華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。いつも『華結を繋ぐは勇者である』を読んで頂きありがとうございます!
お陰でお気に入り数やアクセス数が増えてきて涙が止まりませぬ(泣)
これからもこの小説を宜しくお願いしますm(*_ _)m
では、本編どうぞー


第25話:背負う花は寄り添い想い合う

 

武器と武器がぶつかる中、海斗は村正で千景から放たれる鎌の攻撃を防ぐ。

 

「ちーちゃん!やめてくれ!若葉と戦う理由は無いはずだ!」

 

「どうして邪魔をするの.......?海斗。あなたは乃木さんに都合のいい駒として使われているだけよ、何でそれが分からないの.......!」

 

「駒.....?そんなことはない!俺達は一人の勇者としてやってきた仲間だ!」

 

海斗が千景の攻撃を受け止めながら言うと彼女も海斗に言い返した。

それは自身の行動が正しいと言ってるかのように強く言葉を発す。

今目の前にいる彼女は海斗が知っている千景ではないと思えるほど別人だった。

 

「じゃあ貴方はどうして勇者なのに人々に賞賛されてないのかしら......?」

 

「それは.......」

 

千景の言葉に口を噤んでしまう。

海斗は勇者の中でも異例な存在であり、大社側からしてもその異質差が四国の人々に対して疑問を持たれるのを避けるため極力ニュースや新聞ではその功績を若葉達が上げたと偽りを記して海斗の事は載せなかった。

そして、高知の村で起きた出来事を切っ掛けに海斗は報道も新聞に載る事も出来なくなった。

だが、後悔はしていない。

それで千景を救えたのなら些細な事なのだから。

 

「.......ほら、何も言えない。どうせあなたはそんな事どうでも良いと思ってるのでしょうけど――それは私が許さない.......!」

 

そう言うと千景は大葉刈を使って海斗を押し、距離を取った。

 

「乃木さんが慕われ、敬われ......海斗は疎まれ、蔑まれ.......そんなの........不条理じゃないッ!!」

 

「くっ.......!まてちーちゃん!」

 

勇者の力で千景は近くにいる若葉の方に駆け出して鎌を振るう。

しかし、若葉はその場から高く飛び回避した。

 

「千景!あれは精霊システムの副作用だ!今だって――」

 

「違うッ!!」

 

若葉は今千景に起こっている事を説明しようとしたが、彼女は俯きながら強く言葉を発し、止めさせる。

 

 

「.......やっぱりあなたは何も分かってない.......」

 

「――ッ.......」

 

「私の気持ちや海斗の事なんて......分かりもしないわよね」

 

すると六人の千景が一斉に若葉に襲い掛かってきた。

それを受け流す。

鎌が一撃、また一撃と連携をとって若葉に振るわれ続ける。

だがその連携は徐々に若葉を追い詰めていく。

体力はあっても今彼女は精霊の精神汚染により、心身に支障を来たしている。

今も尚こうして平静に保って六人の千景を相手取っているが、心の中では怒りが満ち溢れている。

彼女は人類の敵だ――殺せ――報いを受けさせろ――と。

しかし若葉はそれに屈しなかった。

だって彼女はリーダーであり、仲間は絶対に傷付けさせないと決めているのだから。

そして背後から千景が鎌を持って若葉を狩切ろうと振るわれるが、その攻撃は直後に海斗が入ったことで防がれる。

 

「はぁぁぁっ!」

 

『七人御先』が作りだした千景でも全員実体がある本人なので出来る限りは傷付けないように海斗は村正に霊力を纏わさず鈍器として使い千景達に振るう。

 

「若葉大丈夫か!?」

 

「心配するな。それよりもあの進化体にとどめを刺さなければ!」

 

「ちーちゃん達を捌きつつ行くぞ、それしか辿り着く方法はない!」

 

「分かった!」

 

海斗と若葉の二人は樹海の中を七人の千景の猛攻を受けつつ駆け巡った。

早くしなければあのバーテックスはまた次のバーテックスとして進化を始める。

それを防がなければまた住民へに被害が及んでしまう。

それだけは何とかしなくてはならなかった。

だが、目の前にいるのは精霊の力を身に宿せた千景が立ち塞がっている。

そう易々と通してはくれないだろう。

そして次々と千景の攻撃を防ぎながら進んでいく。

しかし千景の激しい猛攻のせいで上手く近づけなかった。

先程途中で若葉とは離れてしまい今は一人で向かっている。

だがそれは簡単なものではない。

 

「クソッ!ちーちゃんそこを退いてくれ!」

 

海斗の前から二人の千景が鎌を構えて向かってきた。

それを村正で一撃を防いで二撃目を避けてカウンター気味に回し蹴りをもう一人の千景にお見舞いした。

それによって二人の千景は重なって体制が崩れて樹海の下に落ちていった。

若葉の方も樹海化した木を伝って降り、その空中の中で千景が振るう鎌の攻撃を流す。

そして二人は合流して進化体の方に行こうとすれば前と後ろに二人の千景が道を塞いだ。

海斗が前にいる千景達に村正を構えて駆け出すと次の瞬間、後ろにいた千景が海斗を取り囲んだ。

 

「海斗!!」

 

「俺の事はいい!今はアイツを何とかしろ!」

 

「――させないっ!!」

 

若葉が海斗に駆け寄るがそれを海斗は静止させ、目標物に視点を向けさせた。

そして若葉が進化体の方に向かおうとした時にふと、上からもう一人の千景が自重で若葉に向かって大葉刈を振り下ろした。

それを若葉は生太刀で防ぎ、何とか受け止めている。

金属がぶつかり合う中千景は若葉に向かって口を動かした。

 

「.......樹海が解ける前にあなたを倒す.......ッ!」

 

「なっ!最初からそれを!?」

 

「そうよ......!時間が止まった世界の中で、この場にいるのは遠くで通常個体を相手している高嶋さん達と貴方と私と海斗だけ!そして今ここにいるのは三人だけ.......分かる?貴方を倒して海斗の記憶さえ忘れさせさえすれば、ここで何があったか......誰も知りえないのよ!!」

 

そう言うと千景は大きく鎌を振り上げて若葉に連続で攻撃を振り続ける。

 

「やめろ!お前は選ばれた勇者なはずだ!」

 

「勇者っ勇者っ勇者って!どんなに怖くても辛くても国民の為に命懸けで戦う御神輿!盛大に祀り上げられて......?あなたはさぞや気分が良かったでしょうねぇ!!」

 

「神輿だと.......!」

 

千景の一撃をタイミング良く上に避けた若葉は生太刀を地面に刺し、大葉刈の刃に足をつけて振るえないように固定した。

 

「誰がそんなつもりで戦っているものか!.......沢山の者が死んだ。何億の人が化け物に殺されたんだ!私達だけが切り札だと言うのなら、その使命に命を賭けるのは当然のはずだ!だから私とお前がここで争うのは無意味だ!」

 

「結局あなたはそういうところよッ!!」

 

「――!?」

 

千景は空中へとジャンプをし、若葉の背後に回り込んだ。

それで大葉刈の上に乗っていた若葉は体制を整える為にその場から退いた。

 

「そうやって美辞麗句で人を利用している.......そもそもそんな自覚もないかもね!あなたは復讐が出来ればそれでいいのよね!」

 

「そんな事は......!」

 

「あるわよ!仲間や使命だなんて耳障りのいい言葉を並べて、私や海斗を利用しているだけなのよね!!」

 

「千景!!」

 

そこからまた千景の攻撃が開始させる。

その激しい言葉や振る舞うものは千景がこれまで話せなかったものを暴露しているような感じだった。

それは怒りや嫉妬、妬みその他を混ぜ合わさったものが流れている気がした。

そして千景の攻撃がまた止んだ。

息を吐く若葉だが、一瞬も気を引いては格好の餌食になる事は分かっている。

そして次々に千景の分身体が上から降りてきて千景の後ろに待機した。

すると千景が口を開いた。

 

「......だったらそれでいい。だったらせめて――」

 

千景の声はあまりにも震えていた。

まるで何かを失うのが怖がっているかのように。

そして彼女は唇を震わせながら言葉を零した。

 

「――っ!せめて海斗だけは盗らないでよッ!!」

 

「!?」

 

彼女の言葉は海斗に対する事だった。

海斗と千景は言わば幼馴染の関係でずっと一緒にいた存在。

そして千景は彼に救われた。

無価値だった自分を価値のある一人しかいない存在だと証明してくれたのだ。

それなのに彼は勇者になってから変わってしまった。

無意識に不器用ながらも周りに気を使って明るく振舞ったり、誰かが落ち込んでいる時は支えたり、それ以外でも色んな事をしてくれた。

だが、千景はそれを見てどんどんと海斗が彼女から離れていくのではないかと恐れてしまったのだ。

その理由があの病院での出来事だ。

千景は謹慎中でも拘らず海斗が心配で病院に行ったのだ。

だが案の定そこには友奈と若葉が海斗に付き合って話していた。

その光景を見て千景の心の中は闇に支配された。

憎悪、悪意、嫌悪、嫉妬、妬み。

ふと思ってしまった。

何でそんなところにお前らがいるんだ―――と。

それを受けるのはお前らじゃない(千景)のはずなのに。

 

「......っ!海斗は泣きたい時、辛い時、悲しい時、いつも私の傍にいて寄り添ってくれた......私から海斗まで奪わないでぇっ!!」

 

千景は自身の思いを口に叫び若葉に襲い掛かる。

 

「あなたがいなくなれば、私が海斗の傍にずっといられるの!」

 

千景は怒りを顕にしながら若葉を殺そうと必死に追い詰める。

彼女が死ねばもう誰も海斗を気に掛けるのはいなくなる。

想い人を独占できる。

もう切ない思いをしなくて済む。

だからこそここで殺さなくてはならない。

言葉だけで利用としている彼女を絶対に。

 

「乃木若葉ぁぁぁぁぁ!!」

 

「千景もう止めろ!それ以外精霊の力を使うな!死んでしまうぞ!」

 

「うぁぁぁぁぁア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」

 

若葉の忠告にも耳を傾けずに千景は大葉刈を力いっぱい若葉に投げた。

そしてその分身体も若葉目掛けて投擲する。

若葉はそれを落とそうと弾こうとするが、次々と来る鎌に対応しきれず投げられた三本の大葉刈が若葉の後ろにあった木に刺さって磔の状態で拘束されてしまう。

身動き出来ない若葉は何も出来ずに千景の攻撃を食らうのを待つだけになった。

 

「......取った!!」

 

「くっ.......!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

盛大に鎌を若葉に振ろうとした次の瞬間、突如千景の勇者装束が解除された。

今まで豪快に振れていた鎌が重く感じるようになる。

そして千景は吐血し地面に激突しようとする。

 

「がはっ.......」

 

「ちーちゃん!!」

 

直ぐさま海斗が千景を抱き抱えて地面に着地した。

それに続いて若葉も拘束が解かれて降りてきていた。

 

「ちーちゃん!大丈夫か!!」

 

「うっ......な、何........?っ!?ま、まさか.......」

 

千景の傍において海斗は様子を見てみるといきなり千景はスマホを取り出すとそれを触って勇者システムを起動させようとする。だが、いくら画面をタップしても真っ暗なままだった。

そして千景は何回もタップして自分が今起こっている状態に気付いてしまった。

 

「あ......ははっ、ははは........」

 

「ちーちゃん......?」

 

「海斗......どうやら私は神樹様に見捨てられたらしいわ」

 

「なんだと.......!?」

 

彼女の口から有り得ない事が出た。

神樹が千景を見放した?

それは勇者システムを本格に剥奪されたということ。

神はこの状態でも勇者を見ているということ。

何を起こそうが何を成そうが干渉してくるとは思わなかった。

だが、神の力の一部を分け与えられている勇者システムは神樹が管轄しているものだ。

何処で何があったかも知れるということ。

それで千景の勇者システムが起動しなくなったという事だろう。

 

「.......私はもう、力がないわ。はっきりわかるの、もう二度と勇者にはなれない.......これは罰なのかしらね」

 

例え神でも勇者の仲間打ちはさせないようには出来るらしい。

だが、それは良いやり方でもある。

けど状況が悪すぎた。

自虐的になっている千景だがそれと同時に進化体の中から通常個体が溢れ出てきた。

 

「若葉、ちーちゃんを安全な所まで頼む」

 

「任せろ、必ず守ってみせる」

 

「え.......?」

 

海斗は勇者の力を持たない千景を若葉に任せ、村正を構える。

 

「ちーちゃん、若葉の傍を離れるなよ」

 

「ど......どうして......?どうして、私を守ろうとするの.......?」

 

困惑している千景は言う。それに海斗は振り向いて笑ってみせた。

 

「俺にとってちーちゃんは親友で、仲間で、かけがえのない存在だ。だから何を言おうが何をしようが絶対に君を守る」

 

海斗はそう言うと駆け出して向かってくるバーテックスを村正で倒していく。

一匹ずつ近くにいるものを丁寧に殲滅していく。

 

「千景、お前は私達の仲間だからだ。勇者の郡千景ではなく、一人の人間として私はお前を見ているつもりだった。

だがその状況を作った私にも落ち度はある。

お前の言う通り私は綺麗事を並べているのかもしれない」

 

「.......」

 

海斗がバーテックスを倒している中、若葉は千景に話し掛ける。

自分の過ちや千景に対しての後悔、その事をうち明かす。

 

「お前を追い詰めたと言うのなら罰を受けよう。だがそれはバーテックスとの戦いが終わった時だ。それまで私はまだ倒れる訳にはいかない、分かってくれ千景」

 

「.......私」

 

「大丈夫だ、今は海斗がバーテックスを片付けている。今はお前を安全なところに連れていく」

 

若葉は千景の手を取って立ち上がらせ千景を近くにあった木の影に移動させた。

 

「ここならバーテックスは来ないだろう。千景、私も海斗の方に向かうからそれまでここにいてくれ」

 

千景を安全なところに移動させた後、若葉は駆け出して海斗の救援に向かった。

その光景を千景は何も出来ないままただ見つめていた。

 

「(......どうしてあんな風に出来なかったんだろう.......)」

 

自身が犯してしまった過ち、変えられようのない真実。

彼女が起こしてしまったものは消えない。

今思えば千景は若葉に嫉妬していた。

どうしてあんなに強いのか、どうして平然といられるのか、どうしてそんなに人に敬われるのか。

そんな小さな淡い執着。

弱い者にはそれが眩しく見える。

若葉はその強さで人を魅了させる、それは海斗にも例外ではない。

だが気付いてしまった。

 

「(.......私は乃木さんに憧れてたんだ.......)」

 

彼女の強さが羨ましい。その力があれば想い人の隣を歩いていける気がしたのだ。

だからこそそれが目標になった。

しかし、それは儚く散ってしまった。

今はもう千景は勇者では無い。普通の何も力がない人間に戻った。

今あるのは扱えなくなった大葉刈だけ。

持ち上げようとするが、人並みの力では存分に振るう事すらままならない。

だが――もし、もしも何も出来ない今の彼女でも何か出来る事があるはずだ。

事を大きくした自分がこんなところで隠れていては罪を償えない。なら、せめて何か役には立ちたい。

 

「(......私も海斗や乃木さんのように......!)」

 

そして千景は立ち上がった。すると若葉がバーテックスを攻撃している最中に背後からもう一体が若葉目掛けて向かって来ていた。

 

「!乃木さんっ!!」

 

千景は咄嗟に体が動いて若葉を強く突き飛ばした。

そしてその目の前にいるのは大きく口を開けた白い化け物。

視界がスローのように遅く感じた。

今から避けようとしても間に合わない。

でも千景は後悔はしていなかった。

これが自身に下された罰なのだと。

 

「(海斗.......わがままな私をごめんなさい.......)」

 

今この場にいない想い人に謝罪をし、千景は瞳を閉じた。

しかし――そろそろ食らってもいい頃合だと言うのに痛みすら感じなかった。

そして誰かに抱き締めれている事に千景は気付いた。

この温もりは知っている。いつも自身に寄り添ってくれていた暖かい感触。

千景はゆっくりと目を開けるとそこにはバーテックスに村正を突き刺して動きを止めている海斗が千景を抱き締めていた。

その表情は密かな怒りに満ち溢れていた。

 

「.......おい、俺の大事な存在をまた奪うのか――お前らは」

 

その声音は普段彼から出されるものでは無いのが分かる。

ここまで海斗が怒りを顕にしているのは初めて見た。

けど千景は嬉しかった。

自分が海斗に取って大事な存在だと言われたからだ。

単純かもしれないが、それだけでも心が満たされた。

そして海斗は村正に力を入れて霊力でバーテックスが破裂して消えた。

 

「もう、何も奪わせない.......今度こそ守りきるって誓ったんだ!」

 

海斗は千景を抱きしめている腕を強くした。

もう離したくない、彼女だけは絶対に守ると。

あの時彼女に約束したのだ、傍にいると。

その後バーテックスは殲滅された。

千景は病院で検査するため入院する事になった。

 

 

 

千景が入院してから一日が経ち、海斗は彼女がいる病室に足を運んでいた。

 

「.......ちーちゃん」

 

病室前に辿り着くとその扉に手を掛ける。

扉を開ければ優しい風が吹いてくる。

そしてそこにはベットに横たわりながら黒い髪を靡かせて千景が窓から見える外を見ていた。

すると海斗の気配に気付いたのかこちらに振り向いた。

 

「あ......海.....斗.......み、見舞いに来たのね........」

 

口を震わせながら海斗に対して怯えた様子で千景は話し掛けた。

 

「嫌だったか?」

 

「そ、そんな事は.......ないわ」

 

「んじゃ好きにそこに座るから。失礼ー」

 

「.....え、あっ、ちょっ........」

 

千景の有無を聞かずに海斗は近くにあった丸椅子に座った。

二人はそのまま沈黙が続いた。

するとその沈黙を破った千景だった。

 

「.......海斗、聞いてもいい......?」

 

「うん?何を?」

 

首を傾げる海斗だが、間を置いて千景は口を動かした。

 

「あなたは.......どうして私を守ったの.......?」

 

「それは大切なひ――」

 

「乃木さんを殺そうとした私が、そんなに大切な人になれると思うの.......?」

 

「.......」

 

千景は理由が欲しかった。

彼は自身の事をどうしてそこまで気に掛けているのか。

若葉を殺そうとしたはずなのに何故責めずにそんな優しく振る舞うのか、暖かい言葉を語り掛けて来るのか謎だった。

 

「......私にはもう何もない。貴方を守るって言ったはずなのに......挙句の果てにはその真逆の事をしてしまった......隣で歩いていく権利や傍にいる資格もない......ねぇ、どうしてよ!!」

 

例え幼馴染だとしても、親友だったとしても罪を犯したのを許容するなんて出来る筈がないのだから。

だからこそ知りたかった。

彼の本心を。

そして海斗は暫く悩んだ素振りを見せると間を置いて話しだした。

 

「......何で、俺がちーちゃんをそんなに気に掛けているか......だったよな」

 

「――そうよ......何かあるんでしょ?どうして今も尚、私に構っているのか分からない.......!」

 

「........一回しか言わないからちゃんと聞けよ?」

 

「えぇ。分かったわ」

 

海斗は頭を搔くと頬を染めて言った。

 

「君が――好きだから」

 

「........え........?」

 

千景の頭は真っ白になった。

海斗は今何て言ったのだろうか?

好きと言ったのか?誰が誰を?決まっている、この場には千景しかいない。

突如に千景の頬が茹でたこの様に赤くなった。

 

「ちょっ、ちょっと待って!!私の事が........好き......?一体何を言ってるのよ!い、意味が分からないわ........!」

 

「仕方ないだろ.......これに気づいたのが昨日なんだから」

 

昨日海斗は千景の事について考えていた。

どうして自分がそこまで彼女に固執するのか、親友だからか?大切な存在だからなのか?いや、それは違う気がした。

そして海斗はあることに気が付いた。

自分は千景が好きだったのだ。

彼女と初めて出会った日から一目惚れで好きになったのだ。

それは幼い頃でそれを恋だと気付けなくてそのまま放置していた。いや、見向きもしなかった。

千景は自分よりもっと相応しい人と幸せになるべきだと心からそう願った。

だが今やっと自分の本当の気持ちに正直になった。

だから海斗は命を懸けて彼女の為に戦っていた。

 

「だから、ここで俺の気持ちを洗いざらい言う。郡千景さん.......俺と、結婚前提で付き合って下さい!」

 

海斗は千景に向けて壮大な告白をし、頭を下げて彼女の返事を待った。

すると千景が海斗の顔に触れて無理矢理上げさせた。

いきなりだったので少し驚いてしまう。

その後に千景は唇を震わせ、頬や耳を赤く染めながら口を開いた。

 

「ち、ちーちゃん?」

 

「......わ、私で本当にいいの......?」

 

「ちーちゃんが良いんだ」

 

「......高嶋さんや土井さんみたいに明るくないし、伊予島さんや上里さんみたいに綺麗ではないし.......乃木さんみたいな人を勇気付ける事も出来ない.......」

 

「ちーちゃんにはちーちゃんにしかない魅力がある」

 

「ファッションや流行りものに疎いし......」

 

「そんなのは些細なことだよ。俺だって疎いからな」

 

「ゲームしか取り柄の無い、内気な女よ........」

 

「奇遇だな。俺もゲームしか得意じゃないしな」

 

「.......私は取り返しのないことをしてしまったわ。それに一時の感情に任せて乃木さんを......貴方を危険に巻き込んでしまった......そんな私を許せるはずがない」

 

「じゃあさ.......その罪を俺に半分、背負わせてくれないか?」

 

「――ッ!?」

 

千景は大きく目を見開いた。

自身の過ちを彼は背負うと言ったのだ。

どうしてそこまでやるんだと不思議で仕方がなかった。

 

「貴方が背負う得がないじゃない!これは.......私の罰よ!それを貴方に背負わせるなんて私自身が許せなくなる.......!」

 

「ちーちゃんは自分が嫌いか?」

 

「.......えぇ。この世界で一番私が嫌いよ.......」

 

千景は拒んだ。海斗を頼るなんて今の彼女には出来なかった。

自分のせいで彼が苦しんで欲しくない。なら全て塞ぎ込んでしまえばいい。

そうすれば誰も傷つかずに済むのだから。

すると海斗は口を開いた。

 

「ちーちゃん、君がやった事は俺が全部許すよ。だけど君が起こした過ちは償ってもらう。幾ら時間が掛かろうが、何時か君が自分自身を許して好きになれるように俺も協力する。今のちーちゃんを近くで見ているなんて俺は耐えられない。

だからちーちゃんの重荷を二人で減らして行こう?」

 

「狡い.......ずるいわよ......」

 

「狡くていい。君を救う為なら俺は何度でもやってやる」

 

「私が一人で背負うって言ったのに......」

 

「そんな事は俺が絶対にさせない。背負うなら半分こだ」

 

千景は幾つも反論をするが、それら全て海斗に肯定され撃ち落とされてしまう。

遂に逃げ場という言葉を失った千景は観念して上目遣いで海斗を見た。

 

「.......わ、私も.......あなたが好き.......私を絶望から助けてくれたあなたが.......大好き.......今も愛してる!」

 

「俺もだよ.......君を愛している」

 

「海斗......私を貴方の傍に居ても.......いいですか......?」

 

「こちらからお願いするよ。俺の傍にずっといてくれ」

 

その瞳は涙を流して揺れていた。

千景は海斗に向かって強く抱きついた。もう、離れないように離れたくないように。

そして海斗も千景を優しく包み込む。

互いの想いをぶつけて二人で分かち合う。

それが一番の繋がりなのだから。

 

「海斗........」

 

「ちーちゃん」

 

二人は顔を向き合わせる。そして徐々にその距離は接近し、やがて互いの唇が重なり合った。

 

「ん......ちゅっ......」

 

「ん.......」

 

存在と温もりを確かめ合うかのように。

ゆっくりと濃密に。

その数秒が長く感じた。

二人は唇を離すとその間から銀色の糸が形成されていた。

初めて海斗と千景は互いに繋がった気がした。

 

「もう、君を離さない」

 

「もう、貴方から.......離れない」

 

嬉しさで笑みが漏れてしまう。

だが、この甘い感覚は人をさらに幸福へと誘う。

そう言うと二人の影がまた重なった。

海斗は誓う――千景だけは死んでも守り抜くと。

千景は誓う――海斗だけは死んでも傍にいると。

二人が死を分かつその時まで永遠に.......ずっと。

 

その花は愚かにも貪欲に勝利に食らいつき、自身の欲しいものは必ず手に入れる。

そしてその傍にいるのは昔から一人に対して想いを募らせた淡く綺麗な花。

その二輪の花は寄り添い合い何処までもその空を見続ける。

例え時代を超えようともその決意が一筋の想いになるのだから。

 

 

 

 





砂糖吐きそう......満足感はあるけど、彼女いない歴=年齢の私には恋愛描写は難しいんじゃあ!
次回は海斗君の出番ありありでっせ?

ではまた次回にお会いしましょう!さらば!

次回。第26話:決意
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