華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもバルクスです。今回は後編になります(千景と若葉視点)。
もう小説を投稿してから半年になるんだなと考えると早いものですねぇ......
では本編どうぞ!



第29話:諦めない心の強さに絶望を

 

海斗と友奈の二人と分かれた若葉と千景は目の前にいる大型バーテックスの相手をする。

左右に水で出来ていそうな丸い球を持つバーテックスと長い体と重りでまるで天秤に似たような形を持つバーテックス。そして凶悪な四つの角を持っているバーテックス三体が勇者二人に立ち塞がる。

すると水球を持つバーテックスが水の針で先に攻撃を仕掛けてきた。

 

「千景!」

 

「分かっているわ......!」

 

その水針を若葉と千景は難なくと回避する。

そして追撃が無くなったタイミングで二人は反撃する態勢に入る。

 

「化け物、ここが貴様らの終端と知れ!」

 

若葉が刀を構えて大天狗の力を使い加速し、まず動きが遅い天秤のバーテックスに勢いよく突いた。

一撃を入れた若葉は直ぐさま距離を取りバーテックスを見据える。

すると天秤のバーテックスが自身事回転させ突風を発生させる。

 

「くっ!」

 

その風のせいで大きく距離を離されるが、次の瞬間にその突風の中からもう一体のバーテックスが自身の角をドリル状にして若葉の方へ高速で接近していた。

若葉はそれを生太刀で防ぐ。

 

「この程度の事で.......四国勇者はぁぁぁぁぁ!!」

 

怒声を上げ攻撃を振り払った。

だがその衝撃で若葉は吐血をしてしまう。

 

「がはっ......ちっ......!」

 

幾ら精霊の力があったとしても人間の体ではその負荷には耐えられない。

今の若葉は生身で戦闘機に乗っているような状態だ。

その加速が肉体を押し潰し多大な負荷を掛けている。

すると振り払ったバーテックスの攻撃が再度若葉に向かって来ていた。

若葉は大天狗の力で素早く頭上に飛び上がりそのまま向かってくる角のバーテックスの攻撃を待つ。

そして生太刀を上に掲げて刀身を巨大化させてそれを振り下ろした。

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

振り下ろした生太刀を角のバーテックス事切り裂いていく。

その一撃で角のバーテックスは塵と化して消滅した。

 

「がはっ......!」

 

肉体にも相当な負荷が掛かりすぎているために若葉は吐血をしてしまう。

 

「さぁ、鏖殺してあげるわ........!」

 

一方千景は水球のバーテックスと交戦しており水針を回避しながら鎌で撃ち落としつつ接近する。

ある程度近づけたら精霊と勇者の力で素早く接近して精霊の力で強化した大葉刈で水球の一部を破壊する。

 

「......やぁぁぁぁ!!」

 

そしてそのまま九本の尾で精製した妖術で本体ごと焼き尽くす。

 

「がふっ.......」

 

千景も精霊の力の負荷で吐血をしてしまう。

やはり人外を人の中で宿すのはどれだけ危険なのかが分かる。

けどこれで敵を倒せるのなら有無もなく使うしかない。

そして妖術で拘束されているバーテックスを一瞥する。

これで暫くは動けないはずだ。

そう思い千景は残りのバーテックスを若葉と倒すべく彼女の方へ合流を果たした。

 

「乃木さん、一体の方は私の妖術で動きを止めてるから残りの一体を早く殲滅するわよ!」

 

「分かった!」

 

二人は残っている天秤型の方へ向かう。

今も尚そのバーテックスは突風を起こしており接近するのが困難だ。

 

「くそっ......風が強すぎて近づけない!」

 

これでは攻撃が入らない。

若葉が悩ませていると千景が彼女の肩に手を置いて口を開く。

 

「.......乃木さん、ここは私に任せて。この玉藻前の妖術なら動きを封じれるかもしれないわ.......!」

 

そう言うと千景は尾で作り出した炎で揺らめくピンクの塊をバーテックスの方へ投げた。

そしてそれが破裂してその煙幕がバーテックスの方に吸い寄せられる。

すると天秤型がいきなり回転するのを止めて突風が止まった。

まるで何かの縛りか洗脳に近い何かで封じている気がした。

 

「.......今よ、乃木さん!」

 

「すまない千景!助かる!」

 

ふらつきながら千景は若葉に言う。

彼女が動きを封じてくれたお陰で若葉は天秤型に接近出来るようになった。

若葉はそのまま加速してすれ違いざまに生太刀で切り刻む。

 

「うぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

数回に渡り切り刻めば天秤のバーテックスは塵と化した。

 

「ごふっ......」

 

肉体的負担でまたもや吐血をしてしまう。

もう慣れたが体のあちこちが悲鳴を上げているような感じがした。

すると休んでいる暇もなく先程消滅したと思っていた天秤型の位置から通常個体が数百体以上出てきた。

 

「溢れた!!」

 

「早く倒すわよ......!」

 

溢れた通常個体を千景と若葉は一体も逃さず徹底的に潰していく。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

倒しても倒してもキリがない。

だがこのまま放置していてはまた新たなバーテックスを生み出してしまうかもしれない。

それにあの一体でも神樹を破壊することは出来るのだ。

それだけは絶対に死守しなくてはならない。

二人が通常個体を倒しているとふと視界から巨大なものが遠くから見えた。

それをよく見ればかつて壁の外にいた大型バーテックスが姿を現していたのだ。

これではっきりした。

最初からこの六体のバーテックスは囮兼時間稼ぎだったのだ。

それを悟らせないようにあえてあのバーテックスは勇者達の体力が消耗仕切っているところで姿を現したのだ。

 

「(早くやつを倒さなくては.......神樹様が!)」

 

「乃木さん!」

 

「ッ!?しまっ――」

 

「乃木さん!はっ!しまっ――」

 

一瞬の考えで、隙を晒してしまい若葉は背後からくる水泡に反応出来ずにその中に捕らえられてしまう。

千景も若葉に気を取られ同様に水泡の中に囚われてしまう。

 

「ぶはっ.......(い、息が.......出来ない!)」

 

「かはっ.......(迂闊だった......あのバーテックス、攻撃ではなく捕縛も出来るのは予想外だった......先に早く仕留めればこんな事にならなかった.......!)」

 

千景は自身の選択に後悔する。

あのバーテックスは動きが遅いと思って放置していたのが仇となった。

それで若葉すら巻き込んでしまい、まずい状態に陥っている。

たとえ精霊の力があったとしても水の中では呼吸すらも脱出することも出来ない。

考えろ、何かこの状況を打破する方法を。

しかし今は呼吸が出来ない中で冷静に考えることも難しかった。

徐々に意識が朦朧としてくる。

――殺したい。心の中でそう呟く。

お前らを絶対に細かく切り刻んでやる。

どんな手を使ってでも、必ず殺す。

 

「っ......(........絶対に殺す........!お前らだけは.......絶対に.....!)」

 

大事な人達の為にこいつらを殲滅しようと千景はバーテックスを睨みつける。

それが無意味な事だとしても。

――ふと、先程千景は何と言った?

彼女の脳裏に疑問が残る。

殺すためなら他の人は関係ないはず、これは私自身の私情だ。

ならどうして千景は『大事な人達』と付け足したのか。

思い出す――大切な日常を。

思い出す――大事な人達を。

思い出す――彼の背中を。

 

「(.......私.....は.......」

 

そして思い出す――彼女が戦う理由を。

 

「っ.......!(ダメよ.......切り札の影響に呑み込まれては.......!私はもう.......間違えは犯したく.......ないもの.......!)」

 

怒りでも憎しみでもなく、大切な人を想う気持ちを思い出して千景は冷静さを取り戻す。

この戦いが終わったら千景は何をしたいかを考えた。

まず、流行りのものの服をひなたと杏に教えてもらい、球子にはサイクリングや山登りのことを教えてもらい、友奈にはコミュニケーションの練習に付き合ってもらい、若葉には、精神の鍛えに付き合ってもらいたい。

他にも色々あるが、今はバーテックスを倒す。

まずはここから出るために千景は意識を集中させる。

先程精霊の力ではどうすることも出来ないと言っていた。

しかし、彼女の玉藻前の妖術なら可能ではないのかと。

呪いというのは時には次元に干渉して現実に理を歪ませる。

ならその応用でこの水泡という空間を妖術で覆い脆い部分を探る。

するとそれは糸も簡単に見つかった。

即座に千景は大葉刈をその脆い部分に突き刺し水泡に穴が空き千景はその中から抜け出せた。

その瞬間に若葉の方も精霊の力と彼女自身の力で脱出に成功する。

二人は直ぐに合流して揃う。

 

「無事か!千景!」

 

「えぇ......そっちも無事で良かったわ」

 

若葉と千景は水球のバーテックスを見据える。

今でも攻撃をしそうだが、バーテックスは何かを溜めているように見えた。

どうやら一瞬で終わらせるつもりらしい。

 

「千景、まだ行けるか?」

 

「.......ふっ、全然余裕よ.......!」

 

千景の方に視線を向けながら言う若葉。

それに千景は鼻で笑い問い返す。

正直体力はそんなには無い。

若葉の方は先程水泡を脱出する際に大天狗の力を使って自身に火傷を負っている。

それに大天狗の力を使えば使うほどその熱で体は焼け爛れていく。

千景の方はまだ精霊の代償がないのか分からないが、確実に何かは受けている。

そしてここで勇者二人が倒れてしまえば四国は確実に滅亡する。

そんなことは絶対にあってはならない。

大切な人がいる日常をあの化け物に壊されてなるものか。

と、若葉が千景に問いかける。

 

「なぁ、千景」

 

「何.......?」

 

「私たち人間は.......弱い。臆病で、脆く、そして悪意に落ちやすい.......だが、なぜそれで戦えると思う?」

 

「........愚問ね。大切な人を守れるためなら、無限に強くなれるのよ。私だって.......海斗や皆のお陰で.......救われたのだから」

 

若葉の言葉に千景は自信ありげに言う。

二人は信じている。人の強さを。

何故なら人は、守るべきもののためなら、どんな絶望にも立ち上がって強くなれるから。

諦めない心があるからこそ、守りたい人のためなら戦う事が出来る。

戦意を失わずに立ち向かえる事ができる。

それが、この化け物どもとの唯一の違い。

そして水球のバーテックスは若葉と千景の方に向かって水で作った光線を放った。

それが徐々に近づく中、二人は武器を構える。

 

「私たちはどうして戦うと思う?」

 

「それはね........」

 

 

そしてどんなものにも勝てる(理由)

 

「「人間........だからだよ!!」」

 

生太刀と大葉刈が同時に振られるとその斬撃がバーテックスに当たり真っ二つに切れた。

その影響で水球のバーテックスは塵と化し消失した。

これで終わった。

後は海斗達の方へと合流しようと思った瞬間。

神樹の先から爆発音が聞こえた。

その方向を見るとバーテックスが消える光が見えた。

 

「千景!急ぐぞ!」

 

「えぇ......!」

 

若葉と千景はその方向へ向かった。

あそこにはさっき見た大型バーテックスがいたはずだ。

だが何となく二人は嫌な予感がした。

その発生源の場所に到着すると一足先に球子と杏が駆け付けていた。

二人は神樹の辺りの星屑を相手にしておりその発生源から近かったために早く来れたのだ。

 

「おーい!若葉!こっちだっ!」

 

球子が千景と若葉の気配に気付きこちらに大きく手を振る。

 

「球子、杏!無事で良かった。すまないが、状況を聞きたい」

 

地面に着地した若葉と千景は杏と球子の二人に状況を聞いた。

 

「私も先程来たばかりですので分かりませんが、どうやらここで海斗さんが大型のバーテックスを倒してくれたみたいなんです......」

 

「タマも正直びっくりだ。ただでさえ精霊の力が効かないバーテックスだったはずなのに、カイトが全て片付けたんだからな」

 

二人と丁度着いた時間はそんなに経っていない事を述べ現状の説明で留まった。

 

「状況は理解した。皆、これから海斗と友奈を捜索する。そろそろ樹海化が解ける。その前に必ず見つけるぞ!」

 

若葉の指示で姿がない海斗と友奈の捜索が始まった。

そして数分後に球子と杏から連絡が入りそのポイントに伺ら何故か杏と球子は浮かない顔をし、泣きそうになりながら誰かに応急処置を施していた。

そして若葉は気づいてしまうそれが一体誰なのかを。

その若葉の背後にいた千景は力が抜けて膝を着いてしまう。

だってそこには――全身血だらけの海斗が横たわっていたのだから。

この戦いで四国は守られ、バーテックスは全滅。

勇者四名が負傷。

乃木若葉、大天狗の影響で全身火傷、複数の箇所の骨折、内蔵の損傷。

郡千景、玉藻前の影響で複数の箇所の骨折、視力の低下。

そして――理性と自制心の低下があるとの事。

詳細は回覧拒否とする。

土居球子、輪入道を使い杏と通常個体と相手をした影響で腕の脱臼、複数の箇所の骨折、切傷、打撲。

伊予島杏、雪女郎を使い球子と通常個体と相手をした影響でこちらも複数の箇所の骨折、切傷、打撲。

黒結海斗、バーテックスとの戦闘で精霊の連続使用により内蔵の損傷、複数の箇所の複雑骨折、左足の損傷により一部身体機能が低下。

瀕死の重傷のため今も尚病院で昏睡状態。

そして高嶋友奈――樹海の戦闘中に行方不明。

 

 

 





玉藻の前書きにくかったです。
まぁ、自分の認識力が乏しかったのもあるんですけどね( ̄▽ ̄;)

さて、次回はくかゆの最終回です。
海斗くんがどうなったかその後にどうなるのか書けるなりに書いてみます!頑張るぞぉ!

ではまた次回にお会いしましょう!さらば!

次回。第30話:忘れない想いを胸にバトンを託す
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