どうもバルクスです。 1話を投稿してから1週間経ちますが、お気に入り登録が8人ぐらいあってびっくりしました( °_° )
今回はタイトルの通りです。
では、どうぞ〜
「――ふっ、ハァ!」
丸亀城の中を改築した道場で海斗は木刀を持ちながら剣術を磨くために鍛錬をしていた。
縦、横、斜め右と三連撃を行い、一番効率が良い動きを探しながら空気を切り伏せる。
「ふぅ......」
一通り居合を終えて、息を吐くと木刀を構えるのを止め、地面に置いた。
付近に予め置いといたペットボトルの方へ向かいそれを手に取り、渇いた喉を潤すため、水分を豪快に口の中に入れる。
喉を鳴らし容器の中身が半分以上無くなると飲むのをやめて蓋を閉め、地面に置いた。
今度はペットボトルの隣に一緒に置いといたタオルを持って体の汗を拭き取った。
「随分と長い間1人で鍛錬をしているな」
ふと、道場の入口から声が聞こえた。振り向くとそこには勇者達が通う学校の制服を着ている少女がいた。
――乃木若葉。彼女は四国の勇者の1人でその勇者達を纏めるリーダーでもある。
使用する神器は生大刀。あまり歴史や神話には興味はない海斗だが――なにも、神が持っていたどんなものでも殺せる冥府の武器らしい。
そんな若葉は昔から居合の鍛錬をしていたので十分に生大刀の力を振れる。そして今でもその技術は衰えず磨きがかかっている。
海斗から見て若葉のイメージは頑固者として認知している。
すると若葉は口を開いた。
「早く教室に来い。後はお前だけだぞ」
少し苛立っているのか口調が強く感じた。それもそのはず、海斗は授業を
それも1回ではない、週に2、3回ぐらいだ。
海斗は拭き終わったタオルを綺麗に畳みながら口を動かす。
「お前は本当に固いな乃木。少しは気分転換に剣とか振らせろよ」
軽い口調で海斗は声を発する。若葉はそんな海斗の態度に眉を顰める。
「全くお前という奴はいつもそんなこというな。気分転換、気分転換と言って私たちとの訓練や授業を受けない。ずっと1人で鍛錬だ」
「......」
若葉は今までの彼への不満を吐き出した。海斗は興味なさそうに木刀が置いてあった所に戻り再び握り、鍛錬を開始した。
それを見た若葉は肩を下げ、どっとため息を吐いた。
そして――
「......復讐だ」
「え?」
先に口を開いたのは海斗の方だった。しかしその声は小さく若葉は聞き取れなかった。すると彼は木刀を一振りしたら息を整えて若葉に振り返る。
「俺は今、バーテックスを殺す事しか考えていない」
表情は無のままだが、目だけは憎悪の炎で燃えているようだった。
その感情は少しだけ若葉が
ふと、海斗が自分の発言に気が付いたのか若葉に背中を向けた。
「――今のは忘れてくれ」
「......」
若葉は自然と海斗の逆鱗に触れたのだ。
申し訳ないと謝罪をしようとするが、海斗はそれを察してか手でそれを制した。
「別に謝ることじゃない。あれは勝手に口が滑った俺が悪いんだからな」
自分の事を自傷気味に言う海斗。そんな若葉は何も言えずにただ海斗の話を聞く。
「そろそろ俺は自分の部屋に戻る。その後は知らんが、食事の時だけは顔を出しといてやるよ」
「あ、ああ......って、その言葉は何回も聞いたぞ!」
するといつの間にか荷物を纏めた海斗が笑いながらすたすたと若葉に軽口を言って道場を出た。
その後ろ姿を若葉はただ見ていることしか出来なかった。
◇
「......」
一人、乃木若葉は道場に立ち尽くしていた。
海斗が道場を出てから少し経って、若葉は考えていた。
黒結 海斗――若葉と同じ勇者で唯一男で勇者になった者。
あまり自分の事は話さない彼だが若葉には分かってしまった。
彼の瞳は消えない炎が灯っていた。
この世界がバーテックスに支配されてから3年――若葉達は勇者として訓練やバーテックス対策の戦術を磨いていた。
訓練は過酷なものばかりだった。だがそれは決して無駄では無い事だ。
いずれバーテックスがこの四国に攻めてきた時にこちらが優位に立てるのだ。
でも、海斗だけは1度も勇者達と訓練や授業に出ていないのだ。
さっきも海斗を探すのに苦労した。
海斗は自主練の為に1人で道場に入り浸っている。それも毎回だという。
それも何故一人でなのか理由を聞いてもはぐらかされるか強い口調で返されるだけ。
「これからどうしたものか........」
腕を組みながらうむむ、と思い悩むと道場入口から声がした。
「何を悩んでるんですか若葉ちゃん」
するとその声の発生源に顔を振り向くと同時にパシャリという音が道場に響く。
黒紫の髪をリボンで留めている少女、上里ひなたがスマホを構えて笑っていた。
「腕を組みながら悩んでいる若葉ちゃん......たまりません!これでまた若葉ちゃんの秘蔵画像コレクションが一つ充実しました」
「ひーなーたー.......!」
若葉はひなたが持っているスマホに手を伸ばそうとするがそれを素早くひなたはポケットの中に入れた。
「くっ......」
「ふふ、甘いですよ若葉ちゃん!私からスマホを取り上げるのは若葉ちゃんでも100年は早いです」
ひなたを睨んでいる若葉に対してひなたはふふんと胸を張った。
いつかその画像コレクションを消してやると若葉は心に決めた。
「それにしても、どうしたんですかこんな所で悩んでて」
「それは.....」
若葉はひなたに先程の事を話した。 海斗が何故自分達と交流を持たないのか、自分から避けるのかを。
するとひなたが口を開いた。
「多分ですけど海斗さんは過去に何かあったことは確かです」
それに、とそのまま言葉を続ける。
「彼は
「なっ.......」
若葉は驚愕した。あまり想像はしたくはないが、海斗は四国に来るまでずっと1人でバーテックスと戦っていたのだ。
今は大丈夫だろうが昔の若葉だったら心折れている。
「それで黒結は.....」
「......若葉ちゃん」
顔が下を向いた若葉にひなたが若葉の頬に両手で触れる。
「そんな顔しちゃだめですよ?思い詰めちゃ。ほら、笑顔ですよ笑顔」
「や、やめろぉ......」
若葉の頬をコネコネと弄り回して少ししたらひなたは離れる。
「大丈夫ですよ、海斗さんは決して若葉ちゃんや他の勇者の人達を嫌ってなんかいませんよ」
「そうなのか?いつも私があいつを呼びに行こうとして声を掛けると嫌そうな目でみてくるんだ」
「それは海斗さんの優しさだと思います」
「そうなのか?」
若葉は首を傾げるとひなたは笑みを浮かべながら口を動かす。
「先程の話に戻りますけど、海斗さんは3年前一人で四国に帰ってきました。その四国に帰ってくる前の道中、人の死を見てしまったかもしれません。それだと一番彼の心に傷を付けたのは身内の他にいません」
様々な予想をひなたは話す。すっと息を吸い若葉に向けて声を発する。
「少しずつ話していけば海斗さんは私達に心を開いてくれるかもしれません」
「少しずつ.......」
若葉は呟く。自分に言い聞かせるように、自分でも海斗に対しては言葉や口調が強かったのは自覚している。
それは普段の彼とのやり取りが原因で起こってしまうのだが、ひなたの言葉を聞きやっと決心がついた気がした。
「ありがとうひなた。いつもお前には助けられてばかりだ」
「いえいえ、これも若葉ちゃんのためだと思ってやっているだけですから。それに、私も海斗さんの事は心配でしたしね」
ひなた自身も海斗の事は心配していた。巫女になってから勇者についての事は大社からある程度聞いており、特に一番気になったのが海斗だった。
1人で故郷の四国に帰ってきた男の勇者。海斗が保護された時も彼は一言たりとも喋りはしなかったという。
そして改築された丸亀城の教室で初めてひなたは海斗と対面した。初コンタクトは酷いものだった。いざ声を掛けてみると警戒しているのか眉を顰めて強い口調で『俺に構う暇があるんだったらそこにいる勇者達にも挨拶してこいよ』と言われた。少し悲しかったが、授業や訓練が始まると何時も1人でどっか行ってサボるか先程の道場のように鍛錬をしていた。それをひなたは偶然目撃してしまう。
そこからひなたは海斗に興味を抱くようになる。
「さて、若葉ちゃん。そろそろ昼食の時間ですよ!早く食堂に行って皆さんを待ちましょう」
「お、おいひなた!?手を引っ張るな!」
悩んでいた二人は吹っ切れたのか先程より笑顔が綺麗になっていた。ひなたと若葉は昼食を摂るべくそのまま道場を後にした。
◇
「何で、俺がお前らと一緒に食わないといけないんだ?」
あの後1人で鍛錬をした海斗は自室に戻り昼食の時間まで本を読んでいた。
そして昼食の時間になり食堂に向かうと、そこには勇者一同と先程会った若葉とその隣にはひなたが海斗に手を振っていた。
若葉からは強い眼光でこっちに何かを伝えようとしている。
どうやらそこに座れと目で言われているようだ。
今日は仕方なく従い丁度誕生席になる所に椅子がありそこに腰を掛けた。
そして今に至る。
「お前は言っていたな『食事の時は顔を出す』と、あれは嘘ではあるまい」
若葉は強気にふっと笑った。ちょっとした軽口で言ったのだが本気にさせてしまったらしい。
すると今度はひなたが口を開く。
「海斗さん。今回だけでいいので皆と一緒に食べてみませんか?」
「.......」
一通り視線を向けてみると、そこには小説を取り上げられて落ち込む少女とその小説を没収して注意をする小柄な少女。
その前には昼食を楽しみに待っていたのか目を輝かせながらうどんを啜る赤髪の少女と、隣には海斗にとって大切な幼馴染が、うどんを啜っている赤髪の少女の表情を見ながら微笑んでいた。
正直やめて欲しい。俺にはそんな資格はない。あの日何も守れずただ逃げて偶然にバーテックスを倒せる力を手に入れられただけ。
その日から人を助けることを勇んでやった。だが、結果は助けたはずの人は化け物に食われ時には人と人の醜い争いで自滅したりする。気付いた時には自分と偶然巡り会った巫女だけだった。
でもその巫女もバーテックスに襲われ死んだのだ。
俺を庇って。
最後にその言葉が忘れられない。
『い.......て....だ....あい......て.......す』
声では分からなかった。でも、口で何を言ってるかは分かってしまう――
生きてください、愛していますと。
それから自分がどうやって故郷の四国に帰還出来たかは分からない。
けど、今でもこの憎悪は消えない。
消したくない。あの化け物がいなくなるまでずっと――
「.......」
「おい、黒結!」
「......ん?」
どうやら自分の世界に入っていたようだ。さっきから若葉が青筋を浮かべてこっちに声を掛けてくる。
「何故だ、とろ玉うどんというのは分かる......だが、どうしてこんなにも揚げ玉を入れているんだ!」
「悪いか?」
「悪い!これでは汁のだしが分からなくなるではないか!それに揚げ玉は水分を吸うぞ!そんなことしたらどうなると思う?」
いきなりうどんについて文句が飛んできた。別に好きにトッピングさせろよどうせ無料なんだしと心の中で呟く。
「さぁな?」
興味もないので話を流そうとしたが、これに若葉は遂に海斗にキレた。
「ふ、ふふふ......そうか、お前はうどんを侮辱するというのだな」
「は?おま、何言って――」
ガタンと強い音がなり若葉はテーブルに強く手を打ち席を立った。
「少しその曲がった根性を私が鍛え直してやろう.......」
「え.......」
若葉の中から黒いオーラが漂っている。気のせいだろうか?
そんな逃避に近い事をしている海斗だが、このままでは自分がやられかねないと思いすぐさま席を立ち上がろうとしたが、いつの間にかひなたと幼馴染の郡千景に両方から腕を掴まれ固定された。
「ちょ、離せよ上里!ちーちゃん!」
海斗はひなたの方に顔を向けると少々申し訳なさそうな顔で口を開く。
「すみません海斗さん。こればかりは若葉ちゃんの機嫌が損ねると大変になるのでご容赦を」
それに続いて千景も申し訳なさそうというか、少しだけ楽しんでる表情をしながら口を開く。
「ごめんなさい海斗......貴方は必要な犠牲なの。乃木さんを止められるのは今は貴方だけよ――ふふ」
最後だけ笑いを堪えられなかったのか小さく肩が揺れていた。
その他の外野3人組は怯えたようにすたすたと距離を離れて行く。
「ふざけんな!俺を生贄にするなぁ!」
そんな淡い声は誰にも届かない。今この現状にあるのは死と仮死だけだ。
そんな絶望に近い中海斗は再び若葉の方に向くと赤い目を光らせながら歪んだ笑みで海斗を見つめていた。
これは流石に死ぬと――察してしまう。
「さぁ......黒結。私と一本やらないか?なに、今なら本気で殺りあえるんだ嬉しいだろう」
言葉が違う気がするのは果たして海斗がおかしいのか彼女自体がおかしいのか誰にも分からない。
ただ1つ分かることがある。
「(乃木の前で俺特製のトッピングをするのを控えよう.....)」
そう心に強く決めた海斗だった。
でも、無意識だが海斗自身はこの日常も悪くないと感じてしまう。
先程暗かった表情は自分が気付かぬ間に笑みに変わっていた。
これから先自分に何があるかは分からない。
ただ.....少し、コイツらを守るぐらいなら神様も許してくれるだろうなと。
え、オリ主君!?
とまぁ協調性が全然なくて押しが意外と弱いオリ主君でした。
まぁ、まだ1話なので分かりませんがオリ主が香川に来れた理由が断片的にも分かったと思います。
またそのうちに触れていきますので〜
さて、次回はヒロイン会だぞぉ!!
また更新出来たら即あげていきますのでよろしくっす!
次回。第2話:氷は溶け、彼岸花は咲き乱れる