向けて海斗は言い続ける。

 

「お前に『死』という、概念があるかは知らねぇけどよ......」

 

そして海斗を中心として周囲の空間が揺れた。

 

「.....そう簡単に――消える(ぶっ壊れる)んじゃねぇぞ?」

 

海斗は意識を集中させ神樹の概念的記録にアクセスをした。

そこから酒呑童子と同等の精霊を自身に宿す。

かつてその生き物は空を飛ぶことを夢見て綺麗な翼を羽ばたかせ、夢叶わずに散った負の象徴。

死んだ後も後世に語り告げられなくその怒りで自身を焼き、人の世を恨んだ。

その名を――

 

「来い――孔雀!!」

 

呼応するかのように周囲に紫の炎が現れ、海斗を包む。

そして海斗の勇者装束が緑と赤の色になり、背中からは尖った形をした翼と炎の羽が付いている。

頭からも二本の炎のように揺らめく角が現れその姿は鬼と化した異形の姿だった。

そして村正の形も少し変わっている。

 

「根性を.....みせてやるよ」

 

サソリ型に海斗は全ての怒りをぶつけるかのように駆け出した。

人間が小さな力でも根性で化け物に敵う、この瞬間を魅せるように。

 

 

 

 

 





海斗君覚醒会でした。
本当に何で体貫かれて空洞出来てるのになに平然として生きてんだこいつ.......生命力どうなってんだ........


因みにここで海斗が使っている精霊の『孔雀』ですが全くもってオリジナルです。
モチーフには機動戦士クロスボーン・ガンダムゴーストに出てくる『ファントム』を意識して書きました。
それに『鳳凰』も元はゴーストガンダムですしねw
詳しくはwikiかpixivでお探し下さい。


さて、次回はサソリがボコられ会です。
戦闘描写頑張ります!
それではまた次回にお会いしましょう!さよなら!

次回。第20話:炎を揺らめきて幸となる
 
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