華結を繋ぐは勇者である『凍結』   作:バルクス

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どうもお久しぶりです、バルクスです。
三ヶ月の間投稿出来ずに申し訳ありませんでした。
モチベが上がらなかったのと、仕事が忙しかった事も重なりここまで長引かせてしまいました。
この作品を読んでくださる方に謝罪を。m(*_ _)m

こんな作品ですがどうぞこれからもよろしくお願いします。
では本編どうぞ!


第6話:気付きの応え

 

銀と愛翔を追った須美と園子の二人。

途中で銀と愛翔は道端で老人に道を聞かれたり、犬のリードを離した飼い主に犬を届けたり、倒れている自転車を起こして元の位置に戻したりと色々な巻き込まれたりしているのを遠くで見ていた須美達は何故こんなにもトラブルが多いのか疑問が多かった。

そしてそのまま銀達を追ってイネスにやってきていた。

ここではよく二人が買い物や中にあるゲームセンターで遊んでいることは知っている。

だが建物に入ったとしてもトラブルはまだ継続していた。

 

「ママぁ.....どこぉ......!」

 

まだ十歳もいっていない少女がショッピングモールのホールの中で泣いていた。

すると愛翔と銀が近付いて愛翔が声を掛けた。

 

「どうした?お母さんとはぐれちまったのか?」

 

愛翔に話しかけられた少女は一瞬だけだが肩を震わせて恐る恐るゆっくりと向いた。

そして少女は泣きながら話し出した。

 

「ママがいなくて........わたし、どうしたらいいのかわからなくて.......」

 

「そっか、そりゃ一人で泣いちゃうもんな」

 

銀が少女の頭を優しく撫でながら話を聞く。

まだ語彙というものが発達していないのもあって言葉足らずな所はあるが、愛翔はその言葉だけで状況を理解した。

そして愛翔はゆっくりと口を開いた。

 

「銀、早くこの子の母親を探すぞ」

 

「分かってるって!早く見つけてこの子を安心させなくちゃな!」

 

「ママをさがしてくれるの?」

 

愛翔が銀の方を見て銀は強気に溢れた瞳で言う。

その二人を見た少女は瞳を震わせながら言った。

それを愛翔は少女の頭をポンポンと優しく叩き笑う。

 

「当たり前だろ?目の前で泣いて困っている子を無視するのは勇者じゃないからな」

 

そして愛翔と銀はイネスのホールで少女の母親を探索していると、早くも少女の母親を発見して母の元へ届けた。

母親の方も相当焦っていたらしく目元に涙を貯めていた。

そして娘を探してくれてありがとうと少女の母親が感謝述べ、少女を送り届けたのを確認して銀と愛翔は後を去ろうとする。

すると後ろから声が聞こえた。

振り返って見ると少女が手を大きく振りながら叫んでいた。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん。ありがとー!!」

 

感謝をの言葉を口にしながら少女は母親と手を繋ぎながらその場を後にした。

その後ろ姿を見て愛翔と銀は互いに微笑んだ。

 

「あの子の母親、すぐ見つかって良かったな」

 

「そうだな。これで本来の目的に戻れる」

 

「だな。でも解決した途端にそんな冷たい事言うなよー?」

 

「.......善処はする」

 

少女を親元に届けて一息をついた後に銀が言うと愛翔は素直に返答する。

だがその言葉はあまりにも冷めてるとしか思えなかった。

それを銀は愛翔に注意を促す。

頭を掻きながら愛翔は言った。

 

「(全く......銀といるとトラブルは絶えないな)」

 

一息吐きながらそう心の中で呟く。

銀とはもう三年以上の付き合いになる。

彼女との出会いは愛翔の父が三ノ輪家――銀の父親と友人であり、まだ愛翔と銀が小さい頃に顔合わした事があるが等の本人達はまだ物心付く前なので知る由もないのだが。

その理由で直々、父親同士で交流はしているが、黒結家関係の事情や家柄等であまり子供達とは顔を合わせられなかったのだ。

そして愛翔が小学生三年の時に銀のトラブル体質に巻き込まれる事になった。

そこから度々彼女のトラブルを解決するようになってからいつの間にか仲良くなっていた。

たまにだが銀の方も最初は遠慮がちだったが、愛翔と一緒に過ごしていくにつれて遠慮なく厚意に甘えるようになった。

ふと、銀を横顔を見つめた。

家族想いで、情に厚くて、頼り甲斐がある。

 

「ん、どうした愛翔?こっちなんて見つめて」

 

銀が愛翔の視線に気付きこちらに顔を向ける。

咄嗟に愛翔は首を横に振り口を開いた。

 

「いや、別になんでもないよ」

 

「なんだ〜?この銀様に話せない事かぁ?今更私の前で話せない内容じゃないだろー?」

 

にやにやと笑いながら銀が詰めてくる。

流石に止めて欲しい。

仮にも女の子なんだからと心の中で呟くが、ここは一つ悪戯も入れてからかってみることにした。

息を吐いて間を開けながら呟いた。

 

「......いつ見ても銀は可愛いなと思っただけだ」

 

「ふぇ!?」

 

唐突言われた銀は顔を赤く染めるが、愛翔の方をジト目で睨みつつ言葉を発す。

 

「愛翔さぁ.......まだアタシだからいいけど、勘違いされるからな?」

 

「本心で言ったのにだめなのか?」

 

「それを素直に口で言うのがダメなの!」

 

「.......?わかった」

 

銀の言葉に大して意図が掴めてない愛翔は首をきょとんと曲げる。それを見た銀はため息を吐いてしまう。

 

「やっぱお前には分からないよな......女心が分からない奴......」

 

最後に銀がぶつぶつと呟いて何を言ったのか分からなかったが、別に気にすることではないだろう。

 

「ほら、もうそろそろこんな所で油売ってないでさっさと買い出し終わらせんぞ」

 

愛翔はそう言うと、本来の目的である買い出しに戻ろうとしたその瞬間、再びトラブルが起きてしまう。

近くにいた婦人が持っていたビニール袋が破けてその中からリンゴやみかんなどの果物が地面に転がり落ちた。

それを見た愛翔は再び頭を悩ませた。

 

「マジかよ.......」

 

声が出てしまうぐらい彼女のトラブル体質は休みという概念がない。

そもそもどんな場所に移動したとしても次々やってくるというのだ。

正直最初は苦労したが、今になってはそれが楽しみでもあった。

「拾いに行くぞ愛翔!」

 

「りょーかい」

 

銀が一速く動いて果物を拾いに行く。

愛翔も後ろから続いて拾い始める。

そして果物を拾っていると背後から銀の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

「三ノ輪さん!」

 

「ん?.......え、須美!?」

 

「園子もいるんだぜ〜!」

 

その正体は須美と園子だった。二人はこちらに向かってくると床に散らばっている果物を拾い始めた。

正直二人では時間が掛かると思ったから逆助かったと愛翔は心の中で思う。

 

「手伝うわ」

 

「え、え!?何だよお前ら!」

 

状況を理解出来ていない銀は驚きを見せながらも拾うのを止めずに拾うのを続けた。

果物を集め終え、新しい袋に入れ直し婦人に渡すと婦人はは感謝の礼を言って去っていった。

そして問題が解決してから本来の目的の買い出しを終えて、そこから途中から来た須美と園子と一緒にフードコートで昼食を摂ることにした。

因みに須美と園子が何故あそこにいたのかと聞いたら銀がよく学校を遅刻するのが気になり一日銀の家の前から観察(尾行)をしていたのだが、銀のトラブルを見てきて耐え兼ねて助けに来てくれたのだ。

 

「んじゃあ二人とも家の前から見てたっての?うぇー.....なんか恥ずかしいなそれ.......」

 

「恥ずかしくなんかないよ?偉いよ〜?」

 

「いつも遅れる理由はこれだったのね」

 

「まぁ、お前らには言ってなかったからな.......お、美味いなこのステーキ」

 

銀のトラブルを知った二人は彼女の事を責めずに寧ろその人助けを称えてくれた。

 

「言ってくれればいいのに〜」

 

「いや、それは何か他の人のせいにしてるみたいで、何があろうと遅れたのは自分の責任だしさ......」

 

銀は自嘲気味に言う。

彼女はいつも損をする事しかない。それなのに人助けや困っている人を見捨てることなんてしない。

ここまで得もしない事を率先してやっているのにそこまでするのか分からなかった。

 

「昔からそういう体質なのー?」

 

「ついてないことが多いんだ。ビンゴとか当たったことすらないもん.......」

 

「でも最近は緩和されているから大丈夫だと思ったが、久々のトラブル続きだったな――」

 

そう愛翔が言った瞬間。

周囲の音が消えた。辺りを見回せば人も物も湯気さえも止まっていた。

そして遠くから風鈴の音が鳴り響いて来るのが聞こえる。

敵が来る合図だ。

 

「はぁ......ほらな?日曜台無し」

 

「まだ飯もロクに食えてないのに来るとか敵さんは空気が読めないな。ま、取り敢えず戦闘準備に入るか」

 

「そうだねー早く終わらせてまた食べよう〜!」

 

「今度こそは私が.......」

 

「ん?何か言ったか鷲尾?」

 

「何でもないわ。それよりも黒結君、早く変身しましょう」

 

「?わかった」

 

自分の体質がついてない事にため息を漏らす銀。それをバーテックスに対して文句を言う愛翔。そして明るく言う園子に何かの思いを抱えている須美は直ぐさま樹海化するタイミングで変身をする。

変身が終わり、視界が普段の街から植物的な場所に変わるのを確認すると大橋の中央へ向かいバーテックスを待つ。

すると数秒後に大橋の奥からバーテックスが現れた。

形は四本の角の足というものを持ち、こちらにゆっくり近付いて来ている。

 

「来たわ!」

 

「うわ、ビジュアル系なルックスしてるな」

 

「前来たバーテックスも同じだと思うな〜」

 

「油断は禁物だぞ。鷲尾!先制攻撃出来るか?」

 

「えぇ、任せて!まずこの一撃で様子を見る!」

 

須美が弓矢を構え、矢を放とうとした瞬間、角型のバーテックスが大橋がある地面に四本の角を刺して同時に大橋や地面がぎぃんと激しい音を鳴らしながら強く揺れ始めた。

 

「きゃあ!」

 

「くっ!」

 

「うぉお!な、なんだなんだ!?」

 

「あの敵のせい!?」

 

地震のせいで身動きが取れない中、須美は堪えて矢を放つ姿勢になる。

 

「今度こそ......」

 

しっかりを狙いを定めつつゆっくりとバーテックスに向ける。

だが、それを向けた途端に前のバーテックス戦で矢を外した事がフラッシュバックしてしまう。

それが一々チラつくが須美は冷静さを装いつつ、頬に汗をかきながら敵に矢を向ける。

 

「(今度こそ.......今度こそ......)」

 

だがこれでまた外してしまったらどうする?

また自分が何も出来ないまま終わるのか?また足でまといになるのだろうか、そんなことを心の中で考え、焦りが出てしまう。

そして矢を放とうとした瞬間、後ろから誰かの手が自身の肩に置かれた。

 

「少しは落ち着け、鷲尾」

 

「はっ!あ、く、黒結君......」

 

「私達と一緒に、倒そ?」

 

「合宿の成果を出す。そうだろ?」

 

「乃木さん、三ノ輪さん......うん!」

 

愛翔が須美の肩に手を置いてそれに続いて園子と銀が須美を落ち着かせるために言う。

それを聞いた須美は先程の焦りはなく、普段の表情に戻った。

一人ではなく、四人で敵と戦う。これなら絶対に失敗しない。

そして話が終わった瞬間、揺れが収まり始め、全員バーテックスの方を見た。

その方を見るとバーテックスが一本の角をこちらに向けて勢いよく飛ばして来た。

それに気付いた園子が前に出て槍を盾状に変形させそれを防いだ。

 

「っ!うんとこ、しょっ!」

 

声を上げて一撃を防ぎ、槍を自身の力を使ってバーテックスの角を弾いた。

 

「よーし!皆、敵に近付くよ〜!!」

 

「了解っ!!」

 

「了解!」

 

「分かった!」

 

隊長である園子の声に合わせて全員はバーテックスの懐へ入るため駆け出した。

だが、ある程度近付くとバーテックスが上空へと飛びそこから角の一本を銀と園子がいる場所に飛ばしてきた。

直ぐさまそこから二人は回避して蔦の方へと移動する。

すかさず須美が上空にいるバーテックスに矢を放つ。

しかし、放った矢はバーテックスに届かず放物線を描いて下へ落ちていった。

 

「制空権を取られた!」

 

「降りてこい!ゴラァァァ!」

 

「.......何かおかしい」

 

「あいっちもそう思う?」

 

どうもあのバーテックスはわざと空に飛んだとは思えない。

愛翔は空にいるバーテックスをよく観察しながら考える。

隣にいた園子も同じだったのか愛翔の言葉に耳を傾けつつバーテックスを見ながら言う。

 

「何か......仕掛けてくる」

 

園子が呟いた瞬間に、四本あるバーテックスの角が合体してドリル状になり高速回転し始めたのだ。

そして、それが銀に落ちてきた。

咄嗟に落ちてくるのに反応出来た銀は両方の斧を上に上げて高速回転している角を防ぐ。

 

「うがぁぁぁぁぁ!!根性ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ミノさんっ!!」

 

「銀!」

 

「っ!......い、一分は持つ!その間に、上の敵をやれぇぇぇ!」

 

高速で回転している角を防いでいる銀は長くは持たない。

だが、一分と言ってもそれは短い時間の中であの上にいるバーテックスをどうにかして地上に落とさないといけない。

でもその間にも銀がすり潰されていく。

それに長く待っていたとしても現実にも被害が及ぶ。

それを判断するにはまだ経験すらも足りないのだ。

須美すらもどちらかを選択せざるを得ない状態に陥っている。

仲間を選ぶべきか、敵を倒すべきか。もう自分ですら何かを判断するに時間を要してしまう。

 

「(どうすればいいの.......?どうしよう........)」

 

「分かった!やるぞ園子っ!!」

 

「うんっ!私達で、敵を叩くよ〜!!」

 

愛翔言うと園子が自身が持つ槍の形を変えて階段状の足場に変質させた。

それをバーテックスの方へ向ける。

 

「鷲尾!お前が上に行って矢でアイツを落とせ!」

 

「!?りょ、了解!」

 

「園子、俺も行ってくる!」

 

「うん!気を付けてね!」

 

愛翔指示に従って須美は園子が作った足場を上ってその間に須美も弓を大きくさせ、矢を構える。

そして最後の足場を飛び踏んで限界までに高度を上げ、バーテックスの方へ矢を放った。

 

「届けぇぇーー!!」

 

弓の弦を最大にして放った一撃は須美の言葉に応えるかのようにバーテックスに着弾してその外皮を砕いた。

その勢いでバーテックスも体勢を崩し下へと落下を始めた。

 

「ここから、出ていけ!」

 

それを確認した園子は足場を元の槍に戻してまた形状を変化させた。

複数ある刃を一点に集中させ紫色の光を輝かせ、先端をこれでもかというぐらいにでかく、尖らせる。

 

「突撃ぃ〜!!」

 

力を入れ園子は落ちて行くバーテックスに駆け出し、槍を思いっきり刺す。

その刺した槍はバーテックスの体を貫通しそのまま園子は落下していった。

その勢いの衝撃で地面に強くぶつかりバウンドして蔦の方で止まった。

痛みが酷いがそれでも園子は体を起こして声を発した。

 

「あいっち!!」

 

空中にいる彼に園子は呼ぶ。

その声が聞こえたのか分からないが、愛翔は笑みを浮かべバーテックスに斬馬刀を構えた。

 

「よくもやってくれたな、化け物が!この代償は高くつくぞ!」

 

手に力みを入れ意識を集中させる。

すると斬馬刀の刃が光を放つ。

 

「うぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ!!」

 

 

それを愛翔はバーテックスに空中から一太刀を入れ外皮が真っ二つ切れる。

地表落下する愛翔は地面に強く打たれるが次の者にチェンジするため声を発した。

 

「今だ、銀っ!!」

 

愛翔が彼女の名前を叫ぶと銀は両手斧を構えて落ちてくるバーテックスを睨みつける。

 

「三倍して返してやるっ!釣りは取っとけぇぇぇ!!」

 

銀が叫ぶと両手斧が炎を纏い、銀は飛んだ。

力いっぱいに連続に乱雑に高速に振るって、バーテックスの体は粉々に切り刻まれた。

そして最後の一撃で銀は地上に落ちる。

バーテックスが落ちて行く中、大橋の全体に光が広がりはじめた。

鎮花の儀が始まったのだ。

それが行われた途端にバーテックスはあと型もなく消え去った。

それと同時に樹海も解けていき全員は現実世界に戻った。

 

 

 

 

 

樹海から現実世界に戻った四人は祠の近くにある公園で寝転がっていた。

あまりにも痛みや疲れで体が動けない。

 

「あー.......いてて......」

 

「ミノさん大丈夫〜?」

 

「疲れたよー......腰にくる戦いだったぁ......」

 

「あーして攻撃を受け止めてくれたから私たちが攻め込めたんだよ〜。ありがとうねミノさん〜」

 

「そっちこそ凄かったじゃん三人が何とかしてくれなかったら私潰れてたかもしれない」

 

「だって、ミノさんが一分持つって言ったんだから一分は持つじゃない?それくらいやればなんとかなると思って〜。長引かせると危険だもんね〜」

 

「でもあんな状況判断できるお前は凄いよ園子」

 

「えへへ〜それはあいっちもだからねー?」

 

「俺はただ自分に出来る事をしたまでだよ」

 

「またまた〜。照れ隠し〜?」

 

「違ぇよ」

 

銀達が話している中、須美は己の自惚れに対して後悔していた。

安芸先生は園子の閃を見抜いていた。

その才能が幸をそうし、何とかバーテックスを撃退出来た。

だが須美はただ迷っていただけだった。

何も出来ず、行動すらも遅れ、ただ深く考える事しか出来なかった。

それなのに家柄という名の決まりで園子がリーダーに選ばれたと思い込んでしまった。

実に自分を滑稽に思う。

しっかりしなきゃと思っていたのに、結局は周りの仲間を巻き込んで足を引っ張っていただけだった。

徐々に目元が熱くなるのを感じながら須美は目を瞑った。

 

「あーあーよいしょっと......お腹すいたぁ!」

 

「ご飯食べてる途中だったもんね〜」

 

「流石にイネス着いた頃にはもう冷めてるだろうな」

 

時間が止まっていても大橋の方からイネスまで少し距離がある。

到着したとしてももう食べ物自体は暖かくないだろう。

少ししか食べれなかったとはいえ、これではあんまりすぎる。

今この場にいないバーテックスにやり場のない怒りを抱えながらイネスに戻ろうと立ち上がろうとした瞬間。

須美が泣き始めたのだ。

 

「っ.......ひっく.......ぐすっ......う、うぅ........」

 

「えぇ〜!?」

 

「うぉぉ!ど、どした須美!?どこか痛いのか!」

 

「ち、違うの.....私.......ぐすっ......」

 

いきなり泣き崩れる須美に銀と園子が声を掛ける。

だが須美自体に何か異常がある訳でもなく須美は首を振って口を動かした。

 

「ごめんなさい......次からは......ぐすっ......始めから息を合わせる.......頑張る.......うぅ......」

 

泣きながらも須美は自分の思いを口に出して三人に言う。

それは彼女が胸の中で抱えていた一つのもので今ここで解消された。

それを聞いた三人は笑みを浮かばせる。

 

「あぁ!頑張ろうな!」

 

「はい、これを使って。わっしー」

 

銀は笑いながら言い、園子は自身のポケットからハンカチを手渡す。

ハンカチを受けとった須美は涙を優しく拭いて言葉を発した。

 

「あ........ありがとう......そのっち」

 

「!!もう一回言ってわっしー!」

 

「.......そのっち」

 

「おぉぉーー!」

 

「なぁ、須美!アタシは?アタシは!」

 

「銀.......」

 

「え?」

 

「銀......!」

 

「あはぁ......何か嬉しいな!ようやく須美とダチになれた気がする」

 

「........」

 

愛翔はその光景を静かに見ていた。

何故か須美とは何か波長が合う気がしていたが、この子も自分と同じだったんだなと思った。

かつて愛翔も家のしがらみという形で周りから期待されて、自分一人で追い込まれていた事があった。

小学校に入学してから色々と生徒や先生に対して友好的に接してきてきたため頼まれる事が多くなり。

そのため、周りから期待の目を向けられるようになった。

境遇は違うが須美はしっかり者だし、その考えに至るのは不思議じゃない。

寧ろそれを味わった愛翔自身が知っているのだから。

でも、須美はそんな事はもうないだろう。

だって大切な友を得たのだから。

 

「愛翔!」

 

「――!?」

 

どうやら考えふけっていたらしい銀に声を掛けられているのに気が付かなかった。

 

「何だよそんな一人で考えてそうな仕草しやがって」

 

「すまん、普通に今日の戦闘に対して整理していたんだよ」

 

そんな嘘みたいな事を言うが銀はそこまで追求はしなかった。

 

「ふーん、そっか。それじゃあ後は愛翔だけ須美に下で呼ばれてないだけだな!」

 

「は?いや、待て待て俺は別に呼ばれなくてもいいんだが」

 

「と、言っていますがどうですか須美さん?」

 

「わ、私は.......その.......黒結君が良いなら......」

 

「うっ......」

 

銀が悪戯心を抱いてこちらに妖そうな笑みを向けている。

須美はというと、照れながらこちらに上目遣いで言っているので何とも破壊力があると言える。

まるで捨てられそうな子犬のような感じだ。

 

「......はぁ、別に好きに呼んでいいぞ」

 

「――!あ、ありがとう.......愛翔.....くん」

 

「......」

 

これは本当に良かったのだろうか、何故か自分自身でもこの行動に意味を見いだせない。

そもそもこのよく分からない感情がなんなのか分からない。

ただ、分かるのは彼女に対して名前を呼ばれても不快感はなかった。

 

「ビュォォォォォォ!これは私の頭の中で何かが閃いた気がする!早速メモメモ〜」

 

「おい、園子!お前何する気だ!」

 

「え〜何もしないよーただ、ネタを貰っただけですよ〜」

 

園子がいきなり叫んだと思ったらポケットからペンとメモ帳を出して何かをメモした。

それがとてつもなく愛翔にとって気がかりで何故か許してはいけないと思ったのだ。

 

「ふざけるな!おい銀!お前も園子を取り抑えろ!」

 

「えぇ......ボロボロなのにまた腰にくることしないといけないのか......トホホ」

 

「ふっ.....ふふ、あはは!」

 

 

 

――これは、四人の勇者の物語。

神に選ばれた少女達と少年のおとぎ話。

いつだって、神に見初められるのは無垢な者である。

そして、多くの場合、その結末は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





泣きながら喋る須美可愛すぎか?(性癖悪化)

冗談は置いといて、この度『華結びを繋ぐは勇者である』を投稿してから既に一年が経過しました。
これも全てこの作品を読んでくれている読者の方達のお陰です。
本当にありがとうございます!

投稿頻度は激遅ですが、必ず物語を完結させるまで書き続けますのでどうぞ応援よろしくお願い致します!

では、また次回ににてお会いしましょうさらば!

次回。第7話:労う心
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