華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。
今回は千景が暴走シーンです。
誰か助けて上げて......
では、本編どうぞ〜


第24話:私だけの想い

 

六月某日、午後六時丸亀城にて。

海斗は若葉の演説を勇者達と一緒にテレビ越しに観ていた。

彼女の演説は四国に住んでいる人々に希望を見出すために口を開いた。

その内容は7・30天災の悲劇から四年が経過しようとしていたこと、バーテックスの対策が練り上げられてきて国土を取り戻せそうなことを様々喋っていた。

それは全体に中継されており彼女の出で立ちはそれに相応しいぐらいに合っていた。

夕焼けも神が気を遣わせたのか、透き通る程の光加減で若葉の体を光らせている。

 

「.......良い士気向上だこと」

 

「うみくんそこは仕方ないと思うよ。私だってちょっと複雑な気分だし......」

 

「タマもだ。これを聞いてて、タマの力の無さを感じるぞ」

 

「タマっち先輩......」

 

若葉の演説に心底呆れてそうな口調で言う海斗。

それを友奈は割り切ろうとするが、彼女も眉を垂らして心のどこかでは不満があるように拳を握りしめる。

球子は自身の無力差を痛感して俯く。

杏は球子を宥めるように肩に手を置いた。

若葉が語った事は全て大社が入念に考えた演出だ。

住民にはその言葉が効果的だが、勇者達にはそれが全て嘘に塗れている為、観るのが辛く感じた。

以前友奈が嘘を本当の事にしようと言っていた。

だが、日々バーテックスが勇者達との戦いで強化されていく中でそれが難しくなってきているのは事実。

けど、それでも諦めはしない。

それが勇者なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

海斗は大社が経営する病院に来ていた。

以前千景が住む高知の村で自身の左手を村正で切ってしまい数日間は包帯で巻かれていた事と入院しているのにも拘わらず、飛び出してしまってそれに異常がないかその傾向を確認するためだ。

医者からによれば幸い、日常生活に支障はないとの事。

後は自力で筋力と感覚を戻せば問題ないと言われた。

退院の許可も下りたため、後は定期的に来るようにと命じられた。

そして診断を終えた海斗は病院の中にある機能訓練室へと足を運んでいた。

 

「ふっ!はっ!ハァッ!」

 

左だけの拳を使ってちゃんと機能するかを確認する。

本当は木刀とかがあれば良かったのだが、ここは病院で過激な動作は出来ない。

あくまで、機能を回復させる場所なのだ。

ある程度振るって海斗は息を整えた。

 

「ふぅ......」

 

「お疲れ様、うみくん!」

 

「おう。ありがと」

 

息を吐けば後ろから友奈と若葉がこちらに向かってきていた。

海斗の方に寄ると若葉が海斗の左手を見て口を開いた。

 

「左手の怪我も随分良くなってきたな」

 

「あぁ。後は訓練とかで慣らしていけば問題は無いな」

 

「良かったねうみくん!」

 

バーテックスの戦闘から少しの間だけ離れていたせいか鈍っているのは分かる。

最近は皆に入院し過ぎて心配されるが........

だが後は短時間で体力を戻せるかに掛かる。

そこは自身の気力次第だ。

 

「そういや、友奈はもう大丈夫なのか?」

 

「ご覧の通りに大丈夫でございます!!入院してたけど、うみくんよりは軽度だったしね?」

 

友奈は何ともないように腕を軽く振る。

実を言えば友奈も海斗と同じで定期的に病院に通っていた。

ただでさえ友奈は『酒呑童子』を宿したのだ、どこかに異常が無いわけでもあるまい。

精神汚染もある。

しかし、友奈は本当に軽度で済んでおり、精神にも異状はないと判断され早期に退院出来た。

でも、検査するために定期的に通院する事を言われるが別にそれは些細な事だ。

そして若葉だが、その海斗と友奈の二人の傍付きとして同行させていた。

 

「.......そういや、若葉。まだちーちゃんの謹慎は解けないのか?」

 

海斗が千景の事を聞くと若葉は難しい表情をして口を開いた。

 

「大社に処罰を軽くしてくれとは言ったが、まだ分からない」

 

「そうか.......」

 

やはり大社側としても千景が起こしたことはそう簡単には許容出来ないのだろう。

そもそもバーテックスと戦うための勇者の力が民間人に被害を与えてしまったのだ。

刑を軽くするのも勇者として見るのも難しいところなのだろう。

 

「(あれは、ちーちゃんは悪くないだろ......クソッ)」

 

その原因を知る海斗は千景の謹慎について納得していなかった。

彼女が暴走した原因は精霊の酷似による精神汚染に引き起こされた事が判明された。

それを以前から調べノートに纏めていた杏が大社に提出すると大社は本格的に精霊のことを調査し始めた。

なんとも無能な組織だと海斗は思った。

そしてその大社は千景の勇者システムを剥奪して謹慎を彼女に命じた。

それをただ見ているだけの海斗は自身を悔やんだ。

ふと、いつの間にか拳を強く握ってしまって跡が付いていた。

それと同時に若葉が海斗と友奈に向けて口を動かした。

 

「海斗、友奈。提案なんだが、今度もう一度、大社に行って千景の処罰を軽くするようにお願いしに行かないか?」

 

「賛成だ。まぁ、あんな組織に何を言っても通用はするかは知らないがな......だがその場合は、あの組織を潰す」

 

「もう、うみくんは.....うん、私も言いたい......皆で、ぐんちゃんは悪くないって!」

 

「決まりだな。.......よし、そうと決まれば即座に行くぞ」

 

若葉の提案に乗った海斗と友奈は頷いた。

すると若葉が何かの気配を感じ取ったのか出入口に振り向いた。

海斗と友奈も気になりその方向を見るとそこには千景がいた。

まだ謹慎中の彼女が何故ここにいるのは気になったが、こっそり抜け出して来たのだろう。

そもそも彼女が謹慎されてもSNSで連絡を取り合えるのが災いして検査をしてくると彼女に伝えたから来てしまったのだ。

 

「あ......千景!」

 

「ぐんちゃん!?」

 

「――ッ!!」

 

「ちーちゃん待っ――」

 

若葉が声を掛けると千景はその場から走り去ってしまう。

それを追いかけようとする。

だが、海斗の身体が一瞬だけ立ちくらみがして倒れそうになる。

それを友奈が支える。

 

「うみくん!大丈夫!?」

 

「あぁ。それよりもちーちゃんだ........俺が追いかけるから二人はここで待機していてくれ」

 

「いや、ここは私と友奈が――」

 

「お前が行っても逆効果だ。頼む、若葉」

 

「......」

 

 

海斗が一人で千景を追いかけようとすると若葉は止めようと言う。

しかし彼の目は本気だった。

すると友奈が若葉の肩に手において口を動かした。

 

「若葉ちゃんここは、うみくんに任せてみよう?私が行ってもダメだと思うから」

 

「友奈お前.......」

 

「でも、無茶はしちゃダメだからね?」

 

「勿論だ」

 

海斗の方に向いて友奈は言い、それを海斗は強く頷いた。

そして若葉も諦めてため息を吐いた。

 

「......分かった。千景を頼むぞ、海斗」

 

「任された!」

 

海斗は勢い良く機能訓練室から出た。

まだそこまで遠くは行ってないと予想する。

なら、病院の出入口付近にいるはずだ。

そこに向向かえば想通り千景がいたが――その状態は警備員に強く拘束されてる姿だった。

海斗は千景を拘束している警備員の襟を掴んで退かす。

 

「......離せよ」

 

普段から出ない声音で話せば周囲は肩を震わせ従った。

そして千景を手を握り引き寄せ、警備員から距離を取った。

 

「かいと......?」

 

千景が体を震わせながらこちらを見つめていた。

けど、その瞳は何もかも失った者がするものになっていた。

胸が苦しくなった。彼女がこんな事になっていることを知っていて何も出来なかった自分自身が憎かった。

せめても彼女が安心出来るように海斗は千景を胸元に抱きしめた。

 

「大丈夫......もう君を傷付ける人はいないよ」

 

千景に言い聞かせるように海斗は言う。

すると千景は震えながら口を開いた。

 

「......全部......なくした.......全部、奪われた......怖い......海斗、いかないで........!私と一緒にいてよ........」

 

千景の言葉に海斗は静かに聞いた。

それは藁にも縋る思いで彼女は言う。

 

「一緒にいるよ。ずっと一緒に」

 

「本当......?」

 

「本当さ。だから家に帰ろう?俺も一緒について行くから」

 

「分かった......」

 

本当はあの両親の家には帰したくはない、だが大社はそれを許せないだろう。

千景は落ち着いたのか素直に従った。

 

「彼女は俺が直々に送り届ける。大社にも連絡をするなよ?した場合は――分かってるよな?」

 

念の為病院の警備員や付近にいた医師達にも釘を刺しておく。

というか最早脅しに近いのだが。

事が済んで若葉と友奈を呼んで事情を説明をして後を任せた。

けど、何故か千景は若葉を強く睨んでいた。

一瞬の事だったため、それを海斗は気にせずに千景を家に返した。

 

 

 

 

 

 

翌日。丸亀城の学校には、若葉、ひなた、球子、杏、友奈、海斗がいた。

だが、千景だけはこの場にいなかった。

それを思えば皆素直に日常を楽しめずにいた。

全員が揃わなくても授業はいつもと変わらず進んでいく。

そして昼休みに入る。

六人は食堂でうどんを食べながら話していた。

 

「千景さん......まだ謹慎が解けないんですね」

 

「せめて学校に来るだけでも、家にずっと篭っているより気が晴れるのにな......」

 

「だね......ぐんちゃんがいないと寂しいし、うどんの美味しさが八割減だよぉ.....」

 

「だなー、もし千景が戻ってきたら山登りに同行させやるんだ!そしたら気分も良くにはなるだろ!」

 

「それってタマっち先輩がただ行きたいだけだよね?」

 

「なっ!なにをー!」

 

「.......」

 

皆千景の事を心配して何かないかと試行錯誤していた。

昨日千景を家に送りに行った海斗はそのまま大社の方に行って千景の謹慎を軽くしろと申し出たが、結果は保留になった。

明らか的にも彼女を警戒しているのがわかる。

確かにまた、しでかしたら勇者としての尊厳が失われるというのもあるが、せめて学校には行かせて友奈や若葉達と交流させて欲しいと思った。

するとひなたが口を開いた。

 

「皆さんの言う通りです。もしこんな時に――」

 

ひなたの言葉を遮るように時間が止まった。

樹海化の合図だった。

そして周囲は植物に覆われた四国の光景に変わり始める。

すると遠くから迫ってくるバーテックスの白い大群が見えた。

戦力的には申し分ないが、皆千景の事で精神的に不安定な状態だ。

これではあの化け物どもに果たして勝てるのか。

海斗は若葉達の顔を伺えば皆俯いていた。

 

「(俺が前衛を張って.......やるしかない)」

 

勇者に負けは許されない。

どんな状況でも諦めてはならない。

海斗は前に踏み出そうと歩き出す。

その時、一人の少女が海斗のすぐ傍に着地した。

 

「私も行くわ、海斗......」

 

「――!?」

 

振り向くとそこには赤を基調とした勇者服、死神と思わせる大鎌を持った、黒髪の少女――郡千景だった。

どうやら大社は千景の謹慎を密かに解いて合流させる形で送ったのだ。

全員が驚く中、海斗は千景に声を掛けた。

 

「ちーちゃん!?もう、謹慎は解けたのか?」

 

「えぇ。今まで迷惑をかけたわね.......もう、大丈夫よ.......」

 

「それは良かったよ」

 

海斗は安堵する。そして村正を呼び出して構える。

 

「海斗。この戦い、あなたに前衛をお願いしたいのだけれど......いいかしら?」

 

「それは良いけど、ちーちゃんはどうするんだ?」

 

「私は........乃木さんに着いて行って援護するわ。それに――私がいなくても高嶋さんを付ければ大丈夫でしょ?」

 

「そうだな.......分かった。んじゃ、後ろは頼むぞちーちゃん!」

 

海斗は素直に従い、バーテックスが一番多い箇所に攻め込んだ。

海斗が接近すればバーテックスが突進して来るのが見える。

それを回避して村正で斬り伏せる。

適度に球子と杏が援護してくれるので助かるがそろそろ良いだろう。

 

「杏、球子!こっちは良いから、友奈の方を頼む!」

 

「分かりました!」

 

「了解だっ!」

 

海斗が指示を出せば二人は友奈がいる方に向かった。

二人を追うようにバーテックスがカイトを無視するがそれを片っ端から斬る。

 

「おっと、ここから先は行かせないぞ。バーテックス!」

 

そしてある程度片付けた海斗は千景と若葉いる方に合流を果たそうとしたが、海斗はあるものを目撃してしまう。

それは千景が背後からバーテックスにとどめを刺そうとする若葉に攻撃をしようとしていたからだ。

即座に駆け出して海斗は若葉を庇うように千景の大葉刈の一撃を防ぐ。

 

「グッ.......!!何やってんだよちーちゃん!」

 

「千景......!?」

 

「あら、海斗........早く帰ってくるとは予想外だわ.......でも流石ね。完全に取ったと思ったのだけれど......」

 

「何を言って........」

 

そう言うと千景は海斗と若葉から距離を取って大葉刈を構える。

 

「千景、どういうつもりだ!?」

 

「ねぇ、乃木さん......理不尽、不合理、不条理だと思わない........?あなたはずっと皆から愛され、慕われ.......私は疎まれ、嫌われ.......」

 

「千景.......?どうしたんだ、しっかりしろ!」

 

「どうしてこんな事になるのかしら.......ねぇ」

 

「千景!!」

 

「やめろ若葉、今の彼女には届かない!」

 

「だが.......!」

 

若葉は千景に声を掛けるが、幾ら言っても千景は返してくれなかった。

まるでうわ言のように言ってるような殺意を向けて話しているようにも見えた。

そして千景は口を開いた。

 

「でもね.......私.......何でこうなったか.......分かったの」

 

「は......?」

 

「それは、貴方がいるからよ」

 

俯いたまま、彼女は話続ける。

 

「貴方が私の大事なものを奪ってあたかも自分のもののように振る舞う........だから、貴方がいなくなれば......海斗が私の所に戻ってきてくれる。.......彼がまた、私を愛してくれる......私だけを見ててくれる。.......ねぇ?」

 

千景の勇者装束が変化していく。

そして次の瞬間、七人の千景が出現し、若葉と海斗を取り囲んでいた。

 

「.......だから彼を奪わないで.......」

 

「千景......」

 

「........貴方が........貴方さえいなくなれば......私が海斗の傍にいられる......!」

 

彼女の瞳は憎悪と殺意で満ちていた。

これでは幾ら言っても彼女は聞いてくれないだろう。

 

「......若葉、構えろ」

 

「しかし、海斗......」

 

「今のちーちゃんは.......普通じゃない。迷ってたら――死ぬぞ......!」

 

「.......ふふっ、待っててね海斗。早くその女を殺して私が貴方を必ず幸せにして.......あげる」

 

海斗は村正を千景に構える。

そして若葉も覚悟を決めて生太刀を構えた。

これから始まるのはどちらかが生きるか死ぬかの戦いだ。

加減は出来ない。

だからこそ――

 

「殺す気で行くぞ........ちーちゃん!!」

 

海斗は初めて大切な人に向けたくない(殺意)を向けた。

 

 

 





完全に依存して不安定になってヤンデレになってる千景ちゃんが好きで笑みが止まりませんわw

さて次回は戦闘会と......なんでしょうね?(意味深)

ではまた次回にお会いしましょう!

次回。第25話:背負う花は寄り添い想い合う
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