十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語   作:エーブリス

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前書きのネタが無い事だけ書いておきます。




踏み越して目指すその先

 

記録的なデーモンの襲撃も、結論的には“黒い鳥”の介入によってあっけなく終わった。

それ以前までの激戦の熱気は何処へやら…これが後に、戦後最も一方的と言われる殲滅戦として公式の記録に残る戦だった。

 

 

――――激戦の最中、カムイは両国の国王…つまれ彼の兄達が直々に率いる軍隊と合流していた。

 

「カムイ!無事か!?」

 

「一体何があった…!」

 

「リョウマ兄さん、マークス兄さん。

あれを…」

 

戦が終わり、漸くきょうだい本人達と会ったカムイは屍山血河のその先――デーモンを殲滅した例のAC一機と、それを取り囲む暗夜白夜の機甲兵部隊のAC達を指差した。

 

 

戦の貢献者とは言え、それは(恐らく)無許可の機体所持者。

まだAC不法所持を取り締まるような法はギリギリ無いが、国に仕える兵士としては体裁的にも一応取り押さえるだけの事はしておきたいのだろうか?一応法の云々に関しては治安維持法の類でどうにかなるのだろう。

 

されどもその“黒い鳥”はやはり戦の貢献者であり、多くの命に対する救世主であった。ソレを理解している手前、あまり手荒な真似は極力避けたいとも考えているようだ。

…というより、自分らの何百倍もACという機動兵器を使い慣れている相手を敵に回したくない、と言うのが大きいのかもしれない。

 

 

何であれ、ようやく一段落した大戦。それを舌の根が乾く所か、戦の余熱さえ冷めぬ内にまた繰り広げるのは望まない。

カムイ、リョウマ、マークスの国王たちもそれは同じであり、あの“黒い鳥”に対しても今後の活動における協力を取り付けることが出来ないかと考えていた。

 

一先ず3人は、機甲兵部隊の中を歩き、かのACへと近づいた。

 

「ッ!?

陛下!?一体何をッ…」

 

部隊長がぎょっとしたような声で彼らを制止しようとするのは無理もない。しかしカムイは「大丈夫だ」と、部隊長を諫めた。

 

「し、しかし…」

 

それでも眼前の救世主が正体不明である以上、警戒を解きたくはない部隊長を見てか――――急遽、黒い鳥のACが両腕の武装を解除した。パージされたヒートハウザーとレーザーブレードがドスンと音を立て、今度は部隊だけでなくカムイら国王達も驚かせる。

 

次いでハンガーに格納されていた短銃身のガトリングガンと速射型のハンドガンもパージし、いよいよ黒い鳥は丸腰となった。

…とは言え、まだブーストチャージがあるのだが。

 

「敵意は無い…という事か?」

 

「だといいけれど…」

 

その内、空気が抜けるような音と共に機体各所の光が落ち、カメラアイも暗く陰った事で漸く無抵抗を確認出来た。その直後、遂に機体上部のハッチが開き、黒い鳥たるパイロットその人が姿を見せた。

 

鬼が出るか蛇が出るか、といった様子で彼を取り囲み警戒し続ける機甲兵部隊らに対し、黒い鳥はACから降りた後、両手を上げて無抵抗の意思を示し続けた。

 

 

――――出てきたのは、ゴテゴテとしたパイロットスーツに身を包んだ、髭面の男だった。

この時、カムイ達は目の前の男が傭兵であると悟った。これはかの戦争時、実際にACを扱う傭兵との交流があった事がきっかけである。

 

「貴方が…あのアーマードコアのパイロット?」

 

「ええ、まあ…御覧の通りです」

 

正直、3人は今の最初の一言で少し違和感を覚えた。

何せ彼らにとって“人外的に強い傭兵”のイメージがやたら我の強い誰か(鴉頭の男)で凝り固まっており、そのためにこの男がやや腰の低い対応を見せた事に戸惑ったのだ。

 

「えぇと…その…」

 

「貴様、傭兵か?」

 

「はい、確かに金次第でやたらに暴れる仕事はしております。

お陰で収入が中々安定しないものですが」

 

マークスがある程度察していた情報を確定させる際も、やはり不思議な感覚に包まれていた。

やはりこんな無味無臭の男が……世の中、全く分からないものである。

 

 

「そうか。

誰に雇われた?」

 

次に質問したのはリョウマだ。

 

「それは、分からない…としか申し上げられません。

――――っああ、別に業務上の守秘義務といったものでは無く、単純に依頼人が素性を明かさない上に依頼内容もうっすいもので。仕事のついでに人探しをしております」

 

「人探し?」

 

「ええ。倅を探しておりまして。

今この世界――――んん、失礼。この…あぁ…この国にいる事は分かっているのですが、どうにも足取りが掴めず…ああ、こんな感じのガキです、トウヤって名前の。これもう十数年前の写真ですが」

 

そう言って、男が取り出したのは1枚の家族写真だった。

既に写真等の映像技術はある程度流入しており、それらを視察で直に見る機会のあった国王らは特にそれに違和感を覚えなかった。

 

 

男が指差したのは、左下にいる黒い髪の陰気そうな少年であった。

ツクヨミの娘(シャラ)のような異質感からの陰気ではなく、どちらかと言えば無力感から来る陰気さを持つ、不機嫌そうな表情の彼を、カムイ達は見覚えこそあれど個人の特定には至らなかった。

 

写真そのものが古いようなので、もしかすると現在の風貌は彼らも良く知る者なのだろうが…そうでなければ、きっと他人の空似だろう。

 

「すまない…見覚えが無い」

 

「そうでしたか…あぁ、とんだご無礼を」

 

この時のちょっとした落ち込み具合から、カムイはこの男の真意を察した。

 

本来なら態々投降せずとも、あのACを使って逃げ切れたハズなのだ…この男にはそれだけの実力はあるのだろう。しかしそうしなかったのは、恐らく我が子を探すためだ…そのために、最悪の場合投獄される可能性を認知して尚投降し、今こうして自分たちに尋ねたのだろうとカムイは察した。

 

 

…しかし、全く同じことを考えていたリョウマとマークスは更なる謎に気が付いた。

何故自分たちに態々そのような事を尋ねたのだろうか?ここまでの対応から、恐らくは今まで見て来たAC乗りの傭兵(レイヴン、リンクス、ミグラント等)同様に異界の人物であっても、自分らの素性は知っている筈である。

 

まさか国王及びに国の最高責任者がどのような立場なのかを知らぬハズはない…しかし、この傭兵は現に人を尋ねて来た。

 

となると、考えられる可能性は…先ず、3人にとってそれなりに深い関りがあった人物なのでは無いのだろうか?この男の息子というのが。

そうなると予測されるこの男自身の情報の認知度と、先の遠回りな対応が少しひっかかる。余程の罪人となった者か、或いは単に遠慮しているだけか…。

 

 

ソレをリョウマが聞き及ぼうとした、その時…傭兵は明後日の方向を見つめ、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。

 

「ウソ、だろ…?」

 

「?…」

 

男の視線の先を、カムイが追いかけると…そこにはマーシレスの娘、スミカが直ぐ近くに――とても驚いたような表情で――立っていた。

彼女の親について知るカムイらは、まさか…と、確信に限りなく近づいた疑念を覚えた。

 

 

「す、スミカちゃん…?

何でここに?」

 

「こっちのセリフよ。

いつ来てたの…?」

 

親しい対応をする二人に、カムイは一層戸惑った。

 

「あの…二人はどういう関係なんだ?」

 

「カムイ様…!

この人、私の祖父です」

 

「「「えっ…?」」」

 

3人の反応はごもっともである。

何せ、スミカの祖父とあれば…ほぼ自動的にマーシレスの父親という事になるのだ。

 

 

カムイ一行は、ある意味では奇人変人の集まりのようではあるが…その中でも一際エキセントリックな言動をしていた男の父が、目の前の一件地味でどこか人畜無害そうな男だとは。

 

「つまり…あの写真は…」

 

「鴉頭の…」

 

今や廃れ、姿を変えた都市伝説の真相の一端を垣間見た気がした。

 

 

何はともあれ、今やマーシレスは今回のデーモン騒ぎの重要参考人として国を挙げて捜索中の人物であり、その手掛かりを持つ人物となればカムイは一層この傭兵を放って置く事が出来なかった。

 

「あの、ええと…」

 

「?…あ、私、一応はジンという名前で通っております。カムイ陛下」

 

「あぁ…ジンさん、その…貴方の息子について何処まで知っているんだい?」

 

「私もこの土地に居ると言う事だけは知っているのですが…。

――――もしや、うちの子が何か…」

 

黒い鳥の傭兵――改めジンは途轍もない不安に駆られた表情で恐る恐るカムイに尋ねた。

 

「いや、特に悪い事をしたと言う訳ではない…ん、だ。うん。

ただ…今回の件について、何か知っているかもしれないと言うだけで」

 

「ああ…やっぱり、か」

 

「?、心当たりがあるのか?」

 

「ええ。

先ほど、仕事の依頼…まあ、単にあの化け物を蹴散らせというだけなのですが。その依頼主がどうもトウヤらしくて…」

 

「そうなの!?おじいちゃん!」

 

ジンの言葉にいの一番に食いついたのはスミカだった。

 

「うん。文章の癖が似てるってだけで、まだ確定した訳じゃないけどね」

 

「そっ、か…」

 

「悪いな…役に立たないおじいちゃんで…」

 

「んな事無いって!

一番悪いのは何時までも顔すら見せない父さんだから」

 

恨み節たっぷりの言葉であるが、至極当然である。

 

 

そしてスミカと入れ替わるように、カムイがジンに対して提案を持ちかけた。

 

「良ければ…ジンさんも僕たちの仲間に加わらないかい?

僕らもマーシレスの事を探しているんだ、きっと皆で探した方が良いと思うんだけれど」

 

「本当ですか?

ありがたい…寧ろこっちから金払って頼みたいぐらいだ」

 

一先ず、ここでカムイ達の当初の目的である“黒い鳥”ジンへの協力の取り付けは成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


…全ての歯車が、ついに動き出した。

誰もが引き返すことが出来ない所まで到ったその時、起こされていた撃鉄が勢いよく振り下ろされ、号令の銃声が各々の耳元で囁き始める。

 

選んだ道を――例えどんな大きな力の元でも――進み続ける者達が、得物を手に走り出した今、潜む総てが絶望の名の元に向かいから疾走し始める。

 

止められる者はいないし、止める者もいない。

たとえそれが最初から道筋の決まっていた出来レースだったとしても…放たれた弾丸は、二度と薬莢に戻る事は無いのだ。

 

 

故に、その男は今も歩み続ける。

親しきものが皆、天寿を全うした今…残すものは何も無いとして、与えられた名すらも捨てて向かった。彼には使命がある。


 

 

 

 

 




これで今後の祖父母ネタの布石が整った…後はタイミングだけ。

ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい

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